
映像、照明、構成、全てが"ショー"として確立されたワンマン・ライヴの壮絶さに、その名前を急速に広めた叙情派轟音ダブ・ユニット、あらかじめ決められた恋人たちへ。前作以降、FUJI ROCK FESTIVAL、RISING SUN ROCKFESTIVALをはじめ、各地のフェスに出演し、"ライヴ・バンド"としての力をより強めた彼らが、2年3ヶ月ぶりにフル・アルバム『DOCUMENT』をリリースする。
"旅立ち"をコンセプトに構築されたこのアルバム。「カチャ」とドアを開ける音をはじ まりに、疾走感あふれる轟音、しかし温かみを感じる雄大なサウンドは、バンドが見てき た風景と訪れた変化の“DOCUMENT”であると同時に、影から光へと一歩を踏み出す人、踏み 出したいと願う人の“DOCUMENT”といえるだろう。
OTOTOYではHQD(24bit/44.1kHz)の高音質配信を行うとともに、2回に渡ってあら恋を追ってきた。前回はアルバムを前にリリースされた配信限定シングル「Fly feat. 吉野寿」を記念し、あら恋の16年間の歴史を紐解いた。そして今回、"いま"のあら恋に焦点を当てる。
>>前回の特集「あらかじめ決められた恋人たちへ、16年間の歴史」はこちらから<<
2年3ヶ月ぶりのフル・アルバムを高音質で配信!
あらかじめ決められた恋人たちへ / DOCUMENT
【配信価格】
(左)HQD(24bit/44.1kHz) 単曲 300円 / まとめ購入 2,000円
(右)mp3、WAVともに 単曲 250円 / まとめ購入 1,800円
【TrackList】
01. カナタ / 02. Res / 03. Conflict / 04. へヴン / 05. クロ / 06. テン / 07. days / 08. Fly
「DOCUMENT」 New Album Release Trailer「DOCUMENT」 New Album Release Trailer
eastern youthの吉野寿を迎えた配信限定シングル
あらかじめ決められた恋人たちへ / Fly feat. 吉野寿
【配信価格】
(左)HQD(24bit/44.1kHz) 300円
(右)mp3、WAVともに250円
【Track List】
01. Fly feat. 吉野寿
INTERVIEW : 池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)

あらかじめ決められた恋人たちへは、非常に音楽的なアルバムを創ったと思う。バンドとしてのグルーブを極限まで高めつつ、それをストーリーとして提示する。アニマル・コレクティヴを完璧なまでに消化した楽曲「Res」は、これから、大きく世界に羽ばたくだろう。2007年、上京と言う大きな決断をし、強い意志を持ってその後を歩み、そして至高のアルバムを創り上げた池永正二をリスペクトしている。
インタビュー&文 : 飯田仁一郎(Limited Express (has gone?))
初期衝動ぽいっちゅうか。なんかね、素直になってきたと思うよ。
――今回はアルバムについてと、現在のあら恋について焦点を当てていきたいと思います。池永くんの手応えとしては、今回つくってみて、まずどうでしたか?
池永 : バッチリ。
――いいっすね! 『CALLING』から『DOCUMENT』のあいだにどんな出会いがありましたか?
池永 : 『CALLING』出してから、フェスにたくさん出さしてもらって。やっぱりフェスは大きかったと思う。あんなにたくさんの人がいる前でやったことなかったから。山の前での演奏もはじめてだったし、なんか全部でかかったから。そうやって、体験したものが大きいと、曲も大きくなってくのかなあ…。子どももね、いろんな所に連れて行っていろんな人と接すれば接する程、みるみる成長するねん。悔しいくらい。僕らもう成長率低いからね(笑)。それと一緒で、ツアーを体験したり、フェスを経験したりで、やっぱり大きくなってると思うんですよ。
――バンドとして?
池永 : うん。やっぱりバンドでライヴしてるからね。

――具体的にはどんなところが大きくなったと思いますか? 言葉で表せる実感はあります?
池永 : なんやろな。……最近、以前のアルバムを聴き返してたんです。じゃあ、今回のが一番若かった(笑)。初期衝動ぽいっちゅうか。なんかね、素直になってきたと思うよ。昔って、人と別の事をしようと考えるが故に、堅苦しいものになってたかもしれないけど、それがなくなって、わかりやすくなったような気がする。
――素直になってきたっていうのは、池永くんとして、ってことですかね?
