「大人のための青春ソング」になれば
──今回、この曲ができてミニ・アルバムの核になった、という曲はありますか。
Hirai : “Hello Youth”です。『ゆるキャン△2』オープニング主題歌に決まったのが大きかったですね。この曲を中心に、みんなでZoom会議で曲を選んで1枚にしました。
Sawa : 私は今回、「どんなミニ・アルバムにしたい」っていうことを考えなかったんですよ。考えずに、もうただただ、自分の好きな曲をゴリ推ししていきました(笑)。
Hirai : 3人でとりあえず好きな曲を挙げて、そのなかからバランスよく選んでいった感じです。
Sawa : 私は5曲目の“HUG”をめちゃくちゃ推しました。
──これは良い曲ですよね。いちばん青春な感じを受けました。幅広いリスナーに受け入れられそうな感じがします。
Sawa : ありがとうございます。Hiraiさんがデモで送ってくれたときに、この曲は良すぎて。私、良い作品には「課金したい」ってすごく思ってしまうんですね。
Hirai・Horikawa : はははは(笑)。
Sawa : 課金して、その作品への愛情とか敬意を表明したいって思ってしまうタイプで。Hiraiさんに課金しました。
Hirai : レッドブルをおごってもらいました(笑)。
──そういうことですか(笑)。“HUG”はどんな気持ちで書いた曲ですか。
Hirai : 人生、不安が尽きなかったりするので。バンドって楽しくてやっていることではあるんですけど、やっぱり相手がいることなので。みなさんの期待値を越えないかんとか、いろいろと考えちゃうこともあって。でもそれを乗り越えて一歩ずつ進んでいきたいっていうところで、弱い自分とも付き合いつつ、上手く進めるようにという思いで書きました。
──〈許せないのは自分なんだけど〉という歌詞が印象的です。
Hirai : 僕は基本がクズなので(笑)。常に自分を律していかないと、すぐにクズになるぞという思いを込めて。
──Horikawaさんにとって“HUG”はどんな曲ですか。
Horikawa : LONGMANって割と速い曲が多いと思うんです。プレイの話になるんですけど、ミディアムが結構苦手で。それもあって今までだったらミディアムな曲をシンプルに作っていたんですけど、さっき話していたように、HiraiさんがDTMで曲づくりをしていたこともあって、この曲に関してはフィルとかもすごく増えていて。結構苦労したというか、その分思い入れはある曲ですね。
Hirai : さっきおっしゃっていただいたように、すごく受け入れられやすい曲だなと思うんですけど、いまのポップスってめちゃくちゃドラムが複雑なイメージがあって。だから単純だと曲が活きないよなっていうところもあって、今回ドラムは複雑にさせてもらいました。
Horikawa : 「知らんぞ、これ?」みたいな(笑)。めちゃくちゃ練習して。
Hirai : 「ごめんな、ありがとう」って思いながら(笑)。
──Horikawaさんは“PAINT IT!”を選曲したということですが、疾走感があるのにノスタルジックなムードのある不思議な曲ですね。
Horikawa : 僕がたぶん基本的に好きなのが、ちょっと悲しいけれども、みたいな曲なんです。メロディがそういう感じで、どこか儚い感じが好きなんですよね。
Sawa : そういうのがいちばん、人間らしいかもしれないですね。
──曲順に関しては、バンドが得意なストレートな曲を前半に持ってきた感じなんですか?
