2022/10/21 18:00

Half time Oldが綴る世の中へのアイロニーと希望──「成長」をテーマに制作した、フル・アルバム

Half time Old

名古屋のロック・バンド、Half time Oldが約4年ぶりのフル・アルバム『身体と心と音楽について』をリリース。今作は、初のアニメタイアップとなるテレビアニメ『惑星のさみだれ』への書き下ろし楽曲"暁光"や、ZIP-FM『HOORAY HOORAY FRIDAY』内のコーナー〈CHEER UP SONG〉で誕生した人気曲“雫”のバンド・アレンジ版などを含む、全12曲が収録されている。これまでなにかテーマを決めてアルバムを制作することはなかった彼らだが、今作は「成長」を軸に作り上げていったとのこと。そうすることで様々な面がブラッシュ・アップされたという今作について、メンバー全員にきいた。

Half time Old、4年ぶりの新作アルバムはこちら


INTERVIEW : Half time Old

毎年秋になると、高揚感で心がいっぱいになる。Half time Oldの新作がリリースされる季節だからだ。2018年にリリースされた3枚目のフル・アルバム『真夜中の失踪に聡明と音楽』以来、肌寒さを感じはじめた時期に彼らはいつもハートフルな作品を届けてきた。しかし、暖かさだけが魅力ではない。歌詞はかなり現実的で、ときに鋭い。だけど最後には必ず希望を綴り、前を向かせてくれる。そして、その歌詞とヴォーカルを尊重することに徹するユニークな楽器隊。それがHalf time Old、最大の魅力だ。その良さが最大限に反映された、最新作について、語ってもらった。

インタヴュー・文 : 梶野有希

僕らの音楽も誰かの成長のきっかけになれたら

── 今作は「成長」をテーマに制作されたとTwitterでおっしゃっていましたが、なぜこのテーマに?

鬼頭大晴(Vo / Gt)(以下、鬼頭):先行配信した“暁光”がテレビアニメ『惑星のさみだれ』への書き下ろしなんですけど、このアニメの主なテーマが「成長」だったんです。今作はこの曲を軸に作っていきましたし、僕らがフル・アルバムを最後に出した4年前から成長したこともたくさんあるので、まさに「成長」がぴったりなテーマだなと思ったんです。

──数年の成長を形にするという意味もあって、今作は久しぶりのフル・アルバムなんですね。

鬼頭:そうですね。ここ数年でリリースしてきたEPを通して得たスキルを活かせそうだと思いましたし、曲の幅も広がってきている時期だったので、今回はフル・アルバムでいこうとなりました。

──バンドとして成長を感じたエピソードはありますか?

鬼頭:アレンジャーさん含め、僕らに関わってくれる方が増えたんですけど、そういった人との関わりを通して学んだことがいちばん自分の成長につながっていると思います。音楽から離れたことがないので、成長をちゃんと実感することってあまりないんですよね…。なにかあるかな?

阪西暢(Dr)(以下、阪西):現在進行形で成長を感じることって、実は難しいよね。これまでの色々な経験が成長に繋がっていて、今作ができたんだと思います。

小鹿雄一朗(Gt)(以下、小鹿):高校生の時に楽器をはじめたので、音楽と向き合ってもう10年くらいになるんですけど、こんなに真剣に取り組んできたものって、僕は音楽だけで。子供の頃はここまで一生懸命になるものがなかったので、そういう意味でも成長しているなと思いますね。

鬼頭大晴(Vo / Gt)

──歌詞もサウンドも、いままででいちばん明るいアルバムだと私は感じましたが、みなさんはどういった作品になったと思いますか?

鬼頭:パッと聴くと暗いことを歌っていたりするし、ちょっと病んでる歌詞だと多分感じてしまうと思うんですけど、何度も聴いてもらうことで、きっと色々な人を救ってくれるアルバムになりました。

阪西:フル・アルバムが4年ぶりということもあってまた1段階バンドとしてステップ・アップできた盤になったと思います。各々のスキルも当然上がっているので、僕らがいまできるベストを出せましたね。

内田匡俊(Ba)(以下、内田):バンドとしては4年ぶりのフル・アルバムですけど、僕にとっては加入してからはじめてのフル・アルバムで。これまでの良さを踏まえつつ、新しく得た知識によって、4年前よりもさらにブラッシュ・アップされた作品になっていると思います。その時々の境遇や感情にあわせた音楽って人それぞれあると思いますけど、僕はそういった曲にいつも後押ししてもらってきたので、僕らの音楽も誰かの成長のきっかけになれたら嬉しいですね。

