スウィングからジャズ・ファンク、そして宇宙へ! でんぱ組.inc ニュー・アルバムをリリース

でんぱ組.incがニュー・アルバム『ワレワレハデンパグミインクダ』をリリースした。2017年12月30日に鹿目凛と根本凪が加入し、7人体制でスタートしてからのシングル曲・カップリング曲と新曲で構成された、2016年4月リリースの『GOGO DEMPA』 以来の待望のオリジナル・アルバム。1月7日に行われる日本武道館でのライヴを持って、メンバーの「夢眠ねむ」が卒業することにより現メンバー7人での「最初で最後」のアルバムでもある。音楽評論家・宗像明将によるレヴューで「宇宙級」の楽曲群を味わってもらいたい。
宇宙 日本 秋葉原
私たちは今、ロケットのコックピット、あるいはロケット発射台の管制室にいる。交信の音声が絶え間なく響いている。少しでも注意力が散漫になれば、この打ち上げは失敗するだろう。
ロケットの打ち上げに成功したら何が起きるのか? Pファンクの創始者であるジョージ・クリントンに宇宙空間で遭遇できるはずだ。彼が率いるパーラメントの1976年の「Mothership Connection」と、でんぱ組.incのニュー・アルバム『ワレワレハデンパグミインクダ』のジャケットにともに登場しているのはUFO。偶然だろうか?
まず、このアルバムのリード・チューンである新曲「太陽系観察中生命体」に触れないわけにはいかないだろう。 前山田健一作詞、H ZETT M作編曲による堂々たるジャズ・ファンクだ。アイドル・ポップスが「ジャジー」であることは珍しくないが、ここまで「ジャズ」そのものに傾倒している楽曲はまずない。さらに、1分45秒以降の間奏に顕著なように演奏はジャズ・ファンクで、マイルス・デイヴィスが1970年に打ちたてた金字塔「Bitches Brew」の回転速度を上げたかのようなのだ。
でんぱ組.incは「太陽系観察中生命体」で聴き手に呼びかける。
「聞こえますか? 聞こえますか? / 私達は あなたの脳に直接語りかけています / 聞こえますか? 聞こえますか? / タイムマシンをどうぞ もう一つの世界もどうぞ」
もう一つの世界。つまりパラレルワールドであり、それは『ワレワレハデンパグミインクダ』にも収録されている「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」と接続する。
こちらも「太陽系観察中生命体」と同じくH ZETT Mが作編曲を担当している。念のために書いておくと、彼は東京事変に在籍していた2004年に「群青日和」を作曲した「H是都M」と同一人物である。
「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」ではジャズ・ピアノが駆け回り、浅野いにおによる歌詞は「楽観 反感 傍観 鈍感 達観」など韻を踏みまくり、ヒップホップのようだ。7人体制となったでんぱ組.incが生みだした一大傑作である。
『ワレワレハデンパグミインクダ』において重要な要素は、ジャズだけではない。シャッフル・ビートの存在感が異様に大きいことも特徴的だ。Shiggy Jr.の原田茂幸が作詞作曲した新曲「世界が私の味方ならば…」のほか、すでにリリースされてきた「Ψ発見伝!」や「エバーグリーン」もシャッフルやスウィングと呼ばれるリズムだ。
スウィングからジャズ・ファンクへ。『ワレワレハデンパグミインクダ』では、1930年代から1970年代までのアメリカ音楽の地図が浮かびあがる。ロックは避けながら。
ざっと他の収録曲にも触れよう。新曲「ワレワレハデンパグミインクダ」は、KanadeYUKが作編曲したインストルメンタル。KanadeYUKは、安田悠基とうたたね歌菜によるユニットで、うたたね歌菜は2016年の「WWDBEST」にストリングス・アレンジで参加していた。
「ギラメタスでんぱスターズ」は、前山田健一作詞、浅野尚志作編曲。2017年12月30日に大阪城ホールで開催された「JOYSOUND presents ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」では、新メンバーとして鹿目凛と根本凪がお披露目されたが、その場で7人体制の新曲として最初に歌われたのがこの楽曲だった。
「プレシャスサマー!」は、玉屋2060%による作詞作曲編曲。「あ、そろそろ夏が始まるっ」というセリフが出てくるのは、同じく玉屋2060%が作曲した2013年の「でんでんぱっしょん」の「あ、そろそろ始まるっ」を踏襲したものだろう。最後の最後で新しいメロディー・ラインが登場する構成も新鮮だ。
ミュージカルのような「かぼちゃタンデム」は、只野菜摘作詞、MOSAIC.WAV作曲、釣俊輔編曲。
「FD3, DEMPA ROCKET GO!!」は、畑亜貴作詞、小池雅也作曲のコンビによる新曲。2011年の「Future Diver」、2015年の「FD2〜レゾンデートル大冒険〜」に続く「FD」シリーズだ。ロケットのコックピットと管制室の交信音が冒頭と終盤に響く。
「美少女戦士セーラームーン」の「ムーンライト伝説」は、配信とDVDシングルでリリースされたカヴァー曲。
新曲「絢爛マイユース」は、玉屋2060%作詞作曲編曲。やはり彼が作詞作曲編曲した2014年の「サクラあっぱれーしょん」を連想させるオリエンタル感だ。
フィッシュマンズの1997年の『宇宙 日本 世田谷』になぞらえて言うなら、『ワレワレハデンパグミインクダ』はまるで『宇宙 日本 秋葉原』。国際宇宙ステーションから秋葉原の日常を見ているかのようなアルバムでもある。そこからゆっくりと分離していく宇宙船には、2019年1月7日の日本武道館公演をもって卒業する夢眠ねむが乗っているはずだ。(text by 宗像明将)
でんぱ組.inc DISCOGRAPHY
ALBUM
WWDBEST 〜電波良好!〜
でんぱ組.inc初のベストアルバムが発売決定!代表曲はじめ初収録の新曲まで網羅した最強ベスト!!
