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2023/10/16 19:30

 

ウエスギ専務、“「ブギウギ専務」の原点”『母校への道 小学校編』を語る

 

北海道発STVの人気バラエティ「ブギウギ専務」DVD18弾が2023年9月27日(水)に発売された。今回のDVDに収録されているのは、初期「ブギウギ専務」の名物企画であり、現在に繋がる番組のイメージを決定づけた伝説の放浪ミッション『母校への道 小学校編』。本編・特典映像共に、過酷&突飛な映像の連続で同情したり爆笑したり、感情が振り回されること間違いなしの内容となっている。発売にあたり、今回もウエスギ専務こと上杉周大(THE TON-UP MOTORS)に恒例のインタビューを敢行して、2009年の放送当時を振り返ってもらった。

――前作まで『ブギウギ奥の細道』のDVDが続いて出ていましたけど、今回収録されている『母校への道 小学校編』は2009年放送ということもあり、新しい「ブギウギ専務」ファンの中には初見の方も多いのではないかと思います。まず、『母校への道』とはなんぞや、ということを教えてください。

『母校への道』は、本当に「ブギウギ専務」のいわばロケの原点みたいな企画です。趣旨としては、自分が卒業した母校である札幌市立新琴似(しんことに)南小学校を目指して、道行く人に卒業した出身小学校を聞いて、出た答えが道しるべになり日本中を旅するっていう、シンプルに言うと「地獄」です(笑)。「ブギウギ専務」って、結構体を張ってるイメージを持っている視聴者の方が多いと思うんですが、そのきっかけになった最初の企画、いわゆる「ブギウギ専務」の型を作ったと言っても過言じゃない企画だと思います。

――なるほど。確かに見てるうちに、これは「ブギウギ専務」だなって納得するというか。

そうなんですよ。まだ使われてる方ではあるんですけど、当然めちゃくちゃ移動時間がかかってるんです。放送ではその様子をつまんでつまんで、到着した場所で「さあ、というわけで」ってやってますけど、その間に4時間、5時間の移動も当たり前にあって。当時はそういう企画をまだやっていなかったので、急に番組がとんでもない方向に行っちゃったなって思いながらやってたの覚えてますね。

――放送が2009年ですからもう14年前ですけど、記憶としてはリアルに覚えてるところも多かったですか?

覚えてますね。その情景とか、「母校への道」で初めて行ったところが多かったので。今回収録されている内容で具体的に言うと、「わくちん係長」が途中で離脱してなかなか声を掛けられないウエスギ専務みたいな描写があったと思うんですけども、当時は番組の知名度も今ほどはなかったので、いきなり人に声をかけるっていうことにすごく緊張していて。自分でもDVDを見ながら、初々しいというかもうやきもきするというか、「いけよ!」って思いながら見てました。

――今は声をかけると大体「知ってます」とか「見てます」という声が多いですもんね。

ありがたいことにそうなんですよ。あと、今はもう「いきなり声をかけたら驚かれるだろうな」とかっていう感情が完全に麻痺してますね(笑)。日常的に生活して知らない人にいきなり声をかけるってないじゃないですか?だからこの「母校への道 小学校」で、いろんな意味で自分も鍛えられたっていう感じがしますね。

――当時はあのスパンコールの衣装もまだ浸透してなかったわけですよね。

今でも胸張ってますけど、当時はご覧の通り見た目なんで。あんなやつが夜いきなり話しかけてきたら嫌だろうなって(笑)。

――最初に今作のジャケットを拝見したときに、「なんて恐ろしい表情をしてるんだ」って正直たじろいでしまいました(笑)。

爬虫類っぽい顔してますよね。DVDの発売が決まるたびに迷わずリツイート、今でいうリポストをするんですけど、今回に関してはあんまりリポストしたくなかったです。まあ胸を張ってますけど(笑)。特典映像で当時のいかだ下りでも振り返って言ってるんですけど、「芸風が変わらないな」って感じはありますね。悪く言えば成長してないなっていうか(笑)。

――良く言えば完成されていたというか(笑)。今回は、先ほど名前も出ました「わくちん係長」が本編・特典映像共に登場するわけですけども、わくちん係長とはどんな存在なのか教えてもらえますか。

今で言うところのおおち係長の前任で、初期の「ブギウギ専務」を支えたのがわくちん係長なんです。横井健一さんという元々STVのアナウンサーさんで、いわば大地さんと大きな違いは芸人さんじゃないので、自ら体を張って笑いを作るとかしなくていい立場なんです。その分ピュアというか、ちょっとしんどいこととかがあったら普通にカメラの前とかで感情を露わにして泣いたり悔しがったりする、熱い生き方してるなっていう人です(笑)。芸人さんってリアクションが上手なところもあるとは思うんですけど、そうじゃない分、よりも生々しく、「こいつは本当につらそうだな」みたいな様子を笑える存在というか。それでいて人間としてはとても優しい方だし素敵な方なので、愛らしい憎めない存在って感じですね。

――ところで、「わくちん係長」という名前の由来はどこから来ているんですか?

