ひとりひとりに寄り添えるような曲に
──今回のアルバムの最初の曲、“Time Flies”はBRADIOが10年間やってきた、というような曲ですが、どんな思いで書かれたんでしょう?
真行寺:10周年のライヴをやれなかったことがすごく悔しかったので、なんとか曲のなかに僕らがここまでやってきたということを落とし込めないかなということで歌詞を書きました。それはファンの人たちも喜んでくれるだろうし。あとは、正直、僕の歌詞がなかなか出来上がらずに制作が押してしまったので申し訳ないなという気持ちでしたね。僕は気分が乗らないと書けないし、書かないっていうのは日常茶飯事で犯している罪でございまして、本当にみんなにも迷惑をかけているなと思います(笑)。
──真行寺さんはそういうタイプなんですか?
酒井:本人はそう言ってますけど、きっと家に帰ってからも考えているんだろうし。スイッチが入っていないときも、ぼーっとしているようでいて考えている、というタイプだと思います。結果、それが間に合わずに遅れちゃったみたいな感じになっているだけだと思いますよ (笑)。
──2曲目の“幸せのシャナナ”の聴きどころは?
真行寺 : これはベースの曲ですね。これまで亮輔とやってきた中で、「こいつ確変入ったな」と思った曲です。アルバムの先駆けでリリースした曲で、ベースがいままででいちばんいいんじゃないと思っているぐらいのテンションでいるんですけど、周りはそんなでもないみたいで(笑)。実際この曲を録っているとき、亮輔はいろんなパターンを何個か出してくれたんですけど「いや、この最初のパターンがいちばんグッときたから最初のままでいってくれ」って一生懸命説得しました。
酒井:良いベースを弾けたなとは思っているけど、なぜそこまで言ってくれるのかはわからない(笑)。
真行寺:まとまりがいいというか。ベースのメロディだけで飯が食えるみたいな。Michael Jacksonの“Beat It”のように、曲を分解した時にどのパートもいい。個人的にベースがグルーヴしている曲が好きなので、それで確変入ったなと思ったんですよね。
──3曲目の“サバイブレーション”はいつごろ作られたんですか?
大山 : デモの段階でいったら『YES』の時期くらいかな。存在自体は昔からありますね。
真行寺 : アルバムでいちばん古い曲かもしれない。歌詞もデモの段階から何ひとつ変えていないです。息抜きじゃないですけど語感を楽しみたいのと、曲もかっこよかったので、飛び道具的に汚いものを作りたいという気持ちで作った曲です。
──4曲目の“Switch”はファルセットが印象的な曲ですが、どれくらいの時期に作られたんですか?
大山 : コロナ禍で貴秋が珍しくオケのイメージを叩いてきて、それが1回聴いた時点で完成まで見えたくらいすごく良かったんですよ。
真行寺 : 気分転換にピアノの簡単なリズムと、打ち込みのコードと歌の原型を送ったんですよね。
大山 : そういう「リラックスしよう」みたいな気持ちが、曲に表れていたのがすごく良かった。
──5曲目の“Fitness Funk”はライヴでも盛り上がりそうですよね。
大山 : 自粛期間中のモヤっとしていた時に、なにかおもしろい動画が作れないかみたいな感じで案が出ました。SNSアップ用に貴秋がタンクトップを着て、踊ってお家で体を動かそうぜみたいな感じでしたね。
真行寺 : これまでも作ってきた、ライヴ中盤でみんなで盛り上がる曲の続編みたいな感じですね。
──めちゃくちゃ想像できる(笑)。6曲目“愛を、今”は、これまででいちばんストレートなバラードですね。
真行寺:壮大なサウンドでオーケストラもゴスペルっぽいコーラスもあり、今まででもいちばん合唱っぽくて壮大な、ひとりひとりに寄り添えるような曲になったかなと思っています。広い世界で迷子になっている人たちに対して、少し視野を広げるとまた違う世界が見えてくるんじゃないかな、という気持ちで書かせてもらいました。
──この曲はいつ頃書かれたんですか?
真行寺:サビの大元は自粛前からあって、「ひとりひとりに寄り添えるような」というイメージは、サウンドを聴いた最初の段階でサビのメロディが降ってきてできたんです。コロナ禍で自分と向き合う時間を過ごしていくなかで、自分と向き合うことは視野を広げることであり、自分という存在を許すことで、それができたら自分への愛につながるんじゃないかなということをすごく感じました。自分へのラヴソングってあんまりないし、そういう自分を出していったら最終的にここに着地できたんじゃないかな。この曲があったからこそ、他の歌詞も近しいカラーになっていったのかなと思います。