THE FULL TEENZ、誰にでも突き刺さる初期衝動ーー安孫子真哉ミックスによる期待の1stフル・アルバム

京都在住の3人組バンド、THE FULL TEENZが、1stフル・アルバム『ハローとグッバイのマーチ』をセカンド・ロイヤル・レコーズよりリリース。2014年には、8曲8分という衝撃のep『魔法はとけた』をメンバー自らが運営するレーベル「生き埋めレコーズ」より発売、手売りと一部レコードショップのみの販売にもかかわらず500枚をソールド・アウトさせた。2015年には〈FUJI ROCK FESTIVAL'15 "ROOKIE A GO-GO"〉に出演するなど、じわじわと注目を集める彼らの1stアルバムは、エンジニアをHomecomings等を手がける荻野真也が、ミックスをKiliKiliVilla / 元銀杏BOYZの安孫子真哉が担当。OTOTOYでは、22〜3歳ならではの歌詞とグッド・メロディと怖いもの知らずの無垢でキラキラした演奏によって描かれた本作をハイレゾ配信し、インタヴューでTHE FULL TEENZに迫った。
初期衝動に満ちた1stフル・アルバムをハイレゾ配信
THE FULL TEENZ / ハローとグッバイのマーチ
【配信形態 / 価格】
[左]24bit/48kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
単曲 199円(税込) / アルバム 1,499円(税込)
[右]16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
単曲 199円(税込) / アルバム 1,499円(税込)
【トラック・リスト】
1. PERFECT BLUE
2. (500)日のサマーバケイション
3. Red Shirt
4. swim! swim!
5. City Lights
6. 昼寝
7. Letter
8. Mess
9. Sea Breeze
10. 魔法はとけた
11. 水彩画
12. IHATONG POO
13. ビートハプニング
※アルバムをまとめ購入いただくと、Webブックレットが特典でつきます。
INTERVIEW : THE FULL TEENZ
今、京都でどのバンドが一番面白い? って聴かれたら、間違いなくTHE FULL TEENZをオススメしたい。〈I Hate Smoke Records〉〈Less than TV〉を掘り、〈感染ライヴ〉に影響を受け、〈生き埋めレコーズ〉を立ち上げ、愛すべきレーベル〈SECOND ROYAL RECORDS〉からリリースするこの超弩級の音楽好き達が、今度は、もっとオープンに自分たちの音楽を知ってもらいたいと願っている。そんな彼らの大きな転換期にインタヴューできたことを光栄に思います。
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
写真 : 藤林慶海知

あの金髪メガネめっちゃいい音楽書くやん!(佐生)
ーーまず、THE FULL TEENZの歴史についてから訊いていきたいです。というのは、新作『ハローとグッバイのマーチ』にはいろんな音楽性が詰まっていて、バンドのこれまでを全部詰め込んだ作品なのかなと思ったんですよ。
伊藤祐樹(以下、伊藤) : 確かに詰め込みました。これは1stにも関わらず、バンドも8年目とか一応長いことやっているんで、ベストみたいな感じで選曲していきましたね。最初は歌モノの青春パンクをやっていて、そこからショート・チューンばかりをやってたころがあって、いままた歌モノに戻ってきているんですよ。