池永 : うん。メンバーはどう思ってるんかな? 「うまなりたい。」と思ってそう。特にキムとか。フェスで外タレのライヴみて「うまいなあ~…」って言ってたから。
――ミュージシャンになったんやね。
池永 : 気合いだけじゃ通用せえへんからね。もちろん気合いがないとあかんねんけど。
――曲作りはどうやってるんですか?
池永 : 僕が全部つくってる。「こんな曲できたー。」って言って渡して、スタジオ入って、固めて、ライヴでやって、あかん部分を練り直して。録音の前に、まずゲネでいろんなパターンを録るんよ。それを持って帰って、自分なりに編集して、ループさせたり、おもしろいフィルとかあったらはめていったり、いろいろ変えたりして。それをまたメンバーに渡して、スタジオ入って、固めて、ライブでやって、だいたい固まったら、本番録音して、それを持って帰って編集してアレンジして、それをミックスにまわしてマスタリング。

――壮大な行程! 池永くんのデモはシンプルなデモなの? メンバーがこう弾きたい、叩きたいっていえるような。
池永 : 違うよ。ほぼ出来上がってる状態。じゃないと一からみんなで作ってたら時間かかってしゃーないやん。シナリオ5人で書いてたらまとまんないよ(笑)。デモの段階でやりたい事がある程度まとまってないとメンバーには聴かさないし、それが提示できてないとみんなもやりづらいやろしね。そっからバンドでどこまで上げていけるかっていう。
――それをバンドで合わせたときは…。
池永 : 「あ、ちがうな」ってなったりするよ(笑)。そしたら変えていくしかないからね。頑張る! っていう。うちってスタジオに持っていった曲でボツはほとんどないの。あかん曲は僕の自宅段階で止まってる。なんかね、映画みたいな感じ。作曲って、つまりシナリオ書いて、メンバーに演奏、つまり演技してもらって、アレンジ、演出して、それを録音して編集して仕上げして、作品ができたら上映、つまりライブやね。
――監督なんやね、池永くんが。バンドによってはリハと録音しかないバンドもいるし、いやあー、これはすごい。シナリオの段階で想定したものは、録音に至るまでに、どのくらい変わるものなんですか?
池永 : ガラッと、全く変わるときもあるよ(笑)。変わらない曲もあるし。でも大概、なんかコラージュしていくから。そのままじゃなんか足らんねん… だから曲が伸びてくんよね。
出発の時点で不幸せなの。だから旅に出るの。「そっから一歩踏み出そう」って。
――だからバンドっぽくないんですよね。今回「アニマル・コレクティヴのような、開放感のあるサウンドを目指した」と言ってる曲もあるけど、今回は他にも影響受けたりしてますか?
池永 : あらゆるバンドから影響受けまくってますよ。バンドだけじゃなくってあらゆるもんから。アンテナが銹びちゃったらヤバいからね、僕らは。錆がカッコいい、なんやろ、例えばブルースとかじゃないから。ブルースとかになると強いねんけどね。ガッと型があって、憧れるわ。
――Buffalo Daughterの山本ムーグさんは「もう誰かのレコードを聴いて、影響されて作るんじゃなくて、自分の中にあるものを自然に出して、創っていこうと思った」って言ってて。
池永 : 音楽的なものって、今まで聴いてきたものが勝手に蓄積されていて、その抽き出しを、何かを聴いて影響された「ネタ」か、元から「自分の中に自然にあったもの」なのかっていうと、僕はどっちでも良くって。曲作るときにあけた抽き出しの中身は、自然にあったものなのか、影響されてあったものなのかとか、そういう経緯はあんまり気にしないです。
――池永くんは新しいものに刺激を得てる?
池永 : あえて新しいものを選んでるわけではないし、あえて古いものが好きなわけでもないし。正直、どっちでもいいんよね。その時代の空気吸ってたら、その時代の音になるわけで、それが新しいかは…、あんまり関係ないというか。新しいかどうかって考え方が90年代だと思うんですよ。なんかもう、新しい、新しくないで、判断してないでしょ。細分化されすぎてて、「ドラムンベース、きたー!」みたいな、ああいう感じやないし。あんま意識してないかもなあ、俺。
――プライマル・スクリームは毎回変わるじゃないですか。ニール・ヤングは毎アルバム変わってないけど、彼が言うには変わってる。
池永 : あははは(笑)。本人が変わってるっていうなら、それは変わってるって事やん。
――池永くんはどっちかっていうと、ニール・ヤング?
池永 : 俺はプライマル・スクリームのつもりでやってるけど、聴き返したらニール・ヤングっぽいよな(笑)。違うことやろうとしながら「案外…、一緒じゃん」って(笑)。
――でも時代のことは気にしてる人だよね?
