「Indoor Newtown Collective」を理解し、アルバムという形にした
──ここまで今作に収録されている楽曲を時系列で聞いてきましたけど、さらに今作は新曲6曲が加わっていますね。
四方:まず第一に、「YAJICO GIRLのベスト盤を作ります。」というわけじゃなくて、コンセプチュアルで作品性の高いアルバムにしたいのが、自分のなかではいちばんのこだわりとしてあって。「いままでの曲を見て、足りていない部分を新曲に盛り込んだらどうだろう?」とか「こういうことを歌えば、いままでの曲がうまいこと繋がっていくんじゃないか?」とか。そういうことを考えながら作ってきましたね。
──"alone"は驚きました。終始弾き語りで進んでいくし、これまで生活の一部分を切り取ったような歌詞を歌っていた四方さんが、この曲では心情を生々しく描いていて。
四方:振り返ると"FIVE"がすごく大事な曲だったなと思うんですよね。ファースト・フル・アルバム『Indoor Newtown Collective』を作るにあたり、「この5人でYAJICO GIRLを作ってきたんだ」というのが大きなテーマになっているから、"FIVE"でいい響き方をさせたかったです。そのために作ったのが"alone"。ひとりの孤独感を描くことで、"FIVE"でギャップが生まれるんじゃないか、という意図がありました。
──新しい試みとしては、吉見さんと武志さんのふたりがはじめて作曲された"忘れさせて"も注目ですね。
吉見:武志が「曲を作りたい」と言っていたのと、僕は僕でディレクターさんから「曲を作ってみたら?」と言われて、ちょうどタイミングが重なったんだよね。
武志:そうだね。冒頭の話にも出ましたけど、四方と吉見はアイドルがすごい好きなんですよ。でも、そういう音楽を聴いてるのに、YAJICO GIRLではせんねんな、と個人的に思っていて。前に、四方も「楽曲提供の機会があったらいいのに」とぽろっと言ったことがあって。じゃあYAJICO GIRLにアイドルの楽曲提供のオファーが来たら……という仮定で曲を作りはじめたんです。それで最初に僕がメロディとコードを作って、そこに吉見が肉付けをしてくれて。「じゃあ、この先はどうしようか?」とオンラインでやり取りしたよね。
吉見:だけど、すぐに行き詰まってね(笑)。「オンラインでは無理や」となって、直接会ってめちゃくちゃ話し合いをしましたね。大きなポイントとなったのは楽曲のテーマ。「四方がやらないことをしたい」と決めて、そこから物事が進みはじめましたね。で、僕と武志がはじめての作曲というのもあり、 四方にアドバイスもらおうと、随時途中経過を聴いてもらって、客観的な意見をもらいながら形にしていきました。
四方:自分で曲を組み立ていくと、客観的に聴けなくなるんですよ。ちょっとこうしただけで、完成まで行きそうやのに!って段階でも「これなしかもな!」みたいな(笑)。だから吉見と武志に「良い曲やで! こうしたらもっとよくなるんちゃう?」とちょこちょこ提案しましたね。
──新しい作曲方法を取り入れたことで、バンド自体の可能性が広がった感じがしますよね。
吉見:ほんまにそうで、新しい要素が生まれたなと思ってます。アルバム全体を見ても、ちゃんとしたバラード曲がこの位置にあってよかったなって。結構、自己肯定感上がりましたね(笑)。
──ギターが印象的ですよね。サイケでありファンクも感じられて。
吉見:まさに、その要素は入れたいなと思っていて。なかでもサウス・ロンドンの音楽は自分のなかにずっとあるんです。"忘れさせて"を作って行く過程で、AメロとBメロはブラックミュージックで、サビはポップスという綺麗な対比をひとつの推しにしたいと。そう考えた時に、ブラックな部分に自分がよく聴くサウス・ロンドンのバイブス感を入れたらとおもしろいと思って詰め込みましたね。
──そして"流浪"ですよ。このアルバムのなかで、このリード曲が飛び抜けて開けてる印象があって。
四方:最初から、リード曲にするつもりで作った記憶があります。他にもリード曲の候補はあったんですけど、会議の場でみんなが「これがいいんじゃない?」と言ったのが"流浪"で。「この曲でアルバムを売っていくんだ」という狙いはあったから、そのエネルギーをちゃんと込められた曲ですね。
──以前からそうだったと思いますけど、よりYAJICO GIRLが大衆に向けて勝負しようとする気概を感じました。