──前回のフル・アルバム『真夜中の失踪に聡明と音楽』はギター・ロックを全面に出した作品でしたが、今作もその音像に近しい曲がいくつか入っています。

小鹿:曲によってはギター・ロックにかなり寄っていたりと、ギター・ロック調は変わらず大事にしつつも、今回はアコギを結構多めに入れていたりとか、サウンド面はかなりハイブリッドなアルバムになっています。前作のアルバムを通して学んだことと、ここ数年で成長した部分を織り交ぜることで完成した作品ですね。

この記事の筆者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.261 長ければ長いほどいいですからね

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.261 長ければ長いほどいいですからね

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.254 三が日はサッカーボールとともに

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.254 三が日はサッカーボールとともに

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.247 小説を読む、音楽を知る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.247 小説を読む、音楽を知る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.239 料理をするようになったのは

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.239 料理をするようになったのは

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.227 地上で唯一出会える神様

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.227 地上で唯一出会える神様

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.220 コレクターって最高にかっこいい

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.220 コレクターって最高にかっこいい

視覚と聴覚を往来する、ヨルシカの音楽画集『幻燈』レビュー──2名の評者が魅せられた世界観とは

視覚と聴覚を往来する、ヨルシカの音楽画集『幻燈』レビュー──2名の評者が魅せられた世界観とは

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.212 仕事の境界線を超えて

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.212 仕事の境界線を超えて

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.205 映像作品を縁取る音

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.205 映像作品を縁取る音

いい曲を作ることがいいライヴへ繋がる──神はサイコロを振らないがパフォーマンスへかける想い

いい曲を作ることがいいライヴへ繋がる──神はサイコロを振らないがパフォーマンスへかける想い

TWEEDEES『World Record』を2名の評者が徹底レビュー!──メッセージ性や音質の違いに迫る

TWEEDEES『World Record』を2名の評者が徹底レビュー!──メッセージ性や音質の違いに迫る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.197 2022年のベストライヴ10

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.197 2022年のベストライヴ10

Half time Oldが綴る世の中へのアイロニーと希望──「成長」をテーマに制作した、フル・アルバム

Half time Oldが綴る世の中へのアイロニーと希望──「成長」をテーマに制作した、フル・アルバム

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.190 男女 “ふたり” のデュエット曲

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.190 男女 “ふたり” のデュエット曲

結成10周年を迎えた、とけた電球──待望の初フル・アルバムに込めた温もりと軌跡

結成10周年を迎えた、とけた電球──待望の初フル・アルバムに込めた温もりと軌跡

TikTokで話題のドラマー、葵がアーティスト・デビュー! "青い"プロジェクトで魅せる、本当の自分

TikTokで話題のドラマー、葵がアーティスト・デビュー! "青い"プロジェクトで魅せる、本当の自分

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.184 愛犬といつか音楽を

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.184 愛犬といつか音楽を

大幅なアップデートを遂げた、神はサイコロを振らない ── 最新シングルとライヴを通じて、その理由を探

大幅なアップデートを遂げた、神はサイコロを振らない ── 最新シングルとライヴを通じて、その理由を探

願うは、愛と平和。──希望を届ける、神はサイコロを振らない〈Live Tour 2022「事象の地平線」〉ファイナル公演

願うは、愛と平和。──希望を届ける、神はサイコロを振らない〈Live Tour 2022「事象の地平線」〉ファイナル公演

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.173 2022年前半の音楽メモリー

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.173 2022年前半の音楽メモリー

新東京──ギターレスで魅せる、バンドサウンドの新たな可能性

新東京──ギターレスで魅せる、バンドサウンドの新たな可能性

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.167 音楽からあのキャラクターを

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.167 音楽からあのキャラクターを

厄介な心との向き合い方──3人の評者が秋山黄色のサード・アルバム『ONE MORE SHABON』を徹底レビュー!

厄介な心との向き合い方──3人の評者が秋山黄色のサード・アルバム『ONE MORE SHABON』を徹底レビュー!

