「ゾウキングドッグ」って響きよくない?
──もうひとつのEP『DEAD HAPPY』ですが、1曲目の“ワタシハココニイマス for 雨”。これも編曲は河野さんですね。
アイナ : バンドメンバーの田中義人さんがギターのフレーズを考えてくれたり、名越由貴夫さんが最後にゴジラみたいな爆音を入れてくれたりいろいろ考えてくれました。レコーディングもずっとみんなでいて、自分の演奏が終わっているのに誰も帰らないんですよ。本当にみんな前のめりで、嬉しくて。
──『DEAD HAPPY』の歌詞には「嘘」っていう言葉が出てきますよね。
アイナ : “ワタシハココニイマス for 雨”と“Sweet Boogie”はピッコマのCMに書き下ろした曲なんですけど、CMのテーマが“嘘”だったんですよ。“ワタシハココニイマス for 雨”が採用になったんですけど、どうしても“嘘”から離れられなくて、ふたつ続いちゃってますね。一回曲を創っちゃうと、サウンドと絡みついて歌詞があるので、言葉だけ変えるっていうのは難しくて。
──どんどんアイナやBiSHが大きくなっていくなかで、嘘をつき続けなきゃいけないみたいな気持ちを込めたのかなと思ったんですよ。
アイナ : それもちょっとあるかもしれないですね。“ワタシハココニイマス for 雨”は、ピッコマのCMの企画書を読んだときに、すごく自分と似ていると思ったんですよね。有村架純さんが雨の中を走っていて、その先に私が役をやっている雨ちゃんっていう人がいて、雨ちゃんは言いたいことが言えなくてずっと高架下で絵を描いてるんですよ。絵を描いてることが生き甲斐みたいな。
──なるほど。
アイナ : 私自身、うまく喋れないけど、歌とダンスを生き甲斐にして生きているから、そこがすごく似ているなと思って。だから自分の等身大の気持ちと照らし合わせて書けた歌詞です。
──2曲目の“Sweet Boogie”の編曲は“Retire”と同じGiorgio Blaise Givvnさんですね。
アイナ : ピッコマのCM曲が“ワタシハココニイマス for 雨”になったので、この曲はお蔵入りになっちゃって。でも “Sweet Boogie”は好きだったから、Giorgio Blaise Givvnさんにお願いしたら形にしてくれました。“Sweet Boogie”は、アイナ・ジ・エンド史上いちばんかわいい曲ですね。聴いてる人がハッピーになったらいいなと思ってシンプルにその気持ちで創りました。
──そして“ZOKINGDOG”。この曲はめちゃくちゃかっこいい。アイナは本当にスカパラと相性が良いなと。
アイナ : ありがとうございます。このEPは、作詞・作曲全部アイナ・ジ・エンドとしてやっていて、メロディを他の人が考えたのは歌ってなかったんですけど、「ワンワンワン」の前のフレーズが加藤(隆志)さんのメロで、この曲は共作です。
──「ワンワンワン」はもしかして「ゾッピー」ですか?
アイナ : これは違うんですよ。言葉って人も殺せるし救えるけど、そこを考えすぎちゃって、言葉に対して疲れちゃって。そんなときに、犬って「ワン」しか言えないって思ったら、それが羨ましくなってきて。別に「ワンワン」と言っても人を殺さないから「ワンワンワン」の歌を創って、「なに言ってるんだろう?」って思わせたかった。シンプルに犬が羨ましいと思って創った歌です。
──タイトルのZOKINGはいったいどこから。
アイナ : これは犬の絵を遊びで描いているときに、雑巾を被せてみたらかわいかったんですよ。そこで「ゾウキングドッグ」って響きよくない? みたいな。しかも、犬には「ゴットキング」っていうゴキブリの友だちがいるんですよ。
──なるほど…………。これはどういう歌詞なんですか?
アイナ : “ZOKINGDOG”は犬の遠吠えですね。犬と人間の心情を合わせて、「寂しがってちゃキリがない 動かなきゃ始まらない」って歌っているんですけど、それは本当にそうで。斜に構えているだけだったら意味がないし、私は病みに飽きてるので、寂しがってちゃきりがないんですよ。だから愛を求めて探し歩く犬みたいなそういう曲です。
──最後の“おでかけワンピース”。この曲はすごく可愛らしいなと思いました。
アイナ : これも、私のなかの王道ソングですね。みんなが好きな曲っていうイメージで創りたかった。
──どうしてそういう曲が創りたいと思ったんですか?
アイナ : 私の曲は、聴いていて全部しんどいから(笑)。だから “家庭教師”みたいなちょっとふざけた曲も必要だし、“おでかけワンピース”みたいな、ほっこりした素直な曲も必要だと思ってて。
──編曲は関口シンゴさんですね。
アイナ : 素晴らしいですよね。関口さんは人に嫌われない音楽を創る才能があるというか。そこに対してなにも言わせない実力があって、すごくかっこいいです。
──これまで話を訊いてきましたが、いまのアイナから、この2作品を見ていちばん分かれてるというか、ここが違う部分ってどこなんだろう?
アイナ : 全体的な世界観ですね。『DEAD HAPPY』に入っている“おでかけワンピース”は、最後男の人でも女の人でも歌えるキーで「ランランララーン」っていれているんですけど、これもライヴを見てみんなで歌ってハッピーな空間を作りたいなっていう意識があって。でも『BORN SICK』ではそんなこと一切ない。自分が「太刀魚に鱗あるの知ってた?」って聞いたり、病に飽きたとか自分本位だったり。あとは疲れた人に対して「逃げなよ」みたいな、ちょっとぶっきらぼうの愛が『BORN SICK』で。『DEAD HAPPY』は多幸感に包まれてる愛。全然違うけど、どちらにしても愛を持って創りましたっていう感じですね。
編集 : 西田健
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LiVE iNFORMATiON
「AiNA THE END Solo Tour "THE ZOMBIE"」
10 月 6 日 ( 水 ) [ 愛知 ] 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
10 月 10 日 ( 日 ) [ 神奈川 ] よこすか芸術劇場
10 月 21 日 ( 木 ) [ 東京 ] 中野サンプラザホール
10 月 22 日 ( 金 ) [ 東京 ] 中野サンプラザホール
10 月 31 日 ( 日 ) [ 新潟 ] 新潟テルサ
11 月 8 日 ( 月 ) [ 宮城 ] 仙台サンプラザ
11 月 11 日 ( 木 ) [ 福岡 ] 福岡サンパレスホテル & ホール
11 月 19 日 ( 金 ) [ 北海道 ] カナモトホール ( 札幌市民ホール)
11 月 24 日 ( 水 ) [ 大阪 ] オリックス劇場
11 月 25 日 ( 木 ) [ 大阪 ] オリックス劇場
詳しくはこちら
https://ainatheend.jp/schedule/
PROFILE : アイナ・ジ・エンド
“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー。 全曲作詞作曲の1st AL"THE END"を2021年2月3日にリリースし、ソロ活動も本格始動。
PROFILE : BiSH
アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・D からなる“楽器を持たないパンクバンド” BiSH。
2015年3月に結成。5月にインディーズデビュー。2016年5月avex traxよりメジャーデビュー。
以降、「オーケストラ」「プロミスザスター」「My landscape」「stereo future」等リリースを重ね、横浜アリーナや幕張メッセ展示場等でワンマンを開催し、ロックフェスにも多数出演。