メロディや曲の雰囲気が呼んでくる歌詞ってあると思う
──“その気にさせないで”と同じメンバーでやっているもう1曲が、“君の歯ブラシ”。この曲がいちばん、ミニマムな『正気じゃいられない』を感じました。
マハラージャン : そうですね(笑)。この曲はいま、いちばん気に入ってますね。
──インパクトありますよね。“磨くよ便器”っていう歌詞に狂気を感じますけども。
マハラージャン: :“便器”というワードを、本当は誰も歌詞に入れたくないじゃないですか?だけど、使いたくない言葉も、やりようによっては嫌味なく聴かせられるんじゃないかと思って、チャレンジしました。良いダンスナンバーになりましたね。
──先ほどおっしゃった、「音楽がカッコよくないと意味がない」という姿勢がこの曲に色濃く表れてますよね。
マハラージャン : そうですね。これで曲がダサかったらもうおしまいですからね(笑)。
──確かに(笑)。この曲は失恋の痛みがリアルに感じられます。
マハラージャン : これは実際にあったことから、着想を得て書いて曲にしました。
──SDGs的なメッセージも含んでいる?
マハラージャン : (歯ブラシは)プラスチック製だから再生できるのかと思ったら、「燃えるゴミ」で捨てないといけないらしくて。歯ブラシが再生できる世の中になればいいなと思ってます。
──そういう意味ではかなり重要な曲ですか?
マハラージャン:そこまで言っていいかわからないですけど(笑)。“君の歯ブラシ“と”その気にさせないで“のMVが公開しているんですけど、なんと峯岸みなみさんに両方ともご出演いただいてます。すごく良いMVになったので、曲と一体となったイメージで受け止めてもらえたらと思います。
──すごいですね。それこそ、“貞☆子”は、NHK「シブヤノオト」で麒麟の川島明さんや土屋太鳳さんとバンドを組んで生まれたわけですよね。この曲のエピソードを教えてもらえますか。
マハラージャン : 去年の後半に、『シブヤノオト and more FES.2021』という特別企画があって、そのなかでオリジナル・バンドを組んで曲をやろうということになって。川島さんと土屋さんがまず最初にハマさんを誘って、その流れで僕に曲を作ってもらえばいいんじゃないかと言ってくださって、関わることになったんです。「SHOCK & RUN YO!(しょっけんらんよう)」というバンド名からもわかるように、とにかくMC陣にすごい人たちを集めるということで、WONKの江﨑文武さんをはじめとする方たちが集まったんです。曲に関しては、いまよりもまだコロナの影響が強くてみんな家から出られないような時期だったので、「テレビから出てあなたと繋がりたい」ということを言えないかなと思ったことがヒントになりました。〈大声で叫び合おう〉という歌詞も、いまもまだライヴ会場では叫んだりできないですけど、そういうことができるようになればいいなという思いを込めています。
──番組では、川島さんがメイン・ヴォーカルを務めていましたよね。
マハラージャン:そうなんです。そのときはレコーディングしていなかったんですけど、アルバムを作るにあたって、セルフ・カヴァーしてもいいかなと思ったんです。僕が歌わせてもらう上で、そのときのメンバーにやってもらいたいと思って集まってもらいました。
──最後の“遠回り”はどうやって生まれた曲ですか。
マハラージャン:曲を作るにあたって、ブースを借りてそこに機材を持って行って作るという1週間があったんですけど、そこで生まれた曲のひとつなんです。シンプルな曲にしたいと思って作ったので、必然的に1つ1つの音の存在感が出たと思います。
──歌詞を見ても、マハラージャンさんらしからぬ感じがするというか、正統派な曲ですね。
マハラージャン : やっぱり、メロディや曲の雰囲気が呼んでくる歌詞ってあると思うんです。なので、変なマッチングを寄せ付けないというか。純粋な曲のイメージから歌詞を書きました。あと、弾き語りっぽく作ったからこういう曲ができたんだと思います。ベースから作ったらメロディの乗せ方もパーカッシヴになっていくと思うんですけど、この曲は歌を中心に作りました。
──CD限定のボーナストラックで山下達郎さんの“BOMBER”をカヴァーしていますが、なぜこの曲を選んだんですか?
