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2014/03/24 12:00

 

〈ピエールナイト〉でBiSがピエール中野を誘惑!? TOSHI登場や豪華セッションも――OTOTOYライヴ・レポート

 

凛として時雨のドラマー・ピエール中野主催のイベント〈ピエールナイト〉が、3月21日に開催された。これまではLIQUIDROOM ebisuや梅田Shangri-Laなどで行われていた〈ピエールナイト〉が、今年は一気に規模を拡大し、東京・Zepp DiverCityで開催。出演者も、DJやバンド、アイドルなど、より一層幅広いアクトが揃い、まさかのゲスト登場や豪華メンバーによるセッションなど、盛りだくさんな内容となった。

会場に入って驚いたのは、お客さんが着ているTシャツの種類の豊富さ。よく目についたのはBiSのTシャツくらいで、ほかは偏ることなくさまざまなTシャツの人が混在している。凛として時雨のTシャツを着た人も思ったほど多くはなく、ほかの邦楽ロック系のバンドやでんぱ組.incなどのアイドル、夏フェスなど、いろんな種類のTシャツを着た人が見受けられた。それだけ、さまざまな趣味趣向を持った人に対して訴求力のあるイベントだということだろう。

〈ピエールナイト〉ではお馴染みの前田博章のDJに続いて、ピエール中野の開会宣言が行われ、1番目のライヴ・アクト、企画「古都の夕べ」(進行方向別通行区分田中・くそネジ(真部))がメイン・ステージであるA STAGEに登場。この日はバンド編成での出演となった彼らは、進行方向別通行区分を彷彿させるタイトな演奏に、シュールな歌詞やパフォーマンス、意味のわからないMCがくわわり、独自の世界観を築きあげる。演奏を途中でやめ突然ステージを走り去ったかと思うと、なに食わぬ顔で戻り演奏再開するなど、自由すぎるパフォーマンスに客席は少々置いてけぼり気味に。それでも、後半に疾走感のある曲をノン・ストップで連発すると、客席は体を揺らして彼らのサウンドに身をあずけた。

メイン・ステージの幕が閉まると、すかさず客席の後方に設けられたB STAGEに、黒いミニ・スカートにニーソックス、赤い靴と尻尾を身につけたアイドル・いずこねこが登場。待ちわびたファンが歓声をあげ、「オイオイ」コールと手拍子で迎える。「nostalgie el」から曲がはじまると、客席も一体となっての「にゃん! にゃん!」コールへ。「ピエールナイト、もっともっと盛りあがっていきましょう!」と客席をあおると、いずこねこは所狭しとステージを駆け回り、ファンも全力でライヴ盛りあげる。そんな姿に感化されたのか、客席からあがる手の数はどんどん増えていった。

再びライヴはA STAGEヘ。無造作なアコギの音が響くと、幕が閉まったまま大森靖子の歌声が聴こえる。そのまま「あたし天使の堪忍袋」がはじまり、客席は早くも合唱。それを聴いて大森はうれしそうに「最高! ありがとう!!」と笑いながら応える。どうやらこれは、ギターのリハーサルのようだ。とはいえ、そのまま「最終公演」「夏果て」と、挨拶代わりと言わんばかりに2曲演奏するサービスっぷり。幕が開き、いよいよ大森靖子&THE ピンクトカレフのライヴがはじまる。ステージには暴れまわる高野(Gt)と大内(B)、魂を削るがごとく演奏する小森(Gt)と川畑(Dr)が。そして黒い衣装で統一された4人のバンド・メンバーの中心で、ピンクに黒が入ったドレスを着た大森の姿がひときわ眩しく輝いていた。「hayatochiri」からはじまった演奏は、すぐさまテンション全開。大森の歌は次々と表情を変え、それに共鳴するかのように演奏も情感豊かに変化する。「はい、これが大森靖子です! こんばんは」という誇らしげな挨拶を挟み、大森はまるで魔法少女のようにマイク・スタンドにまたがりながら「絶対彼女」を歌う。ラストの「歌謡曲」のエンディングでは、大森がギタリストふたりを順に指差すと、高野のギター・ソロから小森の壮絶なノイズへと繋がり、場内は絶頂へと導かれる。音の洪水のなかで大森はキーボードを抱きかかえ、高野は何度もギターを宙に投げると、彼らのライヴは終了した。

