2016/03/04 12:12

喜びも哀しみも含めた“ダンス”を表現したいーーあらかじめ決められた恋人たちへ×曽我部恵一

叙情派インスト・ダブ・ユニット、あらかじめ決められた恋人たちへが、2年半ぶりとなる6thフル・アルバム『After dance / Before sunrise』を完成させた。本作は、曽我部恵一、和合亮一、ハチスノイトが参加し、情景と物語が広がるシネマティック・サウンドの進化を示した70分超の内容に。あら恋を活動初期から追い続けているOTOTOYでは、CD発売に1週間先駆け、ハイレゾ配信スタート。アルバムをまとめ購入すると、Webブックレットと、ライター森樹によるライナーノーツが特典に。さらに3月9日には、リリース・パーティと銘打ちUst番組を中継する。そして、本ページではリード・トラック「gone feat.曽我部恵一」でフィーチャリングしている曽我部恵一と、あらかじめ決められた恋人たちへのフロントマン、池永正二との対談を掲載。あら恋の衝撃を多角的に受け取ってほしい。


約2年半ぶりとなるアルバムをハイレゾ配信

あらかじめ決められた恋人たちへ / After dance/Before sunrise(24bit/48kHz)

【配信形態】 FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC
【配信価格】 単曲 257円(税込) / まとめ価格 1,851円(税込)

【収録曲】
1. after
2. blast
3. rise
4. 焦点 fear.和合亮一
5. gone feat.曽我部恵一
6. 風花
7. before sunrise
8. view
9. high
10. void
11. 波 feat.ハチスノイト
12. 月下

※アルバムをまとめ購入いただくと、森樹によるライナーノーツとWebブックレットがPDFでついてきます。
あら恋、アルバム先行ハイレゾ配信&Ust番組生中継決定

『After dance / Before sunrise』リリース・パーティ
放送日 : 2016年3月9日(水)
放送チャンネル : TV♭(https://ototoy.jp/tvflat/)
内容 : 『After dance / Before sunrise』の楽曲を聴きながら、あらかじめ決められた恋人たちへのメンバーが楽曲について語ったり、視聴者からの質問に答えたり、クリテツによるテルミン講座などさまざまなコンテンツを用意。お酒を飲みながら、文字通りのリリース・パーティを行ない、それを中継いたします。

★あら恋への質問を募集中
件名に「あらかじめ決められた恋人たちへへの質問」、本文に質問内容と氏名(ペンネーム可)をご記入の上、「info(at)ototoy.jp」の(at)を@に変更してメールをお送りください。いただいた質問の中から選ばれた質問に対し、メンバーがUst内で答えます。
※あらかじめinfo(at)ototoy.jp からのメールを受信できるよう設定してください。

対談 : 池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ) × 曽我部恵一

叙情派インストゥルメンタル・DUB・ユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ」が、2年半ぶり、新体制となって初となるアルバム『After dance / Before sunrise』をリリースする。A(After)- sideとB(Before)-sideで構成された70分超のツイン・アルバムとなっているが、中でも象徴的な存在と言えるのがリード曲「gone feat.曽我部恵一」である。この楽曲は、前作『キオク』に収録されたハウス・チューン「Going」をバンド・サウンドで解釈したリアレンジ版であり、DUBを標榜するあら恋が新たな一歩を踏み出したことを明確に示した、官能的ですらあるダンス・ナンバーだ。インスト・バンドであるあら恋が「gone」に込めた想い、そしてアルバムのコンセプトである“ダンス・ミュージック”という言葉の意味とは。あら恋のバンマス・池永正二と、「gone」にヴォーカルとして参加した曽我部恵一によるディープな対談から紐解いていく。

あらかじめ決められた恋人たちへ / gone feat.曽我部恵一
あらかじめ決められた恋人たちへ / gone feat.曽我部恵一

取材&文 : 森樹
写真 : 雨宮透貴

曽我部さんが「抱きしめる」って発すると、物語が見えてくる(池永)

ーーまずは、おふたりが出会った経緯を教えてください。

池永正二(以下、池永) : 曽我部さんがネットラジオ(「ROSE RADIO」)であら恋の曲をかけてくれたんですよ。わざわざ「ラジオでかけていいですか?」って連絡までくれて。それが2005年くらいで。

曽我部恵一(以下、曽我部) : そのあと一緒にライヴをやったんだよね。

池永 : やりました。(難波)ベアーズの19周年イベントで、曽我部さんに弾き語りで出演していただきました(トウヤマタケオと曽我部、あら恋のスリーマン)。

曽我部 : 当時ベアーズで働いてたんですよね。

池永 : そうなんですよ。

池永正二

ーー曽我部さんはあら恋の音楽を初めて聴いたとき、どんな感想を持ちましたか?

