俺らなりのポジティヴをアルバムに
──いやいや(笑)。“むずかしいてれぱしい“や”憂うギャル“のような、ロックにとどまらない90年代色の強いアプローチの楽曲が存在感を際立たせた曲が生まれたのも、その変化から来るものなのかもしれないなと感じました。
チヨ:僕は90年代や00年代の音楽が好きなので、00年代リヴァイヴァルが起きているいま、スサシがそこに振り切った曲を作ったらおもしろいだろうなと思って作ったのが“むずかしいてれぱしい“ですね。おっきな会場でやらせてもらう機会も増えてきたので、ミドルテンポでジャンプしやすい曲も欲しかった。それをタクマがいい感じに整えてくれて、ユーキもそこを汲み取ってくれたからか「UFO」とか「デロリアン」とかネオな感じのワードを使って仕上げてくれて。最高っすね。
ユーキ:SF感があったので宇宙人やUFOみたいな最高なアイコンを入れて、童謡の“アイアイ“とAIを掛けて、最近はいろいろしんどいこともあった時代やし、考えることをやめちゃったほうがラクに生きられる人もいるんじゃないでしょうか、みたいなノリの曲ですね。そういう生き方が合う人もいるやろうし、自分の意志で選択していく生き方が合う人もいると思う。実際俺も「ロボットになれたらおもしろいな」とは思ったりもするし(笑)。まあこの曲も「ロボットなろうや」とか「宇宙行こうぜ」みたいなバカっぽい歌として捉えてもらえるようにはしてますね。
──核心を隠しますねえ。
ユーキ:ひねくれてるし、照れ屋なんでしょうね(笑)。チヨの話してたジャケットもそうですけど、隠してるところからチラッと見えたときに「おもろ」って感じられるギミックが好きなんです。「うわ、こんなとこにもポケットついてるやん!」みたいな服最高じゃないですか(笑)。ただかっこいいと思ったものの表層をなぞらえてるだけの音楽は残らないし。
チヨ:あと、いくら正論であってもあからさまに「俺はこんなふうに考えてるぜ」みたいな頭いいっぽい、意識高い感じの音楽やと、うわあ~って思っちゃうんで。なんも考えずに楽しめるけど、じっくり聴いてみたら「お前そんな考えてたんや!」みたいなほうがね。楽しいっすよね。
ユーキ:「能ある鷹は爪を隠す」って言うしな(笑)。
──アゲアゲのユーロビートの“憂うギャル feat.あやぺた“なんてまさにですよね。いたずら好きのタクマさんが音楽でいたずらするとこうなるのかなと思いました。
ユーキ:サビとかTRFですもんね。ギャルのヴァイブスを感じたのでギャルマインドで歌詞書いて、髪の明るいギャルっぽい10代の頃から知り合いのあやぺたに参加してもらいました。
チヨ:これ、歌詞に俺らしかわからへん10年来の付き合いのある友達の名前が出てくるんですよ。個人的にはそれにブチ上がりましたね。
──最後の歌詞にある《会いたいな むーらん》のむーらんさんですか?
チヨ:むーらんは俺らの地元、大阪府高槻市の友達で、それこそあやぺたや俺らの10代の頃のバンド仲間なんです。だいぶ個性的な人で、いろいろ逸話があります(笑)。むーらんはバンドやめちゃったけどずっと仲良くて、タイに移住した後にコロナ禍になって日本に帰ってこれんくなって(笑)。
ユーキ:むーらんは男なんですけど、めっちゃギャルマインド持ってるんですよ。そんなむーらんに会いたかったんで歌詞に書きました(笑)。
──そんな青春エピソードもありつつ、「憂う」というワードチョイスがタナカさんらしいなと。
ユーキ:あやぺたはずっとこの曲のタイトルのこと「ゆうギャル」って言ってましたね。明るい人は多分この字読めないんですよ(笑)。
──妙に納得しちゃう偏見(笑)。
ユーキ:明るくない人だけが読める漢字やと思ってます(笑)。「ゆうギャル」って読む人には、まだちょっとブルースが足りてないっすね(笑)。
──おふたりの話を聞きながら、『音樂』は“優気“や”奏葬“のようにまっすぐな気持ちを表現できる曲もあれば、どんな状況も面白がる視点がプラスされているのかなとあらためて思いました。
チヨ:自分たち自身がいろんなトライアンドエラーを繰り返してきたからこそ、どんなにネガティヴなことでも「まずやるしかないな」というマインドがあるんだろうなと思います。俺らは背中を押すタイプのバンドではないけど、それとは違う俺らなりのポジティヴのかたちなのかも。そういうのがアルバムにも出たのかな。
