初アルバム配信! 2ピース・バンドの革命児、さよならパリスが鳴らす"リスナーとしての音楽"とは?

2010年から活動を続ける2ピース・バンド、さよならパリスが1stシングルから3年を経て、自身初となるフル・アルバム『I LOVE YOU TILL I DIE』を発表した。米パンクを牽引するインディー・レーベル、エピタフレコードの名盤『パンク・オー・ラマ』を目指したという今作は、パンク、オルタナ、ハードコア、シューゲイザーなどあらゆるジャンルを包括した、まさにオムニバス・アルバム的な作品だ。彼らのサウンドから溢れる強い熱量と衝動は、さよならパリスが2ピース・バンドであるということを忘れてしまうほどだ。OTOTOYではそんな2ピース・バンドの革命児、さよならパリスの初音源配信と併せて、ヴォーカル・村上へのインタヴューを掲載。一見、一聴の価値有りです。さらに、アルバムに収録されている「ワンダ・ウッドワード」を期間限定でフリー・ダウンロード!下記リンクからご利用ください。
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(期間 : 2016年8月18日〜8月31日)
さよならパリス / I LOVE YOU TILL I DIE
【Track List】
01. TEENAGE GOONiES
02. メリールウ
03. ラン・オクトーバー・ラン
04. パクチー・マニフェスト・メンヘラ
05. STAY/GOLD
06. 大人になんかならないでね
07. ダンス・アンド・シングアロング
08. SHOW me LOVE
09. INSIDE DEEPTHROAT
10. QUEEN OF ROCK'N'ROLL
11. バトルジャケット
12. STEP UP YOURSELF
13. A Fire Inside(AFI)
14. DEAR BOYS
15. ワンダ・ウッドワード
16. ノー・ノー・ノー
17. 豪徳寺の街に霧が降るのだ
18. かっとばせ!ロケットランチャー
19. SAY NOS
20. (Secret Track)LIVE FAST DIE YOUNG
【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
単曲 162円(税込) / アルバム 1,944円(税込)
さよならパリス / STAY/GOLDさよならパリス / STAY/GOLD
INTERVIEW : 村上友哉(さよならパリス)
「さよならパリス」のバンド名は、村上による弾き語りの"さよなら三角"と、北野が以前名乗っていた"パリス"の名前から由来するという。このバンドに流れる「2人である」という絶対的な基盤は、そのバンド名が象徴するように、互いのルーツや嗜好をそのまま引き継いで融合させたものだ。だからこのアルバムの持つ意味はどこまでも広くて深く、作品を通して縦横無尽に繰り広げられる楽曲の多様さは、リスナーを一向に飽きさせないエンターテイメント性を孕んでいる。
自由であるがゆえに終わりがなく、シンプルであるがゆえに困難に思われる2ピース・バンドの可能性を彼らがここまで引き出し得たのは、二人の持つもっとも純粋な音楽への愛情があったからだろう。CD世代なら誰もが経験したことのある、CDを開封する瞬間のワクワクする気持ちや、プレイヤーにCDをセットする時の緊張感。『I LOVE YOU TILL I DIE』はそんな懐かしいあの頃に戻ったような気持ちにさせてくれる。是非今作を聴く時はシャッフル再生ではなく、トラック順に一曲一曲聴いてほしい。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 岩澤春香
最小限の社会っていうか、そこで最大限を目指していく感じ。それって無限の可能性じゃないですか

──さよならパリスの結成から教えてもらってもいいでしょうか?
村上友哉(以下、村上) : 2011年ぐらいに弾き語りのイベントをやっていたんですけど、そこでバンドセットでやれる機会があったんです。昔、名古屋でパリさん(パリス北野)がTWOFOURってバンドをやっていたんですけど、その中でもひときわ彼の存在感が際立っていて。ハードコアのライブをたまに見に行った時とかもパリさんに会って、こういうのも聴くんだって思ったんですよね。それでこの人しかいないと思ってパリさんを誘ったんです。もともと僕は2ピースに憧れがあったんで。そしてパリさんも「2ピース?」ってならなかったんですよね。
──なるほど。2ピースに憧れていたのはなぜなんですか?