曽我部 : 単純にかっこいいなぁと思って。インストだけど、ダンス・ミュージックっていうほどテクノ寄りでもないし、ロックだけどギターがすごく歪んでいるわけでもないし、レゲエの要素もあって… あまり聴いたことのない音楽でしたね。

ーーバンド編成になってからのライヴは観ていますか?

曽我部 : ちゃんと観たのは対バンした時かな(2008年12月の渋谷LUSH)。けっこうアグレッシヴな演奏で、迫力あるなあって。クラブ・ミュージックだと割とインストのバンドも多いけれど、(それよりも)混沌としていて。

ーー池永さんは、サニーデイ・サービスや曽我部さんへの印象は?

池永 : 好きでしたね。『東京』とか昔から聴いてました。… こうやって直接言うのは照れくさいです(笑)。なんか、現場でも街中でも、ばったり会うことが多いですよね?

曽我部 : そうだね。

池永 : フジロックに出たとき(2011年)にリー・ペリーとマッド・プロフェッサーが共演していて、観に行ったら曽我部さんが横にいた、みたいな(笑)。あとはワッツーシゾンビのプロデュースをやらせてもらって。

曽我部 : そうだ、ROSE RECORDSからリリースしたワッツーシゾンビのアルバム(『WE ARE THE WORLD』 / 2009年)のプロデュースを池永くんがやっていて、それが個人的にはすごく面白かったんですよね。

ーープライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』を参考したアルバムですよね。

池永 : ワッツーシはベースがいないのに(笑)。ロック・バンドとクラブ・ミュージックの境目が僕の強みだと思っていて、その要素をどロック・バンドのワッツーシに注ぎ込んだら絶対におもしろくなると思って。踊れるロック・バンドっていうか。曽我部さんには夜中によく相談させていただきました。

曽我部 : あれは面白かったですね。内容もめっちゃいいと思うんですよ。再評価されてほしい。

池永 : 名盤だと思います。その頃から曽我部さんとはずっと一緒にやりたいと考えていたんですよ。… 曽我部さんの声って、セクシーだけど憂いもあって、キュンってなるでしょ? コラボした「gone」は、所謂、王道のダンス・ミュージックなんですよ。じつはABBAの「ダンシングクイーン」だと僕は思っていて。あなたも踊ってみなよ、ダンシングインーンだよ、って。そういった「踊り」に結びつけるには物語が必要で。物語と言っても歌詞オンリーではなく、歌詞も含む声質、存在感、結局、人間的な魅力が歌になって響くかどうか。曽我部さんが〈抱きしめる〉って発すると、物語が見えるんですよ。哀しみも、喜びも両側があるような。絶妙な響きなんです。

曽我部恵一

ーー曽我部さんは「gone」を聴いての感想はいかがでしたか?

曽我部 : いい曲だと思いましたね。自分があら恋に持っているイメージよりは明るいというか、まっすぐな曲だなって感じがしました。テーマが「gone=別れ」というのは池永くんから最初に伝えてもらっていて、それに沿って歌詞も書いて。

ーー最近だと、「夏の魔物」に楽曲を提供したり、吉澤嘉代子さんの曲にギターで参加したりしたと思うんですが、今回の共同作業はどのように捉えていましたか?

曽我部 : どれもコラボレーションだから、一緒に作業する人がどういうものを目指しているのかを汲んで、そこに近づけて完成させたいと思いますね。池永くんがダンス・ミュージック、特にハウスにしたいという話があったので、フロアで流れている光景をイメージしつつ、どういう言葉にすればいいのかを考えていきました。

ーーなるほど。あら恋のヴォーカル曲としては、eastern youthの吉野寿さんが参加した「Fly」がありましたが、オリジナル・アルバムに収録したのは初めてですよね。

池永 : 初めてです。前回のミニ・アルバムで吉野さんと、ブライアン・イーノのカバー(「by this river」『キオク』収録)でクガツハズカムに参加してもらってから、あら恋でのヴォーカル曲に対する違和感はもうなくって。声って一番のinstrumentsだし。だから自然に、アルバムにもヴォーカル曲は入るだろうと思って制作していました。ヴォーカル曲といっても和合さんはポエトリー・リーディングだし、ハチスノイトはvoiceなんですけどね。「gone」は、元々ベースになっている「Going」(『キオク』収録)のときから歌は乗せたいって思っていました。

レーベル KI-NO Sound Records  発売日 2013/08/28

01.