ユーキ:怒りをあらわにするバンドもかっこいいし、背中を押してるだけのバンドも弱さを歌ってるだけのバンドもいいんですけど、俺はいろんなものを抱えながらも「楽しもうぜ」ってスタンスを取る人のことを好きになることがほとんどで。俺らもそういうバンドだとも思う。だからいいバンドなんやなと思いますね。盤を聴いた後でもそう思ったし。周りにもかっこいいバンドはいっぱいいるけど、この感じができてるのは俺らだけやなと思う。まったく同じようなバンドが出てきたら、多分めっちゃジェラるっすね(笑)。
チヨ:いっぱいケンカしながら自主といういまの体制でこれだけのアルバムを作れたこと、この規模のリリースツアーを組めたことがすごく自信になってるんですよね。こんなバンドなかなかいないなと自負してます。もっとこの輪を大きくして、もっと大きなバンドになりたいですね。そういう意味でも『音樂』はターニングポイントとも言えるのかなって。冒頭でユーキが言ったように、これまで撒いた種が花を咲かせた感覚はありますね。ツアーも仲間やお世話になってる先輩に参加してもらって。韻シストとは初対バンなんですけど、韻シスト呼んでる俺らかっけえ!って思っちゃいますね。
ユーキ:おまけに韻シストとの対バンが決まったの、イチローのおかげなんですよ。
チヨ:そうそう(笑)。去年のりんご音楽祭で、俺らの次の出番が韻シストやったんですよ。俺らが出番前のリハしてるときに通りかかった韻シストのメンバーさんたちが、イチローの髪型を見て「とんでもねえやつがいる!」ってライヴ観てくれたらしいんです(笑)。
──へええ。出番前はライヴが観られないことがほとんどですよね。
チヨ:「出番前なのになんだこいつ!?って思って気になって、観てみたらかっこよかった、よかったよ」と言ってくださって。俺もそこで「ずっと大好きなんです」と話して仲良くなって、ツアーのオファーをしたら出てもらえたっていう。イチローが普通の髪型やったらほぼ間違いなく観てもらえてないので、イチローの髪型も撒いた種のひとつですね(笑)。今回のツアーは結構長いスパンをかけて回るのでどんな感覚になるのかなあとも思うし、ファイナルシリーズの東京はワンマンで、大阪はなんばHatchやし。いろいろ楽しみですね。
ユーキ:ファイナルのなんばHatchには、お母さんに来てもらお。元カノも呼ぼう!(笑)。
編集:梶野有希
SPARK!!SOUND!!SHOW!!のポップでカオスな新作
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ライブ情報
SPARK!!SOUND!!SHOW!! 音樂 TOUR
3/12 新代田FEVER / GUEST : KNOSIS
3/25 新潟GOLDEN PIGS RED / GUEST : TETORA
3/26 金沢vanvan V4 / GUEST : TETORA
4/22 広島CAVE-BE / GUEST : TOTALFAT
4/23 福岡LIVE HOUSE CB / GUEST : TOTALFAT
4/30 水戸LIGHT HOUSE / GUEST : ドミコ
5/13 盛岡CLUB CHANGE WAVE / GUEST : ROTTENGRAFFTY
5/14 仙台CLUB JUNK BOX / GUEST : ROTTENGRAFFTY
5/27 高松MONSTER / GUEST : ENTH
5/28 岡山CRAZY MAMA 2nd Room / GUEST : SOME Life
6/3 京都MUSE / GUEST : 韻シスト
6/4 横浜F.A.D / GUEST : キツネツキ
6/10 宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2/ GUEST : w.o.d
6/11 熊谷HEAVEN’S ROCK / GUEST : KEYTALK
〈TOUR FINAL SERIES〉
9/8渋谷Spotify O-EAST / ONE MAN LIVE
9/17名古屋BOTTOM LINE / GUEST : ???
9/22 大阪なんばHatch / GUEST : ???
PROFILE : SPARK!!SOUND!!SHOW!!
大阪府出身のポップ・バンド。愛称は“スサシ”。メンバーはタナカユーキ(Vo / Gt)、チヨチヨイヤマ(Ba / Cho)、イチロー(Dr / Cho)、タクマ(Syn / Gt)の4名。
■公式ホームページ:https://sparksoundshow.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/susasiii