3年前に思い描いて書いてることが本当にできている
──フィーチャリングにAFRAさんが参加されていますけど、これはどんな経緯で決まったんですか?
Sunday:AFRAくんと3年前ぐらいに品川駅で偶然会って。「あ、久しぶり!」って話をして、昔からの知り合いだから「良かったら、いつか一緒にやってもらえないですか?」とAFRAくんに言ったら「もちろん全然いいですよ!」と言ってくれて。そこから一切連絡取ってなかったんですけど、2年半ぐらい経って「……やってくれるって言ってたよね?」みたいな。
アツム:そうなんですね。
Sunday:この曲はコロナ禍がはじまって、これからの自分たちのことを書いてるのもあるし、それまで20年ぐらい大阪でやってきたことも1回ちゃんと形にしたい、みたいな思いがあったので、ぜひAFRAくんに入ってもらおうと。で、去年の秋頃にビートボックスを入れてくれました。
──AFRAさんの出すスクラッチの音が、どこか懐かしさがあっていいですよね。
Sunday:99年ぐらいから00年代のスクラッチだなって感じがしましたね。もちろん最先端の音も入ってるけど、スクラッチとコールみたいなのは、90年代後半の雰囲気をあえて出してくれてるというか。さすがAFRAくんやなと思いましたね。
──それで言うと、AFRAさんとの出会いは98年頃なんですか?
Sunday:その辺から一方的に、なんとなく知ってるぐらいで、ちゃんとした交流は2001年ぐらいですね。朝方に(クラブ)fireflyの前で音楽の話したのが、ちゃんとAFRAくんと喋った最初のきっかけです。
──それでも20年以上の付き合いになりますね。
Sunday:とはいえ、お互いに全然違う音楽シーンにいるので20年の間に頻繁な交流があったわけではないんですけど、番長がやってるバンド・BAGDAD CAFE THE trench townが主催している野外イベント〈MEETS THE REGGAE〉に、何年か前にAFRAくんが出てて。僕もその時にDJとして出演して読書ラバダブ(※レゲエのトラックに合わせ、その場で本を読み上げてラバダブをする)をやってたんですよ。それをAFRAくんが見て「すごい! こんなものを見たことがない!」と言ってくれて。「いや、AFRAくんのビートボックスなんて世界的にすごいねんから。読書ラバダブはなにもすごくないと思う」と返したら「それは違う! 俺がヒューマンビートボックスはじめる前に、既にやっている人がいっぱいいて、レコードもあるし、教えてくれる人もいた。Sundayのいまやったことは誰もやってないし、先生がおらんからすごい」と言ってくれました。そういうこともありつつ、4年前に品川駅で偶然出会って「なんか一緒にやりたいね」みたいな感じですね。
──2021年にリリースされた「I think feat.チプルソ 奇妙礼太郎 Sundayカミデ」もそうですし、コロナ禍になってかつての仲間と初めてコラボをする機会に恵まれていますね。
Sunday:そうね。チプルソははじめてのライヴが「Love sofa」だと思うので、世に出る前の本当の最初から僕は知っていて。とはいえ違うシーンなので交わることはなかったんですけど、ステイホームの時にすごく距離が近づいた。それは僕だけじゃなくて他のミュージシャンでも、いままで全然違うシーンにいたとか、もともとは知ってるけどやってることの規模感が違いすぎて会ってないとか、そういう人たちも1回フラットにいろんな話ができたんじゃないかなって。そのなかのひとつがチプルソ、奇妙(礼太郎)くん、僕、アツムの「I think feat.チプルソ 奇妙礼太郎 Sundayカミデ」ですね。
──一方でアツムさんは、アマイワナさんとご一緒する機会も増えて。
アツム:アワイワナちゃんは、コロナ以降に出会いました。コロナのステイホーム期間中、僕は家にこもって沢山のトラックを作っていて、その間にスキルを上げていけたんですよ。そういう流れもあって、アマイワナちゃんとお互い宅録で楽曲を作っていく環境を作れたのはありますね。