ーーえ、そんなに若いのにもう8年目なんだ!
伊藤 : 中3からずっとTHE FULL TEENZって名前でやっているんです。当時からのメンバーは僕だけなんですけど。文化祭のライヴって、どこの中学、高校にもあるじゃないですか。それに出たくてブルーハーツ、ハイ・スタンダード、ゴーイング・ステディとかのコピバンをやってて。でもすぐにオリジナルを作りたくなって、それがいまでも続いている感じです。
ーーオリジナルを作ろうと思ったきっかけは?
伊藤 : コピーをするのがあんまり好きじゃなかったからですね。オリジナルって自分の好きなことだけできるじゃないですか。コピバンしかいないのが嫌で高校の軽音部にも所属してなかったです。学祭もなぜか僕らだけオリジナルを演奏してました。12曲目の「IHATONG POO」って曲は高3からやっているんですよ。高校のころにはシンセがバンドにいたんですけど、今回のレコーディングではそのオリジナル・メンバーにシンセを弾いてもらっています(笑)。それで初期は青春パンクみたいなものをやってたんですけど、徐々に音楽を掘っていくと〈I Hate Smoke Records〉だったり〈Less than TV〉に辿り着いて。それで「なんだこのシーンは!?」って思って、フジロッ久(仮)だったりSEVENTEEN AGAiNを知りました。ジャンクな東京のパンク・シーンにちょっとずつ向かっていくようになりましたね。それが高3くらい。そこからはショート・チューンを作りまくって(笑)。
ーーいまのメンバーの2人とは、伊藤くんが大学に入ってから出会うのかな。
伊藤 : そうですね。この2人(菅沼、佐生)はサークルが一緒なんです。
佐生千夏(以下、佐生) : 私と菅沼くんは京都産業大学の軽音学部で一緒だったんですよ。私が先輩です。
伊藤 : 僕は同志社大学で、それもまたサークルとかには入らずにって感じだったんですけど、でも全く別々のところで僕は2人と出会っていて。京都って遊ぶ場所の選択肢って結構限られているんです。ベースの菅沼くんとは大学1回生のころTHE ACT WE ACTとかをUrBANGUILDに観に行ったときとかに顔を合わせていて。でドラムの千夏はそれと同時期くらいに京都メトロの〈LONDON CALLING〉っていうクラブ・イベントで知り合いました。
菅沼祐太(以下、菅沼) : そのときは〈I Hate〉だったり〈Less than TV〉だったり、(伊藤と)聴いている音楽とか行くイベントも被っていて。それで結構話が合ったし、なかなか同級生で「このレーベルがかっこいい」とか話ができる人がいなかったので一気に距離が近づくようになりました。

佐生 : 私は伊藤くん、菅沼くんとは正直聴く音楽が被ってはなくて。2人が好きなシーンがよく分からないままバンドに入ったんです。ただ初めて曲を聴いたときに、それが「IHATONG POO」だったんですけど、「あの金髪メガネめっちゃいい音楽書くやん!」って思って(当時伊藤は金髪だった)。最初はライヴのサポートとして誘われて、いつの日からかメンバーになっていた感じです。
ーーみんなライヴハウス界隈で知りあったんですね。佐生さんがTHE FULL TEENZに入ったのが…。
伊藤 : 僕が大学入って2年目、2013年の春くらい。菅沼くんは、2014年の春夏くらいですね。
誰が聴いても成立するものにしようと思った(伊藤)
ーーライヴハウスに出る高校生ってそんなに多くはないと思うんですけど、当時の伊藤くんはどんなモチベーションでTHE FULL TEENZをやっていたんでしょう。例えばモテたいって気持ちがあったとか。
伊藤 : モテたいとか、どうなりたいとかよりも、単純に高校のなかのコピバンの狭いサークルにいるのが嫌だったから、どんどん外へって感じですね。別にそれに意味があるとは思っていないけど、なんとなくそっちのほうが楽しいって思って外でライヴばっかりしていました。