※ 曲番をクリックすると試聴できます。

僕も自分に何の影響が一番大きかったかっていうと、ああいうATGみたいな世界かなって(曽我部)

ーー曽我部さんは、今回のアルバムを聴いて、どのような感想を持たれましたか?

曽我部 : あら恋の音源を聴いていつも思うのは、やっぱり映画みたいだなと。池永くん自体が映画をひとつの基盤にしている部分はあるのかなと勝手に思っていて。

池永 : そうですね。曲の構成やアレンジ、アルバム全体の物語や曲順を考える時はかなり映画的な要素を基盤にしていますね。例えば、ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』の最後にジーザス・アンド・メリー・チェインの「JUST LIKE HONEY」がかかったとき、めっちゃドキッとしたんですよ。それまで「なんか退屈な映画やなあ」て思って観てたら、ジザメリがかかるラストシーンで記憶に残るくらい素晴らしい映画になって。あのタイミングであのイントロっていうカタルシス。うおーキターって(笑)。もう構成とセンスですよね。あら恋でも、どのタイミングで何の音を流すか。ジャストのタイミングで鳴らすのが良いのか、案外ちょっとズレてる方がハマったり。アルバムでも曲順によって物語が変わってくるので。そこを重要視するのって映画的なんだと思います。

The Jesus And Mary Chain / Just Like Honey
The Jesus And Mary Chain / Just Like Honey

曽我部 : “音楽で聴く映画”って感じがするもんね。

ーーおふたりとも映画好きだと思うのですが、そういった会話をしたことは?

池永 : 何度かしましたね。僕らバンド名(田原総一朗監督『あらかじめ失われた恋人たちよ』が着想になっている)からしてATG(※映画会社。日本アート・シアター・ギルド。61年~80年まで活動)ですからね(笑)。

曽我部 : 僕も自分に何の影響が一番大きかったかっていうと、ああいうATGみたいな世界かなって思うんですよね。自分たちは直撃じゃなくて直後の世代だから、リアルタイムではあんまり知らないんですよ。だから、商業主義にならない映画づくりが昔あったんだ、っていうところに憧れもあるし、内容ももちろん好きで。

池永 : 売れるために作るのではく、作りたいもので売るっていうか。

ーーATGの影響もあってか、池永さんも曽我部さんも互いに主宰レーベルを立ち上げていますが、やり方自体は違いますよね。池永さんのKI-NO Sound Recordsは完全にあら恋だけで。一方のROSEはこれまでたくさんのアーティストをリリースしていて。

曽我部 : 池永くんは、いつから自主なの?

池永 : 2013年の『DOCUMENT』からで、今回が3作品目です。それまではアルバムごとにレーベルが違っていて、レーベルごとにやり方もいろいろあって。それぞれのやり方を見ていると、自分の作品を自分のやり方で発表することにトライしたい! って思うようになりました。元々宅録ミュージシャンなんで、自主カセットテープを委託販売してもらいにレコード屋さんを回ったりするところから始まってるんで、昔からやってることは、変わらないですね。MVやアルバムのジャケットにしても、監督やデザイナーと直接話しながら作りたかったんです。間を挟んじゃうとどうしても伝言ゲームみたいになるときがあって。現場の人間と直接話さないと伝わらないし、僕自身が分からない事も多いんで。ほんと、周りに協力してくれる人がいるからこそ成り立っています。

曽我部 : 完全に1人でやってるんですか?

池永 : 普段はそうですね。A&R的な立場の人もいるんですけど、リリースのときだけお願いする形で。

曽我部 : 個人レベルでできるんだね…。あら恋の前回のアルバムをいただいたんですけど、資料がちゃんとしてて、池永くんがひとりでやってるイメージが全然ない(笑)。僕らはスタッフが何人かいるんですけど、なんかPUNKの7inchみたいな手作り感がどうしても出ちゃう。デザインとか(外部に)振ってるんだよね?

