2022/08/12 18:00

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.181

毎週金曜日、編集部セレクトのプレイリスト&コラムをお届けする『OTOTOY EDITOR’S CHOICE』。8月は恒例のゲスト月間、OTOTOY Contributorsスペシャルです。第2回は『REVIEWS』連載に「国内オルタナティヴ×ポップ」で登場、現在はフリーでライター/編集者として活動している那須凪瑳さんです。新しい環境、新しい経験、新しく知る音楽の思い出を。


2022 CONTRIBUTORS SPECIAL

レコ屋時代、ジャンルも時代も、まあまあバラバラ

“エモい” という言葉があるが、私はこの言葉がちょっと苦手だ。文章で自分の言葉として使用するのなら “強調記号” をつけなくては、とてもじゃないが恥ずかしくて使えない (2022年8月現在)。ただ、そんな私にも “エモい時期” があった。ちょっと大人になれた気がした、という意味であの時期は確実にエモかった。今から数年前、私が21歳の頃に某レコード屋で働いていた頃の話をしたい。

そのレコード屋は、面接で落ちる人が多いと聞いていた。それまでいわゆる「邦ロック」ばかり聴いていた私は、これではマズい、と思った。そこで、面接を受けたい旨の電話をかけるやいなや、音楽の歴史を調べはじめた。そして、差別などから「ゴスペル」や「ヒップポップ・カルチャー」が誕生したことに衝撃を受け、ロック史を学んだことでビートルズの偉大さを知ったのである。

当時、まだビートルズの良さを完全には理解できていなかった21歳の私だったが、“Girl” が好みということだけはわかった。「“Girl” 好き、ちょっとサイケデリック・ミュージック好き (Tame Impalaとか)、音楽モノの本好き (早川義夫とか細野晴臣とか)」をウリに、とにかくアピールしまくった結果、たまたま面接官の奥さんも「“Girl” が超好き」だったために話が盛り上がり、私は晴れて某レコード屋で働き始められたのだ (奥さんありがとう)。

そこで初めて、20代後半から30代くらいの人たちと仲良くなり、ご飯を奢ってもらい、帰りに路上でお酒を飲み、という個人的には「大人ってこれだわー」ということを体験したのである。自分の世界が無茶苦茶広がった。

そんなこんなで自分の世界が広がるとともに、聴く音楽のジャンルも広がっていく。「ジャンル担当者」が決まっていたので、ヒップポップならヒップポップ、レゲエならレゲエと、「そのジャンルなら、すべて知ってます」みたいな人たちと働いていたのだから、広がらないわけがない。ただ、店員がコアな音楽ファンなら、お客さんもコア中のコアな音楽ファンばかりだったので、ちょっとした苦労も多々あった。

今でも忘れないのは、電話口で「ガンズ・●●・●●ありますか?」と聞かれたときのこと。もちろん、今となっては “ガンズ” だけ聞けば、「あぁ、ガンズ・アンド・ローゼズですね。探します」となるのだが、当時の私にはチンプンカンプンだったので聞き返すと、「君、ガンズも知らないんか?」と電話口でボコられた。そう、私はガンズも知らずにレコ屋で働いていたのだ (雇ってくれた面接官のTさん、Nさん、ゴメンナサイ)。

今回は、その時期に初めて知ったアーティストから、当時よく聴いていた曲などを中心にプレイリストを組んでみました。今でもガンズ・アンド・ローゼズはあまり聴かないですが、無茶苦茶悔しかったので、電話口の “そのヒト” に捧げたくて入れています。夏っぽい曲はギリギリ、ビーチ・ボーイズの “Good Vibrations” くらいですが、夏休み中のみなさんは暇つぶしがてら聞き流してみてください。

この記事の筆者
那須 凪瑳 (Nagisa)

誕生日は森高千里、加山雄三、武田鉄矢、そして金子みすゞなどと一緒。現在はフリーライター、ときどき編集者としても活動しています。

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.181 CONTRIBUTORS SPECIAL : レコ屋時代、ジャンルも時代も、まあまあバラバラ

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REVIEWS : 040 国内オルタナティヴ×ポップ(2022年2月)──那須凪瑳

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