【連載】Episode70 MiKiNA EMPiRE「あの日のライヴは嘘じゃなかった、夢じゃなかった」
WACKとavexの共同プロジェクト、EMPiRE。2021年11月に幕張メッセイベントホールにて開催したグループ最大規模のワンマン公演の模様を完全収録した映像作品『EMPiRE’S SUPER ULTRA SPECTACULAR SHOW』を2022年4月6日に発売し、4月10日からは全国8カ所を回るホールツアー〈EMPiRE DOPE MAGiC TOUR〉を開催する。そんな彼女たちの2022年初となる個別インタヴューを敢行。第3回はMiKiNA EMPiREの声をお届けする。
最新アルバム『BRiGHT FUTURE』
INTERVIEW : MiKiNA EMPiRE
グループ史上最大規模の幕張メッセイベントホールでのワンマンライヴが即日完売となりエージェント(※EMPiREファンの総称)たちとともに大成功させたEMPiRE。2月18日には公式フォトブック『EMPiREビジュアルブック ViBES』を発売するなど、ライヴ以外にも様々な魅力を発信し続けている。そんな彼女たちは2022年の始まりとともに、どのようなことを考えて活動しているのか? クールな雰囲気に反して、実際は少し抜けているところがチャーミングで、そのギャップが魅力的なMiKiNA EMPiREに話を訊いた。
取材&文 : 西澤裕郎
写真 : 大橋祐希
あの日のライヴは嘘じゃなかった、夢じゃなかった
──幕張から約3ヶ月が経ちますが、振り返ってみてどんなライヴになりましたか?
MiKiNA : それまでやってきたことが全部、自信になって出し切れたライヴになりました。幕張までの数年間は上手くいくことばかりじゃなかったし、思うようにいかなくて、もどかしい気持ちになったこともあったけど、全部含めて糧になって繋がったライヴで。なんて言うんですかね……。
──集大成?
MiKiNA : それです!(笑)。1個のフェーズの集大成のライヴになりました。
──やり切ったことで放心状態じゃないですけど、抜け殻みたいにならなかったですか?
MiKiNA : やりきった気持ちはありましたけど、この先がもっと楽しみになりました。私は幕張を1つの明確な目標にしていたので、ここからは未知の世界なんですけど、積み重ねてきたグループの歴史もあるし、メンバーを信頼しているし、いろいろ試していきたいなって思っています。
──幕張はセンターステージでしたが、実際やってみていかがでしたか?
MiKiNA : 全方位にお客さんの顔が見えるのは、すごく最高だなと思いました。どこを向いても、気持ちを伝えてくれる人が見えるのがすごくうれしかったです。同時に、いつもとは違うので混乱もしました(笑)。私、「MAD LOVE」でミスをしちゃって。それすらもよかったと思えたので。すごく楽しめたんじゃないかなと思っています。
──「MAD LOVE」では、どんな部分をミスしてしまったんですか?
MiKiNA : YU-KiとNOWが歌いながら掛け合いをする場面で、2人を軸に一斉に円になって回り始めたんです。そしたら、どこが正面か分からなくなっちゃって、自分のポジションが一切分からなくなってしまい、やばいやばいってなってしまって……なんとかした風にしました(笑)。そこもガッツリカメラに映されています(笑)。
──(笑)。あらためて自分たちのライヴを映像で観て、どう思いました?
MiKiNA : すごく幸せそうな顔をしているなって。もちろんやっているときも楽しかったんですけど、こんなに柔らかい表情で堂々と立てていたんだなって思いました。ライヴ中は背中合わせだったので見えてなかったけど、映像を振り返って、改めてメンバーのパフォーマンスとか表情にかっこいいなと感じました。あと、エージェントが、すごく遠くの人までたくさん手を挙げてくれたり踊ったり手を振ったりしてくれていて、あの日のライヴは嘘じゃなかった、夢じゃなかったって思いました。
──センターステージ用にフォーメーションを分担して作ったそうですね。MiKiNAさんはどの曲を担当したんでしょう?