Hirai : まあこういうご時世もあって、重たい日々もあったりするので、そういうのをひっくり返したいなっていうのもあって。前半は思いっきり明るく飛ばしていこうみたいな感じですね。
──“Hello Youth”という曲は、全体のタイトルにもかかってくるテーマの曲だと思うんですけど、若さだけでは書けない曲だと感じました。どんな思いで書いた曲ですか。
Hirai : 「大人のための青春ソング」になればいいなって。最近、「自分のために生きてください」という言葉をよく聞くことがあって、それはそうなんですけど、自分のためだけに頑張っていたら、簡単にあきらめもついてしまうなというのもあって。自分の人生が誰かの何かになっていれば、たぶん簡単にあきらめられないなって。だから、自分のためだけじゃなくて人のためにも生きて欲しいなとずっと思っているんです。そういう視点があったほうが、良い世界になっていくと思うし、若さも青春も保てるんじゃないかなと思って書きました。
──そういうときって、特定の誰かを思い浮かべて書いたりするものですか。
Hirai : 具体的に、「この人のために作ろう」みたいなときもあるんですけど、この曲に関しては、割と万人向けに書いている感じです。若い人にも聴いてほしいし、大人にも響く青春ソングであって欲しいです。
──この曲は、ホーンが入ってますね。
Hirai : これは初の試みです。“Hello Youth”は板井(直樹)さんというサウンド・プロデューサーのかたと作ったので、板井さんのアイディアで管楽器を付けてもらいました。一気に明るくなりましたね。管楽器を付けるまでは、今までの「ザ・LONGMAN」っていう感じのポップ・パンクな曲だったんですけど、管楽器を入れてひと味違う、LONGMANっぽいけど何か新しいっていう曲にできたと思います。
Sawa : コード進行も、板井さんが「ここをこうすれば」みたいなアイディアを出してくれて。そこも、いつものLONGMANとはちょっと変わっていて、それも良い味が出てるなって思います。
──今回、「ライヴをやりたい」という気持ちも曲に込められている気がしました。これはみんなの前で3人で音を出したら最高だろうな、みたいなイメージで作った曲ってありましたか。
Hirai : それで言うと、最後の“Makes You Rock”ですね。ツイン・ヴォーカルも際立つ曲ですし、お客さんと歌いたいという気持ちも込めてサビはシンガロングも入っていたり。やっぱり、デモ音源と比べてさわちゃんが歌うと明るくなるんですよね。そういう意味でも、これがいちばんデモから化けたのかなって。
Sawa : この曲は、私がはじめてラップっぽいラップをやっていて(笑)。「もっとユルく、もっとユルく!」って言われながらレコーディングしました。
Hirai : ラップ風みたいなのはやってたんですけど、ガチのラップははじめてですね。ステイホーム中に、カヴァー・ソングをTwitterとかでやらせてもらってたんですけど、そのときにNiziUの“Make you happy”をカヴァーしてさわちゃんがラップを歌っているのを聴いて、こういうのをやってみたいなと思ったのがきっかけです。でも、歌詞を書くのがめっちゃむずくて、マジでラッパーさん尊敬しましたね(笑)。韻を踏むのって本当にむずかしいなって。ラッパーの方々って簡単に踏んでいくじゃないですか? この3行だけで半日以上かかりましたから。
Sawa : 結構Hiraiさんと、「これどう?」「ここの文が微妙じゃない?」みたいなやり取りがありましたね。
Hirai : 基本的に、ダサくなっちゃうんですよね。譜割りとかいろいろあるんでしょうけど。本当にめちゃめちゃヒップホップのかたの歌詞を見て書きました。
──英詞に続けてスムーズにラップが出てくるから、そこだけ変に目立つような感じは受けなかったです。
Hirai : そこに結構苦労しました。違和感のないようにするっていう。
Horikawa : ラップのところを、トラップ・ビートにしようって言っていて。結局、トラップ・ビートになるの、あれは。
Hirai : なってないんじゃない(笑)? トラップビート風を生でやっているっていう。もともと電子音にしていたんですけど、LONGMANっぽくないなっていうことで、結局生で叩いてもらいました。
Horikawa : そういう感じで、「さわラップ」に対するアプローチの幅は広げていけたらいいなって思います。
Hirai : さわラップ、今後もやっていくんだ(笑)。
Sawa : あはははは(笑)。
Horikawa : ライヴでこの曲をやって、お客さんの反応次第ではもっとアプローチの仕方をいろいろ研究してもいいかなって。
──ロック・バンドだけじゃなくて、ヒップホップからもリズム・アレンジのアイディアも取り入れているわけですね。
Horikawa : Hiraiさんが結構、どことなく拾ってきますね。
Hirai : やっぱり、ドラムを作る上で一応、勉強しようと思って。先にトラップビートをやりたくて、後からラップを乗せた感じでした。