趣味でなんの見返りもなく音楽を作ってる人ってマジで美しいんですよ
──楽曲の制作の裏側まで見せちゃうっていうのはおもしろいですね。月蝕會議室では、実際に今回リリースされた『月蝕會議2019・2020年度議事録』に収録されている楽曲やMVなども作られています。このオンライン・サロンを作られたきっかけはどういうところからだったんですか?
タクヤ : 実は結成の1年後くらいから、僕らだけじゃなくていろんな人を巻き込んでやれたりしたらおもしろいよねって企画自体はあったんですよね。
エンドウ. : 去年からコロナ禍になって、みんなが家にいてオンラインのエンタメを欲している時期だったから、「このタイミングでやった方が良くない?」ってことで形にしたんですよね。
タクヤ : 懐が深いメンバーたちなので、一般の方のプレイも取り入れちゃおうっていう好奇心とか、まだ完成してない自分のデモも聞かせちゃおうってところが一致して。
エンドウ. : キャリアを経るごとに僕らもゆるゆるになってきたんでね、そういうのを隠さなくなってきた。もう、ぜーんぶ見せちゃう! 見せまくり!
Billy : 自分がDTMをはじめた頃を思い返すと、プロの制作途中のデータとかどうなってるんだろうってすごく気になっていたんですよ。実際、見せてもらうと結構トラック数多いんだなとか、音数少なく聞こえるけど、レイヤーは結構入れてるんだってすごく感動したんですよね。もしかしたら自分が見せる側になれるんじゃないかっていう、ワクワクもありました。
──サロンのメンバーの方から刺激を受けることもあったりしますか?
エンドウ. : ありますねえ! サロンのメンバーが出してきたメロディで曲を作ったことがあるんですけど、独創的だなあって感じますし。
タクヤ : 趣味で音楽を投稿してる人もいて、職業作家になった自分にはなくなった発想を思い出すというか。こんだけ音楽で仕事してたら、今日は月が綺麗だからこのことについて書こうってなかなかならないんですよ(笑)。だから、そういう人たちの活動ををみていると、純粋な音楽活動って美しいなって思ったりしてます。
エンドウ. : 趣味でなんの見返りもなく音楽を作ってる人ってマジで美しいんですよ。僕らもはじめた頃は、そうだったはずなのに(笑)。オンライン・サロンのおかげで初心を取り戻しました。
──今回のアルバムには、月蝕會議室から生まれた“眞夜中サロン”、“シュワーガール”、“ムーンステーション”も収録されています。これらはどういう流れで作られたんですか?
エンドウ. : まず、せっかくサロンがはじまったから、楽曲をなにか作ろうということになって、そこでできたのが“眞夜中サロン”ですね。最初にみんなでオンライン上で会議して、僕がトラックの設計図をつくる、Billyさんがフルコーラスの構成や展開を考える、タクヤさんが3パターンぐらいメロを出して、アレンジやブラッシュアップを鳥男がやって、というのをやりつつ。同時進行でオンライン・サロンのメンバーから、みんなから単語とか入れたい言葉をバーッと集めて、それを岩田アッチュが歌詞としてまとめて。さらに、声とか楽器の音を応募して送ってもらって、そんな風に音回りは作りましたね。曲ができたあと、MVもサロンのみんなが全部作ってくれたんですけど、僕らも「どこどこのシーンで使うのでメンバーさんも写真撮って送ってください」って言われて(笑)。
──みなさんもサロンのメンバーの一員でもあるんですね。
エンドウ. : そうなんです。僕らも対等に。
──そうやってバラバラに作られた楽曲ではあるんですけど、楽曲には、統一感がしっかりありますよね。
タクヤ : そうなんですよ。世界観はあるんですよね。
──月蝕會議として、大事にしたい軸のようなものはあったりするんですか?
エンドウ. : ちょっとダークで毒っ気がありつつ、バンド・サウンドもありつつぐらいが月蝕っぽいのかなと思っています。でも、全く大事にはしていないですね(笑)。全然無視してますし、気にしていないというか。そこは、もともと職業でいろいろ楽曲提供しているっていう部分もあるので柔軟にやっています。
──“シュワーガール”はどのようにして作られたんですか?
エンドウ. : “シュワーガール”も、オンライン・サロンのみんなと楽曲の制作会議から進めました。いろんな意見をくれたなかで、YOASOBIとか、ずっと真夜中でいいのに。みたいなものを、月蝕で取り組んだらどうなるんだろうかって話して。サロンのなかでもYOASOBIや、ずとまよ。がすごく好きな人もいれば、全然知らない人もいるんですよね。僕もそんなに詳しくはなかったですし。そこで「どこをどうやるとこういうのっぽいんだろうね」とか、みんなで研究したりしましたね。
──“ムーンステーション”はどうですか?
エンドウ. : “ムーンステーション”は、90分間で単体のメロディから即興で曲を作るみたいな配信番組をやったときにできたものですね。メロディをオンライン・サロンのみんなから募集して、くじ引きで決まったテーマにそって作ったらK-POPみたいな曲になったんですよ。それで、後日「あの曲をお蔵入りするのはもったいない!」って、バンド・サウンドに作り直したんです。
Billy : 作家として提供するんじゃなくて、僕たちのサウンドとしてのバンド・サウンドっていうのが、今回のアルバムに入れられたっていうのは、ひとつ想いを遂げられたのかなと思います。
──9曲目に収録されている“Ne音テトラ”も、月蝕會議室で手掛けられたんですよね。
エンドウ. : “Ne音テトラ”は、 東京ビジュアルアーツっていう専門学校に出張してみんなで授業したときに、その生徒さんと僕らでチームを作って曲を作ったんです。「優勝したチームの曲は、チームの生徒さんたちの名前もクレジットに入れてアルバムとしてリリースします」っていうのをお約束していたので、今回入れました。
タクヤ : みんなで「いい曲だね、これは優勝だよ」って話してね。
──ヴォーカルには声優の野津山幸宏さんが参加されています。これはどういう流れで決まったんですか?
エンドウ. : 原曲は女声と男声のツイン・ヴォーカルだったんですよね。うちには、キリンっていう女声ヴォーカルがいるけど、男声はどうしようってなったときに、誰かとフィーチャリングできないかなっていう話をしてて。いろいろと探してたら、ヒプマイで有栖川帝統役をやっていてラップも歌唱できるから野津山くんがやれそうだという話になって、お願いしました。
タクヤ : いざはまったら、ベストマッチだったよね。もっといろんな曲を歌ってほしいですね。