マハラージャン : すごく好きな曲なので、ライヴでやりたいと思って。その口実を作るためにカヴァーしました(笑)。どう考えても、山下達郎さんのカバーなんておこがましくて普通やれないかもしれないんですけど、そんなことを考えていたらなにもできないと思って、思い切ってやらせてもらいました。一平さんとTAIHEIさん ( Suchmos/ 賽 )と一緒にやるにはどういう感じが良いかなって考えながら、テンポ感とかを意識して作ってます。
──ベース、ギターはマハラージャンさんが弾いてますが、このベースソロも弾いてるわけですよね?
マハラージャン: これは、一音ずつパンチインして録りました(笑)。ベースがあんなに上手いと思われても困るので。もちろん、ある程度は弾けますけど、さすがにベースソロはむずかしいですから。
──マハラージャンさんは色々な楽器が演奏できるし、デモの時点ではご自分ひとりで作っているわけじゃないですか? だけど最終的にこうしていろんなミュージシャンと一緒に生のバンド・サウンドにするのは何故ですか?
マハラージャン : 僕はミュージシャンって本当に尊いと思っているんです。人によって全然カラーが違って、お願いすればするだけ違うものが出てくるのがおもしろいなと思うんですよね。なので、できるだけ色々な人に演奏してもらいたいんです。すごく良い化学反応が起こると思っているので。
──そうして完成したセカンド・アルバムは、どんな作品になりましたか。
マハラージャン : どれだけの人に聴いてもらえるかわからないですけど、めちゃくちゃ自信作ができたので、なるべく多くの人に聴いてもらいたいです。
──このアルバムを携えて、初のワンマン・ライヴ〈レッツ・ターバン!〉が控えています。初ワンマンにしてLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)ですよ?
マハラージャン : いやあ、すごいところでやらせていただくなあって緊張はあったんですけど、ただ去年今年と色々なところでやってきて、ライヴが楽しめるようになってきたんですよ。バンド・メンバーもチームとしてのまとまりが出来てきたと思うので、僕らの良いグルーヴをぜひ聴いて欲しいです。セトリや流れとかもすごく考えて臨むので、マハラージャンのいちばん丹精込めた音楽をぶつけたいと思ってます。
編集:稲垣志真・梶野有希
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LIVE INFORMATION
初ワンマンLIVE「レッツ・ターバン!」
<大阪公演>
日付 : 8月5日(金)
会場名 : 心斎橋BIGCAT
開場時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
<東京公演>
日付 : 7月22日(金)
会場名 : LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
会場時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
PROFILE : マハラージャン
東京都出身。社会⼈になってから感じた強烈な劣等感や、耐えがたい苦悩、屈辱に苦しんだ結果、 スパイス × ダンス・ミュージック という現在のスタイルに辿り着く。 働き方改革が問われる現代が産み落とした、スパイス香るアジアの異端児。 2019年11月に、作詞・作曲・編曲・演奏まで一人で手がけたデビュー作「いいことがしたい」をリリース。 ミックスを髙山徹、マスタリング・エンジニアをBernie Grundmanが担当した本作は、配信のみのリリースながらそのジャケットのインパクトからは想像もつかない洗練されたサウンド、そして社会人なら共感必至のどこかシニカルなリリックに、耳の早い音楽関係者やリスナーが病みつきとなり、全く無名ながら各音楽配信サイトで注目アーティストとして紹介され、全都道府県のラジオ局で楽曲がオンエアされるなど話題を呼ぶ。 2020年4月に、2nd EP「ちがう」をリリース。 前作に引き続き、その確かな音楽性を確信したディーラーからオファーを受け、 前述の2枚のデジタルEPをコンパイルし、ゴダイゴ「MonkeyMagic」のカバーを追加収録した初パッケージ作品をタワーレコード限定で販売。 同作品のヴァイナルもリリースされるなど、現在もロングセールスを記録している。
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