2022/10/15 20:00
忘れらんねえよが、結成15周年記念として、都内20か所+阪名2か所ワンマンツアー〈この高鳴りをずっとやるツアー〉を開催することを発表した。
「この高鳴りをなんと呼ぶ」は、2013年1月30日に発売された3rdシングルだ。
「この高鳴りをなんと呼ぶ」には、ものすごく個人的な思い入れがある。それは自分にとって、 ”忘れらんねえよ” というバンド名をこれ以上ないほど体現している、文字通り忘れられない曲だからだ。
2013年が明けてすぐに離婚して1人暮らしを始めた後、マンション明け渡しの立ち合いで元妻に会った。最後にごはんを食べようと言っていたけれど、10年も一緒にいたのに当日に会ったら気まずくてほとんどひと言も言葉を交わせずに、ごはんを食べずに中央林間の駅前で別れた。
1人暮らしを始めて最初の仕事は、忘れらんねえよという変な名前のバンドの、無観客初ワンマンライブという変なイベントのレポートだった。最新シングル「この高鳴りをなんと呼ぶ」をCDショップで買ったら、特典としてメンバーがそれぞれ「S」「E」「X」のポーズをしたバッヂが3つセットで付いてきた。なんだこれはと思いつつ、気に入ったので革ジャンにバッヂを付けて取材に行った。
初めて観た忘れらんねえよは、全員すごく変わった服装をしていて、何者かわからない妙な存在感があった。彼らは代々木公園のステージ上から、誰もいない広場に向かっていろんな曲を演奏した。たまに散歩中の人が足を止めてしばらく彼らを眺めては通り過ぎて行く。そんな中、本編最後の曲として歌われた「この高鳴りをなんと呼ぶ」の〈最後の言葉を探してる それが見つかりゃいなくなる〉というフレーズに胸がギューっとなった。彼らはいったんステージから下がると、自らアンコールの手拍子をしながら戻ってきてまた歌った。終演後の楽屋を訪ねると、3人とも真冬なのに汗びっしょりで息を切らせていた。初対面の挨拶を済ませた後、柴田隆浩がこちらをチラッと見て「良いバッヂ付けてますね」と言った。咄嗟になんとなく「朝起きたら付いてました」と返すと、柴田は「はははは」と笑った。
ウケたわけでもなく愛想笑いでもない、なんだかとても良い感じの「はははは」。そのときから10年近くが経って、いまだに「この高鳴りをなんと呼ぶ」を聴いている。たぶんこれからもずっと聴くと思う。
文:岡本貴之