村上 : もともとお笑いとかも好きだし、単純にコンビっていうのがすごい好きなんですよ。最小限の社会っていうか、そこで最大限を目指していく感じっていうんですかね。それって無限の可能性じゃないですか。2ピースってなんかそんな感じがしたんですよね。NO AGE(注1)とかもそうですけど。でも最初は僕NO AGEを全然いいとは思わなくて、こんなん適当にやっているだけだろうみたいに思っていたんです。でも自分たちもNO AGEみたいな曲を作ろうと思ってやってみたんですけど、これはできないな、って思いましたね。Yeah Yeah Yeahs(注2)にも全く同じことを思ってたんですけどね。
注1 : NO AGE : アメリカ・ロサンゼルス出身の2ピース・バンド。その浮遊感のある独自のパンク・サウンドは、米ピッチフォークなど世界中の権威あるメディアから高い評価を得ている。
注2: Yeah Yeah Yeahs : アメリカ・ニューヨーク出身の3ピース・ロック・バンド。3rdアルバム『show your bones』はNME誌の年間ベスト・アルバムの第2位にも選ばれている。
──なるほど。NO AGE、Yeah Yeah Yehas、あと他に何か影響を受けたバンドはいますか?
村上 : あとJapandroids(注3)! それが1番、2ピースを本気でやろうと思わせてくれたバンドですね。やっぱり2ピースって打ち込み使ったりとか、ルーパーを使って音を重ねたりとかそういう感じになりがちなんですけど、Japandroidsは一切そういうものを使わないで革命的にかっこいいんですよ。ちゃんと2人だけでできるんです。
注3 : Japandroids : カナダ・バンクーバー出身のインディー・ロック・バンド。2009年に発表された1stアルバム『Post-Nothing』は地元カナダのみならず世界中から高い評価を受けた。
──(YouTubeを見ながら)かっこいいですね。
村上 : 2ピースってちょっと奇抜な楽曲が多くて、飛び道具的なバンドが多いんです。やっぱり皆そうなのかなあと思ってたんですけど、Japandroidsを聞いた時にまずメロディが良くて。2ピースなのにトラックの奇抜さだけに頼らずにやってる人がいるんだと思って、そこからいろいろ調べたんですよね。
──なるほど。でもNO AGEもそうだけど、パッと聴いただけじゃ2ピースってことが分からないじゃないですか。そんな中で村上さんが、2ピースはこういうところが面白いんだよって思うことって何ですか?
村上 : やっぱり自由さですかね。2ピースってお互いが適当なことをやっていても、ドラムが盛りあがったタイミングでギターも盛りあがれば曲になるんですよね。別にベースがいるわけじゃないからコードを合わせる必要もないし。2人だからめちゃくちゃ自由度高いんですよ。だから今回のアルバム『I LOVE YOU TILL I DIE』はいろんなジャンルの曲のアルバムになったのだと思います。
──本当にいろんなジャンルの曲がありますよね。その辺はやっぱり意識したんですか?
村上 : そうですね。今回2人の合言葉で『パンク・オー・ラマ』を作ろうっていうのがあって、そういうオムニバスみたいなCDを作りたいと思ってたんです。お互いの持ってる引き出しが、僕だったらポップ・パンクとか、マイブラみたいな空間系のやつも好きだし、パリさんだったらジャパコアとか、メタルみたいなのが好きなんで。
ただのリスナーとして音楽が好きっていうだけなんです
──でも3つもプロジェクト(※)をやるのってやっぱり大変なことじゃないですか? それでもパッとやっちゃうのは村上さんの性質なんですか?
※村上はバンド、明日、照らす、ソロのさよなら三角もやっている。
村上 : 単純に、リスナーとして音楽がすごい好きなんですよね。明日、照らすとかさよなら三角に関しては、自分の生活に根付いた音楽がやりたいっていう思いがあったんで、さよならパリスに関しては、リスナーとして音楽を好きだっていう部分がやりたいなっていう動機でしたね。
──明日、照らすに対しても、なかなか自由にできないっていう気持ちは出てきてはいる?
村上 : 自由にできないっていうか、やっぱりいきなりツービートみたいな曲をやり始めると、「どうした?」ってなると思うんですよ。でも普通に曲として好きなんです。自分で枠組みを作る必要はないんですけど、明日、照らすでは明日、照らすらしいことをやりたい。たまに明日、照らすのお客さんとかが見に来たりすると、「本当はこういうことがやりたかったんですね」って言われるんですけど、そういうわけでもない。ただのリスナーとして音楽が好きだっていうだけなんです。アイドルだって聴くし、ハードコアだって聴くし、ギターロックも聴く。それを、各プロジェクトで反映させたいっていう感じです。

──なるほど。今回のレコーディングはどれくらいの時間をかけてどういう風に録ったんですか?
村上 : 今池にHUCK FINNっていうライヴハウスがあって、今作はそこがやっているレーベルから出すんです。だからレコーディングもHUCK FINNでやりました。レコーデイングだけで半年かかりましたね。
──ええ!