ーーその楽しい方へっていう気持ちはいまの活動にも通じるところがある気がします。菅沼くんとはバンド加入前から一緒に〈生き埋めレコーズ〉をやっていたんですよね。
菅沼 : そうですね。THE FULL TEENZに入る前から一緒にやっていました。
ーーそのころって伊藤くんたちは東京のパンク・シーンへ傾倒してた時期だと思うんですけど、逆に京都のシーンはどう見てたんでしょう。すでにHomecomingsやodd eyesが活躍してましたよね。
伊藤 : 高校のころは、ああいうパンク・シーンっていうのは東京にしかないものだと思っていたんです。でも大学に入って京都に来たときに〈感染ライヴ〉があって、そこに同じようなノリを感じることができました。今は仲良くさせてもらっているけど、大学に入ったばかりの僕は、さすがにそこには混じれなくて。だから自分たちでやろうってことで、菅沼くんと〈MIDSUMMER SPECIAL〉って企画を始めたんです。それが〈生き埋めレコーズ〉の前兆ですね。
ーーなるほど。そして『生き埋めVA』に繋がっていくと。
伊藤 : このVAは、「僕たちはこうです」っていうひとつの意思表示であったのかもしれないです。あとは単純に同世代かっこいいでしょっていうのがテーマとしてありましたね。
菅沼 : 『生き埋めVA』にはodd eyesも収録されてたり、結果的に〈感染ライヴ〉に僕らが出られたり、〈感染ライヴ〉をやっている側の人がこっちに遊びに来てくれたり、VAを作ったことで、いろいろ環境も変わっていきました。
ーーバンドとしては、最初のEP『魔法はとけた』をリリースした時期でもありました。
伊藤 : ちょうどその頃はインディのガレージ・パンクが流行っていて。ウェーヴスだったりクラウド・ナッシングスがリヴァーブがかかった、ふわっとした音像の音楽をやっているのを知ったんです。その部分を取り入れようかなと思って抜本的に音作りを変えたんですよ。でもショート・チューンとかツービートをやめるんじゃなくて、その浮遊感のなかで、いままでの疾走感のある曲をやってみたらどうなんだろうってことを考えました。その音が詰まっているのが『魔法はとけた』ですね。ほんとに実験的でいま考えたら意味不明な音だと思います(笑)。
ーーあの特徴的なリヴァーブはそこにルーツがあるんだ! 今作『ハローとグッバイのマーチ』はリヴァービーなギターはありつつ、でもショート・チューンも少なくなって、より歌を聴かせたいっていう思いを感じる作品になったと思うんですが。
伊藤 : それは『魔法はとけた』『生き埋めVA』を出したあたりから、日本中のバンドとやる機会が増えて、バンドにも変化があったんです。ツアーに出てほかのバンドのライヴを観て、もっとこうしたいってすごい感じるようになって。ちゃんとしようって意識が僕のなかで芽生えてきたんです。
ーーそう思った大きなきっかけは何だったんですか?
伊藤 : 特に2015年にNOT WONKとツアーを周ったときですね。完全にバンド力が違うと思って。そのツアーで、ちゃんと演奏するだとか、音作りとか、いままで疎かにしてたことが如実に露呈されて。すごい悔しかったですね。NOT WONKがライヴをやったあとにメンバー各々が言葉にしなくても感じていたよね(笑)。ちゃんとしようっていうのは、なんとなくの音作り、演奏、曲作りじゃなくて、THE FULL TEENZを誰が聴いても成立するものにしようと思ったんです。
佐生 : 菅沼くんがバンドに入ったくらいの時期に一度苫小牧でNOT WONKと対バンしたんですけど、そのときはバンドとして多分同じラインに立っていたんですよ。でもお互いリリースしたりとかライヴを重ねるごとに差が出来てしまった。楽しければいいやってだけでライヴをしてたのを、意識の部分でも変えていかなきゃいけないなって思いました。

ーー音楽的には具体的に何か影響を受けました?
伊藤 : NOT WONKは曲もちゃんと展開がありつつ、インディ・ロックや東京のパンク / ハードコア・シーンの勢いだったりとかを全部内包した音楽だったんで、それってやっぱすごいなって。僕たちはいままで曲毎に特徴を分けるっていう手法を取っていたんですけど、でもそれはちょっと違うなって思ったんですよね。いままで僕らが得てきたもの、ショート・チューンの速さはいかしつつ、昔にやってた歌モノのメロだったり、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビっていうJPOP然とした展開だったりを1曲に全部内包できたらなと思って。それで「PERFECT BLUE」って曲を作ったんです。それがいまのTHE FULL TEENZですね。
分かる人だけに分かればいいみたいな感覚ではない(伊藤)
ーーなるほどね。音像に関して言うと今作は〈KiliKiliVilla〉の安孫子真哉さんがミックスを担当してますよね。
伊藤 : 安孫子さんのおかげで、ライヴで出している音に近いミックスが今回のアルバムはできたと思います。リヴァーブって使うとそれだけで結構雰囲気が出るじゃないですか。でもそのせいでふわっとしてメロが弱くなっちゃうっていうのがずっとネックだったんですね。なのでパンクの芯がありつつ、そういう雰囲気を出せるミックスっていうのをずっと模索してたんです。曲調に関しては、さっきも話したようにショート・チューン期の曲だったり、いままでのノウハウを全部3分くらいの曲に内包できたらなってことを考えて新曲を作りましたね。そして、それを主軸に既存曲を当てはめていってベスト・アルバムみたいな感覚で制作しました。音像の部分で重なりがあれば、新曲はいままでの曲とも違和感なく共存できるかなと。
ーー3分くらいの長さの曲にこだわった理由があれば教えてください。
伊藤 : 単純に展開のある曲が好きだからですね。あとは間口が単純に広くなるかなと思って。30秒の曲よりかは3分間のほうが誰でも聴いてもらえるかなと。“インディ・ロック”とか“京都のパンク・バンド”って肩書じゃなく、普遍的な日本のロック、そういう音楽でありたいって気持ちが最近はあるんです。例えば、サニーデイ・サービス、andymoriとかって、フェスに行くような若い子たちも聴くけど、本当にロックが好きな人たちからの支持も厚いじゃないですか。その間口の広さがかっこいいなって思っていて。