続いては、B STAGEでのDJみそしるとMCごはんのライヴへ。さきほどのすべてを更地に返すかのようなピンクトカレフのステージから一転、ゆったりとした調子でラップする。ステージにはテーブルが用意され、その上にはコンロとウクレレが置かれている。「お料理の作り方を歌っていきます。DJみそしるとごはんです」と自己紹介し、軽快でかわいらしい「ブリ大根」がはじまると、客席は踊りながら暖かい声援をステージに贈る。その後も、CMと称して曲をかけながらお茶を飲んだり、「最近はまってる」というウクレレを弾きながら即興で歌を披露したりと、最後までマイ・ペースにライヴは進行した。

客席下手に用意されたDJブースに今日の主催、ピエール中野が登場。DJがはじまるのかと思いきや、「みなさん、Xは好きですか!? 今日はまさかのスペシャル・ゲストがきています」という思わせぶりな前振り。登場したのは、X JAPANのTOSHI風のメイクをほどこした謎の男、TOSHI(所沢)だ。TOSHIが有無を言わさぬ勢いで「X」を披露すると、サビでは場内一斉にXジャンプ。続いて、「同じ時代に、同じような痛みを持った…(中略)…同じような孤独を持った仲間が、ひとつの音楽を通して出会いました」という、本家TOSHIのX JAPAN〈THE LAST LIVE〜最後の夜〜〉での感動的なMCを完コピ。その後「FOREVER LOVE」がはじまるも、ここで彼のステージは終了した。

MAN WITH A MISSION「FLY AGAIN」が爆音で鳴り響くと、ピエール中野のDJタイムへ。客席は、待ってましたとばかりに体を揺らして手をあげる。ピエール中野は「今日は精一杯、TOKIOのサマソニ出演をお祝いしましょう!」と何度も絶叫し、唐突にTOKIOを祝福。そして、the telephones、マキシマム ザ ホルモンなど、邦楽ロックの人気ナンバーを次々にかけると、場内はダンス・フロアと化した。最後は、凛として時雨のライヴでもたびたび披露している嵐の「A・RA・SHI」で生歌を聴かせ、客席を大いに沸かせた。

ピエール中野による「めちゃくちゃ観たかったんだよね」という紹介を受け、CASCADEが登場。「行きますよ」というTAMA(Vo)の言葉を合図に「コングラッチェ」から演奏がはじまる。その後も、ピンク色の照明のなかで艶かしく歌いあげた「Sexy Sexy,」や、客席が一斉に手を振った「YELLOW YELLOW FIRE」など、活動休止前の代表曲を惜しげもなく連発。「ここから縦ノリのナンバー行くけどついてこれるかな!?」と客席をあおりコール・アンド・レスポンスで体を温めると、最新アルバム『Jam-packed Jam』収録のひときわ激しいナンバー「バーバリアン」へ。そのままラストの「しゃかりきマセラー」まで勢いを緩めずに駆け抜けた。

CASCADEの余韻に浸る間もなく、ピエール中野が在籍する下ネタ・ヒップホップ・ユニット、玉筋クールJ太郎が登場。いきなり「手に入れるぜビッグ・マネー、ビッグ・チンポ」と叫びながら場内を扇動すると、終始突き抜けたテンションで放送禁止用語満載のコール・アンド・レスポンスや、セクシャルなエア・プレイの数々を披露。一部の客は大盛り上がり。その後も、彼らのライヴでは外せない定番曲「お前のメコスジ高速道路」や、作りたての新曲という「タマスジキングダム」など、タイトルだけでため息が漏れてきそうな曲を連発。メインMCのタマキン・スカイウォーカーが突然「精子でちゃった」と真顔で言い出したときはどうなるかと思ったが、無事に演奏を終え、最後に「これからは俺たちの時代だ! ピース!」と高らかに宣言して帰っていった。

これまでの〈ピエールナイト〉では、さきほどの玉筋クールJ太郎がトリを務めることが多かった。それはきっと、あの空気のあとにライヴをやれるものが、誰もいなかったからなのではないだろうか。しかしこの日は、そんな心配も無用の破天荒アイドル・BiSが控えているのだ。ステージの幕が開きBiSが姿を現すと、待ちわびた研究員たちは狂喜乱舞。1曲目の「STUPiG」から早くもクラウド・サーファーが登場。高いテンションを維持したままライヴは進むが、最後のMCで事故が発生する。プー・ルイがふと「解散するのに、まだ誰もバンドマンと付き合えてないね」と口にしたかと思うと、DJブースでライヴを観ていたピエール中野に向かって「つながってください!」といきなり懇願。困惑するピエール中野に対し、BiSのメンバーが次々とアプローチし、必至に食らいついていく。微妙な空気が蔓延しているのを察知したのか、プー・ルイが「いまは照れてると思うので続きは楽屋で」と強引に話を締めると、最後の曲「nerve」をエモーショナルに熱演。個性的すぎるBiSの世界を客席に観せつけた。

