2024/03/13 18:00

REVIEWS : 074 ベースミュージック、テクノ (2024年3月)──草鹿立

“REVIEWS”は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回はオトトイ・アルバイト・スタッフで、東京アンダーグラウンドのクラブ・シーンにてDJとしても活動・回遊している草鹿立がテクノ~ベース・ミュージックのシングルをお届け。現場直送の最新のダンスサウンドをぜひ。


OTOTOY REVIEWS 074
『ベースミュージック、テクノ (2024年3月)』
文 : 草鹿立

Sub Basics『Offshore EP』

LABEL:Modern Hypnosis

信頼印の〈Modern Hypnosis〉、ニュー・リリースはブリストルのSub Basics作。凍てつくムードに身も引き締まるディープ・ブロークン・テクノのA1や、地中深くから響くようなサブ・ベースが4/4のキックの秩序のもとにひたすらループされたA2もなかなかに秀逸だが、浮遊感のあるダブに、パーカッシヴ・サウンドが加わる呪術的グルーヴの“T441”が個人的にドストライクで、まんまとズブズブ入沼してしまった。このトラックに関しては、後述のAl WoottonのA1とも、アプローチは違えど近いところを攻めている印象。〈Scrub A Dub〉や〈Innamind Recordings〉などからリリース経験もあるTracesとの共作“Lucid”も、メリハリのついた展開で確実に体を揺らしてくる。フロア直結でありつつもきめ細やかにサウンド設計がなされていて、十分な音環境であえてゆったりと聴きたい作品。

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FLVXXX Feat. A-Tweed『Murdah / Chant』

LABEL:Local Knowledge

ロンドンとメルボルンに拠点を構えるレーベルの〈Local Knowledge〉から、Millia、Will Hofbauerに続いて、イタリアのFLVXXXとA-Tweedが登場。Roy MillsとIssa & DJ Mumがオーナーの〈Local Knowledge〉は、もともと新進気鋭のアーティストを紹介するラジオ番組だった経緯をもつ。そのためか、毎度のリリースに新鮮さがあり面白い。A面“Murdah”はブレイクビーツが時折顔を覗かせながら、最後は一気に畳み掛けるかと思わせておいて結局いききらずに終わるという焦らし展開。同レーベルからのRoy Millsのトラックにも、ハーフステップの上にウワモノだけで捲し立てるようなトラックがあったので、おそらく彼の好きなパターンなのだろう。一方、B面“Chant”は、BPM98をキープしながら低空飛行し続ける対照的なトラックに。

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Kin Teal『Ecosystem』

LABEL:Human Pitch

Tristan ArpとSimiseaの〈Human Pitch〉に、ブダペスト拠点のKin Tealが登場。Salamandaを彷彿とさせるような、オーガニックなパーカッションと声ネタを音色の一部に仕立てあげる遊び心が最高の“Capsule”や、みずみずしいブロークン・ビートにこれまたヴォーカル・サンプルが飛び交う“Elastiwater”など、レフトフィールド・ベース〜ダウンテンポ4トラックを展開。〈Human Pitch〉のカタログの中では比較的フロアを意識し、しっかり機能性も兼ね備えた作品であり、このバランス感覚は〈Livity Sound〉、特にTwo Shellや少し前のToma Kamiあたりとも接続できる部分もあるのではとふと思う。そう考えると、〈Livity Sound〉の偉大さを改めて実感せざるを得ないのだが、それはまたいつかの機会に。

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