Sunday:アマイワナちゃんは2019年の〈やついフェス〉のキャンペーンガールのファイナリストやったんかな。そこから当時レギュラーをやらせてもらっていた文化放送のラジオ「芝浦音楽倉庫」の第1回目ゲストに来てもらって。で、京都に住んでいると言ってたんで〈Love sofa〉にも声をかけた感じですね。そこからね、こうして縁が繋がるのは嬉しいことですよね。
──コロナ禍になって3年の間に〈Love sofa〉で繋がっている仲間たちと音楽を作り続けてきた。「spring summer set feat. AFRA」は、いろんな人の思いが詰まった、結晶の曲にも感じられる気がして。
Sunday:ほんまにそう。作ったその時にリリースしてなくて良かったなと思って。3年前に思い描いて書いてることが、本当にできてるし、実現している。その思いと重みを感じますよね。音楽シーンに関しては、相当変わったし、僕に関しては、お客さんもすごく減った。離れていった人たちのことを思うのか、忘れてまた新しいことに踏み出してやるのかは、こっからの1、2年で決めようかなと。今作をリリースしたことで、もう1度それを考えようと。それで最近は〈New〉という新しいイベントをはじめたんです。いままでのことを追いかけるんじゃなくて、また新しい方に踏み出そうというイベント。とにかくなにが正解とかじゃなくて、リリース後も、右往左往しながらまた1年なにかを作らないとっていう感じですね。
──イベントの話も出ましたが、3月には東京と大阪でワンマンライヴが決まってますね。
Sunday:どちらもゲストでAFRAくんに出演してもらいます。大阪・CONPASSはtoyobowy、東京・BASEMENTBAR はfuturesの楠野遼がDJでチャーべさんがゲストパーカッションで来てくれます。さらに2公演ともアチャコプリーズさんがDJをしてくれて、フードも出してもらいます。いわゆる自分たちが普段やってるクラブパーティーみたいな感じにしようかなと。
アツム:まだAFRAさんと一緒に共演したことがないので、それがすごく楽しみですね。
──リリースする楽曲やライヴの話も聞いたところで、Sundayさんが最近気になってるトピックについてもお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
Sunday:この先10年の間に日本は少子化も加速するでしょうし、もしかしたら少しずつ大きな恐慌になると思うんです。だからこそ、いまの40代、50代の人口の分厚い層の人たちが、もう1回なにかを作っていかないといけない。そこの層の人間がなにを残してなにを作るかが、今後の日本や世界にすごく影響するんじゃないかなと思っていて。それができなかったら、自分たちが享受してきた楽しいことは、自分たちが消費して終わらせてしまいかねない。いわゆる40代50代って、会社で言うとそれなりのポジションだと思うんですけど、「芝浦音楽倉庫」の僕よりちょっと年上のディレクターさんは、自らコードを巻き、僕用にコーヒーを買ってきてくれていて。「これを若い子にやらすわけにはいかない。自分たちがもう1回なにかを作るんだ」みたいな。そういうことだと思うんですよ。僕も「マジでライヴに来てくれへんかな」って友達に連絡しまくるところからもう1回やろうと。若い人たちから見て、上の世代の人たちがめちゃくちゃ集まってるシーンがあれば、例え泥臭く見えたとしても全然いいじゃないですか。45歳の自分がいまいちばんやるべきことはそれかなって。
──とにかく、同じ世代の人たちとなにかおもしろいことを生み出していこうと。
Sunday:ということで……キックボクシングしてるのもあるんですよ。
──どういうことですか?繋がってるんですか?
