玉光堂のメンバー募集から入るって、札幌のバンドとして1番正しい
──高橋さんがバンドを始めたころの札幌ってバンド・ブーム前夜みたいな雰囲気はあったんですか?
高橋 : 全然盛り上がってなかったですよ。僕もなんちゃってという感じでバンドを始めたので。それこそ学校の仲間でやっているぐらいの感じで。僕らの先輩とかは、木下君(SABER TIGERの木下昭仁)もそうですし、あとフェアリーっていうバンドがいて(キーボーディストの三国義貴が在籍したバンド)。「豊平川にサケを呼び戻そう」っていう“カンバック・サーモン”を歌ってたバンドなんですけど。
増子 : ああ~、ありましたね。
高橋 : あとはメジャーにはなれなかったですけど、僕らより多分 5歳ぐらい上の“一文字”というバンドがいてすごくかっこよかったですね。そういう良いバンドはいくつかいたけど、それがライヴハウスでブームとして盛り上がっているとかいうのは、全然なかったと思います。
増子 : ライヴハウスっていうか、当時は貸ホールを何バンドかで借りて、自分らでチケットを売ってお金を払うっていうのがほとんどだったんで。だからライヴハウスのシステムを知ったのって東京に来てからだもんね?
上原子 : そうだね。
高橋 : 僕らが高校のときにやってたバンドの解散ライヴは、札幌駅の〈駅裏8号倉庫〉でやりました。レンガ造りの倉庫ですごく素敵なところなんですけど(笑)。
増子 : 暴れ放題のところですね(笑)。我々も大暴れしました。俺らが出たとき、エマーソン北村さんが大学生でPAやってて、めちゃくちゃ暴れて怒られるかと思ったら、すごく褒められたんですよ。「君、すごく向いてるよ!」って言われて「マジっすか!?」って。いままで暴れて怒られたことしかなかったから(笑)、「こんなに褒められるのか!?」っていうぐらい。もうなくなっちゃったけど、あそこは良かったですよね。
上原子 : 僕らが出会ったのも8号倉庫ですから。増子ちゃんは別のメンバーと怒髪天をやっていて、僕も別のバンドをやっていたので。
高橋 : ああ、そうなんですか。
上原子 : 楽屋に物を置いてたら、エフェクターとかなくなるんですよね。こっちはこっちで人のシールド使ったり(笑)。
増子 : 楽屋なんて床が土だったからね。

──バンド・シーンが盛り上がっていたわけでもないのに、そこから海外進出まで繋がっていくってすごいというか、なぜそうなったのか不思議なぐらいです。
高橋 : いや、僕らもわかってない(笑)。
増子 : ただ当時のバンドのクオリティで見るとズバ抜けていて並ぶものがなかったし、どこにいてもそりゃ気になるし目につくだろうなっていうレベルだったので。「文句なしにカッコイイ!」って。
高橋 : いやいや、そんなことないって。でもコンテストには貪欲に出ていて、当時ヤマハがやってた〈STAGE FLIGHT〉という〈ポプコン〉のロック版みたいなコンテストで北海道代表になって東京に行って全国大会に出て、そこに他のバンドを観にきた高垣さんが僕らのバンドを気に入ってくれたのがデビューのきっかけなんです。だから、〈札幌音楽祭〉もそうですけど、そういうところは地道に出てましたね。
増子 : コンテストに応募できるレベルじゃないバンドばかりだったなかで、やっぱりすごいですよ。
高橋 : 僕は高校の時にヴォーカルの山田と一緒にバンドをやってたんですけど、そのバンドが解散したあと、山田と昌洋と本間がバンドを組むときに僕には声がかかってなかったんです。でも玉光堂という楽器屋さんのメンバー募集コーナーに「完全プロ志向バンド ベース募集」って張り出してあって、それを見て僕が電話して「入れてくんない?」って言ったんです。
上原子 : うわ~。
増子 : あそこいっつも見てたよね(笑)。すごいなそれ。
高橋 : それでFLATBACKERが始まって、半年ぐらいは人生で 1番練習しました。「完全プロ志向」って言ってたから一応頑張ろうと思って。
増子 : すごい! 玉光堂のメンバー募集から入るって、札幌のバンドとして1番正しいね。最高だなあ~そうだったんだ。
上原子 : すごいねえ。
増子 : いま、ジャパメタの若くてかっこいいバンドに出てほしいんですよ。ずっと待ってんだよね。ビッタビタの格好でメイクとかしてやったら絶対かっこいいのに、やっぱり出てこないんだよね。
上原子 : 80年代の音や歌詞って、いま聴いたらちょっと恥ずかしいところとかあるんですけど、FLATBACKERは全くないんですよね。完全にいまの音として聴けるし、いまのバンドで、もしこの音楽をやるバンドが出てきたらすごいだろうなって、いつも思います。
増子 : 古い部分がほぼないんだよ。これは本当、お世辞抜きで珍しいですよ。オリジナリティがあるし。
上原子 : いまあのバンドが出てきたらちょっとヤバいよね。
増子 : ヤバいね。期待してんだけどね。パンク、ハードコアは割とおしゃれに洗練されたかっこいいバンドがインディーズにたくさんいるんですよ。でもメタルは来ないんだよね。
──『more-AA-janaica』にはそういうメッセージも提示されているわけですか。
増子 : 俺らがやるしかないみたいな? 若くもなんともない(笑)。そもそも“OUT老GUYS”は老害の歌だし。(友康に向かって)もう時間がないけど、他に訊きたいことないの?