池永 : 振ってます。

曽我部 : 僕らはイラレとかフォトショップとか何もわかんないとこでデザインしているから、いまだに値段とかちょっとズレてたりするんですよ(笑)。

池永 : 僕も前作に「ニューアルバム」って書いちゃって、いつまで経っても永遠に最新アルバムに見えてしまうという。老けないアルバムですね(笑)。

曽我部 : そういうのが一番大変ですよね。(音楽を)作るのはプロだからできるけど、それをプロモーションしていくところでインディの人たちはみんな苦労してるんじゃないかな。

池永 : 今はでも、いいものを作れば良いんちゃうかなと思ってますけどね。

曽我部 : ぼちぼちそういう方向になってきているよね。もう少し情報が均一に伝わるようになったら、「すごいのが出た」という情報だけが拡散していくと思う。
池永 : 伝え方云々はあると思うんですけど、単純にいいものを作ることに尽くしたいですね。仕掛けよう、バズらせようとしたらバレちゃうでしょ? PC1台あれば簡単に曲が出来る時代だし、自分が何を作りたいか、という意識が強い人が残ると思うんですよ。

ーー曽我部さんはレーベルを10年以上やられていますが、長くやり続けられた要因はありますか?

曽我部 : いやー、要因はないですけどね、ただやってるだけなので。

池永 : 続けられるのってすごいじゃないですか。

曽我部 : ひとりだったら辞めてるかもしれない。周りに力を貸してくれている人がいるんで、自分の一存でパッと辞めることはできないから。まあ、これといって挫折があったわけでもないから、のんびりやってる感じです。めんどくさいなって思うこともいっぱいあるんですけど(笑)。

池永 : やってみてわかりますね(笑)。

曽我部 : やめるほどの勇気もないっていう(笑)。立ち上げたときは、「こんな風にしてやろう」という野心もあったんだけど。10年以上やっていると新鮮味はないけど、でも、そこからが勝負かなあと思ってます。日常というか、普通になっちゃったことをいかにコンスタントにやっていくかがテーマですね。大ヒットも難しいだろうし、でもその中で自分の音楽をどうやってキープしていくか。

池永 : その状態からのヒットって、やっぱり難しいですかね?

曽我部 : いや、それはわからないよ。わからないけど、現実を理解した上でやるのはすごく大事。初期衝動のエネルギーも大切だけど、それが終わったときに自分にどういうものが残っているのか。だから今は… いい音楽って何だろうなあって探している状態かもしれない。そういう気持ちが、自分にも聴く人にとっても残せたらいいなあとは思っていますね。

力強い反抗ではなくて、ステップを踏んでいる感じで前に進めるような、推進力のあるものを(池永)

曽我部 : 今さらなんだけど、あら恋ってDUBバンドなの? 僕は全然そう思っていなくて、もちろんDUBの影響があるロック・バンドだとは思うけど。

池永 : そうですね、DUBの影響は受けてるんですが、いわゆるDUBバンドではないです。ただ、DUBってベースとドラムがメインのダンス・ミュージックなんですけど、美しいメロディや暴力的なノイズが鳴っていたとしても、根底ではドラムとベースでしっかりリズムを刻んでいたいってのはあります。

曽我部 : ベースになっているのがハウスじゃなくてDUBなんだね。「gone」はハウス寄りだけど。

池永 : 「gone」はハウス寄りではあるんですが、ハウスをやるにしても、あくまでベース・ラインとドラムの拍の取り方はDUBをルーツにしたグルーヴ感にしたくって。遅い感じで腰にくるグルーヴというか。そして、あの轟音とメランコリックな音色の響き。あれはあら恋ならではだと思っています。

曽我部 : 僕はハウスが自分のベースなんですよ。社会的に虐げられている人々が集まって、音楽を思い切り楽しもうとしているところに影響を受けて。象徴的な体験として今でも思い出せるのが、ニッキー・シアーノの来日公演。NYのギャラリーってクラブでDJをしていたハウス黎明期の人で、(ハウスの)クラシックがガンガンかかるイベントだったんだけど、その日、たまたま彼の誕生日で。パーティーの最後に誕生日を祝うケーキが出てきたとき、スタッフがそれを丁寧に切り分けてさ、会場のみんなに振る舞って一緒に食べたっていう(笑)。そういう雰囲気も含めてね。