これはですね、番組が始まった当初2007年7月頃にSTVの方で月曜日から金曜日までの平日の深夜帯でいわゆる「枠」を作って新番組を立ち上げるって試みがあったんですよ。おそらく、その「枠」とテレビを見てる人に元気を与えるという意味の「ワクチン」をかけていたんだと思うんですけど、「わくちん」と総称して、「月曜わくちん」~「木曜わくちん」まで番組の枠があったんです。そのマスコットキャラクターで「わくちん」っていうあのキャラクターがいたんですが、そのキャラクターが初めて擬人化して出てきたのが「わくちん係長」だったんですよ。その後、「わくちん」という枠自体がなくなって、他のいろんな番組がある中で、結果的に別に見てる人に元気を与えるっていうタイプの番組じゃない「ブギウギ専務」だけが残って、わくちんが係長になるっていう不思議な現象が起きたんですよ(笑)。

――いやいや、十分元気を与えていると思いますけども。当時のSTVの試みを「ブギウギ専務」が継承して、ウエスギ係長が後のおおち係長と秘書のアナウンサーさんと共に番組を続けてきたんですね。

これは大地さんもいろんなとこで言ってると思うんですけども、わくちん係長がいなくなっておおち係長が入るってなったときに、結構世の中の声としてはわくちん係長が去ったっていう「わくちんロス」の方が強くて、そこから一新するのに大地さんはかなり苦労したらしいんです。それぐらい、わくちん係長の存在が強かったんですよ。今回、特典映像も「わくちんスペシャル」みたいな感じですけど、わくちん係長は関西出身で会話のテンポも良くてすごく面白い方なので、一部の人にはすごく刺さるんじゃないかなって思います。

――特典映像のいかだ下りでいかだがぶっ壊れたときは、本当に腹がよじれるほど爆笑しました。

全身ピンクのコスチュームを着た人が、大声で「おっぱいー!おっぱいー!」って言ってるのって、わりとキモいじゃないすか?(笑)。でもあの人は自分の一部だと思っちゃうぐらいガチなんですよね。ウケを取りに行ってるわけじゃないんですよ。そういうところが、わくちん係長の素敵なところだなって思います。

――本編では厚岸の牡蠣が出てきたとか、今回登場するところを後々『ブギウギ奥の細道』で訪ねたりということも結構あるんですよね?

その後何度も行くことになる場所がありますね。今回見て思ったんですけど、めっちゃ南の方に飛ばされたときに登別を引いて、「登別ってことは札幌に近づきましたよね?」って岸さん(当時番組ディレクター兼プロデューサーを務めていたSTVの岸弘氏)に問い掛けてるシーンがあって、当時の僕ってそんなこともわかんないんだなっていうぐらい、地理がわかってないんですよ。結果それから何年も「ブギウギ専務」や自分もバンドのツアーで回ることで土地勘をつけてくんですけど、当時はまだ何にもわかってないんだなって思いました。

――視聴者側も、北海道の地理に詳しくない人は「ああ、そうなんだ」と思って見てると思うんですけど、今のウエスギ専務が見ると、「いや、全然遠いよ!」みたいなところもあるわけですか。

そうです。「全然ピンと来てねえな、こいつ」って、我ながら思いました。それこそ栃木にいたときに静岡を引いて、「(北海道に)近づいた!」みたいなことを言ってるシーンがあるんですけど、そんなこともわかってないんだなっていう。

