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INTERVIEW : Helsinki Lambda Club
Helsinki Lambda Clubは、何者にも縛られない軽快さと、音楽純度の高い楽曲と、自身で進むパワーを持っている。これこそがインディーズの醍醐味だし、彼らは現存する最もかっこいいインディー・バンドの一つだ。多くのバンドと決定的に違う前述の要素が、並大抵の意思と努力では得られないものだからこそ、僕は彼らが大好きなんだ!!!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 梶野有希
写真 : 斎藤大嗣
音楽的な部分での信頼関係は前提としてある
──稲葉くん、髪型がさっぱりしましたね。なにがあったんですか?
稲葉航大(Ba)(以下、稲葉) : 去年、新木場STUDIO COASTでやった〈「Eleven plus two / Twelve plus one」release “おかわり” tour ~皆さん、お変わりないですか?~〉ファイナル公演で、「坊主にします」って宣言したんです。昨年から沖縄公演だけずっと延期になっていたんですが、その沖縄公演をようやく終えて、ツアーを完走した後の今年の3月ぐらいに、坊主にしました。自分でも気に入ってます。
──ベースも弾きやすくなりました?
稲葉 : めちゃめちゃ弾きやすくなりましたね。僕はベースを弾く位置が高いので、髪の毛が引っかかって、音がでないときもあったり、運指見えないことがあったんですけど、いまはそういうのがなくなって。
──今回のミニ・アルバム『Hello, my darkness』は、どういうアルバムになりました?
橋本薫 (Vo/Gt)(以下、橋本) : コンセプチュアルなアルバムになりました。「夢と現実の交錯」というコンセプトは重たい感じがするけど、曲調は軽やか、タイトルは『Hello, my darkness』だけどジャケは青空みたいな、明るいのか暗いのか分からないし、色々な矛盾もあって、不思議なアルバムになりましたね。
──なぜそういうアルバムに?
橋本 : やっぱりコロナ禍の影響が大きいです。制作にも、自分の気持ちにもすごく影響があって。いままでより自分の時間も増えたので、死について考えたりすることもあって。自分なりの現時点での答えや考え方がでていると思います。世の中の矛盾など、いろいろなことがコロナ禍でより明るみに出てきたじゃないですか。生活のなかで当たり前のようになっていることを、もうちょっと疑って考えていかなくちゃという気持ちが強くなったんですよね。そういう物事の裏表の部分に焦点を当てながら作ったからかな。
──稲葉さんは、どうですか?
稲葉 : 一昨年ぐらいからベースとドラムはずっとループでやるっていうのをやっていたんですけど、今回はその集大成に近いかなと思います。
──ループでやろうとしたのには、なにかキッカケが?
熊谷太起 (Gt)(以下、熊谷) : 単純にみんなそういう音楽を聴いていたんですよね。
橋本 : コロナ禍で外出できなくなって、友だちの家で音楽を聴いたり、遊ぶことが多くなって。そこでハウスだったりテクノだったりをずっと聴いていた影響が大きいと思います。
──それらを自分たちのロックサウンドに入れ込んだというイメージなのか、そういう音楽を新しくやってみたいと思ったのか、どちらに近いんでしょうか?
橋本 : ロックに消化したいみたいな気持ちはそんなになかったです。最近はどんなジャンルをやっても、ヘルシンキっぽくなるっていう確信があるので。それよりも、ループ特有の一定のリズムやグルーヴで乗れるものが単純に気持ちいいなっていうモードだったので、自分達らしくそのままやったら、こういう形に落ち着いたっていうニュアンスですね。
──なるほど。熊谷さんにとってこのアルバムはどのようなものになりましたか?
熊谷 : 肩の力がいい意味で抜けた作品だなと思ってて。前もってガチガチに考えて作るというよりかは、レコーディングのときとか、その場のアイディア次第みたいなことがいままでよりも多かったのでより自由な作品になりましたね。
──橋本くんは、なぜ軽やかに制作できたと思いますか?
橋本 : さっき、「自分の人生について考えることが増えた」って話しましたけど、人は絶対にいつか死ぬじゃないですか。だったら、楽しんだほうがいいよねっていうスタンスになったんです。いい意味で今作はそんなに深く考えていないんですよ。今作はフィーリングで作っていったので、そこが“力が抜けている”っていうところに繋がるんじゃないかな。
──意外ですね。橋本さんはよく考えて制作するタイプだと思っていたので。
橋本 : 世間的にはそういうふうに見られていますけど、実際は僕も常にそんなに考えているタイプではないんです。だから今作ではその部分を出しちゃおうと思って。もうずっとこの3人でバンドをやってきて、音楽的な部分での信頼関係は前提としてあるから、アイディアとかいろいろ試しやすいし、気持ち的にも楽なんですよね。メンバーの得意なところを前に引き出しつつ、自分がしっかり描いている部分は自分のアイディアを通してっていう、そういうすみ分けも、よりくっきりできるようになってきたから、モヤモヤ考えずに作れたんです。そこも今作の軽やかさに繋がってるかなと。
──肩の力を抜いて楽しみながら制作されたんですね。
熊谷 : 最近チームにまとまりが生まれた感じがします。音楽で遊べるムードが去年からバンドに根付きはじめていて。それが結構大きい気がしますね。最近はあまり時間をかけすぎずに、何事も直感でいこうとしているし。
橋本 : だから、今回のミックスも、なんとなく“飛べる”感じをイメージしました。音の気持ちよさというのはすごく意識しましたね。