池永 : 気にしてる。錆びたらあかんと思ってるから。
――だからすごく音楽も聴くんだろうし。あら恋でも気にしてることでしょ。具体的にどうするかって話ではない?
池永 : 日々のことやね。どこ行くにもヘッドフォンして聴いてるやん、音楽。そのなかで好きなものは取捨選択していくわけやんか。シャッフルで聴いてて、「は! これ!」って、ぱっとひっかかるのって、自分の感情にリンクしてるわけで。そういうのが積み重なってきて、吐き出されたものがこうやってアルバムになるんちゃうかな。
――なるほどなあ。今回のアルバムは「旅立ち」を掲げてますが、なぜ「旅立ち」なんでしょう?
池永 : 聴き直したら「旅立ち」っぽかったんよね。つくってるときも色々あって。アートワークを手掛けてくれてるSHOHEIくんも外国行くし、照明も子ども生まれたとかさ。うちらの歳になると亡くなる人も多いから。「旅立ち」って良い意味じゃないことの方が多いやん。「いい日旅立ち」だって、「幸せを探しに」だからね。出発の時点で不幸せなの。だから旅に出るの。「そっから一歩踏み出そう」って。
――5年前は、池永くんが大阪から東京へ「旅立ち」をしたわけじゃないですか。今回の「旅立ち」は誰かにむけてって感じ?
池永 : なんか社会全体の雰囲気が「旅立ち」な感じやんか。良くも悪くも。両面に向けて。
僕は結局踊りの音楽が好きなんよ。
――今回から自主レーベルKI-NO Sound Recordsなんよね。レーベル立ち上げたのはなんで?
池永 : 正直に言うと、流れやんなあ。挑戦してみたいっていうのはもちろんあったけど、実際動くところまではいかなかった。なんかしようと思ってもできへんときって、そういうタイミングじゃないと思うんよ。だから今回サラッと動けてるのは、そういうタイミングに来てるって事なんちゃうかな。
――タイミングがきたっていうのはあるにしても、レーベルは「やりたい」って思ってたの?
池永 : 思ってた。
――それは単純な実入りの問題なのか、自分で責任をとりたかったのか。
池永 : 根本に戻ったら、自分でつくった自信のある音源もって、プレゼンして回るのって、普通のことやん。やっぱ1番売りたい! って思ってるの自分たちやからね。全部自分のせいになるし。

――池永くんはちゃんと覚悟があるよね。
池永 : どんだけお金かけるかも自分で決められるからね。「ブックレット20P付けたい!」って思っても、結局自分でお金を出すわけやから。20Pの金額分、自分で売らないとダメだから。わかりやすくて良いよ。
――でもメンバー間の色々もあるわけじゃないですか?
池永 : あ、それは知らない!(笑) うちらは音楽するために集まってるわけやから。しんどそうだったら、「大丈夫?」とは思うけど。うちは最終的に出す音がええ音であれば、なにしてもらってもいいんで。劔もなんやかんやいろいろやってるみたいやしね。
――僕は今回、全然ダブっぽくないと思ったんだけど、池永くんとしてはどうですか?
池永 : 音楽って全部踊りやと思ってて。ダブはその踊りの部分が強調されたジャンルで。だから、なんでうちがダブかっていうと、踊りを重視してるからなんよ。他のポスト・ロック、例えばゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー、モグワイとかとは、そこが根本的に違う。僕らは絶対、ドラムとベースで躍っているから。だから8分でノイズが来た時の爆発のベクトルが違う。いや、最終は一緒なんだけど、過程が違うんか? どっちでもいいか。とにかく躍りたい。
――池永くんがつくってるから、基本的にそこを超重視してるんですね。
池永 : 僕は結局踊りの音楽が好きなんよ。
――踊りが好きになったのは、どこでなんですか?
池永 : THE BOOMの「星のラブレター」とか、KUWATA BANDの「MERRY X’MAS IN SUMMER」とか。小学校のとき、はじめてハマったバンドがKUWATA BANDやって。「MERRY X’MAS IN SUMMER」って。タイトルもまたいいでしょ〜。いま聴いてみたら、レゲエの曲やって、「めっちゃいい! あら恋やん! 」って(笑)。なんかびっくりして。「星のラブレター」も、踊れるリズムで、ラブレター何回も書き直したって歌詞で、「あら恋やわ! 」って。
――それをロックっぽく聴かせるのがすばらしいよね。音楽をわかってる人じゃないと、その感じはわからないじゃないですか。だからあら恋をロック・バンドととらえてる人も多いと思いますよ。
池永 : 多いやろうね。でも、例えば「Back」って曲にしたって、Aメロは裏打ちの鍵盤でベースがうねってたり、爆発後も踊りを止めないようなラインで作ってる。それってレゲエの踊りから来てる部分だよ。
――最後に、配信シングルとは異なる、アルバム最後の曲、「Fly」について訊いておきたいんですけど、「Fly」は、”エンディング・ロール”?
