楽器で遊ぶひねくれ者集団──あえて邪道を歩むバンド、Kroiの新作EP『STRUCTURE DECK』

全ての色を混ぜると黒になるということから名付けられたバンド名の通り、ファンク 、ソウル、ロック、ヒップホップなどあらゆるジャンルを融合し、様々なカラーの曲を制作してきたKroiが1月27日に新作EP『STRUCTURE DECK』をリリース。世代や国境の垣根がないKroiのジャンルレスな楽曲はどのようにして生まれるのか?また「リード曲が6曲詰まってるようなEP」と語る今作の推し曲も、メンバー各々にお伺いしました。Kroiならではの細部までこだわり抜いたアレンジが高音質で聴けるハイレゾ・ロスレス音質にて配信中です。合わせてお楽しみください!
Kroi - risk (Official Video)Kroi - risk (Official Video)
INTERVIEW : Kroi
21歳~26歳までのメンバーで構成されているというKroi。なんでその歳でこんなに演奏が卓越してるんだっていうぐらい、新作EP『STRUCTURE DECK』にはハイセンスな楽器プレイが曲ごとに詰め込まれている。これが最高に楽しい。“dart”なんて、3分弱の曲中、1分20秒ほどで歌が終わってあとはソロ回しにユニゾンのキメで怒涛のエンディングに突入しているじゃないか。まるで給食を早食いして校庭に飛び出した子どもみたいだ。無邪気に楽器で遊んでるバンドってめちゃくちゃ面白い。そんな演奏に乗せた歌は、ときにメロウに、ときに激しくビートを持った言葉と歌いまわしで聴く者を翻弄する。ここにあるのは、あらゆるジャンル、世代、国にもイメージを限定されずに広がっていきそうな、今の時代を象徴する音楽だ。
インタヴュー&文 : 岡本貴之
「Kroiと書いて“ひねくれ者軍団“と読む」っていうか(笑)
──Kroiの曲を聴くと、それぞれの楽器の主張が結構強くて、でも調和しているのが面白いですよね。曲はどうやってできていくんですか。
内田怜央(Vo.Gt):基本的には、自分が頭の中に思い描いた音を全部入れたデモをみんなに出して、そこから各々好きなようにやってもらって1曲が完成するという感じです。
関将典(Ba):ライヴをやっていた時期は、ライヴを意識した曲作りもしていたので、怜央のデモをみんな家で音を録ってきて対面で合わせてみて、アレンジ面とかをその場で話し合ってという作業をコロナになる前はやってました。
──それぞれが色んな音楽要素を持ち込みながらも、バラエティに富みすぎている感じではないですよね。
関:自分たちはとっ散らかったりとか、すごく雑味があったりとか、聴いていく上でちょっと突っかかるような場面があるというのは、それはそれでおもしろいと思っていて。全員でプリプロを進める上でも「それ本当にありなの!?」っていう、わりと邪道的なアレンジみたいなものは好きですね。そういうものをどんどん入れいきたいという気持ちはあります。
内田:どうすれば邪道になるのかっていうのは、よく研究してます(笑)。
──逆に、今の20代のミュージシャンにとっての王道の音楽ってどんなものなんだろう?結構、昔とは変わってきていると思うんですよ。
益田英知(Dr):例えば作曲する上で「ここのコードの次は普通こう落としてこう盛り上げていくよね」っていうものがあると思うんですけど、そこと照らし合わせて、あえてあまりやってないことをやって、リスナーの耳に引っ掛けるというか、そういう感覚に気付いてもらうというか。そういうことを意識した曲作りをする上で、邪道っていう言葉になるんだと思います。
内田:「Kroiと書いて”ひねくれ者軍団“と読む」っていうか(笑)。
一同: (笑)。
内田:本当に、ひねくれ者の集まりなので、人と違うことをやっていきたいというか。そういうのは表現者として大事なことだと思うので。表現者として、当たり前な部分をちゃんと持っている人たちがいるバンドなので、そういう良い意味での「邪道」というのを探求していくのが好きなメンバーなんだと思います。
──バンドって、鍵盤がいるかどうかでアレンジがだいぶ変わってくると思うんですけど、キーボード担当の千葉さんはどんなタイミングでバンドに加わったんですか。
千葉大樹(Key):僕は2019年12月に正式メンバーになったので、よく聴かれている曲だと“Fire Brain”が出た後です。なので、メンバーになってちょうど1年ぐらいです。でもわりとサブスクに上がってる曲は、1stEP以外は僕が入ってからできた曲ではありますね。
──ミックス・エンジニアとしてもクレジットされていますが、そういう役割も担った上で正式メンバーになったのでしょうか。
千葉:いや、僕がミックスをやりますって言って入ったわけではないんです。
関:(千葉が)メンバーになる前の1stEP『Polyester』で、ミックスと若干の鍵盤の音入れをしてくれたのが、出会いだったんです。
内田:個人的に、千葉さんが鍵盤としてバンドに入ってきてくれてから、あんまりミックスをやってくれると思ってなくて。だから「ラッキー!」って思った(笑)。
千葉:(笑)。
関:メンバーになってからもやってくれるんだ!?って(笑)。
内田:やっぱり、メンバーにエンジニアをやってくれる人がいると、意思疎通がしやすいというか。いちばん近い存在でやりたいことがわかってくれてるので、例えばサウンド感で言う“汚し”とか、そういうのもちょうど綺麗に思ったようにみんなの意見をスパッと入れてくれたり、千葉さんは千葉さんでいかちぃアレンジを(笑)。自分たちがレコーディングした後に新しい音を足してくれたりして、どんどん曲を進化させてくれる体制になってます。
──その体制でできた初の全国流通盤となる3rd EP『STRUCTURE DECK』はどんなものを目指して制作しましたか。
内田:あんまり目指しているものはなくて、Kroiのクリエイションの軸になっている、今自分たちのやりたいことを表現するっていうところを、ゴリ押しでやっていこうというテーマでやって行ったんです(笑)。でもやっぱり出来上がっていくうちに、表現できる幅の広さみたいなものとか、関さんがよく言ってくれるんですけど、「入ってる6曲が全部推し曲」というか、リード曲にもなり得るようなパワーのある曲が『STRUCTURE DECK』に集まったねって。わりと後付けではありますけど、本当にリード曲が6曲詰まってるようなEPになりました。
──その6曲のうち1曲がインストですよね。
関:“marmalade”に関しては、EPというまとまった作品を作るタイミングで、そういうギミックみたいなものもあった方が、より作品としておもしろいんじゃないかっていう、インタールード的なものだったりとか、 “marmalade”を入れることで、トータルで聴いたときの満足度とか、曲と曲の繋がりへの気持ちの入れ替わりとか、そういうことができるなと思って、レコーディング中にみんなでサッとジャムを録った音源なんです。
──フュージョンっぽい曲ですけど、ギターの弾き分けってどうやってるんですか?
長谷部悠生(Gt):この曲はせーので一発録りしたので、怜央がバッキングをして自分がソロを弾く、ぐらいのことしか決めてなかったので、本当にセッションというか、あの作品を作ったレコーディング環境を、聴いていてすごく感じる曲になっているのかなって思います。コード進行も千葉がサッと考えて、みんながジャムったものなので。特に弾き分けの部分で話し合ったことはなかったですね。