2019/10/23 17:00

その天性のヴォーカルはあなたの心に痕跡を残すだろう──​afloat storage

数多いるアーティストのなかから、OTOTOY編集部がライヴハウスやネット徘徊でビビッときた、 これはもうぜったいにオススメするしかないっ! というアーティストを取り上げるこのコーナー。 ちょっと覗いて、聴いて、そして何か感じるものがあったら、できるならライブを観にいってほしい。 ぜったいに損はさせない。 そんな強強(つよつよ)の確信とともにお届けします。第2回。

第2回 : afloat storage

今回紹介するアーティストは、東京を中心に活動する、afloat storage

誰かがライブハウスで顔見知りに会う。どのアーティストがお目当てで来たかは分かる、くらいの間柄だろうか。 ステージ上でafloat storageがセッティングをしだすと会話がはじまる。 「afloat storage、みたことある?」「ない。はじめて」「ヴォーカルすっごいよ」 ――そんな会話を耳にしたことは一度や二度ではない。 すごいよ、と言ったあとの説明は大抵ない。 だってその後のライブをみれば一目瞭然なことを、そう言った本人は確信しているから。

afloat storage、通称「あふろ」。2015年5月結成。 一度の活動休止、メンバーを変えての活動再開、再度のメンバー脱退などの紆余曲折を経て、 現在はヴォーカル・ギターの稲見繭が、サポートメンバーとともに4ピースバンドとして活動している。

特徴は、なんといっても、これこそ天性としか称しようのない稲見のヴォーカルだろう。 伸びやかで美しく、聴き手の内面にまで訴えかける声。抜群のヴォーカルコントロールと多彩な表現力。 唄われる歌は、随所に秀逸なメロディラインを持ち、 その歌詞には、誰しもの心の中にあるであろう形容し難い、切なさ、寂しさ、もどかしさ、焦りといったものが、 単なる「負」の情景ではなく、美しさをもって描かれている。

一方で曲の構成やバンドアンサンブルにも目をみはるものがある。 正式メンバーである稲見以外のサポートメンバーは、最近は、 西村“コン” (Dr. / きのこ帝国)、 スズキヨウスケ (Gt. / しんきろうのまちshe might be swimmer)、 藍 (Ba.)、 でほぼ固定されている。 彼らは立場としてはサポートなのだが、サポートにはとどまらない、 この4人の、ある種奇跡のようなケミストリーが今現在起きている真っ最中だ。 12月にリリースされるEPのレコーディングもこのメンバーで行われたが、確実にバンド感に満ちた作品となっている。

もし音源を聴いてなにか感じるものがあれば、ぜひこの現在進行系の瞬間を見逃さないでほしい。 ライブに足を運んで、聴いてみてほしい。 聴いたあとに聴き手の内面に残る、たとえようのない「痕跡」を、皆にも実感してほしくてやまない。

それでは、12月にリリースされるEP『FOLIAGE』のレコーディング〜マスタリングを終えたばかりの稲見へのインタヴューをどうぞ。

MAIL INTERVIEW : 稲見繭 (afloat storage)

Q. 音楽活動をはじめたきっかけは?

「ずっとやってみたかった」という気持ちを究極にこじらせたことでした。

音楽が好きで、歌を歌うことはありましたが、音楽をつくるのはわたしのような人間ではないって決めつけて生きていたので、音楽活動をはじめることや、曲をつくることに手を出すことなく生きてきました。

わたしは、とある会社で働いていて、そこはとても楽しく、学びも多く、大変充実していたのですが、いろんな出来事やタイミングが重なってやめることを選びました。 その時期にこれからどうしよう、なにをして生きていこう?って考えた結果、 やったことないくせに「わたしはふさわしくない」と決めつけて逃げ続けていた音楽に挑戦してみようと腹をくくることにしました。 音楽と自分と一度でいいから、しっかりと向き合ってみようと思ったんです。

Q. 自分で曲をつくりはじめたきっかけは?

バンドがやりたくてバンドメンバー募集サイトに登録するとき、お声がけしてもらいやすいようにするためにつくろうと思ったんです。 その頃は音楽の素養が皆無だったので、毎日練習をすることにくわえて自分を鍛えるために毎日1曲つくる運動とかをやってました。 1枚目のCDに入ってる「春愁」はその時期の曲です。なつかしい!

