出来上がったものはやっぱり誰かのなにかになって欲しい
──ちなみに拓さんがアルバム『Chase After』に持った印象は?
村松:“青のサーカス”のアレンジも一緒にやったっていうのもあるんですけど、結構いろんな視点で聴いちゃってて、実を言うとまとまった感想っていうのはまだ難しいんだけど、そうだなあ…すごい個人的な感じになっちゃうんですけど、“雨”っていう曲が配信始まった日も一緒にキャンプしてて(笑)。
Keishi:(笑)。雨のなかでね。
村松:“I’m With You”とかもすでに聴いてるし、「これ最近リリースされたんだっけな?」って感じですね(笑)。自分にとって近い作品になってるからあんま客観的なことが言えないかもしれませんね。
──アルバムとしてまとまった時にどうでした?
村松:「Keishiだな」と思った、みたいになるな。なんかそういう角度で見てるんでしょうね、音楽を。だからこれを語るってなるとちょっと照れくさいですけど。
──普段から遊んでる本人を前にすると、そうですよね。
村松:そうですね。でも“青のサーカス”のレコーディングに参加したうえで思うのは、“雨”みたいな曲、ピアノの旋律とかメロディラインとかも僕には書けないんで。バックグラウンドにある自分のなかで鳴ってきた音楽っていうのはいわゆる影響を受けたものだと思うんですけど、そこが多分徐々にまた深くなっているっていう印象があったかな。音楽を掘ってんだろうなっていうか。例えばV6に楽曲提供したりとか、Keishiの活動がだんだん世の中に認知されてきて、どんどん広がっているけど、多分Keishiの中身はどんどんルーツの方につながっているんだろうなという印象がここ数年の活動であって。それをこのアルバムでも結構感じたかな。むやみにいまっぽいからこういうメンバーでこのプロダクション組んでこの音使ってっていうところはKeishiからほぼ感じない。
Keishi:嬉しいです。ソロだから、自分を感じてもらうことがファーストアルバムからずっと重要だなと思ってて。このアルバムを「Keishi Tanakaそのものだ」って言われたら、やっぱ「よし」と思うし。あと、自分は音楽作る側だけど、聴く側でもあるので、やっぱり自分のなかでモードがあって。例えば4枚目のアルバムのときは、もう少しゴスペルとか、ブラックミュージックを日本人かつ、Keishi Tanakaのポップスとしてやるっていうテーマがあったり。今回の作品はファーストやセカンドにちょっと感覚が近くて、もう少しSSWらしい、ソロ名義だからできる音楽ではあるなと思ってます。一見統一感がないって思うかもしれないけど、僕自身そこはあんまり心配してなくて。自分が歌えれば自分の作品になる自信があるから。
──確かに。
Keishi:今回のアルバムでは、ジャンルとか音色も前半と後半で分けてるんです。レコードも作ってるので、A面5曲まではちょっと打ち込みにも聴こえるような音作りをしていて。ドラマーとかエンジニアと相談しながら、ドラムの音を決めたりとか、そういうのも楽しんでいます。で6曲目からは、より生バンドの質感を楽しむみたいな、もうちょっと古い音楽の録り方をしていて。最後にまた打ち込みの“I’m 〜with you”があって、また1曲目の打ち込みに戻るっていう。この時代でもアルバムを作るんだったらそういう流れを自分は楽しみたいから。やっぱそういうのが好きなんですよね、アルバムを作る上で。
──Keishiさんの音楽は最終的に毎回、チアフルな感じがします。
Keishi:さっき拓ちゃんが言ってたけど、20代は自分のために音楽をやってきて、30代になってからは出来上がったものはやっぱり誰かのなにかになって欲しいとは思ってるから。自分のためにやっていることは変わんないんだけど。そういう意味では届けないと意味ないし、誰かを想像して書いているところはありますね。作るだけで音楽を完結させられる人もいると思うんですけど、僕はそういうタイプではないんで。そういうところが多分チアフルというか、ちょっと背中押すようなことになればいいかな。
村松:なんだろうね、Keishiから出る、そこかしこに見えるパーティー感とか(笑)、必ず孤独と周りにいる人とのコントラストが見えるようなところがあるよね、Keishiの歌って。
Keishi:多幸感とか言ってもらうこともあるんですけど、基本的に人間って孤独じゃんとも思ってるから。なんかただ単にずっとパーティーしてたいタイプでもないから、ひとりでキャンプとかも行くのかもしれないけど。そういうところが孤独とパーティーを行ったり来たりしてるように聴こえるのかもしれないですね。
──今回は拓さんにはちょっとゲスト的な感じで対談していただきましたが、Nothing’sの今後もお伺いできれば。
村松:今年は年末に1本ライヴをして締めて、来年2月に豊洲PITでのワンマンライヴが決まってます。
Keishi:ソロは?
村松:ソロは今年ツアー終わって、弾き語りのCDも出したんで、一旦ちょっと区切って。ABSTRACT MASHもいまレコーディングしてて。で、山田将司(THE BACK HORN)さんとユニット(とまとくらぶ)もはじまったし、俺は俺で結構やることがあって、ちょっとソロの構想はいま練り中です、また新たにいろいろ動いて来ちゃったんで、いろんな見せ方とかいろんな楽しみ方をしたいなあって思ってるところですね。
編集:梶野有希
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