2022/10/31 12:00

REVIEWS : 052 ロック(2022年10月)──宮谷行美

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューする本コーナー。今回はReal Soundなどの音楽メディアでも活躍中のライター、宮谷行美が洋楽を中心に、国内の気鋭のアーティストも含めてオルタナティヴなロック+αのいま聴くべき作品9枚をレヴュー。


OTOTOY REVIEWS 052
『洋楽ロック(2022年10月)』
文 : 宮谷行美

Jónsi、Sin Fang、Alex Somers、Kjartan Holm 『Sounds of Fischer Vol.1』

Sigur Rós のヨンシー、Seabearのシン・ファング、アレックス・サマーズ、ヤルタン・ホルムによるコラボから生まれた珠玉のアンビエント・コンピ。自然の息遣いを模したかのようなサウンドスケープに包まれ、その美しさに惚れ惚れとするとともに、嗚咽をあげて泣きたくなるような感覚まで覚える。生活音と大自然が鳴らすうねりをかけ合わせたようなSEの数々、言葉を並べるかのようなささやかな歌、哀愁を誘うストリングスの旋律、そのすべてから生命の息吹と景色の移ろいを彷彿させる。そしてアンビエント・パートとビートにしっかりと歌を乗せたメロディ・パートを繰り返すラスト・トラックもまた秀逸でした。

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鋭児 「World is Mine」

「いま日本で最もクールなバンドは?」と問われたら、迷わず鋭児と答えると思う。〈FUJI ROCK FESTIAL'22〉でその名を広めた彼らのセンスとアイデアは、その名の通り尖った子どものように自由で、猛々しくギラついている。テジタリックなサウンド構築にアナログならではの風合いや衝動性を叩きつけ、バンドであることの存在意義を証明とともに、生半可なものを一切寄せ付けないかの如く威厳を放つ。詰め込みに詰め込んだバースからキャッチーに特化したサビのワンフレーズへの繋ぎも気持ち良いし、変幻自在なヴォーカリスト御厨響一の表現力も素晴らしい。

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Beverly Kills 『Kaleido』

MakthaverskanやIsolated Youthに続く、スウェーデン発ポストパンク・バンドの待望のデビュー・アルバムで、情熱的でドラマチックな11曲が揃う。キュートで儚げなフロントガール・アルマの歌声にミニマルなドラムとベース、主旋律に呼応するように繊細なニュアンスを加えるギターのアンサンブルが絶妙な浮遊感とライド感を生み、オルタナ寄りシューゲイズが好きな人にもたまらない音像とテクスチャーに仕上がっており、前者2バンドとの違いをしっかりと付けてきたというのも一ファンとして嬉しいところ。来年にはアメリカの音楽フェス〈SXSW〉に出演するとのことで、さらなるブレイクに期待大!

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