色々な意味を持たせられるすごく大事なワードに
──そうした大きな出来事が2020年にあり、世の中の状況もコロナのドタバタでなかなか良くなっていかない、兆しが見えないという状況でした。そうした世の中の状況をSuaraさんはどう受け止めていましたか?
アルバムの書き下ろし曲の制作に入るころまでは、沈んでいる事の方が多かった感じですね。歌手としての自分の未来の姿が見えなくなってしまった時期もありましたし、それこそ歌以外の仕事をしようかなとか。エンターテイメントや音楽は大事だとはいいつつも、極限の状態であるとそこに音楽とか歌は必要とされていないんじゃないかとか考えてしまって。だからライフラインを支えているような方や医療従事の方たち、そうしたエッセンシャルワーカーの方たちと比べて自分はなにも出来ないっていう引け目を感じることは多かったです。でもアルバムを出せるということが決まって、それに対して曲を作っていこうとか前を向き始められたのは周りの力が大きくて。アルバムを出して次はライヴもやりましょうっていうのを目の前に提示してもらってようやく動けるようになりました。13曲もタイアップがあるので、曲数的にはこれでも充分な内容だと思うんですけれど、Suaraの8枚目のアルバムとして出すからには今自分が考えていることも曲にして届けたいという気持ちが強くなってきて、徐々に這い上がれた感じですね。
──Suaraの8枚目のアルバムとして出すからには、今自分が考えていることも曲にして届けたいという言葉がありましたが、今回のアルバムタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか?
13曲のタイアップ中12曲が『うたわれるもの』関連の楽曲だったので、“うたわれ”がメインにはなりつつも、“希望の扉”の楽曲の全体像が、だいたい見えてきた段階で“希望”っていうワードは必ず入れたいという気持ちが湧いてきて。そこから“希望”というものを未来に繋げていく、可能性は誰にでも無限であるということを込めたいなっていうところで、“Infinity”っていうワードが浮かんできたんです。“Infinity”にはいろんな意味合いを込めていて、無限大の意味はもちろんなんですけれど、無限大のマーク(∞)を縦にすると“8”に見えるので今回のアルバムが8枚目のリリースにかけたりだとか。あとはアルバム・ジャケットのロゴを見て頂けたら皆さん分かるかなと思うんですけど、そこにSuaraの“S”が存在していたり。 そうした色々な意味を持たせられるすごく大事なワードになったんです。ただ“Infinity”だけだとこれまでのSuaraのアルバム・タイトルっぽくない感じもしたので、そこに“希望の扉”っていう楽曲のタイトルも加えた感じですね。
──ジャケットのロゴが“S”を意識しているのは今気付きました。
最初こそすごくネガティヴなところからスタートしましたけれど、自分自身もこれから久しぶりにアルバムを出してライブをやってというところで、こういうポジティブなワードをアルバム・タイトルにつけることが出来て本当によかったなと思っています。
──無限の可能性が広がるみたいなところと繋がっているかどうかは分からないですけれど、“うたわれ”曲だけでも本当に幅広いというか、いろんなタイプの楽曲が今作には収録されていますよね。なかなかこのアルバムの曲順をまとめるのは難しかったんじゃないかなと。
曲順に関しては正解が見つかるのかっていう感じだったんですけれど、結果的に今回のリード曲である“トキノタイカ”を1曲目に持ってきて、ここから“うたわれ”の世界が始まりますという部分を意識しました。今回のアルバムはレコードも作る予定(2023年5月発売予定)なので、4曲ずつの裏表2枚組ということで4曲ごとに世界観をまとめてみてもいいなと意識はしましたね。最初の1から4曲目は割と“トキノタイカ”以降にアップテンポな楽曲を、5から8曲目はバラードな雰囲気のものをまとめて。9曲目からは“うたわれ”のなかでもスマホアプリ『ロストフラグ』の主題歌ということでまた新たな世界観が始まっていく感じに、最後の4曲に関しては“うたわれ”の壮大な世界観の楽曲と少し雰囲気が違って、歌詞の主人公がより身近な雰囲気のバラードやポップス的な曲が続いていると思います。
──“愛おしき欠片”もタイアップ曲ということなのでアルバム書き下ろしの楽曲は3曲ですが、これだけバラエティー豊かな楽曲があるなかで書き下ろし曲をどういうものにするかっていうのはそうとう練られましたか?
タイアップ曲だけで本当にバラエティーに富んでいるんですけれど、今回アルバム曲でバラードを必ず入れたいとは思っていて。シンプルに歌が映えるような、バラードを作ってもらいました。それが“哀哀”になりますね。
──タイトルにSuaraさんらしさも感じつつ、歌詞は前作から参加している半田(麻里子)さんで。タイトルの通り歌詞だけを読むと悲しみがメインで歌われているのかなと思うんですけれど、これはどのような気持ちで歌われたのでしょうか。
男女間のすれ違いをイメージさせるような、心が痛い歌詞ですよね。すれ違っているんだけれど、それをなんとかごまかして日々を送っている女性というか。でもだんだんそのすれ違いが自分のなかで何か確信に変わっていくような、そんな気持ちの変化がイメージできるような素晴らしい歌詞だなと思って歌いました。
──なるほど。 次の“Find me”も半田さんですがこの曲はまたそこから一転、少し希望が見えるというか。
暗い部分もあったりするけれども、最後はやっぱり希望を感じるような終わりかたになっているかなと思いますね。心のすれ違いのようなものは“哀哀”に通じるものがありますけれど、“Find me”に関しては男女間だけでなくさまざまな関係性に当てはめて聴ける曲なのかなと。静と動のコントラストが映えるアレンジのおもしろさも楽しめる曲になっていると思います。