ーー「gone」はまさに、そんなハウスを心から愛する曽我部さんと、DUBを愛する池永さんの趣向が巧みに反映された曲に感じました。

池永 : ロマンがあるものがやりたかったんですよ。なんだかなーってことが社会で永遠と続いてて。昔からもうずっとなんだろうし、確実にこれからもずーっと続いていくんだけど。そう言えばこの前、大阪ツアー帰りに車を運転しながらラジオを聞いてたら、子供にドラッグを打って殺してしまっただの、テロと断定しただの、刺しただの、延々暗いニュースのみが5分間くらい続いて、なんかほんと泣けて来たんですよ。明るい話、ひとつもなかったっなぁ、って。 僕らはそんな時代だからこそ、人が失敗したとか暗いニュースで盛り上がるんじゃなくて、その時間、音楽で楽しめた方が良いでしょ。そういうときこそ「踊ろうよ」と思うんです。結果として、それが社会への力強い反抗ではなくても、ステップを踏んでいく感じで前に進めるような、そんなものを今回は作りたくて。

曽我部 : それはアルバムのテーマにも繋がってるの?

池永 : 繋がっていますね。ダンス・ミュージックがテーマって言ってるんですけど、ジャンルの話ではなくて、前向きな力を持ったものですね。今回、沖田修一監督と「gone」のMVを制作したのですが、お母さんたちで結成されたPTAダンサーズの方々に踊ってもらっていて。みなさんの40代超えてなお踊る姿がとても印象的で、グッとくるんです。「gone」の歌詞にも、〈答えは / 風のなか / 踊るだけ〉っていうフレーズがあるじゃないですか。あの踊りです。喜びも哀しみも、風の中、舞い踊ってる感じです。

曽我部 : なるほど。心の中で踏んでいるステップってことだね。今って、ダンス・ミュージックが簡単に制作可能じゃないですか。ビートも音色もプリセットされているし、機能的に作ることができる。でも、そういったものと池永くんの言うダンスは違うよね。

池永 : 違いますね。

曽我部 : 僕は高校生のとき、とにかく学校がつまらなかったし、早く家に帰りたいって毎日思ってたの。で、家に帰ればダイナソーJr.を爆音で聴いていて(笑)。そういう、もうあと数十分でダイナソーJr.の爆音のギターが聴ける! ってワクワクする感情のことだよね。

池永 : そういうことです(笑)! 学校がつまらなくて辛いって感情をありのまま出すだけじゃなくて、その周りの景色や前後の時間軸を含めて曲にすることで、ちょっとした幸せをリスナーと共感できるんじゃないかと思っていて。最終的にはやっぱり希望のあるものをやりたいんです。音楽で。

ーーなるほど。では今回の共同作業は、池永さんにとってどのような経験になりましたか?

池永 : 今回のアルバムは、「gone」を含めて3曲ヴォーカル曲があるんですけど、言葉って強いなぁって改めて思いましたね。

曽我部 : ダイレクトに入るからね。でも、歌詞があると、言いたいことがなくても(メッセージが)出ちゃうから、それが少し面倒くさいところもあって。自分はこういうことを伝えたいから書いている、というのは一切ないんですよ。音楽って、「言いたい」も「言いたくない」もなくて、自分の心を描くようなことだから。もちろん、受け手がそれをどう捉えるかはお任せするしかないですけど。

ーー「ギター」や「汚染水」とかも、特定のメッセージを示した曲ではないと。

曽我部 : 自分のなかでこの言葉にするっていうチョイスの意味はあるんだけどね。ただ、歌詞って音楽の中でも何かと議題に上がりがちだから。ダンス・ミュージックだったらそれが邪魔になるときも多いと思う。でも、クラブで一番感動するのは、日本語の曲がかかってそれがハマったときなんだよね。ミニマルしか流れないクラブで、最後にEGO-WRAPPINが流れたときはけっこうキタよね(笑)。

池永 : (笑)。意外性もあるんでしょうね。僕は主に洋楽を聴いていたんで、音楽を聴く上で言葉の意味はあんまり重要じゃなかったんですよね。だからこういう音楽やっているかもしれないです。

ーー渋谷WWWで行われる『After dance / Before sunrise』のリリース・パーティでは、曽我部さんもゲストで参加するとのことですが、最後に意気込みを聞かせてください。

池永 : 最近はロック・バンドとして演奏で勝負していたんですけど、今回は久々にちゃんとしたショーをしたいと思っています。映像も12面使って。

曽我部 : 楽しみですね。映像とはリンクするの?