Q. バンド結成のきっかけはメンバー募集サイト?

わたしがバンドをやりたくてバンドメンバー募集サイトに登録していたところ、初期メンバー3人がもうバンドを組んでいて、その中のギターがわたしに声をかけてくれました。 その4人で結成したのが、afloat storageです。

Q. バンドの音楽性を言葉で表すと?

「のこる共鳴、あふれる音」
「sounds prevail, in full contrast」

Q. 影響を受けたアーティストは?

誰なのでしょう。考えてみたのですが、聴いている音楽すべてから影響を受けているような気になってきました。 バンドやアーティストさんのインタビューを読むのが好きで、みなさんの考え方や息の仕方、それらをどのように音楽に落としこんでいるのかに影響を受けているように思います。

Q. 音楽活動の中で1番うれしかったことは?

ライブで「届いた」「受け取ってもらえた」ことをしっかり感じられた時がいちばんうれしくって、そういう時はしばらくその時のことばかり考えてしまいます。 人それぞれですが、わたしは音楽は受け取ってもらえてはじめて完全に息が通うと思っているので、どのように受け取ってもらえてるのかいつもすごく気になります。

Q. 逆に1番へこんだことは?

へこむことは日常なので、特別にこの出来事が、というのはありません。 強いてあげるのであればメンバーとの決別は毎回とてもかなしくてしんどいことです。

Q. バンドとしての夢を教えてください

結成当初から練習やレコーディングをおこなっているスタジオの真上にある中野サンプラザでワンマンライブをしてみたいです。 たくさんライブをみにいった日比谷公園大音楽堂でもライブをしてみたい。頑張らなきゃ。

Q. 作品を作っていく中でのこだわりは?

バンドである以上、誰かひとりのではなく、バンドとしてのアイデンティティが色濃く反映されていること。 音ひとつひとつにしかるべき姿勢が感じられること。でしょうか!

Q. afloat storageの歌詞は、一般的には負の感情とされるもの(別れのさみしさ、孤独感、焦りなど)が多いのですが、稲見さんの書く歌詞には「負」だけでなくそこに美しさを強く感じます。歌詞を書くときに大切にしていることはどんなことでしょう?

歌詞を書く時に大切にしていることは、それまでのことです。メロディーが鳴って、曲ができて、「よし、言葉を重ねよう」って歌詞を書く前までのことすべてをとても大事にしています。

わたしはメロディーから曲をつくることがほとんどなのですが、日々自分の中にためておいた言葉たちからすくいとるようなかたちで歌詞をつけています。自然で素直で純度の高い印象を大事にしたくて。ちがう印象であって欲しい時は、その時に合う書き方をします。(たとえば「刹那に灯たる」がそうです。)

言葉をためるには、何かから何かを自分なりにしっかりと感じ取り、それらを拾い集めて、自分の中ににためていられるような自分でいる必要があると感じています。 日々を丁寧に生き、しっかり感じ、ためたすべてからその時つくる曲にぴったりなことばを選びとれるように、頭とこころを養うことを心がけています。

Q. 12月リリースの『FOLIAGE』はどんな作品?

“FOLIAGE”には「枝葉」という意味があります。 大きな木の、ほんの一部。 afloat storageがこれからつくるたくさんの音楽の中のほんの一部、というこれからへの期待や意志をこめて名付けました。 愛される作品になるよう、わたしがこめられるすべてをこめてみました。 ぜひ聴いてもらえたらうれしいです。どうぞよろしくお願いします。

Q. 1年後のafloat storageはどうなっている?

変わらずに音楽を届けていたらうれしいです。 あらゆることの外側だけではなく内側にもしっかりと目を向けられていたらいいなと思います。

Q. では、1年後のあなたにメッセージを

しっかり眠ってね、と伝えたい!