上原子 : いや、僕は完全にファン目線で、やっぱりまた4人が集まったところ見たいなというのはもちろんありますし、1曲でも演奏してるのを見られたらすごく幸せだなと思ってますけど、 でも、いろんな事情あるのはもちろんわかりますからね。
増子 : 友康は普段インタビューとか取材で来ないから。それが今日はひとりでも行くって言うんだから(笑)。
上原子 : いやあ~、今日はありがとうございました。くるりとやったときも楽しかったですね。くるりというか、ぶっちゃけ太郎さんに会えたからなんですけど(笑)。
高橋 : いまは竹原ピストルと、リュックと添い寝ごはんっていう21歳のバンドのふたつをがっつりやってます。
増子 : すごいなと思うのは、我々よりも年上でちゃんと新しい音楽を聴いているっていうね。
高橋 : まあ昔から色々好きで、広く浅くがポリシーなので。いまは怒髪天ぐらいオリジナリティーのあるバンドに出会えたらいいなって。野狐禅(竹原の所属したデュオ)もそうですし、永積(タカシ/ハナレグミ)もそうですけど、それぞれ違うもので、ドキッとするものに出会えたらロック・バンドも手掛けたいとは思うんですけどね。上手なミュージシャンとか、歌が上手い人はたくさんいらっしゃいますけど、世の中に出てこれる人って、いろんな人の出会いとか仲間とかと色々なケミストリーがあって、人に聴いてもらえる立場になると思うんです。ジャンルを問わず、そういう面白いものが出てきたらいいなっていうのはずっと思ってますね。
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編集 : 高木理太
DISCOGRAPHY
LIVE SCHEDULE
more-AA-janaica TOUR ~もうええじゃないか、もう~
2023年5月10日(水)@千葉 LOOK 開場 18:30 / 開演 19:00
2023年5月13日(土)@水戸 LIGHT HOUSE 開場 17:00 / 開演 17:30
2023年5月19日(金)@金沢 AZ 開場 18:30 / 開演 19:00
2023年5月20日(土)@岐阜 Yanagase ants 開場 17:00 / 開演 17:30
2023年5月27日(土)@広島 セカンド・クラッチ 開場 17:00 / 開演 17:30
2023年5月28日(日)@高松 DIME 開場 15:30 / 開演 16:00
2023年5月30日(火)@奈良 EVANS CASTLE HALL 開場 18:30 / 開演 19:00
2023年6月1日(木)@岡山 YEBISU YA PRO 開場 18:30 / 開演 19:00
2023年6月3日(土)@小倉 FUSE 開場 17:00 / 開演 17:30
2023年6月4日(日)@福岡 LIVE HOUSE CB 開場 15:30 / 開演 16:00
2023年6月6日(火)@滋賀 U☆STONE 開場 18:30 / 開演 19:00
2023年6月10日(土)@松本 ALECX 開場 17:00 / 開演 17:30
2023年6月11日(日)@新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE 開場 15:30 / 開演 16:00
2023年6月17日(土)@仙台 Rensa 開場 16:30 / 開演 17:30
2023年6月18日(日)@郡山 HIPSHOT JAPAN 開場 15:30 / 開演 16:00
2023年6月24日(土)@名古屋 CLUB QUATTRO 開場 17:00 / 開演 17:30
2023年7月1日(土)@大阪 umeda TRAD 開場 17:00 / 開演 17:30
2023年7月7日(金)@札幌 ペニーレーン 24 開場 18:30 / 開演 19:00