――それはさすがに思いました(笑)。

ですよね(笑)。

――今回のDVDでも、いろんな場所で出会いがあって面白いですね。途中で出会った方が次に行く土地の町長の「娘さん」だったり。

それで会いに行って、いなかったらいなかったで何か起きたりとかするもんですけど、別に何も起きないで終わるっていうのが「ブギウギ専務」の強みというか(笑)。「これ全国ネットの番組じゃそんなの絶対許されないだろうな」っていう感じの生々しさというか、ゆるさっていうのはありますよね。普通、事前にアポ取りとかするものなのかもしれないですけど、そこはもう本当に台本なしですから。八雲町っていう道南の街にいるときも、僕が車の中からホテルに電話して予約を取っているんですけど、「これ当たり前のように受け入れてるの、おかしくないか?」って思いながら見てました。

――ガラケーを使っていたり、随所で時代の変化を感じる映像もあります。

いやそうなんですよ。学校の校舎を見たときに、今だと例えば「雰囲気ありますね」っていう言葉を選ぶんですけど、普通に「すげえ古いっすね」って思ったことをそのまま言ってるんですよ(笑)。別にそれが問題だとは思わないんですけど、なんかそういうのを見てて面白いなと思います。当時「母校への道」を見て、「ブギウギ専務」を知ったという人もいますから、すごく大切な企画です。

――このDVDを見て、今放送してる「ブギウギ専務」をリアルタイムで見てみようっていう人もいると思うので、本放送の今の見どころを教えてもらえますか。

最近ずっとやってるのが、「ブギウギサイクリング倶楽部」という自転車のロケです。北海道の十勝地方に「トカプチ400」というサイクリング推奨コースがあって、山とか峠とかめちゃくちゃあるんです。そこをおおち係長と2人乗りの「タンデム自転車」っていう、わかりやすく言うとドロンボー一味(「タイムボカンシリーズに登場する3人組」)が乗ってたような自転車に乗って、完走を目指すっていう企画です。要は、体当たりのロケなので、結局やってることは変わらないですね(笑)。

――ロケでヒグマに遭遇したということをニュースで見て驚きました。

僕らはロケで山にお邪魔してるような状態なんで、常に「いつか出会うかも」とは思いながらも、実際、あんな目の前にバッと出てきたときにはもう、動けなかったですね。サイズ感的には、軽トラックが飛び出してきたんじゃないかっていう感覚でした。クマよけのスプレーや鈴も常時携帯しているので、声を出してクマよけのスプレーを構えながら車に避難しました。それをきっかけに、技術部のスタッフさんも含めて専門家の方に実際話聞きに行ったりして、どこでロケをやっても出会う可能性があるんだなってことも学びましたし、改めて危機管理的な意識を持つきっかけになりました。

――本当に、みなさんご無事で何よりでした。ここからは上杉周大としての活動についてお訊きします。ライヴの予定はありますか?

11月30日 (木) 下北沢CLUB Que〈ふたりのビッグショー〉で、今回はSCOOBIE DOのベーシスト・ナガイケジョーさんとツーマンライヴをやります。SCOOBIE DOはTHE TON-UP MOTORSの頃にお世話になったりしたので、今回ナガイケさんと〈ふたりのビッグショー〉という形で共演できることをとても楽しみにしています。それと、年末に舞台に出演するんですよ。僕が前から好きだったんですけど、カルト的人気がある昔のアニメ「チャージマン研!」を舞台化した、『Live-Musical-Stage「チャージマン研!」2023』という作品に、地球を征服する宇宙人役で出演します。今年は年越しで地球を征服しますので(笑)。

――めちゃくちゃ面白そう(笑)。では最後に改めてファンの方にひと言お願いします。

「ブギウギ専務」DVD18弾『母校への道 小学校編』ということで、『ブギウギ奥の細道』という一大企画がひとまず幕を下ろして、このDVDでまた新しいスタートが切れていることを大変嬉しく思っております。この企画は「ブギウギ専務」の道行く人に声をかけるとか、この先どうなるかわからないっていう過酷ロケスタイルの原点であり、これが始まりだと思っておりますし、ここから「「ブギウギ専務」ってこういう番組だよね」というものが形作られて行ったのではないだろうかなと勝手に思っております。当時のことを知ってる人は懐かしんでいただきつつ、知らなかった人は、あなたの母校に行く可能性もありますし、いろんな思いを馳せていただければと。特に道外に仕事で行ったりしているような人は、ひょっとしたらノスタルジックな気持ちにもなれるかもしれないし、なれないかもしれないので(笑)、是非ご覧ください。よろしくお願いします」

取材・文:岡本貴之

[ニュース] SCOOBIE DO, THE TON-UP MOTORS, 「チャージマン研!」オリジナルサウンドトラック, 上杉周大

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