MiKiNA : 「WE ARE THE WORLD」と「I have a chance!!」と「MAD LOVE」を作った気がするような…… あとなんだっけ、うわー! あとは思い出せません(笑)。
──360度仕様にフォーメーションを変更するのは大変だったんじゃないですか。
MiKiNA : メンバーが誰も客席を向いていない瞬間を作らず、どの方向からも常に誰かが客席に向いているようにしたかったのですが、フォーメーションのバリエーションが出てこなくて。そこは苦戦しました。でも、楽しいんですよ。基本円で組んでいると、上から見たときに幾何学模様になる瞬間があって。それが完成したときが綺麗でした。それも映像に残されていて見どころで、そういう楽しみ方もできてよかったですね。
解決しなくても、メンバーの気持ちを知るのは大事
──そういえば、偶然ニュースにMiKiNAさんが映り込んだ映像が話題になっていましたよね(笑)?
MiKiNA : ラジオ番組のスタッフさんにも「見たよ―」って言われたんですけど、あんなにアホに映る人いませんよね……。あの映像を観たお母さんから「今年はMiKiNA持ってるね! MiKiNAの年だよ」って言われて(笑)。
──あははは。それにしてもよく気づきましたよね。
MiKiNA : エゴサーチをたまにするんですけど、やたら「MiKiNAちゃんがテレビに映ってる」って出てきて。探してみたら、あの映像が出てきて……(笑)。
──MiKiNAさんらしさ全開な感じでよいなと思いましたよ。ちょっと抜けている感じのところも絵になるというか。ちょっと前までのEMPiREって、必死で真面目で抜きどころがないみたいなところもあったなと思っていて。
MiKiNA : だんだんみんなも強がらなくなったというか、のびのびするようになりましたね。それがグループにもいい様に作用しているのかなって。
──「Haggling」のMVで、メンバー6人でわちゃわちゃしているシーンが1番EMPiREっぽいってMAHOさんが言っていましたが、普段、ああいう感じなんですか?
MiKiNA : ああいう感じですね。1人がふざけ始めて、それに他のメンバーが乗っていく。楽しいんだけど、終わった後は何も覚えてないみたいな(笑)。でもすごく楽しそうだからいいかみたいな感じがEMPiREっぽくて。あれが完全に素ですね。たしかに空気が柔らかくなったのはありますね。
──それはどのタイミングで変わったんでしょうね。
MiKiNA : コロナ禍が大きいのかもしれないですね。
──コロナ禍のはじめの頃は思い悩んでいた感じが強かったですよね。
MiKiNA : たしかに、みんな暗かった。どうしたらいいんだろうみたいな。幕張までの期間、話し合いの時間がすごく増えたんです。今まではスルーしてたような小さいことまで丁寧に潰していったんですよ。私も自分と向き合って、思い悩んでいることはなんだろうとか、モヤモヤしていることも1個1個潰していって。それぞれそういう向かい合いをしてきたことが大きいんじゃないかなと思います。
──自分への向き合い方は、どのように実践していったんでしょう。
MiKiNA : 誰かに言うようなことでもないなってことってあると思うんですけど、そういうのをノートに書いてみたり、人と話してみたりして向き合ってみたんです。そしたら何が不安なのか自分で分かってきて。まず何が不安なのかを理解してから、それを解消するためにやれることを全部やっているか?と自分に問いかけたら、やってないなと思って。そこから、最初にやれることは何かを考えてやっていったんです。
──それはすごいですね。やらなくても誰にも何か言われることでもないじゃないですか。
MiKiNA : でも、そうしないと成長できないなって思ってたので。
──先日WACKが開催したメンズオーディションで脱落者を話し合いで決めるって課題があって。それぐらいWACKでは話し合いを重要視しているのかなと思って。話し合うことによってグループの雰囲気とか、パフォーマンスがよくなっていくと感じることはありますか?
