「こういう曲聴いてみたい」っていうファン目線
──今回のリリースは、メンバーチェンジ後初の作品になると思いますが、どのような手ごたえを感じていますか?
実はコロナ禍に入る前には作り終わっていたのですが、自分たちがやりたいと思っていたことを詰め込めるようになったと思っています。多分いまのバンドの空気感がすごくよくて、話し合う時間をしっかりと取りながら、お互いの意見をぶつけ合って化学反応が生まれて、結果としていいものが作れるといった循環ができていて、それが今回の制作にも生かされたかなと思っています。
──バンドとしてすごく良い状態で制作に臨めたと。
そうですね。バンドってストイックにやるほど仲が悪くなったり、張り詰めた空気感を醸し出したりしているものだと思っていたのですが、いまのnimはストイックさはもちろんあるけど、気兼ねなく話もできるし、よくふざけ合ってもいます(笑)。無理をしなくても上手にコミュニケーションが取れているので、「バンドってこんなに楽しんで良いんだ」って素直に思えていますね。
──今回のEPについてですが、外側に向けたパワーの強い“Text on payment”、“A thousand years”と、パーソナルな心情に寄り添うような内向的な“Dreamy”と、3曲のなかにも振り幅の広さを感じさせますが、なにか意識していることはあるんですか?
特になにか意識したり狙ったりはしてないですが、客観的な目線でヴィジュアルも含めて「いまのnimがこういう音楽をしていたら素敵だな」と考えたときに曲がぱっと思い浮かぶことが多いです。今回でいうと“Dreamy”は、幻想的なふわっと流れるような曲がnimになかったなと思ったときに出てきた曲でしたね。
──そこも“nim愛”から生まれているんですね!
「こういう曲聴いてみたい」っていうファン目線はありますね。なかなかいないと思います。こんなに自分のバンドが好きって言う人(笑)。あとはメンバー全員に男性的な感性も女性的な感性もあるので、楽曲の振り幅が広くても違和感がないのかなとは思います。
──なるほど。サウンドももちろんですが、歌詞の力強さがすごく印象的で、いまの時代にも刺さるようなキーワードも多く散りばめられていると感じました。これはコロナ禍で感じたこととリンクしているのでしょうか?
今回の3曲はコロナ禍に入る前に作り終えていた楽曲なので、そことはあまりリンクはしていないですね。“Text on payment”は、ツアーで北海道に向かうフェリーの中でひらめたもので、海や船にちなんでそのときの自分の心境を書いたし、“A thousand years”に関しては、もともと世界各地で起きていた戦争に対して、「自分たちのことだけを考えていて良いのか」と考えていたときに書きました。その時々に自分が考えていたことがそのまま投影されているという感じですね。
──今回の3曲を含め、nimの楽曲の作詞作曲はHisanaさんが主に担当されているとのことですが、未経験での加入からバンドにとっての重役を担うまでに成長されたことがすごいことだと思います。
自分でもできると思ってませんでした(笑)。でもやるしかない状況だったので、最初は曲も作れなかったしパソコンも使えなかったけど、トライ・アンド・エラーを繰り返してここまできましたね。人間ってやっていればある程度なんでもできるようになるんだなと思います(笑)。
──最近はソロ活動も始められたということですが、なにかきっかけはあったのでしょうか。
nimではメンバーの気持ちや個性を曲にしたいという思いがあるので、そうじゃないものや私のパーソナルなことは別で吐き出そうと思って、ソロ活動を始めました。ソロでは基本的にシンセを使った打ち込みばかりで、いままでやったことがないような音楽にチャレンジしています。そのおかげもあって、自分の中ですごくバランスが取れるようになって、よりnimの曲作りに対して迷いがなくなったし、ソロで培ったものをnimに上手い具合に取り入れられるようにもなりました。
ソロ名義“appi”での初アルバム『In Yourtopia』
──バンドにソロに、ものすごい数の音楽を作っていると思うのですが、そのモチベーションはどこから来ているのでしょう?
それは自分でも思っています(笑)。ただ、自分の考えていることって、会話で人に伝えようとは思わないんです。曲にする方が自分の性に合ってるというか、そっちのほうが息をしているような感覚がするというか。生きているうちは自然と音楽が生み出せるんじゃないかなと思います。
──曲を作ることを苦痛に感じたとはないんですか?
メンバーのために音楽を作ること負担に感じていなくて、むしろ同じ曲に対してメンバーには違う景色を見つけてくれるので、それを知ることができるのが毎回すごく楽しみなんです。自分が作ったものに対して、そのままでは200%の感動はできないけど、メンバーのエッセンスが加わることで叶うというのが嬉しくて。お互いの意見やアイデアに発想し合えるからこそ、いろいろアイデアが溢れてくるところはあります。
──アイデアが尽きないというのは、バンドとしてもかなりの強みですね。
もう次の作品、さらのその次へのビジョンもしっかりと見えているので、これから攻撃開始といいますか、「nimを前進させていくぞ!」とメンバー全員で燃え滾っています。