2018/02/07 13:00

Taiko Super Kicksがミニマムに振り切る新アルバム──『Fragment』に見え隠れする確信と自信

2015年、限りなくおおらかなメロディーと軽やかな実験精神でインディ・ポップ・シーンにゆらめきをもたらした『Many Shapes』から約2年、Taiko Super Kicksが、待望の新作フル・アルバム『Fragment』をリリースした。新鮮さと懐かしさが混在する不思議なサウンドと、細やかで広がりのあるアンサンブル、どこまでもしなやかに拡張されていくTaiko Super Kicksの音楽はさらなる成長を遂げている。そんな彼らは今作をひっさげて台湾を含む6都市を回るツアーの開催が決定! OTOTOYではハイレゾ配信もスタートします! ひさびさの新作を読み解く、土佐有明によるレヴューとともにお楽しみください。

2年ふりとなるニュー・アルバム

Taiko Super Kicks / Fragment

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/96kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?

【配信価格】
単曲 300円(税込) / アルバム 2,400円(税込)

【収録曲】
1. たたかいの朝
2. 景色になる
3. 汗はひき
4. 遅刻
5. うわさ
6. のびていく
7. バネのように
8. 悪いこと
9. 無縁
10. フラグメント

【『Fragment』特設サイト】
http://taikosuperkicks.com/fragment/

Taiko Super Kicks - のびていく (Official Music Video)
Taiko Super Kicks - のびていく (Official Music Video)

REVIEW : Taiko Super Kicks『Fragment』

作品を経るごとにどんどん無駄なものがそぎ落とされ、シンプルなサウンドになっているな、というのが第一印象。彼らは、隙間があるからといって安易にフィルやオブリガードを入れたりはしない。スキや余白を意図的に残すことでリスナーの想像力を掻き立て、最小限の音数で最大限の覚醒作用を及ぼすのだ。本作ではそうした引き算の流儀がますます徹底されており、結果、いち音いち音の必然性と強度が増している。ここにはこの音しかない、という確信と自信がその裏には見え隠れする。以前から兆候はあったが、ここまで思い切ってミニマムな方へ振り切ってくるとは思わなかった。だが、それが功を奏しているのは明らかである。

前作『Many Shapes』から約2年ぶりとなる2ndフル・アルバム。デビュー当時から高く評価されてきた体温の低いヴォーカルや思索的な歌詞は不変だが、明らかに進化と成長の痕が見える作品だ。たとえば、ギター2本の絡みは以前よりも複雑で練られており、様々なエフェクトを駆使したサウンドは音響派やポスト・ロックを通過した耳にも新鮮に響く。さらさらした砂のような感触にヴェルヴェット・アンダーグラウンドのスターリング・モリソンを思い出す、という人もいるだろう。また、リズム隊はレゲエやダブのエッセンスも隠し味的に忍ばせ、少ない音数で醒めたファンク・サウンドを創出。ヒップホップやテクノからの影響も滲むビートは、時に後期フィッシュマンズのようでもある。演奏力が向上したというのももちろんあるのだけど、それ以上にアレンジの妙が際立っている作品でもある。静と動の対比が明確になり、メリハリがついている、とも言える。抑えるところは抑え、あくまでもクールに。そのほうが爆発が起きた時の衝撃やインパクトも大きいというわけだ。

そして、同時代の優れた才能との共振を感じさせるのもおもしろいところ。例えば、茫漠としたギター・リフの反復が印象的な「バネのように」などは、ゆらゆら帝国の『空洞です』や、OGRE YOUR ASS HOLEの近作を連想させる。海外なら、カンやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ヨ・ラ・テンゴあたりが近いと言えるだろうか。ROVOなどと対バンしても違和感がないだろう、と思わせるトランシーな響きもある。

わかりやすいカタルシスや大仰な展開はほとんどないから、表面的には地味なアルバムと受け取られるかもしれない。だが、聴く度に新たな驚きと発見が待ち受けているサウンドには中毒性があり、スルメ系の作品と言える。今後永らく聴き続けるだろう傑作の誕生を、心から祝福したい。 (text by 土佐有明)

レーベル Taiko Super Kicks / LESS+ PROJECT.  発売日 2018/02/07

01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10.

※ 曲番をクリックすると試聴できます。

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/96kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?
【配信価格】
単曲 300円(税込) / アルバム 2,400円(税込)
【ご購入・視聴はこちらから】
https://ototoy.jp/_/default/p/94808

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LIVE SCHEDULE

Taiko Super Kicks presents “Fragment” Release Tour

台湾公演
2018年3月3日(土)@台北Revolver
時間 : Open 21:00 / Start 21:30
LIVE : Taiko Super Kicks、DSPS

名古屋公演
2018年3月17日(土)@金山ブラジルコーヒー
時間 : Open 19:00 / Start 19:30
LIVE : Taiko Super Kicks、mei ehara、テト・ペッテンソン

福岡公演
2018年3月23日(金)@福岡UTERO
時間 : Open 19:00 / Start 19:30
LIVE : Taiko Super Kicks、よあけ、yound

岡山公演
2018年3月24日(土)@岡山BLUEBLUES
時間 : Open 18:00 / Start 19:00
LIVE : Taiko Super Kicks、カネコアヤノ and more

京都公演
2018年3月25日(土)@京都UrBANGUILD
時間 : Open 18:00 / Start 18:30
LIVE : Taiko Super Kicks、本日休演、接近!UFOズ、ギリシャラブ

東京公演ワンマンライヴ
2018年3月30日(金)@渋谷TSUTAYA O-nest
時間 : Open 19:00 / Start 20:00


SHIBUYA CLUB QUATTRO presents SYNAPSE
2018年2月26日(月)@渋谷CLUB QUATTRO
時間 : Open 18:00 / Start 19:00
LIVE : Gateballers、Taiko Super Kicks、ラッキーオールドサン

>>> MORE LIVE INFO

PROFILE

Taiko Super Kicks

伊藤暁里 (vocal,guitar)、樺山太地 (guitar)、大堀晃生 (bass,chorus)、こばやしのぞみ(drums)により結成。
東京都内を中心に活動中。
2014年8月、ミニ・アルバム『霊感』をダウンロード・フィジカル盤ともにリリース。2015年7月、〈FUJI ROCK FESTIVAL'15〉《ROOKIE A GO-GO》に出演。
2015年12月23日、1stアルバム『Many Shapes』をリリース。そして、2018年2月7日、最新アルバム『Fragment』をリリースする。

>>> 公式HPはこちら
>>> 公式ツイッターはこちら

この記事の筆者

[レヴュー] Taiko Super Kicks

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