佐生 : 今回このアルバムを作っているときに伊藤が歌詞を書くことに対して、ものすごくストイックというか「もっといける」って感じで取り組んでいると感じて。いままでは音でやったけど、これからは言葉で何か伝えたいとか、そういう思いが芽生えたのかなって。
伊藤 : 確かにすごい気をつけましたね。日本語で歌っているバンドからしたら、歌詞って1番命の部分かなと。そして歌詞は僕の内情が多いのかなと思います。でもそれだけだったら一方通行な表現になっちゃうと思うんで、そうなり過ぎないように気をつけていますね。あと僕らはよく「青春っぽい」って言われたりするんですけど、実際には恋愛の歌詞って1曲もないし、それよりも生活のなかの些細な発見だったり、いいなって思うことを歌っていて。青春未満のことばっかりなんです。それを声を大にして言いたい(笑)。
ーーもっともっと多くの人に聴いてもらいたいっていう気持ちがいまはすごく強いんですね。
伊藤 : そうですね。分かる人だけに分かればいいみたいな感覚ではなく、間口をどれだけ広くするかっていうことをいまはすごく考えていて。表面だけ見たとしても成り立つし、ちゃんと深いところを知ってくれようとする人たちはもっとハマってくれるようにってことを心がけているんです。なので最終的には僕らのライヴにディッキーズを履いた高校生とか、〈ラフ・トレード〉とか〈キャプチャード・トラックス〉のTシャツを着た人、〈I Hate Smoke〉とかが好きでいつもライヴに来てくれるような酔っぱらいが来てくれたりとか、意味不明でカオスな会場になればおもしろいなって。僕らの音楽を誰が聴いても、どの角度から見ても成立する、そういうものを目指していきたいです。
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LIVE INFORMATION
いつまでも世界は…第五回~SECOND ROYAL RECORDSブース~
2016年5月29日(日)@京都weller’s club
時間 : 開場 15:00 / 開演 16:00
料金 : 無料
出演 : Homecomings / she said / THE FULL TEENZ / Seuss / And Summer club
THE FULL TEENZ pre.「ハローとグッバイのマーチ 東京」
2016年6月5日(日)@下北沢SHELTER
時間 : 開場 18:30 / 開演 19:00
料金 : 2,300円(+1d)
出演 : THE FULL TEENZ / 松本素生(GOING UNDER GROUND) / SEVENTEEN AGAiN / ラッキーオールドサン
DJ : 田中亮太 / yuyanakamula
BREAK A SCHOOL TOUR 2016
2016年6月11日(土)@大阪松屋町地下一階
時間 : 未定
料金 : 未定
出演 : THE FULL TEENZ / manchester school≡ / aaps / Suueat. / slugger machine / and more
THE FULL TEENZ pre.「ハローとグッバイのマーチ 大阪」
2016年7月31日(日)@大阪十三ファンダンゴ
時間 : 未定
料金 : 未定
出演 : THE FULL TEENZ / and more
PROFILE
THE FULL TEENZ
伊藤祐樹(Vo,Gt)、菅沼祐太(Ba,Vo)、佐生千夏(Dr,Vo)の3人組。 2008年、中学生だった伊藤を中心に結成。2014年、現在の3人編成に。 京都を中心にスタジオ・ライヴから〈ボロフェスタ〉、〈FUJI ROCK FESTIVAL〉等の大型フェスまで縦横無尽に活動中。 メンバーを中心として立ち上げたレーベル「生き埋めレコーズ」の第1弾作品『生き埋め VA』は NOT WONK、MILK、CAR10の別名義など日本全国の同世代バンドをいち早くコンパイルし話題に。 2014年、1st ep『魔法はとけた』(CD)を生き埋めレコーズより、2nd ep『swim! swim! ep』(TAPE)を I HATE SMOKE TAPESよりリリース。2015年、NOT WONKとのスプリット(7")をリリース。