村上 : そこからミックスで3ヶ月くらいかかったんですけど、誰も2ピースの録り方を教えてくれないんで、いろんな2ピースのバンドを聴き比べながら自分たちで考えるしかなかったんですよ。まずドラムと一緒に弾いて録って、その後僕が延々とギターを録り続ける。一曲につきベース、ギター、ギター、ギターっていう風に3、4回は弾いています。Japandroidsとかを聴いて思ったのは、フレーズごとに微妙に役割を変えてるんですよね。例えばギターAはコードを弾いてる、ギターBは3,2,1弦のところを強調して弾いてるみたいな。あとはサビでクリーンギターを重ねてキラキラ感を出したり、コーラスだけをかけたギターを頭から最後まで弾いて色を出したり。僕らもそうやってギターの役割をそれぞれわけて録っていきましたね。
──今回、ジャケットからもこだわりを感じます。ジャケットの写真のタレント七海ななさんとは、知り合いなんでしょうか?
村上 : いや、全然知らないです。僕が事務所に電話して説明しました。まあただ会いたくて呼んだだけなんですけどね。
──ですよね(笑)。このジャケットにはどんな意味が込められているんですか?
村上 : とにかく、革ジャン着てる女の人がすごい好きなんですよ。それだけですね。
──自己満足! でも七海ななさんにちゃんとギャラを払って御呼びしたんですよね?
村上 : だから最初は、アー写を七海ななさんにしようかってなったんですけど。
──絶対ダメです(笑)。
村上 : そうですよね(笑)。
──でも、このCDはブックレット等も超こだわっててかっこいいです。
村上 : 僕らCD世代なんですよ。だからCDでできる遊びをやろうと思って。例えばそれ(ケースの灰色の部分)を外したらちゃんと中が見えるようになってるとか。
──うわあ、ちゃんと裏も入れてる。
村上 : エンジニアの人に「ボーナストラックを入れたいです、10分ぐらい後から流れるやつ」みたいなことを言ったら、「そんなの今時やっている人いないよ?」って言われて(笑)。
──そうですよね(笑)。え、これ誰ですか?

村上 : これ僕が1番尖ってた時期にばあちゃんと撮った写真です(笑)。
──それ載せる必要ないでしょ(笑)。
村上 : いや、そういうとこです。もうCDが売れる売れないはいいから、だったらやっぱりおもちゃとして遊ばないとって思うんですよね。
──完全に遊んでますよね(笑)。これなんか誰が気づくんですか(笑)。
村上 : ブライアン・ジョーンズ解説。よく気づきましたね!そこ!
──最後の曲に出てくるブライアン・ジョーンズの解説をここに書いてるんですね。こういうところにこだわってる人、久々に見たなあ。
村上 : だってもうCDってどんどん簡素化されていくじゃないですか。だからせっかく買ってくれる人には、いろんな楽しみがあるといいなと思って。歌詞を読まないんだったら読んでもらうようなやつを作ろうって感じでしたね。
──このセンス最高ですよ。
村上 : それが伝わってくれるのが嬉しいです。
別にダメならダメでもいいんですよ。ただやりたいんですよね。好きだから。
──明日、照らすに比べて村上さんの持つそっち側が全部出ましたね。明日、照らすってこういう楽しみ方をするバンドじゃないですよね。どっちかっていえばシリアスなイメージがある。
村上 : そうですね。明日、照らすは何の寄り道もせずにちゃんと伝わって欲しい。さよならパリスはもう紆余曲折しまくってる。
──多分それが面白いんですよね。でも村上さんってちょっと変な人ですよね(笑)。
村上 : 人が作ってるものとか人がやってることがすごい好きなんですよ。ちょうど今日池袋にいたんで、トキワ荘に行ってきたんです。池袋って言ったらトキワ荘だ、みたいな。

──なかなか思わないと思うけど(笑)。
村上 : 今、トキワ荘の近くの商店街の人たちがスペースを作ってちょっとした展示をしているんですよ。トキワ荘に寺田ヒロオさんっていう漫画家がいたんですね。トキワ荘って赤塚不二夫、石ノ森章太郎とか藤子不二雄もいて、その中でやっぱりその寺さん(寺田ヒロオ)は全然フューチャーされてないんです。でもそこに行けば街の人からいろんな話が聞けて、ああそんな人だったんだって知れる。そういうのがめちゃくちゃ楽しいんですよね。
──ちなみにその寺田さんとは誰なんですか?
村上 : トキワ荘のリーダー的な人なんですよ。赤塚不二夫も藤子不二雄も、お金がなくてもう漫画家やめようってなった時、この寺さんに励まされてるんです。だから超重要人物なんですよ! 寺さん自身は結局、自分がこうなってほしいっていう理想の漫画界と現実が全然違う方にいっちゃって、いろいろ抵抗した末に辞めちゃうんですけどね。僕は、音楽とか映画も好きですけど、人が作ってるものとかその周りにいる人とかがすごい好きなんですよね。
──その村上さんのものを作る人が好きって気持ちと、自分が表現するっていう気持ちは、体の中でちゃんと分かれるものですか?
