私の“ダンス”は“デンス”なんです
──ニュー・アルバム『89/99』についてですが、このタイトルの意味するところは? 90年代サウンドを標榜しているので「99」は分かりますが、「89」というのは?
Tnaka : 89年が平成元年で「平成元年からの10年」ということです。
──あぁ、「平成元年」ということなんですね。僕はちょっと深読みをしてしまいまして、Tnakaさんも敬愛する電気グルーヴ結成の年かな、と思ったんですが。
藤田 : それも含めて、です(笑)。
──ところで、アルバムにはデモCDとしてリリースした曲が結構入っていますが、それらは新たに作り直したり歌い直したりしているんですか?
Tnaka : 歌は全部録り直しました。ライヴでお客さんを前にして歌っていくうちに、レコーディングするだけでは分からなかった「こういう風に歌いたい」みたいな気持ちが出てきたので、それを形にしたいなと思って。音もちょっと変えていますね。
藤田 : とにかく納得いくまで歌い込んで作ろう、ってことで録音し直しました。で、予定よりもかなり遅くなってしまったんですが、大阪の先生のところまでレッスンに通ったりしましたし、実際のレコーディングも時間を掛けて何度も録り直しました。前作に比べると曲ごとの歌い分けみたいなのができたと思います。前はもっと平坦だったんですが…。この曲はこういう声、この曲はこういう節回し、みたいなところを頑張ったと思います。そういうところを聴いていただきたいですね。
──では、時間も無くなってきましたので、Tnakaさんからいくつかお薦めの曲を挙げていただきたいのですが。
Tnaka : えーと、基本的にみんな好きなんですけど、そうですね。やはりライヴで歌うのがとても楽しいので“天才!原色ガール☆”ですかね。お客さんもすごく自由に踊って楽しんでくれていて、特にコールみたいなのはないんですけど、みんなむちゃくちゃ自由に“デンス”をしてくださって。
──えーっと、ごめんなさい。今“デンス”とおっしゃいました???
Tnaka : はい、“デンス”。
──“デンス”ってなんですか(笑)? そういえば“New-Normal Wind”の歌詞の中にも「デンス」って出てきますよね?
Tnaka : あ、そうですね。
──あれは“誤植”じゃないですよね? あくまで“デンス”なんですね。
Tnaka : そうですね。岡村ちゃんの影響なんですけど…。
──あぁ、なるほど。
Tnaka : 私の“ダンス”は“デンス”なんです。「自由な動き」っていうか、そういう感じです。この"天才!原色ガール☆"が、みんなデンスを最も型にはまらずしてくれている感じがして、自分もめちゃくちゃハイになるので、1番楽しくて1番好きですね。
──これまでの3枚のアルバムって、90年代を意識しながらも現代風なスパイスも加えていて、“レトロ”というものを前面に打ち出したサウンドではなかったように思います。やはり同時代のオーディエンスを意識したものという印象だったんですが、今作では、いかにもレトロなサウンドにすることを意図した曲がいくつかあるように思います。ニュー・ジャック・スウィングだったり、ユーロビートだったり、パラパラだったり。今作では、そういったものを再現しようと意図したのでしょうか?
Tnaka : そうですね。前作ぐらいから「レトロ・フューチャー・アイドル」っていうようになったんですが、そこに収録されている“BE THERE”っていう曲とかが「90年代っぽい」って言ってもらえるようになって…。それもちょっと狙って作ったんですが、次のアルバムを出す時はそういう感じで作っていこう、って話はしていました。
藤田 : 以前は、自分たちでは意識していないのに自然と90年代っぽくなっちゃってる感じがあって、で、人からも言われることが多かったんですよ。なので、自然にそうなっていたんですが、もっとコンセプトとして明確に打ち出そうと思って、今回は完全に狙いました。