CocoTsuki 『HIGH CONTEXT』
鈴代ここねと響かさねによるVSingerユニット、CocoTsukiの2枚目のオリジナル・ミニ・アルバム。ゴリゴリのハードロックを主体に、力強い2人のボーカルが際立ったインパクトある楽曲が並んでいる。アルバムを通して、ボーカリストとしての存在感もさることながら、とにかく生ライブへと赴きたくなるような高揚感を覚える。「Anarchy in the C.K」や「モストデンジャラスガール」のようなドスの効いた鬼気迫るボーカルから、「ラストフライトグライダー」「Snow Clover」といったがっちりはめ込んだユニゾンを体感することができ、色鮮やかな楽曲のギャップも楽しむことができる。ライブに行きたい!と思わせる力のある1枚だ。
てれかす 『インバイト来たからまたね』
まだまだ謎の多いVRCを拠点に活動するバーチャル・アーティストのてれかす。去年リリースされた「バーチャル六畳半」から2022年リリースの「インバイト来たからまたね」まで収録された1stアルバム。メロディックなギターポップを主体に、ラップやダンスミュージックをミックスしたような親しみやすい楽曲が特徴的。謎の多いという部分では、楽曲の魅力含め、てれかすというキャラクター性に全てが詰め込まれている。そして、てれかすだけではないが、VRCで活動するアーティストの魅力を語る上でMVの存在は欠かせない。VRCという非現実な日常の情景とてれかすが生み出す音楽、それらが合わさった時にてれかすというアーティストの真髄が垣間見えると思っている。
辻麗月 『suicide note.mp3』
タイトルの「suicide note.mp3」というインパクトの強さにまず目を奪われるが、各楽曲のタイトル含めメッセージ性もかなり印象的。「これ聴いたら返事して。」「優しい自殺」「私が私を殺した日。」など究極の私信がずらりと並んでいる。しかし、メッセージ性とは裏腹にかなりメロウでスッと耳に入る辻麗月のボーカルがいろんな意味で楽曲の深さを助長させている。それでもアンニュイで一般的には聞きなれない言葉の羅列が並んでいるが、乖離的な違和感はない。受取手はかなり狭ばるが、どことなく日常の範囲内として感じることができる。スローテンポで無機質に近いトラックと息を吐くような辻麗月の吐露のオンパレードに、深淵のアンソロジーとしての一面を感じずにはいられない。