2023年7月14日(金)@新宿 BLAZE 開場 18:15 / 開演 19:00
OTODAMA'23~音泉魂~
2023年5月3日(水/祝)・4日(木/祝)@大阪・泉大津フェニックス
*怒髪天は5月3日、大浴場の一番風呂
さよなら中野サンプラザ音楽祭
出演 :スターダスト☆レビュー / 怒髪天
2023年5月11日(木)@中野サンプラザ
開場17:30 / 開演18:30
怒髪天 presents 2023 WORLD BAKA CLASSIC 決勝
出演 : 怒髪天 / 柳家睦&THE RATBONES
2023年6月25日(日)@名古屋CLUB QUATTRO 開場 15:30 / 開演 16:00
2023年7月2日(日)@大阪umeda TRAD 開場 15:30 / 開演 16:00
2023年7月8日(土)@札幌ペニーレーン24 開場 15:30 / 開演 16:00
2023年7月15日(土)@新宿BLAZE 開場 16:45 / 開演 17:30
PROFILE
怒髪天
1984年、札幌にて結成。今年、結成38年目を迎える、ロックバンド。増子の高校卒業後2年間の自衛隊入隊等の期間を経て、1988年より抜群のキャラクターを誇る現在のメンバーで本格的な活動を始める。1991年に札幌シーンから鳴りもの入りで上京し、クラウンレコードよりアルバム『怒髪天』(タイトル題字/北島三郎氏)でメジャーデビューを果たすも、時を同じくしてバンドブームも終焉。さらに、上京後わずか数日で事務所も倒産するなど、以降前途多難な活動状況が続く。その間もメンバーは持ち前のポジティブマインドで数々のバイトをこなしながら楽しく活動を続けていたが、1996年、遂に行き詰まりを覚え、1999年まで3年間活動を休止する。この3年間で、増子はリングアナ、穴空き包丁の実演販売、雑貨屋などを経験し、現在の怒髪天の歌詞世界観につながる経験をする。(本人曰く、活動を休止して、バンド村を飛び出し社会で働く経験をしたおかげで、所謂世間一般に対する認識が変わったとのこと)1999年、ベースの清水の呼びかけで再始動。2000年、フライハイトレーベルより『怒盤』をリリース。JAPANESER&E(リズム&演歌)を旗印に再び名乗りを上げる。2004年から、再び活動の場をメジャーで展開。同年、テイチクインペリアルレコードより『握拳と寒椿』をリリース。バンド結成25年を迎えた2009年頃からは、テレビ/ラジオ番組、TVCM等メディア露出も増加し、知名度が全国区に広がる。2014年1月、その後の熟年バンドの武道館公演実施の礎にもなる、自身初の日本武道館ワンマン公演を敢行。大成功、満員御礼におさめる。春の「湯ナイテッド・アワーヅ」(石川県粟津温泉粟津演舞場開催)夏の「中京イズバーニング」(名古屋CLUBUPSET開催)秋の「響都ノ宴」(京都磔磔)冬の「長野闘気オレリンピック」(長野CLUBJUNKBOX)10月20日のドハツの日(開催会場不定)といった自主企画公演をはじめ、東京で開催される「トーキョーブラッサム」地元北海道で開催される「カムバック・サーモン」シリーズ怒髪天の一大アミューズメント企画の「大怒髪展」また、バンド結成30周年の御礼参りとして実施した47都道府県ツアー地元札幌への感謝を込め開催した4000人動員のフリーライブメンバー50歳を記念した全51公演のツアーなども敢行。さらに、楽曲提供、映像作品/舞台出演、アイドルとのコラボ/バンド結成など、通常のリリース&ツアーやロックバンドというイメージにとらわれることなく、自分たちの好奇心を最優先にした怒髪天流の活動で、飄々と颯爽とさまざまな垣根を越えて活動を続ける。
【HP】
http://dohatsuten.jp
【Twitter】
https://twitter.com/dohatsuten_crew