In the blue shirt, unlucksi『Fork in the Road – unlucksi Remix』
京都在住トラックメイカーin the blue shirtが2019年にリリースした「Fork in the Road」をunlucksiがリミックス。尚unlucksiは〈Maltine〉からリリースのハイパーポップをテーマにしたコンピ『???』にも参加しているトラックメイカー。キッチュなクワイアから始まり、原曲のヴォーカル・カットアップ、メランコリックな電子音。隙間を埋め尽くすかのような音には、過剰にエフェクトがかけられ自己内外への攻撃性をも感じる。高密度のポップネス。歌詞にはおそらくサカナクションの「僕の花」を部分的に引用していると思われ、最後は原曲を踏襲したバンドサウンドへたどり着くという、予想外だが、えも言われぬ多幸感溢れる展開となっている。彼がハイパーポップ調の楽曲を制作するようになってから、後追いで100gecsやA.G. Cookを知ったというエピソードも同時多発的にそのアティチュードが増幅されていったハイパーポップらしい。
upsammy 『Bend』
アムステルダムでDJとしても活躍するupsammy。去年のデビューアルバム『Zoom』に引き続き〈Dekmantel〉からEPをリリース。前作よりリラックスした、有機的でレフトフィールドなエレクトロニカ。「Flutter」ではチャイムやオルガン、ハープのような独自のテクスチャを持った音が、空間をそれぞれ自由に動き回り、集合と離散を繰り返す。ポリリズムで不気味な「Spat」、初めのフレーズを元に次々と展開が繰り広げられていく。M1、M2は光を音に見立て、その反射や散乱によって像が結ばれるかのようだ。続いて、ソリッドな音がその性質を受け渡しながら曲を推し進めていく「Worm」。そして最後、「Metallic」はフィールドレコーディングの音源も用いられており、ジャケットに写る花たちが見聞きしている世界と、金属的な音を重ね合わせたようなトラックだ。一定のリズムを刻むベースが安心感を与えてくれる。彼女が芸術家として研究している、産業と生態系の相互作用が反映されているのだろうか。
Peyote Dreams, Slack 『State Of Mind(Slack Mix)』
「State Of Mind (Slack Mix)」は1993年リリースのプログレッシヴ・トランスのトラックで、本作にはRoza Terenzi とAlex Kassian のリミックスが合わせて収録されている。まずRoza Terenzi はオーストラリア出身の、サイケやテクノに明るいプロデューサー、DJ。原曲のトライバルなセクションから発想を得たのだろうか、テンポを落とし、カエルや鳥、水滴を連想させる音を加えた熱帯の空気を感じるトラックへと昇華させている。ある特定の音をイメージさせる電子音は彼女の楽曲でも度々使われるアイデアだ。次にAlex Kassianは京都出身ベルリン在住のプロデューサー。原曲のキックのディレイを抑え輪郭がはっきりしたところに、さらに低音を追加した今までになく骨太なトラックになっている。リミックス・ワークを聴く醍醐味のひとつは、楽曲の再解釈を通じたアーティストらしさやチャレンジを感じられるところにあるだろう。