池永 : はい、リンクするパートもあります。音と同期できるんですよ。

曽我部 : 同期してるんだ? そういうのは自分にはまったく未知の世界だから、歌うのが楽しみです。

池永 : 「gone」もアレンジをライヴ用に変えてやろうと思ってますので、踊りに来て欲しいです。

配信中の過去作品もチェック

あらかじめ決められた恋人たちへ

あらかじめ決められた恋人たちへ / Fly feat. 吉野寿

【配信価格】
(左)HQD(24bit/44.1kHz) 300円
(右)mp3、WAVともに250円

【Track List】
01. Fly feat. 吉野寿
あらかじめ決められた恋人たちへ / DOCUMENT

【配信価格】
(左)HQD(24bit/44.1kHz) 単曲 300円 / まとめ購入 2,000円
(右)mp3、WAVともに 単曲 250円 / まとめ購入 1,800円

【TrackList】
01. カナタ / 02. Res / 03. Conflict / 04. へヴン / 05. クロ / 06. テン / 07. days / 08. Fly
>>2年3ヶ月ぶりのフル・アルバム『DOCUMENT』に関するインタヴューはこちら<<
>>あらかじめ決められた恋人たちへ、16年間の歴史を振り返る!<<

曽我部恵一

>>サニーデイ・サービス、4年ぶりの新作アルバム・リリーズ時のインタヴューはこちら<<
>>曽我部恵一、氷の洞窟で録音した『氷穴EP』リリース時の特集はこちら<<

LIVE INFORMATION

あらかじめ決められた恋人たちへ

『After dance / Before sunrise』Release TOUR 2016"Dubbing 09"
2016年3月18日(金)@名古屋APOLLO BASE
2016年4月8日(金)@大阪CONPASS
2016年4月9日(土)@東京WWW
ゲスト(東京) : 曽我部恵一、和合亮一
映像(東京) : rokapenisとmitchel

曽我部恵一

フジロッ久(仮)超ライヴ・ツアー2016
2016年3月6日(日)@東京 下北沢 BASEMENT BAR

結いのおと-YUINOTE-
2016年3月20日(日)@茨城 結城市 北部市街地

シャイガンティ企画 -Nowhere Man-
2016年3月25日(金)@東京 東高円寺 二万電圧

おと酔いウォーク2016
2016年3月26日(土)@福島 飯坂温泉街6会場

サニーデイ・サービス LIVE 2016 春風ロンリー
2016年3月28日(月)@大阪 梅田 Shangri-La
2016年4月2日(土)@東京 下北沢 CLUB Que
2016年4月3日(日)@東京 下北沢 CLUB Que

忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 日比谷野外音楽堂 Love&Peace 2016年5月7日
2016年5月7日(土)@東京 日比谷野外音楽堂

GREENROOM FESTIVAL'16
2016年5月21(土)、22日(日)@神奈川 横浜 赤レンガ地区野外特設会場

サニーデイ・サービス『東京』20周年記念コンサート "東京再訪" 2016年6月17日(金)@東京 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

PROFILE

あらかじめ決められた恋人たちへ

1997年からスタートした、池永正二をバンマスとするDUBユニット。鍵盤ハーモニカによる叙情的な旋律と、轟音バンド・サウンドを特徴とする。2016年3月9日に、6枚目となるスタジオ・レコーディング・アルバム『After dance / Before sunrise』をリリース。曽我部恵一が参加した「gone」のほかにも、詩人の和合亮一、ハチスノイトがゲスト参加している。

>>あらかじめ決められた恋人たちへ official HP

曽我部恵一

サニーデイ・サービスのVo. / G.。2000年にバンド解散以降は、ソロ名義や曽我部恵一BANDなどで精力的に活動。並行して、主宰レーベル「ROSE RECORDS」を立ち上げ、40組を超えるアーティストの作品をリリース。2008年、サニーデイ・サービスを再始動させた。サニーデイ・サービスとしての最新作は、7inchアナログ+CDシングル『苺畑でつかまえて』。

>>曽我部恵一 official HP

[インタヴュー] あらかじめ決められた恋人たちへ

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