MiKiNA : あります。やっぱり空気が変わるんじゃないかな。解決しなくてもいいんですけど、メンバーがお互いの気持ちを知るのって大事で。話さなければ気持ちって伝わらないと思っていて。 そういうのを知れるだけでも全然違うというか。受け止め方を自分の中でも噛み砕いて考えられるんです。お客さんってすぐ見抜くし、グループの空気とかってパフォーマンスに出ちゃうから。私たちはパフォーマンス集団じゃないからダンス一本で勝負しているわけじゃないし、グループとしての一体感を作り上げることに意味を持たせているから、そこがズレていたりしたら伝わっちゃうと思うんです。そこが1番大事かなと思うんです。
いろいろ挑戦していきたいし、向き合いたい
──昨年末には、「柏木由紀なりのWACK」で、投票企画「VOTE!! WACK SELECT 7」も行われました。WACK全体で投票結果を争うという企画にはどんな気持ちで臨んだんでしょう。
MiKiNA : EMPiREを知ってもらうために、自分のいいところを出せたらと思って臨んでいました。ただ、頭では分かっているんですけど、ファンの人の気持ちが数字で計られるような気がするのがすごく心苦しかったんですよ。私、最初のほう、めっちゃ順位が下だったんです。中間発表も私だけ変わらず29位で。それで私のファンの人が落ち込んでいたりして。
──それは心苦しいですよね。
MiKiNA : 正直に言ったら、順位が下なのはちょっと傷つくけど、それ以上にファンのみんなに顔向けできないなって気持ちが大きくて。だからちゃんと自分のいいところを出すっていうことを意識するようにしていました。
──自分の個性をアピールしていく上で、自分の1番知ってもらいたいところってどういう部分だったんですか?
MiKiNA : ギャップかなあ……。エージェントには認知されてきたと思うんですけど、私が変なことはまだ知らない人が多いと思うんです(笑)。パッと見たときに、クールな感じに観てもらうことが多くて。自分の世界観だったりゆるさとかも、まだ知らない人が多いんじゃないかなと思って。この企画では柏木さんのファンの方ももちろんいるし、他のグループのファンの人に知ってもらえる機会だったから、素をそのまま出して自分なりの姿を伝えられたらいいなって。結果的にそれがEMPiREに繋がっていったら1番いいなと思っていました。
──写真だけしか見てない人が普段のMiKiNAさんを観たらたしかにギャップをすごく感じるでしょうね。もちろん、いいギャップだと思いますけど。
MiKiNA : それをこの企画で知ってくれた方もいて、よかったなって思っています。
──年が明けて、〈WACK WACK SHiT TOUR〉が開催されました。今回EMPiREは、解散を発表したBiSHと3公演を行いましたが、どんなツアーになりましたか?
MiKiNA : いろいろなお客さんが来る中でも、EMPiREのやり方を自信持って提示できたツアーだったなと思います。以前は他のグループのことが気になっちゃって。どのグループもかっこいいから刺激的で、うわーかっこいい……みたいに思って落ち込んだりもあったんですけど、今年は全然落ち込まなかった。EMPiREはEMPiREとしてやるだけだと思えたツアーだったかな。
──いつも落ち込んでいたんですね。
MiKiNA : 1人で海に行ってました(笑)。
──今年はそれがなかった?
MiKiNA : なかったですね。他のグループは他のグループの良さがあるし、自分たちは自分たちの良さが確立できているはずだ! と思って。
──WACKの中で、EMPiREはBiSHと距離の近いグループですが、BiSHの解散についてどのように受け止めていますか。
MiKiNA : 最初に知ったときは衝撃的でした。でもBiSHがきっかけで私もこの世界に入ったし、いつも圧倒的なパワーをもらっていて。そんな魅力に溢れた人たちから学べる時間も限られているので、できる限り見ていたいって思っています。
──ツアーでは、BiSHの「プロミスザスター」と「FOR HiM」をカバーしたそうですが、どういう心境でパフォーマンスをしたんでしょう?
