文藝天国──聴覚と視覚で感じる淡い共鳴
数多くいるアーティストのなかから編集部がグッときたアーティストを取り上げる新企画〈OTOTOY Search〉。早耳リスナーへ今後さらなる活躍が期待できるアーティストを紹介していた連載〈OTOTOYの「早く時代がついてこい!」〉をバージョンアップし、今回からショートレヴューとインタヴューで若手アーティストをご紹介していきます。
記念すべき第1回は、「文から始まり、藝に化けて天国に終わる」をコンセプトに活動するユニット、文藝天国。今回は、色彩作家のすみあいかと音楽作家のko shinonomeにメールインタヴューを行った。
REVIEW : 聴覚と視覚、どちらかだけでは成り立たない。
文 : 梶野有希
作詞作曲、演奏など音周りを担当するko shinonome、ボーカルのハル、映像やジャケット写真、ビジュアルデザインを手がけるすみあいかの3名から成るオルタナティブ・ロック・ユニット、文藝天国。コンセプトは「文から始まり、藝に化けて天国に終わる」。文(=言葉)から生まれる形ないものを、藝(=音楽/映像)で忠実に表現し、そのたどり着いた先は、まさに天国のような空間であるという。
ko shinonomeのルーツである洋楽ハードロックとボーカロイドを反映させた楽曲と透明度の高いハルの歌声、その楽曲が持つ表情や物語を描いたMVというよりも映画と評した方が正しいような、すみあいかの映像作品。表現の手段は三者三様だが、最終的に同じ1つのものを表現している。それがより伝わってくるのが「シュノーケル」である。同作は、「白」と「水色」を基調としたMVも公開されているが、この映像作品の「白」からは孤独を、「水色」からは息苦しさを感じた。まさに「そう僕は一人で溺れていく」、「もう人生なんて飲み干した空き缶みたいだ」という歌詞とリンクしている。そしてその世界観を歌いあげるハルの繊細な声。三者それぞれが共鳴し、1つの世界を表現しているのだ。文藝天国は、言葉と歌声、映像の重なりが切ないくらいに美しい。
7月にリリースされた最新作「マリアージュ」からもそういった“共鳴”を感じることができるだろう。人がもつ“それぞれの色”をテーマにした歌詞と思わず身体が横に揺れてしまうようなキャッチーなサウンド、いつもよりちょっとだけ荒い歌声に背中を押してもらえるような1曲。タイトル「マリアージュ」には、「それぞれの色たちが溶け合いながら、ともにあたらしい世界をつくりあげていくように」という想いが込められているそうだ。またMVは公開されていないが、すみあいかが手がけたジャケ写に映る様々な国旗は、“それぞれの色”を表しているのだろうか。そんな想像が写真1枚から膨らむ。
先に述べたように文藝天国の作品のどれもは、作曲、ボーカル、ビジュアルをそれぞれ違う人が担当している。しかしそれらは決して分離せず、まるでひとりが全てを表現しているかのようにすら感じるのだ。聴覚と視覚、どちらかだけでは成り立たない。目と耳の双方で楽しむことができる1つ1つの作品を丁寧に堪能していただきたい。