Bialystocks 『Quicksand』
映画作家でもあるヴォーカル甫木元空とキーボーディスト菊池剛の2人組(2019年の結成時は4人組だった)のメジャー・デビュー作。ギターがロックする “あくびのカーブ” から、甫木元の歌声がソウルフルな “日々の手触り”、ジャズ・スタンダード的な旋律の “Winter” まで、2人のバックグラウンドを反映した音楽性はきわめて混淆的。例えば “雨宿り” のように、混淆性はひとつの曲の中にもあるが、技術もセンスも高いので戸惑うことなく安心して身を委ねられる。軽快なポップ・ソング “Upon You” で、言葉の響きの愉楽を追求しながら同時に意味でも感動させる手腕が心憎い。オルタナティヴにしてオーセンティック。
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松浦亜弥 “Addicted”
活動休止前のキャリア後半はいまひとつ楽曲に恵まれなかった感があったが、ここにきて夫・橘慶太のプロデュースで13年ぶりの新曲発表という展開に、当時の松浦に多少のもどかしさを感じていた向きは喜んだはずだ。2016年ごろに完成したものの未発表だったそうだが、当時はソロ活動を通じて修練を重ねてきた橘がいよいよクリエイターとして自信を深め、w-inds.に初めて自作曲を書き下ろした時期。松浦のコメントにもあったが、旺盛にデモを作っていたのだろう。不倫ソング?と話題になったが、仮歌のつもりだったのかもしれない。名匠に成長した夫が妻の歌のポテンシャルを十全に引き出した、幸福なおしどりコラボ(言い回しが古い)。
シンリズム 『Música Popular Japonesa』
J-POPのポルトガル語訳にとどまらない雄弁なタイトルを見て「これは聴かないと!」と思ったのは正解だった。5年ぶりのアルバムでは新旧のブラジル音楽を大胆に導入し、しかもアレンジだけそれっぽくするのではなく曲作りにも徹底させている。いま思えばMPJ路線第1弾だったといえるかもしれない2020年のシングル “Flavor of lie” のサンバ・ビート、ブラジリアン・フュージョンの目眩く展開を織り込んだ “晴れ舞台” を筆頭に、多幸感が弾けるポップな “LADY” や “不思議な関係”、奇妙なシンセがうねるインストの “Salaõ de eventos” など好曲が揃い、彼一流のスウィートな歌声とも相性ぴったり。痛快な意欲作である。
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