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INTERVIEW:Seukol
いま、目の前で鳴っているような楽器の臨場感がありながら、一方で意識が遠のくような非現実的なサイケでリアも纏った音像、そして凄まじくゆっくりしたBPM。そこにクセのない声質で若干の厭世感を含んだ歌が聴こえてくる。少なくとも最近の日本でほぼ耳にしたことのない音楽の実相を立ち上げたバンド、それがSeukolだ。普通に街で見かけそうな青年たちは、仕事を持ちながら、バンドで作る音楽を妥協なきレベルに昇華する。結成の背景も、いま受けている影響のどれもが新鮮で、彼らの音楽の根源的な秘密に少し触れられたように思う。
インタヴュー・文:石角友香
写真:山川哲矢
くるりみたいなバンドもやりたかった
──このバンドの言い出しっぺは誰なんですか?
廣松直人(Gt)(以下、廣松):それは僕です。2020年の6月ぐらいに声をかけました。当初、4月から社会人になるっていうタイミングで、普通に就職してバンド・サークルとかもうやめてっていう状態だったんですけど、コロナの期間でろくに会社の研修とかも受けられず、自宅にずっといてくださいみたいな指示が出て。家で音楽とか映画とか聴いたり観たりしてるなかで、普通に就職していいんだろうか?みたいになって。で、バンドを結成して有名になってフジロックに出るとか、今後思い立っても多分できないよな、20代のうちにやりたいなと思ってバンドを組もうと思いました。で、サークルはロックというよりはブラック・ミュージックとかをやるサークルに入ってたんですけど、そこに所属してる人のなかでもロックに興味があるというか、気が合いそうだったベースの倉橋くんをまず誘って、倉橋くんが他のメンバーを集めてくれたという経緯になります。
──まさにこのコロナ禍入社世代の実感ですね。
廣松:そうなんです。良くも悪くもあれがきっかけでバンドが組めたので。たぶんそのまま就職したら、研修もあって会社の人とも仲良くなって、半ば強制的、洗脳的に社会人になったんでしょうけど。ある意味空白の期間というか、自分のことについて考える時間が設けられてしまったので、これは後悔するだろうなと思い立って組みました。
──おふたりはいかがでした?
倉橋由吏(Ba)(以下、倉橋):僕は休学してて。年齢はその廣松と高野より一個上なんですけど、浪人とか休学とか色々してたせいもあって、いま、新卒1年目です。もともと大学院に行こうとして色々考えてたんですけど、まあバンドやるとしても働くっていうのは絶対に決めてたんで、あんまり心配はなかったですね。
高野寛太(Gt/Vo)(以下、高野):僕は当時大学4年で、就活してるタイミングでしたね。ちょうどコロナで就活をしていた第一世代というか、当たり前に「まあ落ちないだろうな」みたいなエントリーシートを書いて出しても落ちちゃったりして。コロナですごい選択肢が狭まってるなみたいな。そもそも就活っていう、学生から社会人という形に固定されるなかで、さらにその選択肢が狭まっているなみたいなことを感じている時期でした。
──Seukolを結成する以前の大学時代からお互いの好みは知ってたんですか?
廣松:僕が由吏に声をかけたのは彼がくるりってバンドがすごい好きでっていうので、僕も好きだったんで、何回か話したことがあって。最初に声をかけるなら、くるりみたいなバンドもやりたかったしっていうので、由吏に声をかけました。
倉橋:くるりみたいなバンドって、めちゃくちゃ意味わかんないけどね(笑)。
──廣松さんはくるりのどういうところがやりたいこととイメージが合ったんですか?
廣松:僕はロックが好きでギターをはじめて。で、高校生の終わりくらいからブラック・ミュージックも聴いて、大学ではジャズもかじってるっていう感じで音楽をやっていたなかで、いろんな音楽ジャンルを落とし込めるバンドというか組織がいいなと思って。で、それでいながらも歌メロとか歌詞を敏感に聴いているので、そういうのも重きを置いたいろんな音楽性をやれてるバンドっていう風に想像してたんですね。すごい安直なんですけども、くるりってアルバムごとに色が違うし、しっかり意識を持ってアルバムを作っているなあっていう風に思ってたので、そのイメージを共通言語として話せる人を誘ったっていう感じです。
倉橋:最初になにかリファレンスを出しあおうっていう話をして。例えば4ピースのバンドでやれるんだったらこれぐらいかなっていうのは自分のなかにはありましたね。でも僕は廣松とはくるりに対して感じていることの見解が違う。僕は正直、くるりは歌詞は別に聴かなくていいっていうか、多分岸田さんってあんまり歌詞に対して執着がないというか、別に言葉に意味をそんなに持たせようとしてないっていう見解なんです。そこが僕は結構好きで、自分が作りたいものを作ってるっていうところがいちばん出てるバンドっていうのが僕の考えでした。実際やるんだったら僕もそういうバンドにしようと思ってたので、その辺までやれたらいいねみたいなニュアンスの話をしたんじゃないかな。
──高野さんのルーツは?
高野:好きな音楽としてはストロークスとかリバティーンズとかホワイト・ストライプスとかあの辺のR&Rリバイバル・バンドはずっと好きで聴いてて。で、そういう曲をやっていたりするなかで、ミツメとかシャムキャッツとか昆虫キッズとか日本のインディーズ・バンドも聴くようになって。ギター&ヴォーカルなんで、そんなにヴォーカルに対して思い入れみたいなものがあって過ごしてきたわけではなかったです。
廣松:高野の歌は誘われる前は聴いたことなかったんですけど、カラオケ的なヴォーカリストじゃないなっていうのは思って。それは音程があってるとかそういう話じゃなくて、歌声を誇示していく歌い方をしていないから。いろんな音楽をちゃんと好きで、ヴォーカルやってる人ってバンド・サークルにはなかなかいないよなっていうふうに思ったんで、そこは高野の良さだと思います。