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2022/05/31 20:00

 

上杉周大、伊東ミキオと共に聴かせたブルース&ロックン・ロールの魂-ライヴレポート

 

2022年5月28日(土)下北沢CLUB Queにて、2マンライヴ〈上杉周大(THE TON-UP MOTORS) × 伊東ミキオ ~ふたりのビッグショー~〉が行われた。上杉周大(THE TON-UP MOTORS)、伊東ミキオそれぞれ弾き語りでオリジナル曲を聴かせると共に、ブルース、ロックン・ロールのカバー・セッションもあり、下北沢の土曜日の夜を大いに盛り上げた。

~以下、ネタバレあり~

この日のフロアは椅子が並べられた着席スタイル。開演前のBGMにリトル・リチャードの曲が流れる中、あっという間に満席となっていた。

先にステージ立った伊東ミキオは、自身の活動の他、数々の有名アーティストの共演で知られるシンガー、ピアニストだ。「どうも、伊東ミキオです」との挨拶から、真っすぐなピアノのリフレインを弾きながら歌い出す。曲は、2018年にリリースしたアルバム『TRY AGAIN』のタイトル曲だ。左足で床にリズムを刻む音が響くと、客席から徐々に拍手が沸き起こった。弾むように鍵盤を叩きながら、同アルバムからもう1曲、「Slow Starter」へ。途中、「ピアノ、伊東ミキオ!俺しかいない!」と自分自身に呼びかけてから流麗なソロに入るなど、リラックスした様子が心地良い。

「上杉君とは、もともと5年前ぐらいに吉祥寺で一度対バンして、めちゃくちゃすごいボーカリストだなというイメージがあって今回呼ばれたので、すごく光栄に思っています。ありがとうございます」

上杉が出演しているSTVの番組「ブギウギ専務」にかけて歌った、ノリの良いスリーコード曲「ブギウギ・ボルケーノ」や、「じゃあロックン・ロール行きます!」と疾走感のある「ナナ」で盛り上げるなど、転がるようなピアノで自らを乗せていきお客さんを巻き込んでいくところはさすがのステージ巧者ぶりだ。サングラスをかけて、「It's Not the Spotlight」の日本語カバー「それはスポットライトではない」を独自にアレンジした歌詞で聴かせたり、翌日に日比谷野音で行われる〈TOKYO BLUES CARNIVAL 2022〉に三宅伸治&The Red Rocksのメンバーとして出演するという話題から、当日ゲストに迎える鮎川誠がかつてやっていたバンド、サンハウスの「なまずの唄」を披露する一幕も。ルーツの一端を垣間見ることができる興味深いライヴとなっていた。

入れ替わりで、紫色のスーツに身を包みステージに上がった上杉のライヴは、アコギを弾きながら「旅立ちのとき」から始まった。曲の終わりで、「大変お久しぶりです!今日が来ることがすごく楽しみな反面、ちょっとドキドキしてさっきまで緊張してました。でもステージに立ってみんなの顔が見えて、とても嬉しく思っています。今日はマジで楽しみましょう!どうぞ最後までよろしく!」と歌のエンディングに合わせてシャウト。もう夏なんじゃないか、というぐらい暑かったこの日の東京の気温を振り返り、夏ソング「陽炎」へ。お客さんとの再会に心躍らせるように、さわやかに歌い上げた。アコギから、見慣れないビザールギターを持ち換えて、親指で低音弦を弾きベース音を出しながらのブギ「燃えた 焦げた」を披露。ほとんどワンコードの展開で繰り返し歌う、ブルースマニアっぷりがわかる楽曲だ。弾き語りとはいえ単にギターストロークしながら歌うだけでなく、バンドでのステージではあまり観ることができない、上杉のギターテクニックが発揮されていて見応えがあった。

「ミキオさんの転がるロックン・ロールピアノ、大好きです。最高ですよね。今日のライヴが決まって、忙しい中、わざわざ家の近所まできて一緒にお酒を飲んで打ち合わせしてくれました。本当に優しい方です。今日来てくれたみなさんも、最初から手拍子してくれて嬉しいです。今日ミキオさんと一緒にやれて、下北沢CLUB Queでやれて、みんなの前でやれることを嬉しく思います。そしてもちろん、配信のみなさんも忘れておりません!(笑)」と、各方面への感謝を忘れない上杉のMCに、一気に会場が和やかな雰囲気に包まれた。

