GLAY 『FREEDOM ONLY』
結成30年を超える大御所になっても、トップに立ってもえらく苦労しても、純粋な正義感や優しさ、音楽とバンドの楽しさを変わらず歌い続けるGLAYはいつ聴いても清々しい。FREEDOMを尊ぶ姿勢は前作『NO DEMOCRACY』でも印象的だったが、古くは20年以上前(“FRIED GREEN TOMATOES”)のデモをもとにした曲が大部分を占めるだけに、今回はTERUをいじり倒す内輪ノリの “Hypersonic” など、自由を言語化するよりも体現している印象。そのなかにあればこそ、コロナ禍で独裁化が進む世界を憂う “祝祭” や田舎者の哀感ほとばしる “漂えど沈まず” の直情も、“桜めぐり” の叙情も際立つ。
岡崎体育 『FIGHT CLUB』
流行りのおっさんディス?と思いきやユーモラスかつ誠実に展開するリード曲 “おっさん”、バックの譜割をしゃべりに同期させた “Fight on the Web” など、相変わらずアイデア満載。ラップ曲 “Championship” “Okazaki Little Opera” も「あるある」スキルの転用と言える。そもそも極めてすぐれたソングライターで、だからこそパロディもやれるのだ。ネタ曲で名をなした人だが、観察と批評の眼力が優秀すぎて自分自身にもツッコんでしまう(あとウケもいい)だけで、本来は二枚目タイプというのが僕の勝手な推察。その意味で、“八月の冒険者” 以降4曲のオモシロを排した曲のディープさが楽しめた。
槇原敬之 『宜候』
工業ノイズをビート化した “Introduction~東京の蕾~” が上京時の心象を回想する “ハロー! トウキョウ” につながる冒頭から凄まじい。まさに原点回帰、また音楽を作れる喜びが音そのものにみなぎって、新鮮な魚のようにピチピチと跳ねている。アルバム前半のノスタルジックな視点が、愛犬ソング “なんかおりますの” を折り返し点として現在、そして未来に切り替わっていく。個性賛歌 “虹色の未来” や別れと旅立ちを歌う “宜候” を聴けば素直に祝福、応援したくなる。もちろん細かく見ていくとメッセージすべてに首肯できるわけではないが、この1曲1曲の圧倒的な「濃さ」を前にすれば小さなことだ。