2021/10/04 18:00

REVIEWS : 033 VTuber(2021年9月)──森山ド・ロ

毎回それぞれのジャンルに特化したライターがこの数ヶ月で「コレ」と思った9作品+αを紹介するコーナー。今回はVTuberをメインに活動するライター、森山ド・ロが登場。様々なジャンルにまたがったVTuberによる楽曲のなかから、9作品をセレクト。

アザミ 『メディカル・ロックンロール』

ファースト・アルバム「エモーション・シンドローム」から荒っぽいロックの毒気を抜いた、よりポップに進化したアザミの真骨頂を体感できる2ndアルバム。軽快で馴染みやすいポップなロックサウンドと、それに相反した尖った歌詞とのギャップが、一言一句に説得力を持たせる。心地よいシンセの音から、ジャジーなサウンドまで聞きやすさを追求しながらも、自身の音楽性を全く崩さない姿勢からは、彼女のオリジナリティにおける頑固さが伺える。時が経つごとに進化しながらも、初めて配信で目撃した、感情を殴りつけるような弾き語りの衝撃を楽曲の節々から感じられる技術はさすがとしか言いようがない。

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メトロミュー 『STELLAR BOX』

相対性理論の“天声ジングル”を寝る前によく聴いていた頃の、淡い記憶が蘇った。メトロミューの1stアルバム『STELLA BOX』は、ドリーミーなエレクトロ・ポップと、世界観を反映する宇宙的浮遊感が、記憶の奥底に眠る好奇心と感覚神経を刺激する。1曲目の“めろめろグルーヴ”のイントロから世界観へと一気に引き込まれるが、全曲通して内なる喜怒哀楽と、繊細な感情の突起が柔らかいグルーヴの中で表現されている。エレクトロ・ポップの軸はあるものの、アルバムを通して様々なジャンルがひしめき合う様は、まさに宇宙空間を彷彿とさせる。エレクトロ・ポップの新しさと懐かしさが融合する、メトロミューという新たなジャンルを確立させているかのようだ。

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理芽 『NEW ROMANCER』

〈KAMITSUBAKI STUDIO〉に所属するバーチャルシンガー理芽の1stアルバム。5月に開催された1stワンマン・ライヴで初披露された“ラヴソング”“いたいよ”などを含む全14曲が収録されている。個人的には“ピロウトーク”と“甘美な無法”を初めて聴いた時の衝撃が新しいのだが、全体的に軽快なロック調の作品が並んでいる。理芽を含む〈KAMITSUBAKI STUDIO〉が生み出すサイエンスフィクションの世界観とは裏腹な、笹川真生の人間味のあるリリックがリアルとバーチャルの混合を繋いでいる。単純にロック調で疾走感ある楽曲と言っても、トラップなどのビートも組み込まれていて、ジャンルを自由に飛び越える現代の音楽シーンに刺さるだろう。その新鮮さが理芽のヴォーカルとその世界観で絶妙に表現されている。

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[連載] ππ来来

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