最初に音を聴かせてもらった時、「あ、まーかせた!」と思って
──なるほど。そして4曲目の“Continue”は藤井さんの参加が決定してから作り直した曲とのことでしたが、ということは、ギターが美味しい曲というイメージですか?
イズミカワ : はい。だけど私はピアノ弾きだから、やっぱりピアノも目立っていないといけないんですよ。だからギターがメインだけど、ピアノも絶対どこかにいるというバランスを攻めたかったんですよね。
──そういうオーダーも伝えつつ?
イズミカワ : いや、伝えてないけどそうなってます(笑)。
ニラジ : (笑)。僕はこの曲をみんなに演奏してもらった瞬間、これはもう、’90年代~’00年代初頭の、イギリスのポップロックバンドだと思って。どうしたらそういうサウンドを作れるかというと、ディレイですべてが決まるんですよ。ディレイをかけると実音はそこに入らないから、ソラちゃんの声の周りの空間を埋めていけるわけです。そうすることで、僕がイメージしたようなヨーロッパっぽい雰囲気がめちゃくちゃ出るんですよね。だから、ギターは実際に録る時はクリーンで音を出してくれていたんですけど、僕がミックスでサウンドを完全に作り上げて。歌もそうだし、ドラムやベースにもディレイをかけています。
──また、今回ハイレゾも配信されるとのことなので、ニラジさんからエンジニア目線で聴きどころを教えていただきたいです。
ニラジ : ハイレゾで聴いてもらえるということは、僕の頭の中で鳴っている音をそのまま聴いてもらえるということですからね。僕としてもすごく嬉しいです。今日お話しした音作りにおけるこだわりはそのまま伝わるんじゃないかと思います。
イズミカワ : 全然違うんですか?
ニラジ : 全然違います。普通のイヤホンでは違いは分からないんですけど、ちゃんとしたアンプやスピーカーで聴けば、まさに僕がスタジオで聴いている音をそのまま聴けちゃうので。今回の制作における“音を汚す“、”歪ませる“というのはワイドレンジとは真逆の発想なので、サブローやスーパーハイがすごく聴こえるということにはならないと思いますが、細かい歪みの音作りやスネアの鳴り方、奥行きなどは十分に伝わるはずです。
──ニラジさんから見て、ミュージシャンとしてのイズミカワさんはどういうところが魅力的ですか?
ニラジ : やっぱりこの世界観ですよね。ふわっとしているのに、攻めるじゃないですか。そこが個性的で。
──イズミカワ自身から攻めの姿勢を読み取ったからこそ、今回ニラジさんは“サウンドを汚していく“という方向性でアプローチしたんでしょうしね。
ニラジ : そうですね。ソラちゃんの中に“攻めたい“という気持ちがなかったとしたら、こういう作品にはなっていないし、僕ももっとオーソドックスな作品に仕上げていると思うんですよ。だけど、ソラちゃんの頭の中にあるアーティストとしての自分の存在というのは、きっとそんなに綺麗なものではないと僕は感じていて。
イズミカワ : ふふふふふ。
ニラジ : それに、「普通の感じにはしたくない」ということは前もって言われていたので、僕としては「あ、想像している通りのことをやりたいようにやればいいんだな」という感じでした。でも、この世界観ってなかなかないですよ。ちゃんとプロデュースされたバックバンドとともに、すごくポップな音楽を作るシンガーさんはいっぱいいるじゃないですか。でもソラちゃんの場合は少人数で、しかも打ち込みを絶対に入れない。それは多分ソラちゃんのこだわりだと思うんですけど、その方法でどこまで世界観を作れるかという勝負に出ているから、そこがおもしろいなあと思います。
──では、イズミカワさんから見たエンジニアとしてのニラジさんの魅力は?
イズミカワ : 頼りがいがある。
ニラジ : どういうこと?(笑)
イズミカワ : いや、こう見えて私、めちゃめちゃ細かいんですよ。時と場合によるんですけど、他のエンジニアさんと一緒にやった時には、10回くらいトラックダウンを送ってもらったり「すみません、ここ、もう1回……」と自分が納得するまで直してもらったり……めちゃめちゃ細かく指示していて。(スタッフに向かって)私、いつもはもっとうるさいよね?