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.159 家族の時間

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.159 家族の時間

はじまりは劣等感の肯定から──神はサイコロを振らない、未知なる日常を彩る初のフル・アルバムをリリース

はじまりは劣等感の肯定から──神はサイコロを振らない、未知なる日常を彩る初のフル・アルバムをリリース

10年間の想いを込めた初の武道館公演──“チームSHE'S”で作りあげた〈SHE’S in BUDOKAN〉ライヴレポート

10年間の想いを込めた初の武道館公演──“チームSHE'S”で作りあげた〈SHE’S in BUDOKAN〉ライヴレポート

ひとりひとりが“need you”!──緑黄色社会が受け止めるそれぞれの多面性

ひとりひとりが“need you”!──緑黄色社会が受け止めるそれぞれの多面性

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.148 読んでほしい! 2021年のオススメ記事

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.148 読んでほしい! 2021年のオススメ記事

Sean Oshima──ノンフィクションな表現を貫くソロ・シンガー

Sean Oshima──ノンフィクションな表現を貫くソロ・シンガー

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.142 音と色が繋がるとき

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.142 音と色が繋がるとき

灰色ロジックが辿り着いたストレートな表現─CD限定の初アルバムをリリース

灰色ロジックが辿り着いたストレートな表現─CD限定の初アルバムをリリース

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.136 バンドとライヴハウス

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.136 バンドとライヴハウス

文藝天国──聴覚と視覚で感じる淡い共鳴

文藝天国──聴覚と視覚で感じる淡い共鳴

【ライヴレポート】3組が表現したそれぞれのポップ──peanut buttersレコ発ライヴ〈Peanut Night〉

【ライヴレポート】3組が表現したそれぞれのポップ──peanut buttersレコ発ライヴ〈Peanut Night〉

大切なことはフィーリング! ───“これまで”を収録したpeanut buttersの初アルバム

大切なことはフィーリング! ───“これまで”を収録したpeanut buttersの初アルバム

chilldspotは10代をどう過ごしたのか?──これまでの歩みを映した初アルバム『ingredients』

chilldspotは10代をどう過ごしたのか?──これまでの歩みを映した初アルバム『ingredients』

オンライン・ライヴ・シリーズ『The LIVE-HOUSE』独占インタヴュー──第5弾出演アーティスト・lucky Kilimanjaroのときめきの正体とは?

オンライン・ライヴ・シリーズ『The LIVE-HOUSE』独占インタヴュー──第5弾出演アーティスト・lucky Kilimanjaroのときめきの正体とは?

小玉ひかり×Tani Yuuki スペシャル対談──コラボ楽曲“more”で共鳴するふたりの想い

小玉ひかり×Tani Yuuki スペシャル対談──コラボ楽曲“more”で共鳴するふたりの想い

初作にして傑作か?──5年のキャリアの集大成、ファースト・アルバムをリリースしたNewdums

初作にして傑作か?──5年のキャリアの集大成、ファースト・アルバムをリリースしたNewdums

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.121 週末、空いていますか?

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.121 週末、空いていますか?

ネクライトーキーが向かう新たな表現とは? ───ロック・サウンドを追求した意欲作『FREAK』

ネクライトーキーが向かう新たな表現とは? ───ロック・サウンドを追求した意欲作『FREAK』

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.114 〈JAPAN JAM〉予想セット・リスト

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.114 〈JAPAN JAM〉予想セット・リスト

the McFaddin×HOLIDAY! RECORDSs×FRIENDSHIP.の座談インタヴュー──関係者が語るバンドのエモーショナルな魅力と4曲の新作について

the McFaddin×HOLIDAY! RECORDSs×FRIENDSHIP.の座談インタヴュー──関係者が語るバンドのエモーショナルな魅力と4曲の新作について

比喩根(chilldspot)──信念を歌声に乗せて。世の中へ疑問を投げかける若きシンガー

比喩根(chilldspot)──信念を歌声に乗せて。世の中へ疑問を投げかける若きシンガー

今週のFRIENDSHIP.(2021年3月17日).

今週のFRIENDSHIP.(2021年3月17日).

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.106 “さくら”ソングと一緒に!

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.106 “さくら”ソングと一緒に!

ナリタジュンヤ──Miyamotoをプロデューサーに招いた新作「Regret」。共作の魅力やふたりの音楽性に迫る

ナリタジュンヤ──Miyamotoをプロデューサーに招いた新作「Regret」。共作の魅力やふたりの音楽性に迫る

Helsinki Lambda Clubは、これからも少年と大人の間を行き来する──〈"MIND THE GAP!!"〉ファイナル公演 ライヴレポート

Helsinki Lambda Clubは、これからも少年と大人の間を行き来する──〈"MIND THE GAP!!"〉ファイナル公演 ライヴレポート

先週のオトトイ(2021年2月1日)

先週のオトトイ(2021年2月1日)

REVIEWS : 012 国内インディ・ロック(2021年1月)──梶野有希

REVIEWS : 012 国内インディ・ロック(2021年1月)──梶野有希

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.100 2018年のインディーロックを振り返る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.100 2018年のインディーロックを振り返る

[インタヴュー] Half time Old

TOP