─サラームさんのリスニング体験って、どんなところから始まっているんですか?

両親がクラシック好きだったんですけれど、いつも小さい音で聞いてたんですよ。大きい音で聞く経験というのは、小学校5年生の時の担任の先生が、でっかいスピーカーを教室に持ってきて、昼休みにクラシックをかけたんです。今思えば、隣の教室にもがんがん聞こえてたと思うんですけれど。それが最初のハイファイ体験ですね。その先生は自分の本とレコードとかを教室に持ってきていて。

─面白い先生だったんですね。

そうですね、僕はその先生が好きで、自宅へ遊びに行ったりして、いろいろ聞かせてもらった。卒業してからも、レコード店へ行くと、偶然会ったりして、「一枚買ったげるよ」って買ってもらったり。自分のお小遣いではロックのレコードを買って、まあ、普通の80年代育ちの音楽体験をしていたと思うんですけれど、その先生のおかげでグレゴリオ聖歌とか、クラシックの中でも国民楽派のものとか、そういうのを聞くことができた。

─それが、後のエキゾ趣味に繋がった?

それはありますね。あと、僕の育った群馬県の高崎市は古墳とかがすごくあって、家の回りを散歩してても異界に繋がるような場所があるんですよ。そういう自分のいる場所と、友達が普通に聞いているような音楽がフィットしないなって思ってたんじゃないですかね。それよりも違う時代とか違う国の音楽に惹かれた。

─自分で最初に買ったステレオは?

当時よくあったモジュラー・ステレオだったんですけれど、そういえば、このパイオニアのPDX-Z10を使ってみて、一台に全部入っている、モジュラー・ステレオみたいだと思いましたね。でも、50W×2でもパワーはすごくありますね。都会だったらもう十分で、うちだとデジタルのヴォリュームが15くらいで聞いている。日本ではなかなか20以上には上げられないんじゃないですか? でも、インドへ行くと、みんなヴォリュームをフルにして聞くんですよ。インド人はオンかオフしかないから。

─PDX-Z10のサウンドはどうでしたか?

今っぽい音ですね。デジタル・アンプだからかな、アンビエンスがきれいに広がる。タイム・ドメインのスピーカーなんかとも似ている、新しい感じがありますね。あと、データで聞くと音が良いですね。圧縮音源もサウンド・リトレイバーという機能を使うとかなり良くなるし、圧縮していないWAVをUSBメモリーから再生したのは本当に良かったですね。CDって、どうしても回転音があるじゃないですか。アナログ盤の針音は音楽の一部って思えるけれど、CDの回転音はノイズでしかないので、それがないのは良いですね。これからはメモリーになっていくんじゃないですかね、良い音を聞こうと思ったら。

─世界各国の面白い音楽を探すのには、当然、インターネットを活用していますよね。

そうですね。国によってはすでにCDよりも配信が主という国もありますし。モロッコとか、トルコとか、完全にそうですね。あとインドものなんかもほとんど配信で買えるので、僕はアルバムで欲しい時はCDで買いますけれど、DJで1曲だけかけたいというような時は、曲単位で配信で買っています。

─PDX-Z10は世界各国のネット・ラジオのチューナーにもなります。

ええ、試しました。でも、僕は普段からitunesでネット・ラジオを聞いているんですよ。それをBlue ToothでPDX-Z10に飛ばせるんで、そうやって聞いています。ネット・ラジオは局によって、音質も内容もいろいろなんで探すのは大変ですけれど、凄い情報量が得られますよね。マニアックなジャンルの専門局を一週間も聞いていたら、そのジャンルが一応俯瞰できますから。


インタヴュー / 構成 高橋健太郎
写真 丹下仁

1967年2月12日生。群馬県高崎市出身。音楽ソフト販売店、フランス留学、2年半のバック・パック旅行、インディーズ系レコード会社やクラブ運営会社勤務を経て、日本で唯一の「よろずエキゾ風物ライター」に。「エキゾ」とは「ココでないドコか」。そんな何処かへ連れて行ってくれる音楽や料理や風物を求めてあっちこっちにフラフラと。伝統音楽とエレクトロニック音楽の出会いをキーワードに、中近東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンをフィールド・ワークし続ける。最近はラジオやクラブのDJ、講演会、仏語や英語の翻訳、中東料理のスーパー・バイザー等、人生そのものが「よろずエキゾ」。