BREIMEN 『Fiction』
レーベルはこの3作めを「勝負作」と謳っていたが、そのタイミングで「デモを作らない」「クリックなし」「合宿」などの課題を設けて制作に臨んだのはすごいことだ。アルバムのコンセプトも明快だし、 “猫ふんじゃった” をモチーフにした “CATWALK” や童謡を予想外の方向に膨張させた “あんたがたどこさ” 、切ないバラードに驚くほど多様な要素を盛り込んだ “綺麗事” など、ひとつ間違えれば頭でっかちになりかねない側面も多々あるが、それらをことごとくアレンジや演奏の「人間感」でクリアしている。高木祥太の発声のヴァリエーション並びにその効果も圧巻。統一感と幅の両方に優れ、並々ならぬ才能と技術と情熱をもって作られたことが一聴してわかる。曖昧さは一切ないのに不思議は山盛り、魅力の塊みたいなアルバムだ。
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関取花 『また会いましたね』
メジャー2作めにして「新しい花」が開いたというか、理想的なアルバム作りができたのではないだろうか。セルフ・プロデュースで、ライヴのサポート・メンバーである谷口雄、ガリバー鈴木、岡田梨沙が全編に参加。タイトルの印象ほど懐古的ではなく、「逆上がりの向こうがわ」を覗いた経験も例えば “ねえノスタルジア” や “やさしい予感” のアレンジに着実に生きていて感服。関取流ハード・ロックといった趣の新境地 “明大前” “障子の穴” や、頭韻と巻き舌でノリノリの “道の上の兄弟” など、歌も演奏も終始いきいきと弾んでいる。 “風よ伝えて” “ミッドナイトワルツ” “青葉の頃” とワルツ(系)が多いのもいい。「ああ ここで生きて行く ここに生きている/私が輝ける場所を やっと見つけた」と歌われる “スポットライト” の喜びよ。
関取花 『きんぎょの夢』
今回の落穂拾いは関取花の昨年8月に配信されたシングル。当時はチェックし洩らしていて、11月にライヴで初めて聴いた。美しい女性を金魚鉢の中で揺れる「きんぎょ」に喩えるのはそう目新しい手法ではないが、「その手ですくって連れ出して」もらうのを夢と言いながら、その先に自分の「息も絶え絶えな姿」を見据え、それでも「あなたは愛してくれますか」と問いかけるのは見事だ。関取のブライト・サイドを前面に出した感があったアルバム『新しい花』のB面のような曲といえるかもしれない。弾き語り一発録りで質感が異なるし、かといってバンドで録り直せばいいタイプの曲とも思えないからアルバム未収録には納得がいくが、 “つらら” や “石段のワルツ” “僕らの口癖” などを愛聴する者として抗いがたい魅力がある。