MiKiNA : まず、BiSHがやる「プロミスザスター」と「FOR HiM」をそのまま再現することは絶対に違うなと思っていて。BiSHと清掃員が大切に積み上げてきた曲だし、自分でこの曲を噛み砕いて大切に歌いたいなと意識しました。私にとっても思い入れがあるので、やっぱり緊張しちゃって足がガクガクで。あらためてBiSHの曲をやっているときって想いが溢れてくるんですよ。歌でこんなに溢れるのってすごいなと思って。BiSHの歴史も含めて楽曲が持つパワーがすごいんだなってあらためて思ったりしました。感じたことのない感覚でした。
──ある意味、自分たちの曲をやる以上に緊張感がありますよね。
MiKiNA : めちゃくちゃありますね。「FOR HiM」の歌い出しと〈内蔵〉のパートを私が歌ったんですよ。どうやって表現しようと試行錯誤しながら練習しました。
──4月から春ツアー〈EMPiRE DOPE MAGiC TOUR〉が始まります。どんなツアーにしたいと思いますか?
MiKiNA : ホールで会場の規模が大きいので、たくさんの人に見てもらえる機会だと思うし、改めて丁寧にパフォーマンスしていきたいと思っていて。個人的にもこのツアーで挑戦していきたいことへのイメージが湧いてきていて、さっき話したように自分ともなんですけど、楽曲に対しても、来てくれるお客さんに対してもしっかりとこのツアーで向き合っていきたいと思っています。その結果をはじめましての人にも、ずっと好きでいてくれる人にも、全員もれなくEMPiREとしても、私個人としても、想いと熱量を伝えられるツアーにしたいですね。
──3rdアルバム『BRiGHT FUTURE』の曲も披露するツアーになると思うんですけど、特にこの部分に注目してほしいなって見所を教えてください。
MiKiNA : 今までにないフォーメーションを考えて作っているので、楽しみにしていてほしいです。『BRiGHT FUTURE』の楽曲は、距離が近い曲が多いと思っていて。今までの曲は、疾走感とか、壮大さみたいなイメージがあったと思うんですけど、「Haggling」をはじめとして柔らかくてかわいくて距離が近い曲がいっぱいあるから、それをライヴで聴いたときに印象がガラッと変わるんじゃないかなというのが、すごい楽しみです。そこのギャップも楽しんでもらえたらいいなと思いました。そこは私たちの頑張り次第なので、頑張ります!
編集 : 西田健
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LiVE iNFORMATiON
〈EMPiRE DOPE MAGiC TOUR〉
【公演日時】
2022年4月10日(日)@福岡 福岡市民会館
2022年4月16日(土)@宮城 トークネットホール仙台(仙台市民会館)
2022年4月23日(土)@広島 JMSアステールプラザ 大ホール
2022年5月2日(月)@愛知 名古屋市公会堂
2022年5月5日(木祝)@北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
2022年5月14日(土)@神奈川 よこすか芸術劇場
2022年5月21日(土)@大阪 NHK大阪ホール
2022年6月2日(木)@東京 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
PROFILE : EMPiRE
YU-Ki EMPiRE、MAYU EMPiRE、MiDORiKO EMPiRE、MAHO EMPiRE、MiKiNA EMPiRE、NOW EMPiREから成るWACKとavexによる共同プロジェクト。
2018年に1st AL『THE EMPiRE STRiKES START!!』をリリースしデビュー。
ダンスミュージックとエモーショナルが融合したサウンド、激しいダンスパフォー マンスと一体感・多幸感溢れるライブが特徴。
2021年11月23日には、チケットが即完売となった自身最大規模ワンマン『EMPiRE'S SUPER ULTRA SPECTACULAR SHOW』を開催した。