MUSIC VIDEO

afloat storage / 「ハナシノブ」
afloat storage / 「ハナシノブ」

afloat storage / 「バイバイ」
afloat storage / 「バイバイ」

afloat storage / 「# ffff(しろ)」
afloat storage / 「# ffff(しろ)」

afloat storage / 「夜に」
afloat storage / 「夜に」

afloat storage / 「landscape」
afloat storage / 「landscape」

afloat storage / 「刹那に灯たる」
afloat storage / 「刹那に灯たる」

RELEASE INFO

『FOLIAGE』
発売日 : 2019年12月20日
価格 : ¥2,000
<収録曲>
1.ハナシノブ 2.ハナ 3.半夏生 4.昆虫 5.バイバイ
(「昆虫」と「バイバイ」は配信のみ先行リリース中)

LIVE SCHEDULE

afloat storage presents 5曲入りCD「FOLIAGE」発売記念ライブ as a band vol.3
2019年12月20日(金)@大塚Deepa
出演 : afloat storage / いつかのネモフィラ / 灰色ロジック / Hammer Head Shark
時間 : Open 18:00 / Start 18:30
チケット : 前売り ¥2,400 / 当日 ¥3,000 (+1D ¥600)
10代割 前売り ¥1,400 / 当日 ¥2,000 (+1D ¥600) (年齢のわかるものを受付でご提示ください)
チケット : ライブ会場手売り、イープラス、HP予約

”こくはく”~大塚Deepa 11th ANNIVERSARY PRE~
2019年10月24日(木)@大塚Deepa
出演 : afloat storage / yulavie / reom / Hammer Head Shark / (O.A)コハク
時間 : Open 17:30 / Start 18:00
チケット : 予約 ¥2,100 / 当日 ¥2,600 (+1D ¥600)

KNOCKOUT FES 2019 autumn
2019年11月2日(土)@下北沢ライブハウス10会場
HP : knockoutfes.com
(afloat storageはLIVEHOLICで15:30〜)

CHIKAMATSU pre.『ふかくねむる』
2019年11月25日(月)@下北沢 近松
出演 : 西片梨帆 / afloat storage / ユーヒノーカユーリカ / パンのみみ / ヒヨリノアメ
時間 : Open 18:00 / Start 18:30
チケット : 予約 ¥2,000 / 当日 ¥2,500 (+1D)

チケット予約はいずれも公式HPから。

PROFILE

afloat storage

2015年5月結成。東京を中心に活動。 メンバーはヴォーカル・ギターの稲見繭。 2019年10月現在はサポートメンバーとともに4ピース体制で活動中。

HP : https://afloatstorageband.wixsite.com/fltstrg
Twitter : https://twitter.com/afloatstorage

afloat storageの作品

この記事の筆者
高田 敏弘 (takadat)

Director。東京都出身。技術担当。編集部では “音楽好き目線・ファン目線を忘れない” 担当。

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.266 ロスレスをdigる

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.266 ロスレスをdigる

「ついに日本でやるんだ」──アジアの観客とアーティストたちが〈BiKN Shibuya〉で灯した光

「ついに日本でやるんだ」──アジアの観客とアーティストたちが〈BiKN Shibuya〉で灯した光

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.231 夏です

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.231 夏です

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.219 アズテック・カメラから、ウェブ経由、The 1975まで

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.219 アズテック・カメラから、ウェブ経由、The 1975まで

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.201 2022年をふりかえる

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.201 2022年をふりかえる

やりたいことが増えて満足してないです──バンドになったcolormalが目指す色彩と普遍

やりたいことが増えて満足してないです──バンドになったcolormalが目指す色彩と普遍

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.161 私立恵比寿中学と時と私

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.161 私立恵比寿中学と時と私

名盤を50年かけてでも作りたい──NaNoMoRaLが放つ、渾身の自信作『ne temo same temo』

名盤を50年かけてでも作りたい──NaNoMoRaLが放つ、渾身の自信作『ne temo same temo』

[インタヴュー] afloat storage

TOP