いまはとにかくハッピーになる曲が必要
──今作は“Adventure Time”からはじまりますが、曲順はどのように決めていきましたか?
石毛:この曲は最初に寸劇っぽいところがありますけど、それを導入にすることでアルバム作品に没頭してもらえるかなって。歌録りのときに一緒に寸劇部分も録ったんですけど、ベースの涼平が曲の冒頭に入れようと言ってくれたんです。ふざけ方にもちゃんとシャレを効かせたいというか、いいふざけ方ができましたね。ギターの音像とかはアイルランドのオルタナティヴロックバンド、FangclubやThe Darknessを参考にしました。
──なるほど。最近はどんな音楽を聴いているんですか?
石毛:僕はほとんど洋楽を聴いてるんです。世代の影響もありますけど、2005年〜2010年ぐらいのニューウェーブとかディスコパンクは変わらず好きですね。その流れで最近モノだとカナダのポストパンクバンドのNOV3Lとか好きです。レコーディングに関するドラムの音はイングランドのFoalsの新譜を参考にしました。
──”Caribbean”でアルバムを締めるというのも素晴らしいなと。
石毛:これも会場限定シングルとしてリリースしていたんですけど、コロナ禍になってからいちばん最初にお客さんへ届けた曲なんです。80’sっぽいニュアンスを入れつつ、コロナなんて忘れて早く旅行にいきたいなっていう気持ちで作りました。
──ラップパートは松本さんが?
石毛:はい。誠治くんが考えて、歌ってくれてます。(誠治くんは自分でラーメン屋「大宮まぜそば 誠治」をやっていることもあって) 歌詞をもらう前から絶対にラーメンのこと書いてくると思ったので、あわせて僕もラーメンのこと書いたんですよ。そうしたらちゃんと繋がって。
──話し合いもせずに!?
石毛:そうなんですよ(笑)。なにを言いたいのかわからないラップ・パートですけど、それが誠治くんらしくていいなと思って。いままで音楽は日常と繋がっていて欲しいと思ってましたけど、この曲はリスナーを非日常に連れて行きたいと思いながら作りました。ライフスタイルとライヴスタイルが繋がっているバンドはかっこいいですけど、それをコロナ禍でやっちゃうとかなりダークになるから、いまはとにかくハッピーになる曲が必要だなと。
──では、2曲目の“Feel bad”について教えてください。
石毛:おふざけなしの本気の曲です。ライヴハウスへの愛を書きました。僕は高校を中退してからずっとライヴハウスにいて、そこでたくさんのことを教わったんです。人生の半分以上、ライヴハウスにいる僕からすると、コロナ禍になって潰れていく店も少なくないから、ライヴハウスがどういう場所かということを残しておきたいなと。だからちゃんと真面目に書きました。
──ライヴハウスの魅力ってどんなところですか。
石毛:平等なところですね。先輩と後輩とか上下関係はもちろんありますけど、ライヴハウスで音楽の話をしているときだけは、そういうのを全く感じないところが好きで。身分や立場を超えて、すごくフラットにお酒を飲みながら楽しめる場所なので、もしライヴハウスがなかったら僕はすごくグレていたと思いますね。
──サウンド面のこだわりを教えてください。
石毛:僕らと同世代だったら懐かしく感じるような、エモなアレンジになってます。それこそThe Get Up kidsとかDeath Cab For Cutieのエモみがあると思います(笑)。あの時代は50hz以下のローを切ることが多いと思いますが、この曲は逆にしっかり存在させることでちゃんと2020年代の音になっていると思います。
──4曲目“High Energy, Low Intelligence”はギター・リフが印象的ですね。
石毛:誤解を恐れずにいうと、すごくダサいリフを作ろうと思って。笑っちゃうようなキャッチーなリフってthe telephonesもそうだし、僕らの世代のバンドの特徴だと思っているので、それを全面に押し出してやったろうみたいな。
──あのリフダサいかな?
石毛:イントロとかダサくないですか? 作ったとき自分で爆笑したんですよ。俺は頭振りながらこのリフを弾くのかよって(笑)。でもそのダサさがいいんですよ。。照れ隠しの1種ですけど、ミュージシャン同士でも「ダサいリフっていいよな」ってよく話すんです。
──8曲目“No Brainer”のリフも好きですよ。
石毛:イントロのギター・リフがまずあって、それにあわせて涼平がすごくかっこいいベースを弾いてくれたので、これは曲として成立するなということで。ノリが大きいですし、これもthe telephonesでは珍しいタイプの曲ですよね。いままではドラムも4つ打ちが多かったですけど、「これは4つ打ちにしたくない」ってドラムの誠治くんが頑張ってくれました。ベースが印象的なフレーズなので、それを強調したいと思っての考えだと思うんですけど。そういう個々のプレイヤービリティが発揮されて、より音楽的になったと思いますね。