村上 : 多分、憧れだと思うんですよね。さよならパリスの曲も、僕もこういうギターが弾きたいとか、こういうことが歌いたいみたいなそういう想いがあるんですよね。でも気になりませんか? 自分が好きな人がどういう人だったのかな? とか。それが自分に反映されているのかは分からないですけど、好きな人のことを知りたいんですよね。
──今回のアルバムは村上さんなりの探究心があるから、薄っぺらくならないのかもしれないですね。
村上 : そう言ってもらえると嬉しいですね。やっぱりユーモアって最低限の知識が必要だと思うんで。
──本当にそうなんですよね。僕はそういう意味で、今回のアルバムはすごいかっこよかったなあと思ってて。さよならパリスはもちろんずっと続いていくんですよね?
村上 : そうだといいなとは思います。でもこうやって遊べるうちにいっぱい遊びたいなって思うんです。無理してやりたくないんですよ。楽器弾けるし、歌うの好きだし、その延長線上ではいたいです。そういうアイディアがあともう1枚アルバム作れるくらいはあるんですよね。でもそれが義務みたいになってくると、多分冷めちゃうと思うんですよ。
──さよならパリスは、村上さん的には明日、照らすに対してのサイドワークなんですか?
村上 : さよならパリスも明日、照らすもどっちもメインです。多分僕は、明日、照らすみたいな人間だけじゃないし、さよならパリスみたいな人間だけでもない。だから明日、照らすを続けるためにもさよならパリスみたいなことをやっていないと、またそういう真面目なこと言うの? ってなってくるし。かといって遊んでばっかりいても、それはそれで飽きてくると思うんですよ。
──その考え方は、おそらくパリスさんも同じですよね?
村上 : そうですねえ。パリスさんが以前「今までやってきたバンドで自分が好きなことを100%できているのかって言ったらやっぱりそうではない。でもパリスに関してはもう100%やる」って言ってて。それって多分、どう評価されてもいいと思ってるからだと思うんですよね。それは僕も同じで、別にダメならダメでもいいんですよ。ただやりたいんですよね。好きだから。
──でも覚悟は要りますよね?
村上 : それこそこれで笑う人なんて絶対少ないと思うんですよね。でもそれでいいんですよ。その人たちは多分、めちゃくちゃ愛してくれると思うし。そういう人に出会いたいですね。

LIVE INFORMATION
『I LOVE YOU TILL I DIE』レコ発TOUR
2016年9月11日(日)@岐阜 ants
2016年9月24日(土)@名古屋パルコ タワーレコード(インストア)※観覧無料
2016年9月25日(日)@新宿ディスクユニオン(インストア)※CD購入者限定
2016年10月16日(日)@今池HUCK FINN
2016年10月29日(土)@熊谷モルタルレコード2階
2016年10月30日(日)@新宿ACB HALL
2016年11月6日(日)@徳島CROWBER
2016年11月13日(日)@十三ファンダンゴ
2016年11月23日(水祝)@京都nano
2017年1月9日(月祝)@今池HUCK FINN(ファイナル)
PROFILE
さよならパリス
愛知県名古屋市千種区今池を中心に全国的な活動を行っている2ピースバンド。「カフェとかのイベントに呼ばれる様なオシャレなユニットがやりたい。」と明日、照らす・村上がSUPER USA!のドラマーである北野を誘い2010年春結成。バンド名の由来は村上が弾き語りの際に名乗っていた"さよなら三角"と北野がSUPER USA!の際に名乗っていた"パリス"の名義より。2013年LIVEHOUSE今池HUCK FINNの主宰するHUCK FINN RECORDSより第一弾アーティストとして1stシングル『HIGH ENERGY YOUNG AMERICAN』をリリース。当初の目的とは180度変わり、村上がギターをギターアンプとベースアンプに繋ぎベース音とギター音を同時に出す独特な奏法に加え、北野がメインの曲ではドラムを叩きながらただひたすらに叫ぶ「弾き語りMEETSハードコア」という新しいジャンルを確立し、各界から高評価を得る。今回のアルバムは「気分に合わせて音楽を聴くように、気分に合わせて音楽を作りたい。」というコンセプトから敢えてジャンルにこだわらず、パンク、ハードコア、ロック、オルタナ、ミクスチャー、シューゲイサーなど様々な楽曲にチャレンジし、総勢20曲というダイナミックな作品となっている。