Sunday:44歳でキックボクシングをはじめて1年半くらいで、すでにアマチュアの大会で2戦してて、しかも1回も負けてない。「この年代の人間はまだまだなにかを残せるぞ」という記録をつけてる最中なんです。習うならブレイクダンスかなと思ってたんですけど、僕とアツムがよくいる大阪のスタジオの近くにキックボクシングジムがあったんで、そこに通い始めて。もちろん40代とか50代は、社内のポジションも上で家庭もある世代でしょうし、カルチャーとか今後の音楽シーンを考えてる人は少ないかも、と勝手に思ってしまうじゃないですか。
──落ち着く年代かなとは思いますよね。
Sunday:でも、真逆だと思ってるんです。90年代は確かに楽しかったけど、バブルがはじけて就職氷河期で、就職できなかった人がむちゃくちゃいて。その時の就職できるパーセンテージって、2021年とか2022年の採用枠と比べ物にならないぐらい低かったんです。にも関わらず人口が多い。だからベンチャー起業がめっちゃ生まれたと思うんです。だって相当なスーパークライシスやったわけじゃないですか。「一流大学に出てる人達が、こんなに就職ができない」っていう。そのスーパークライシスのなかで生きてきた人達がだからこそ、ポテンシャルは非常に高いと思ってて。いまくすぶってる世代の人たちと、もう1回なにかをやりたい。それなりに年齢を重ねて、後輩がいっぱいいて、みんなから慕われるとか、そういうのは全部いらないです。とにかくイチからなにかをやって、もう1回頭角を現す。それをやってる人じゃないと、ハイセンスなものって作れない気がするんです。……あとは、うまいことまとめてください。
一同:(笑)。
──最後はアツムさんに話を振りますね。こういう場だからこそ、Sundayさんに伝えたいことはありますか?
アツム:それこそ今回の曲で言えば、「スーパークライシス乗り切る愛のスキル」の歌詞がすごく好きで。コロナ禍の時は、そのままの意味で受け取っていたんですけど、「スーパークライシス乗り切る」って日々自分の生活中でもありとあらゆることがスーパークライスの連続で、これからもスーパークライシスを乗り切っていかないといけない場所があって。この歌詞はずっと残るだろうなって思ってます。
――もうちょっと踏み込んでもいいですか?こういう場じゃないと、小っ恥ずかしくて言えないような、Sundayさんに向けた愛の言葉をいただけます?
アツム:……愛の言葉。
Sunday:具体的にどの辺が好きかとか、そういうのをお願いします。
アツム:尊敬してます……。
Sunday:詳しくお願いします。
アツム:常に新しいことに目を向けて、次にどうするか考えてところをいちばん尊敬してます。キックボクシングもそうですけど、年上の人ってある程度の年齢に達したら、もう挑戦しなくなると思うんですよ。僕はSundayさんの13個下で、〈Love sofa〉にはもっと若いメンバーもいますけど、そこと交ってまだ新しいことしようとしてる。それがないと僕はついて行ってないと思います。ただただ、先輩で偉そうで偉い人やったら、一緒には続けられないじゃないですか。Sundayさんの常に挑戦する姿を尊敬してるし、それがいまも続けられる理由です。
Sunday : 1000点です!
編集:梶野有希
AFRAを迎えたワンダフルボーイズの新作
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ライブ情報
〈ワンダフルボーイズ ワンマンLIVE「Spring Summer Set」〉
■東京公演
日付:3/25(土) 時間:OPEN17:30 / START18:00
場所:BASEMENT BAR
出演:ワンダフルボーイズ / AFRA(ゲスト)
DJ:アチャコプリーズ/楠野 遼(futures)
FOOD:スパイスカリー大陸
■大阪公演
日付:3/20(月)
時間:OPEN19:00 / START19:30
場所:CONPASS
出演:ワンダフルボーイズ / AFRA(ゲスト)
DJ:アチャコプリーズ/toyoboowy
FOOD:スパイスカリー大陸
■チケット:https://eplus.jp/wonderfulboys0320-25/
PROFILE : ワンダフルボーイズ
OSAKAUNDERGROUNDのPOPMAKER、Sundayカミデを中心にCLUBMUSICをbaseにしたパフォーマンスは常にDANCE and MELLOWでフロアを沸かせている。2019年4月遂にVictor EntertainmentよりAlbum『We are all』でメジャーデビュー。「君が誰かの彼女になりくさっても」「天王寺ガール」などの代表作のイメージとは異なるDANCETUNEの連続で踊るステージは90年代のCLUBCULTUREを彷彿とさせている。
■公式ホームページ:https://www.wonderfulboys.net/
■公式Twitter:https://twitter.com/wonderfulboyzz