──ゴンチチのお二人のリスニング体験って、どんなところから始まっているんですか?

ゴンザレス三上 : 僕は子供の頃、伯父さんが同居していたことがあって、音楽が好きな人で、一体型のステレオ持っていたんですよ。その伯父さんが粋なジャジーな音楽やムード音楽をいつも聞いてて、それが自分の部屋じゃないところから聞こえていた。それに影響を受けましたね。そういうどっかで鳴っている感じってのが、今でも好きなんですよ。

チチ松村 : うちは母親がクラシックが好きで、それがレコードで流れてましたね。高校の時に、自分のオーディオ・セットを買ってもらって、スピーカーも結構、大きい奴で、良い音だなあって思いましたね、それで聞くようになって。当時はオープン・リールのテープ・レコーダーでFMから録音したりもしてました。
ゴンザレス三上 : 今はPCで作業しながら、聞いてることがほとんどで、一ヶ月に一度くらい、バーンって音出して聞きますけれど。
チチ松村 : 僕は今でもアナログ盤を中古で買ったりして、聞いてますね。あと、最近、iPod買いまして、それで聞いてます。大阪からの新幹線移動が多いんで。
ゴンザレス三上 : 松村さんはホント、ずっと聞いてたりするな、移動中。

──今回、リリースしたのは今年3月にライヴ・レコーディングした音源ということですが、HQDのファイルの音とCDの音との違いが凄く良く分かりますね。

ゴンザレス三上 : 違いますね。最初は事務所の方から、やってみないかという話があったんですが、その時は正直、ええ? 配信? と思っていたんですよ。でも、このコンサートはノンPAでやったんですけれど、そこで演奏していた時に聞こえていた感じと凄く近い聞こえ方をしている。松村さんの音も聞こえていて、空気感というか、アンビエンスも物凄く細かく表現されていて。
チチ松村 : 本当にそうですね。
ゴンザレス三上 : 驚いたのは、PCに付いている小さなスピーカーで聞いても、その高音質な感じが分かるんですよね。

──じゃあ、これからも、こういう高音質の音源を作っていこうという気持ちになりました?

ゴンザレス三上 : 特にライヴ録音については、出来るだけ高いクォリティーで録った方がいいんだと実感しましたね。そういえば、良い音といえば、NHKでFM番組を持つようになってから、NHKにあるモニター・スピーカーが良い音で、それにもちょっとショックを受けたんですよ。大きな台の上に載った古いスピーカーでNHKに行くと、どこのスタジオにもあるんですけれど。
チチ松村 : 音質云々じゃなくて、音楽が鳴っているという感じがするんですよね。
ゴンザレス三上 : そう、だから媒体の問題もあると思うんですけれ,ど、CDを聞くのでもこんなに違うものもあるんだなあ、と思ったり。これから音楽作っていく上では、そういう良い音にもっと近づけていきたいとは思いますね。

──パイオニアのPDX-Z10はHQDのファイルを再生するのにはうってつけですし、CDもSACDも聞けるし、アナログ・プレイヤーも繋げられるレシーバーなんです。

チチ松村 : えっ、アナログも繋がるんですか?
ゴンザレス三上 : これ、形も良いですね、シンプルで、でも、機能はすごく多くて。
チチ松村 : スタジオにあったらいいね、これ。

──ゴンチチのスタジオはどんな感じなんですか?

ゴンザレス三上 : 東京の駒沢にゴンチチ・ハウスと呼んでいる一軒家を借りてまして、そこにスタジオを作って、ここ何作かはそこでレコーディングしているんです。音が良いんですよ、マスタリング・エンジニアのグレッグ・カルビが驚いていたくらいで、たぶん、配線がシンプルだからだと思いますが。これから年内にレコーディングに入って、来年の春くらいには新しいアルバムをと思っています。


インタヴュー/構成 高橋健太郎
写真 水口幸治


1953年生まれのゴンザレス三上と、1954年生まれのチチ松村によるアコースティック・ギター・デュオ。1978年に大阪で結成、1983年にデビュー。着実な活動を重ね、「Very Special Ordinary Music」(直訳すると「とても特別な普通の音楽」)と評されるインストゥルメンタル・ミュージックを奏で続けてきた。現在までに30作を越えるオリジナル・アルバムを発表。手掛けた映画音楽やCM音楽なども数多い。チチ松村はエッセイなどの執筆活動でも、ゴンザレス三上もCGやグラフィック・デザインでも知られる。2008年には、30周年記念アルバム「VSOD -very special ordinary days-」をリリースした。