再びアコギを持つと、3ヶ月連続リリースの第2弾としてこの日リリースされた新曲で、「なんにも考えないで作った」という、「正しき馬鹿」が披露された。〈うれしいことやりたい 美味しいもの食べたい 悲しいこといらない〉と、お客さんが声を出せない分、代弁してくれるような歌詞が印象的だ。続いて「こんな能天気な僕でも、朝ニュースを見て落ち込むことがある。戦争は全然終わらない、いつまで経っても平和にならない。本当にやりきれない気持ちが多いですけど……そんな思いを込めて」とのMCから、第一弾リリースとなった「参ろう」が力強く歌われた。

「今日を第一歩として、今後も弾き語りをやっていきたい」という上杉は、まだどこでもやっていないという曲を初披露。タイトルは「OH ROAD」。緩急をつけながらアコギをラグタイムギター調にスリーフィンガーでつまびきながら歌う、自身の内面と向き合い語りかけるような真摯な曲だった。ROAD(道)とLORD(主)をかけているようにも聴こえた。スローな歌い出しから、ソロの代表曲の一つ、「イエス!ソウルミュージック」が始まると観客は一斉に手拍子で応える。「楽しい?」と客席に呼び掛けると、大拍手。上杉は「俺、もっと楽しい!」と満面の笑み。

“大事な歌” とつぶやいてからアルペジオを弾きながらゆっくりと歌い出したのは、THE TON-UP MOTORSの「無名のうた」。お客さんの顔を見渡しながら、直接語りかけるように歌う。どんなときも歌い続けてきたこの曲は、渾身の名演となった。深々とお辞儀した上杉はお客さんからの万雷の拍手を受けると、激しくギターをかき鳴らして、「ラスト、もう1曲行くぜ!」と叫んで、「バカ笑い大将」(THE TON-UP MOTORS)へ。〈アホな犯罪が起きたって アホな戦争が起きたって 天変地異が起きたって 俺たちは今日をやっていく〉と、迫力の歌声でシャウトする上杉に向かって、サビの〈ワッハッハーだ!!ベイビー〉に合わせて会場中から手のひらを広げた両手が頭上高く掲げられて、最高潮の盛り上がりとなってステージを後にした。

アンコールでは、2人がステージに上がりセッションが行われた。まずは、ミキオのピアノと上杉のボーカルによる、ブルースの教科書のような1曲、マディ・ウォーターズのカバー「Hoochie Coochie Man」だ。鍵盤を生き物のように操るミキオの激シブなソロを、「打ち合わせにないけど、もう一回聴きたい!」とワンモアを求める上杉。続いて上杉のブルースハープも2回まわして、どっぷりとブルース沼に浸かる。ここまでディープなブルースを聴かせてくれるとは思わなかった。

続いては上杉のオリジナル曲「燃える流星」をギターを弾きながら、ミキオのピアノに乗せて疾走感満点に歌い上げる。そしてラストは、リトル・リチャードのカバー「Good Golly Miss Moly」。アップテンポなナンバーで白熱したセッションとなった。3曲ともエキサイティングな歌と演奏で、ブルースとロックン・ロールのダイナミズムが存分に味わえる最高のセッションとなって、ライヴはエンディングを迎えた。2人が愛する音楽の世界が見事に融合して、ボーカル、ギター、ピアノ、ハープで極上のグルーヴが渦巻いた、最高に楽しく記憶に残るツーマンライブだった。是非また共演する機会を作ってもらいたい。そのときはどんな曲が聴けるのか、楽しみにしておこう。

取材・文:岡本貴之
Photo by 鈴木友莉

ライヴ情報

〈上杉周大(THE TON-UP MOTORS) × 伊東ミキオ ~ふたりのビッグショー~〉
2022年5月28日(土)CLUB Que
【出演】上杉周大(THE TON-UP MOTORS) / 伊東ミキオ
〈上杉周大セットリスト〉
1. 旅立ちのとき
2. 陽炎
3. 燃えた 焦げた
4. 正しき馬鹿
5. 参ろう
6. OH ROAD
7. イエス!ソウルミュージック
8. 無名のうた
9. バカ笑い大将
EN1. Hoochie Coochie Man
EN2. 燃える流星
EN3. Good Golly Miss Moly

<配信> 「Streaming+」
・チャット あり/ハート(チップ)なし
・購入URL https://bit.ly/3uDfZZk
・購入期間 4月10日10:00~6月3日(金) 20:00まで
・視聴期間 ライブスタート~6月3日(土) 23:59まで

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[ニュース] THE TON-UP MOTORS, マディ・ウォーターズ, リトル・リチャード, 三宅伸治&The Red Rocks, 上杉周大, 伊東ミキオ, 鮎川 誠

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