池永 : 僕はエンディング・ロールとか、タイトル出しがすごい好きで。映画で、タイトル出えへんよなって思ったら、いちばん最後にドーンって出てくるのとかすごい素敵で、グッてくる。ゾクゾクってしたい。だからそんな感じのエンディング・ロールにしたかったなあ。
―−僕は自分が主催しているBOROFESTAで、毎回エンディング・ロールを作ってるんですよ。2曲で作るんだけど、最初に激しいのを入れて、次にメロウなのを持ってく。それはエンディング・ロールで、ぐっと人の気持ちに波を立てて動かしたいから。だから、「Fly」が”エンディング・ロール”って言われたときにすごく共感して。エンディング・ロールは波をつくらなきゃいけないんですよね。
池永 : 本編は「Days」で終了、みたいなね。
――そうそう。では最後に、今後はどうしたいですか?
池永 : DUBがしたい。しっかり踏みしめて躍れるDUB。あと、なんちゃかんちゃしたいな。
――なにしたいかを考える時期なのかね?
池永 : うん。アルバムで出し尽くしたから、今は空っぽで。だからいろんな事を入れやすい時期なんかな。ソロも作りたいし、いろいろしたい。ツアーしたらまたそこから別の風景が見えてくるやろしね。繰り返し繰り返し。まずはレコ発ツアーやね。頑張ってくるわ!
LIVE INFORMATION
"Dubbing 0" あらかじめ決められた恋人たちへ Release TOUR 2013 [LIVE DOCUMENT]
2013年9月22日(日)@京都メトロ w/LAGITAGIDA
2013年11月1日(金)@梅田Shangri-La(ワンマン)
2013年11月2日(土)@名古屋CLUBUPSET(ワンマン)
2013年11月9日(土)@代官山UNIT(ワンマン)
2013年11月16日(土)@天神graf w/LAGITAGIDA、チーナ、百蚊、Hearsayrs
2013年11月23日(土)@YEBISU YA PRO(all night)
KI-NO Sound × levitation presents
あらかじめ決められた恋人たちへ & LAGITAGIDA W Release Live
2013年9月22日(日)@京都メトロ
MINAMI WHEEL 2013
2013年10月12日(土)、13日(日)、14日(月・祝)@大阪 ミナミエリア ライブハウスなど
STARS ON 13
2013年10月13日(日)@岡山 美星町 中世夢が原
PROFILE
あらかじめ決められた恋人たちへ
池永正二(鍵盤ハーモニカ、track) / kuritez(テルミン、Per、鍵盤ハーモニカ) / 劔樹人(Ba.)/ キム(Dr.) / 石本聡(DUB P.A.) / 宋基文(P.A.) / 松野絵理(照明) / etc…
1997年、池永正二によるソロ・ユニットとしてスタート。叙情的でアーバンなエレクトロ・ダブ・サウンドを確立し、池永自身が勤めていた難波ベアーズをはじめとするライブハウスのほか、カフェ、ギャラリーなどで積極的にライブを重ねる。2003年には『釘』(OZディスク)、2005年には『ブレ』(キャラウェイレコード)をリリース。このころからリミックス提供や映画 / 劇中音楽の制作、客演などが増加。2008年、拠点を東京に移すと、バンド編成でのライヴ活動を強化。そのライブ・パフォーマンスと、同年11月の3rdアルバム『カラ』(mao)がインディー・シーンに衝撃を与える。2009年にはライヴ・レコーディングした音源を編集したフェイクメンタリー・アルバム『ラッシュ』(mao)を発売。2011年、満を持してバンド・レコーディング作『CALLING』をPOP GROUPからリリース。叙情派轟音ダブバンドとしてその名を一気に知らしめ、FUJI ROCK FESTIVAL、RISING SUN ROCKFESTIVAL、朝霧JAM等、大型フェスの常連となっている。2012年、2曲30分からなるコンセプト・ミニ・アルバム「今日」を発表。それに伴う恵比寿リキッドルーム公演から始まるワンマン・ツアーも大盛況に終わる。
またPVにおいても、柴田剛監督による「back」や、17分に及ぶ「翌日」等、話題を集めており「踊って泣ける」孤高のバンドとして独自の道を切り開いている。