LIVE REPORT : 2014年8月18日(月)@下北沢SHELTER
壊れかけのテープレコーダーズが8月18日、下北沢SHELTERにて4thアルバム『broken world & pray the rock ‘n roll』のレコ発自主企画〈ロックンロールの殉教者〉を開催した。この日は、komori(Vo、Gt)がリスペクトを公言し、バンド名に共通点もある百々和宏とテープエコーズとの2マン・ライヴ。きっと彼ら自身が誰よりもこの日を待ち望んでいたのではないだろうか。
先攻は百々和宏とテープエコーズ。百々の伸びやかなヴォーカルが心地良い「バターのようだね」から、ライヴはゆるやかにスタートした。サイケデリックなドラミングからはじまった「ワルツ」では、メンバー同士が演奏中に笑顔でアイ・コンタクトをとるなど、和やかなムード。「みなさん、こんばんは。いい音、いい酒、いい演奏。百々和宏とテープエコーズでございます。ようこそいらっしゃいました」と百々があいさつ。「喉乾いたね~。ギャラ天引きでビール4杯お願いします」とカウンターに向けて話すと、komoriが直々にステージにビールを運び、場内が沸く。「今日も素敵な夜になりますように」とみんなで乾杯すると、「酩酊ぐあいにぴったりな曲」という紹介から「クラクラ」を演奏。客席もドリンクを片手に、思い思いに体を揺らした。
曲の合間にゆるいトークを挟みつつ、ライヴは進んでいく。ラップのように早口で言葉を投げかける「中央線午前4時」の曲中では、山下達郎「RIDE ON TIME」の一節を披露。ミディアム・テンポの「すきにして」に続き、エンディングのギター・ソロと百々の歌声が胸を打つバラード「箱船」を演奏すると、客席は集中してステージに耳を傾けた。ここで百々がビールのおかわりをしつつ、壊れかけのテープレコーダーズとの関係を話す。「バンド名が似てるじゃないですか。パクったんですよ(笑)」と冗談ぽく笑うと、「そしたら、(壊れかけのテープレコーダーズが)ぐんぐんきちゃって、しかも出す曲全部かっこよくて」と称賛の言葉を贈った。
中島みゆき「悪女」の”冒涜ヴァージョン”というカバーを披露すると、ギターの轟音と突き上げるリズムに客席は手をあげて応えた。「高架下の幽霊」曲中で百々がビールを一気に飲み干すと、ラストの曲は「ロックンロールハート」。心地良いコーラスから各メンバーのソロへと繋がり、客席が大きく沸き上がる。最後は「サンキュー、ロックンロール! サンキュー壊れかけのテープレコーダーズ!!」という言葉でライヴを締めくくった。
転換を挟み、壊れかけのテープレコーダーズの4人はクールにステージに登場。緊張を拭い去るように「ようこそ! ディス・イズ・ロックンロール・バンド、壊れかけのテープレコーダーズ!!」とkomoriが絶叫すると、「15歳のポケット」を演奏。ひときわポップな「海岸線」を披露しつつ、yusa(Vo、Organ)の歌をフィーチャーした「エンドレスワルツ」へ。続いてサイケデリックなギター・ノイズが場内を切り裂くと「聖者の行進」がはじまり、明滅する照明のなかでkomoriが場内を扇動するように言葉を投げかける。ステージ前方でギター・ソロを披露すると「うおおおお!!」と雄叫びをあげた。
komoriが「今日はありがとう、集まってくれて。テープエコーズさんよかったですね。すごい感極まっちゃって…」「憧れてた人と同じ舞台に立てて光栄です。この舞台を観にきてくれた人もありがとう」と話すと、暖かい拍手が場内に響いた。強い希望を感じる「どこにいても」から、shino(Ba)と440(Dr)のリズムがひときわ力強く躍動する「夜の果てへの旅」では圧倒的な演奏を聴かせる。ロックへの愛を込めた「ロックスターのお墓参り」では、komoriが少年のような笑顔を見せた。
「本当に光栄であります。集まってくれたみなさんもありがとう」とkomoriが感謝を述べると、「世界はクソみたいな… あなたたちは美しいんですけど(笑)。みなさんも日々生きてて嫌なこともあると思うんですけど、それでもロックを信じて。今日は、ただそれをやりに来ました」と話し、アルバムの中核をなす大作「broken world」で渾身の演奏を聴かせる。オルガンの美しい音色が響き、薄暗い照明が明るくなる。ミラー・ボールまわるなかで、「pray the rock ‘n roll!!」というkomoriの叫びがこだました。
実はここまで、「broken world」以外はアルバム曲順どおりのセットリストだった。なので、これで本編は終わりかと思いきや、ライヴはまだ続く。komoriが「ロックンロールの殉教者ってついてるけど、死にません(笑)。続けます。百々さんもきっとそうだと思う」と笑顔で話すと、「新しい扉を開けるための新曲」という紹介から「go to」へ。タイトルどおりの、未来へと進む力を感じさせる力強い演奏で本編を締めくくった。アンコールでは軽快なロック・ナンバー「踊り場から、ずっと」、そして真っ赤な照明のなかでサイケデリックな「蝶番をこじあけろ」を演奏。観客を熱狂の渦に巻き込み、ライヴは終了した。
どちらのバンドも違う世界観ながら、それぞれの持ち味を存分に発揮したライヴだった。ステージで何度も口にしていたように、双方へのリスペクトとロックへの愛を強く感じた。このライヴを機会に、ぜひ今後も交流を続けてほしいと願う。また数年後にこの組み合わせで観たいと思える、素晴らしい2マンだった。(前田将博)
photo by kazumi yanagisawa
壊れかけのテープレコーダーズ4th Album「broken world & pray the rock 'n roll」レコ発自主企画
「ロックンロールの殉教者」
2014年8月18日(月)@下北沢SHELTER
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
価格 : 前売り 2,500円 / 当日 3,000円
出演 : 壊れかけのテープレコーダーズ、百々和宏とテープエコーズ
■セットリスト
百々和宏とテープエコーズ
1. バターのようだね
2. ワルツ
3. クラクラ
4. 中央線午前4時
5. すきにして
6. 箱船
7. 悪女
8. 高架下の幽霊
9. ロックンロールハート
壊れかけのテープレコーダーズ
1. 15歳のポケット
2. 海岸線
3. エンドレスワルツ
4. 聖者の行進
5. どこにいても
6. 夜の果てへの旅
7. ひとつ
8. ロックスターのお墓参り
9. broken world
10. go to
アンコール
11. 踊り場から、ずっと
12. 蝶番をこじあけろ