四方:そうなんですよ。それこそ"流浪"を作ることになって、いままで以上に聴いてくれる人を広げたいし、オーバーグラウンドな響かせ方をしたいのがあって。あと、最初の段階でディレクターさんから「アレンジャーとして辻村有記さんにお願いするのはどう?」と提案されたんですよね。もちろんお名前は知ってたし、ちゃんとYAJICO GIRLのやり方に合わせてもらえそうだったので「是非一緒にやりたいです」とお願いしました。言葉ではそこまで話し合いはしていないんですけど、お互いにデータ上でやりとりをして。辻村さんがこういう音にしてきたら、僕からも提案をして、そういう音のキャッチボールをしながらイメージを固めていきました。
吉見:四方が言ったように、アルバムの集大成的なリード曲になると決まっていたので、自分もギターの集大成を入れたいなと思って。それこそCメロには『インドア』のアンビエント要素も入れました。それと『アウトドア』って『インドア』のアンビエンドから脱却して、リズム要素が入ってきたんですけど、そういった物も入れたかった。あと、絶対に欠落させたくなかったのは"いえろう"の要素。あの曲でやっていたロック時代のフレーズは、イントロに分かりやすく入れてみて。そうやって、いままで自分が弾いてきたギターの全要素を入れたのが"流浪"ですね。
武志:逆に、僕はこの曲のベースが難しくて。いつもだったら、ビートがそんなに入ってるわけじゃないので、ベースにもフレーズを足す余白があるんですけど、この曲は余白を見つけてベースでなにかするのがすごい難しくて。『インドア』のようなブラックなベースラインよりは、ロングな方が合うのかなと思って。その点ですごくチャレンジングというか、新しいことに挑んだ曲ですね。
四方:それこそ"流浪"もそうやし、"休暇"も今作のコンセプトとしては大事な曲になったなと思いますね。『Indoor Newtown Collective』というワードを『インドア』のタイミングでつけたけど、その時は自分達の特性を含めて、「こういうのがIndoor Newtown Collectiveなんだ」という確固たるものがないまま、言葉だけが先行していて。ここ数年は、それを探しに行ってる旅だったと思うんですよね。それがようやく自分たちも、共通の感覚として理解できるようになった。それを形にしたのがこのアルバムだと思うし、"休暇"はそれを象徴する1曲なので、おすすめです。
吉見:作品全体で言うと、曲順が完璧なので。ぜひ1曲目から聴いてほしいですね。あと、初回生産限定盤にはCDだけじゃなくて66Pのアートブック「Indoor Newtown Magazine」もついてくるので、こちらもチェックしてください!
編集:梶野有希
既存12曲+新録6曲を収録した初のフル・アルバム!
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ライブ情報
■ヤジヤジしようぜ!vol.7.5〜アルバムリリース感謝祭〜
日付:2023年3月30日(木)
場所:新代田FEVER
時間;開場 18:00/ 開演 18:30
※アルバム購入者限定イベント
■ヤジヤジしようぜ!vol.8(東名阪ワンマン)
<大阪>
日付;2023年5月13日(土)
場所:江坂MUSE
時間:OPEN 17:30 / START 18:00
<愛知>
日付:2023年5月21日(日)
場所:3STAR IMAIKE
時間:OPEN 17:30 / START 18:00
<東京>
日付:2023年5月28日(日)
場所:代官山UNIT
時間:OPEN 17:15 / START 18:00
■チケット:https://eplus.jp/sf/detail/3035200001?P6=001&P1=0402&P59=1
PROFILE : YAJICO GIRL
5人編成で自身の活動スタンスを「Indoor Newtown Collective」と表現する。2016年「未確認フェスティバル」「MASH FIGHT」など様々なオーディションでグランプリを受賞。活動拠点を地元・大阪から東京に移し、音源制作・MusicVideoの撮影から編集・その他ほとんどのクリエイティブをセルフプロデュースし、活動の幅を勢力的に拡げている。
■公式ホームページ:https://www.yajicogirl.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/YAJICOGIRL