2021/09/03 18:00

日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──初のフル・アルバムが描くストーリー

VivaOla

R&BシンガーソングライターのVivaOlaがOTOTOY初登場! 彼は韓国で生まれ、アメリカに位置する名門バークリー音楽院から一時帰国し、日本で音楽活動を本格的にスタートしたというキャリアの持ち主。そんなバックグラウンドを活かし、グローバルな楽曲をリリースし続けてきたVivaOlaが、今作では「日本語の曖昧さ」を最も意識したという。抽象と具現の間を表現するViVaOla初のストーリー調のフル・アルバムがついに完成した。

INTERVIEW : VivaOla

VivaOlaが9月1日にリリースする初のフル・アルバム『Juliet is the moon』が素晴らしい。ひと続きのストーリーを下敷きにした全10曲30分余のコンセプト・アルバムで、R&Bならではのスウィートな歌もの感とヒップホップ的なループ感を見事に両立。捻りの効いたコード進行やリズムトリックを随所に仕込みつつ耳当たりは実に滑らか、全体を通しての流れまとまりも申し分なく、何度でも繰り返し聴きたくなってしまう。日本の音楽シーンに対する思いを滲ませつつ不思議な親しみやすさにも満ちている今作について、VivaOla自身のバックグラウンド、日本語・英語・韓国語の違い、アメリカのネオソウルやヒップホップといったトピックもあわせ、興味深い話をたっぷり訊くことができた。

インタヴュー・文:s.h.i

対比の構図がすごく好き

──『Juliet is the moon』は、VivaOlaさんの初フル・アルバムですね。ひと続きのストーリーがあるコンセプト・アルバムということで。

VivaOla : コンセプト・アルバムっていってもいろいろ種類があるじゃないですか。僕が今回選んだのは、小説とか物語みたいなやつですね。『STRANDED』も一種のコンセプト・アルバムではあるんですけど、でもあれはテーマはあってもストーリーはなかった。今回の『Juliet is the moon』にはストーリーがあって、最近そういう作品が多いなと制作中も思っていたんですが、でもそれほど細かくはない。登場人物に名前もつけてないですし、何年経ったとか、決まった季節があるかというよりは、抽象と具現の間みたいなイメージです。

──なるほど。制作にあたって参考にされたコンセプト・アルバムなどはありますか?

VivaOla : 有名どころだと、YOASOBIさんの『THE BOOK』(2021年)ですけど、それこそビートルズの頃からクラシックなコンセプト・アルバムってあるので。でも自分の意思とか社会的立場とかを示す作品が多くて、「音楽だけをする」というのが思った以上に少ないですよね。

──『Juliet is the moon』というタイトルについて、参照元になったというシェイクスピアのセリフ「Juliet is the sun」とあわせて、教えていただきたいです。

VivaOla:対比の構図がすごく好きで。特にアングラなのかポップなのか、光なのか闇なのか、みたいなのが好きなんです。「Juliet is the sun」というセリフも対比なんですよね。コンテクストがあってのもので、それだけで読み解くと間違いだと思ってて。このセリフの前で、ロミオが「僕の君への愛を月に誓おう」と言ったのに対して、ジュリエットが「月に誓うのをやめてください」と言った故に、「東を向けばそこにジュリエット(=太陽)が」というのが出てくるんですね。それだけでみると、あたかも幸せなセリフのように思えるけれども、もちろんエンディングはおかしいぐらい哀しい。そこを小馬鹿にしたようなタイトルとして『Juliet is the moon』というのをつけました。ひとつの具体的なストーリーとテーマがあって「月はこういう意味」というよりは、いろんな意味をかけ合わせて1個の作品を創ったという感じです。そういう意味も兼ねつつ、自分が音楽家として音楽シーンへの葛藤みたいなのがあるというか。これは自分がリスナーとして音楽を聴いている時からずっと思っていたので。そういうのもあるよね、と思いながら作りました。

──今回プロデューサーにnonomi、KRICK、starRoが参加していますが、どういった経緯で参加されたのでしょうか。

VivaOla:nonomiは過去作からずっと参加してくれている友達で、バークリーで会った同期です。前作だと彼は曲単位というよりも部分単位、この瞬間に必要だから一緒に作ってくださいという感じだったんですけど、今作はストーリーということもあって先に曲名も歌詞の全体の内容も、メロディやキーも決まっているなかで、何曲かだけお願いするということになりました。starRoさんとKRICKくんについても同じ経緯です。starRoさんは、以前僕とJuaくんとWez Atlasのトリオでやった曲をリミックスしてもらってて、その繋がりでお願いしました。KRICKくんは、Solgasaにいるmichel koのプロデューサーをやっていて、個人的にサウンドが好みでお願いしました。

──さらにフィーチャリングにはZIN、YonYon、Sagiri Sól。こちらも豪華な方々です。

VivaOla:ZINさんは僕の「Runway」という曲のアレンジをお願いをしたことがあって。その時から「いつかふたりで曲を作りたい」というのがあったんですけど、今回ちょうど僕がアルバムを作りはじめてたので、歌ってもらいました。Sagiriさんは、僕の高校の同級生なんですけど、アコースティックのトリオみたいなのをやっていて。彼女はもちろんボーカリストだったので、歌のことを教えてもらったりしていたんです。今回タイミングが合ってコラボできました。YonYonさんは、曲ができている段階で“Love you bad”がリードトラックとすでに決まっていたので、パンチがある方にお願いしたいと思っていて。それで、プロデューサーさんからもらったリストを見て、「この方知っている!」と思い、決めました。