上がりきったテンションの放出先を失った研究員の絶叫がこだまするなか、再び前田のDJがはじまる。Dragon Ashやavengers in sci-fiなど、アップ・テンポなキラー・チューンを連発。最後のアクト、カオティック・スピードキングの登場を前に、場内の熱気を上昇させた。

ステージの中央に後ろ向きに置かれたドラム・セットに、ピエール中野が客席に背を向けて座る。着用しているSIAM SHADEのTシャツに書かれた「東北魂」という文字が存在感を放っている。まずはピエール中野、takuto (Gt / about tess)、井澤惇(B / LITE)の3人のレギュラー・メンバーによるセッション。そこにサイプレス上野がくわわり、フリー・スタイルのラップを乗せる。上野と入れ替わりで大喜多崇規(Dr / Nothing's Carved In Stone、FULLARMOR)が登場。さらに、ミト(B / clammbon)、中尾憲太郎(B / Crypt City)という強力なリズム隊がくわわる。途切れることなくセッションは続き、岩崎太整(Key)、後藤まりこ(Gt)も登場。そして最後にHISASHI(Gt / GLAY)が、ひときわ強烈なオーラを放ちながら颯爽とステージに現れると、ピエール中野の背中に駆け寄りがっちりと握手。続けてギターをストロークすると、演奏のテンションは一気に上昇し、照明も激しく点滅。会場はまさにカオティックな空間へと化していく。最後は再び上野も合流してステージを盛り上げる。思い思いの演奏が一体となり、凄まじいグルーヴが場内を包み込むと、セッションはフィナーレを迎えた。ピエール中野は、やりきったと言わんばかりにスティックを放り投げ、クールにステージを去った。

これですべてのタイム・テーブルが終わりかと思いきや、最後にもう一度、前田のDJが。すぐに演奏を終えたばかりのピエール中野もくわわり、GLAYの「彼女の“Modern…”」に合わせて楽しそうにエア・ドラムを披露するなど、リラックスした様子をみせる。そして、「またやるので絶対に遊びに来てください!」と再会を誓うと、最後はみんなで一本締め。「俺がBiSに絡まれた以外はばっちり! ありがとうございました!」と言い残し、6時間を軽く超えた濃すぎるイベントは終幕した。

長丁場のイベントながら、濃厚すぎる出演者と複数のステージを交互に使った進行により、あっというまに時は過ぎ去った。それでいて会場の出入りが自由という、うれしい配慮もあった。ライヴは本当にどれも素晴らしいものであったが、やはり豪華メンバーでのカオティック・スピードキングのセッションは想像を絶するものだった。あれを生で体感できたことは、いち音楽ファンとしてこの上ない幸せである。また、多くのロック・ファンに、アイドルやサブカル寄りのシーンで活動してきたアーティストを紹介したという点でも、大きな意義があったように思う。会場の規模などを考えても、〈ピエールナイト〉としてのひとつの完成形を観たように感じた。しかし、ピエール中野はきっと、また想像を超える景色を観せてくれるに違いない。次なる展開が楽しみなイベントである。(前田将博)

Photo 西槇太一

〈ピエールナイト〉
2014年3月21日(金)Zepp DiverCity

<セットリスト>
■企画「古都の夕べ」(進行方向別通行区分田中・くそネジ(真部))
非公開

■いずこねこ
1. nostalgie el
2. BluE
3. last cat factory
4. e.c.i.n

■大森靖子&THE ピンクトカレフ
1. hayatochiri
2. あまい
3. 背中のジッパー
4. Over The Party
5. 新宿
6. ミッドナイト清純異性交遊
7. 絶対彼女
8. 歌謡曲

■DJみそしるとMCごはん
1. ピーマンの肉詰め
2. ブリ大根
3. カレー(CM)
4. おまんじゅう
5. BLANCO_1
6. PIZZA
7. SHIMOKITAZAWA YoiYoi CRUISING

■CASCADE
1. コングラッチェ
2. パーティフルサルマンライフ
3. Dance Capriccio
4. Sexy Sexy,
5. YELLOW YELLOW FIRE
6. バーバリアン
7. アナログ少年
8. しゃかりきマセラー

■玉筋クールJ太郎
1. グレートデイズ
2. お前のメコスジ高速道路
3. タマスジキングダム
4. ドリームマルペス
5. セルアウト

■BiS
1. STUPiG
2. Give Me Your Love 全部
3. マグマト
4. gugigi
5. MMGK
6. nerve

■カオティック・スピードキング
セッション

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