GOGO DEMPA
ゆず 北川悠仁×ヒャダインによる夏のアンセムチューン「おつかれサマー!」、漫画家・浅野いにお作詞による「あした地球がこなごなになっても」、でんぱ組.incらしさの詰まった三ヶ月連続配信シングル「破!to the Future」「ファンファーレは僕らのために」など豪華シングルを含むアルバム。
WWDD
玉屋2060%による4つ打ちキラーチューン「サクラあっぱれーしょん」、でんぱ組.incの原点であるDearStageを舞台に清竜人が作り上げた「Dear☆Stageへようこそ♡」、ヒャダインによるカップヌードルCM曲「ちゅるりちゅるりら」、ファンタジー感溢れる最新シングル「でんぱーりーナイト」に加え、アルバム新録曲も多数収録。
WORLD WIDE DEMPA
「でんぱれーどJAPAN」や、瑛太主演のフジテレビ系ドラマ「最高の離婚」でも二週連続で披露し話題となったドキュメンタリーソング「W.W.D」、かせきさいだぁプロデュース「冬へと走りだすお! 」、そして最新楽曲「W.W.DII」までのシングル作品5枚を含むアルバム。
SINGLE
『でんぱーりーナイト』リリース記念! "初レゾ"体験! 特集ページはこちら
LIVE INFORMATION
JOYSOUND presents でんぱ組.inc コスモツアー 2019 in 日本武道館 ワレワレハデンパグミインクダ ~宇宙からの帰還~ supported by VILLAGE VANGUARD
2019年1月6日(日)@日本武道館
JOYSOUND presents でんぱ組.inc コスモツアー 2019 in 日本武道館 夢眠ねむ卒業公演 ~新たなる旅立ち~ supported by VILLAGE VANGUARD
2019年1月7日(月)@日本武道館
PROFILE
でんぱ組.inc
古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、藤咲彩音、鹿目凛、根本凪、の7人組ユニットで、ディアステージに所属し、様々な活動を展開。メンバーはもともと、アニメ・漫画・ゲームなど、自分の趣味に特化したコアなオタクでもある! また、東京コレクションやミキオサカベをはじめとして、様々なクリエイターとのコラボレーションを活発に展開し、国内のみならず海外からも注目を集め、台北やジャカルタでのファッションイベントにも参加。さらに日本代表として、2013年にはJAPAN EXPOに日本代表として出演。2014年度は東アジア文化都市2014横浜親善大使を務めた。TOY’S FACTORYの新レーベルMEME TOKYOに所属。マイナスからのスタートなめんな!というキャッチフレーズで話題になり2014年5月には日本武道館で1万人動員、2015年2月に国立競技場代々木第一体育館2days単独公演を大成功させた。シングル『あした地球がこなごなになっても』でミュージックチャート1位を獲得。2015年はワールドツアーも敢行。MTV「ワールド・ワイド・アクト賞」の日本部門「ベスト・ジャパン・アクト」のウィナーに。2016年12月21日にはベストアルバム『WWDBEST 〜電波良好!〜』をリリース。2017年1月に、アリーナツアー「幕神アリーナツアー2017 電波良好Wi-Fi完備!」6公演を開催、二度目となる日本武道館公演も行う。2017年12月30日「JOYSOUND presentsねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」大阪城ホール公演で、鹿目凛、根本凪が加入し新体制となる。