── “Love you bad(feat. YonYon)”のYonYonさんのパートでは韓国語のフレーズが出てきますけど、どういった意味なんでしょうか。

VivaOla:まず、日本語の歌詞のところで甘々なモードに入るじゃないですか。で、韓国語では、本音が出るんです。なんとなく訳すと「たまにめんどくさいし、たまにつまらないと思うし、そう言うのがわがままな部分も知っているけど、あなたと過ごすのは時間が過ぎるのを忘れるくらいには楽しいよ」みたいな感じで。で、それに続く英語は解決じゃないですけど、「ふたりはシャイなだけで、もうちょっと前に進めればいいよね」みたいなことを言って、次のパートに繋がるみたいな感じです。

VivaOla - Love you bad (feat. YonYon) [Official Video
VivaOla - Love you bad (feat. YonYon) [Official Video

──全曲を通して、歌詞がとても印象的ですよね。英語詞と日本語詞をまたぐ美しい韻が多くて素晴らしいと思います。過去曲に比べると日本語詞がだいぶ増えましたね。

VivaOla:これがたぶん今作でいちばん意識したことで。腐れ縁みたいな仲のアーティストでWez Atlasっていう人がいるんですけど、彼は英語の歌詞が天才的にうまくて。でも彼にも悩みはあって、日本人にそれが伝わらないみたいな話があるんですね。まあそれは確かに仕方ないなと思うし、和訳を載せれば今の人達ならなんとかなるとも思うんですけど、自分は彼と比べると日本語で書くことの方に慣れているので。今回はちゃんと勉強して日本語の歌詞を書きました。

──なるほど。“My Moon(feat. ZIN)”の「言葉じゃ足りない」「本当はそんなんじゃない」のところは、日本語のセオリーに捉われない切り方とかアクセントの付け方が凄く良いなと思います。

VivaOla:カラオケとかで日本語の曲を歌ってたら、「日本語気持ちいいよね」ってなるけど、自分で日本語を書くとなるとモードが違うというか。もうちょっと音として捉えてるんですよ。道具みたいな。もちろん読んで綺麗というのは考えているんですけど。僕あまり現代詩とか勉強してないから、現代詩好きには怒られちゃうかもしれないんですけど、日本語の歌詞によくあるのが詩っぽい歌詞だと思うんですよね。僕は箇条書きに近いというか、もうちょっとフランクな表現。語尾の数を合わせるために文字を切ったりとか、英語の“bad at this”を“budadi”みたいに省略して歌うのを日本語でどうやるかみたいな。「本当はそんなんじゃない」なら“ん”は消せるよねみたいな考え方。自分は韓国人ルーツなんで。韓国語ではよく見るんですよ。

この記事の編集者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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自分が聴きたい音楽を追求し続けていく──ロック・バンド、続きはらいせの美学を表現したファースト・EP

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ただ、承認されて自立していたい──励ましもせず、突き放しもしないステレオガールのアティテュード

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イズミカワソラ×ニラジ・カジャンチ ── 新作『Continue』の意外な制作過程を語る

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出発点である自分と向き合うきっかけに──ミクロを意識したJYOCHOの新作

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1万通りの1対1を大切にするpolly──つぶれかけていたロマンを再構築した新作

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理想郷は自分たちで作っていく──ひとつの“カルチャー”を目指すバンド、the McFaddinの新作EP

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これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

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音楽ライターがオススメする〈FRIENDSHIP.〉の注目作品(2021年10月〜12月)

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バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

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原動力は「なにかを壊したい」という気持ち── 光と影が交差する、イズミカワソラの歩み

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PEOPLE 1 『PEOPLE』クロスレビュー  ── 集団として闘い、大衆を救う決意

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余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る

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The fin. 『Outer Ego』クロスレビュー  ── 主観と客観を行き来する、普遍的なポップ・ミュージック

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“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉

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初ミニ・アルバムのテーマは“脱出ゲーム”!? ── ポップで攻撃的な5人組、あるくとーーふの全貌

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ポップなPARIS on the City!が、泥臭いロック・サウンドに振り切るまでの歩み

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ギタリストではなく、ひとりのアーティストとしての表現──25曲で語るDURANの人間性と感受性

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BALLOND'ORの止まらぬ鼓動! ── 国内外から注目を集めるサウンドの生まれ方

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キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

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京都から現れた、あえて言おう“すごいバンド“! WANG GUNG BAND!!!

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谷口貴洋はどのように育ったのか?ー自由で冷静な人間性の生まれ方

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ネクストモードなEmeraldが伝える制作の秘訣──10年間で培ったバンドサウンドの楽しみ方

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日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──シェイクスピアを参考にした初のフル・アルバムが描くストーリー

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謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?

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Laura day romanceがたどり着いた新局面──対照的なふたつの新作から鳴る輝きと情緒

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ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

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自分のドキュメンタリーを音楽で表現する──新作『はためき』に込めたodolの祈り

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「人のためになれるような作品ができました」── 愛はズボーンが2つの新作で提示するアルバムの楽しみ方

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パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム

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[インタヴュー] VivaOla

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