スタッフ : (頷く)
ニラジ : へえ、そうなんだ。全然そんな感じしなかったですけどね。
──ここまで任せるのはイズミカワさんにとっては珍しいケースなんですか?
イズミカワ : 珍しいと思います。ニラジさんがすごい方だということはもちろん知っているけど、とはいえ、はじめて音合わせをするから、どういうふうに出てくるかは全然分からないじゃないですか。だけど最初に音を聴かせてもらった時、「あ、まーかせた!」と思って(笑)。で、ほとんどなにも言わないことにしました。
ニラジ : ああ、そういうことだったんだね。
──ニラジさん、もしもまた一緒に制作するとしたら、イズミカワさんのどういう部分にスポットを当ててみたいですか? 「こういうことをやれたらおもしろそうだよね」というアイデアのようなものが現時点であれば伺いたいです。
ニラジ: 最後に収録されている“Continue”のようなサウンドに寄せたアルバムを作ってみたらおもしろいんじゃないかと思いましたね。あの曲のように、世界的なロック・サウンドとソラちゃんの個性的なアーティストをかけ合わせたような曲をもっと聴いてみたいです。今度は打ち込みも含めて。
イズミカワ : なるほど。でも打ち込みは得意じゃないんだよなあ……。
ニラジ : 今回のアルバムで生楽器のできる限界にまでは持って行けたわけですよ。そのことに僕はめちゃくちゃ満足しているんですけど、だからこそ、打ち込みの力を借りれば、もっとおもしろいものを作れるかもしれないとも思ったんですよね。でも、ソラちゃんは普通のポップスはやりたくないだろうから。その考え方のなかで打ち込みと一緒にやった場合、どんな世界を作りたがるんだろうなと。……想像しただけでちょっとワクワクしますね。
──そのアルバムが実現する日も楽しみにしています。今回の4曲はいずれライブでも聴けるのでしょうか?
イズミカワ : そうですね。実は2月22日にライブをする予定だったんですけど、感染者数も増えてきている状況なので、キャンセルしたんです。でも、レコ発ライブができることは超楽しみにしていたので……落ち着いたらまたリベンジしようかなと思っています。
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PROFILE : イズミカワソラ
2歳から両親の影響で音楽を始め、ヤマハポプコン最年少出場等、音楽界では有名な子供時代を過ごす。 小・中・高と音楽漬けの毎日を過ごし、当然音楽大学に進むものかと思われたが、これまでの反動か「普通の大学に行きたい」 と、同志社大学・文化学科・教育学専攻に入学。 同志社大学卒業、日本火災海上保険株式会社(現日本興亜損害保険株式会社)に勤務。 普通に幸せな結婚を夢見ていた両親の期待もどこえやら ! 突然沸々と沸き上がった “再び音楽へと進む気持ち” を諦められず2年半後退社し、単身上京。音楽でのメジャデビューを目指す。 その才能は早くも実を結び、見事1998年、メジャーレーベル・パイオニアLDC(現ジェネオンエンタテインメント)よりデビュー。「さんまのスーパーからくりTV」「NHK・週刊こどもニュース」「アニメ・花さか天使テンテンくん」等の曲を担当。アニメ音楽を多く制作していることから海外での認知度、評価も高く、仮想世界の曲を手がけたことがCNNにも取り上げられる。 またバンド活動ではニューヨーク・シカゴ・ロサンゼルスでのライブを成功。 2年間のメジャー活動後は活動をインディーズへと移し、クリエーターとしても映像制作・WEB制作・自社ブランド服の制作等 を手掛ける等、音楽だけにとどまらず、クリエーターとしても活動し続けている。 CMへの歌唱起用も多く、「サンウエーブ・ぱたぱたくん」「リクルート・ケイコとマナブ」「CHINTAI」「パスコ・超 熟」等多数。 そんな中、元々小さい頃から犬が大好きでワンちゃんに囲まれて生活していたところ、たくさんの犬が殺処分になっている実状を知り、「自分に出来ることはないか」とボランティアを始めたことがきっかけとなり本格的に犬の勉強を始める。 この実状を1人でも多くの人に知らせたいと、音楽を通して “殺処分0” を目指すチャリティーCDなどを制作する活動や、トリマーの資格を取って保護犬のトリミングをするなどの活動もしている。
■公式Twitter:https://twitter.com/sora_sora_sora
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