アンビエント、シューゲイザー、ポストロックで描く風景画ーーSUGRAN、8年目の1stをハイレゾ配信&新曲をフリー・ダウンロード

ポストロック、シューゲイザー、エレクトロ、アンビエント、ノイズなどを絶妙にマッチさせ、風景を描写するようなサウンドを描く、東京都内を中心に活動を続けるロック・バンド、SUGRAN(スグラン)。結成8年目に突入した彼らが作り上げた待望の1stアルバム『KOKYU』を、このたびOTOTOYでハイレゾ配信する。それにあわせ、現体制で初となる楽曲も制作してもらった。これまでの集大成的アルバムと、新しい出発ともいえる新曲。それらをじっくりと聴いていただくことで、あなたの頭にはどのような風景が浮かんでくるだろうか。まずは新曲を聴いていただくことで、彼らの描く風景を感じてほしい。そのために、同楽曲はフリー・ダウンロードでお届け!! また、インタヴューも一緒に楽しんでみてほしい。
>>>「題名のない夜に」のフリー・ダウンロードはこちらから
集大成的な1stアルバムをハイレゾ配信
SUGRAN / KOKYU(24bit/48kHz)
【配信価格】
HQD(24bit/48kHz) 単曲 150円 / まとめ価格 1,000円
【Track List】
1. 呼吸
2. 金色の雨
3. 水の中、滲んだ
4. SHiNSEKAi
5. Affecting
6. Spiral
7. Wonderland
8. 祈り
9. 白い国
INTERVIEW : SUGRAN
まるで画家のように音楽を作るグループだ。風景を喚起させる音楽を目指すバンドこそ多けれど、実際に風景を観て音楽を作りはじめるバンドは、実はそんなに多くないのかもしれない。東京都内を中心に活動を続けるロック・バンド、SUGRANは、実際に風景をみることでインスピレーションを受け、楽曲に落とし込んでいくバンドである。ソングライターは、ドラムの山野井とギターの石井という2人体制のため、すべてがそういう作り方というわけではないけれど、「風景が浮かぶ音楽を」という点ではバンド内で一貫しているようだ。むしろ、その点を中心に回っているといっても過言ではないだろう。この特集にあわせて、現体制で初の楽曲を制作してもらったにもかかわらず、そこに大きな感慨を感じて満足しているわけではなさそうなのだ。なんと、インタヴューの最後では、新メンバーの募集まで発言している。すべては、満足いく楽曲を制作するために。1stアルバム『KOKYU』のハイレゾ配信、現体制での初楽曲のフリー配信とともに、メンバー3人にその真意を尋ねてみた。
インタヴュー&文 : 西澤裕郎
歌モノとインストのいいとこ取りといいますか…
ーーSUGRANが結成されたのは、いつくらいのことなんですか?
石井草平(以下、石井) : 2006年くらいに、僕とツヨシ(山野井)でやり始めたんです。もともと、まったく別々のバンドをやっていたんですけど、自分がやっていたバンドが解散して、他のバンドをやりたくなったときに、スタジオに貼ってあった張り紙の中の1つを見つけて電話したんです。

ーーその張り紙には、なんて書いてあったか覚えてます?
山野井ツヨシ(以下、山野井) : えっと、風景描写的なバンドをやりたいってことと、歌モノとインストのいいとこ取りといいますか…。歌モノだけじゃ楽器隊がおもしろくないっていうのがあって。だけど、インストだと間延びするというか… なんだろうな、そういうライヴって観ているは人どうなの? っていう気持ちも個人的にあったので、うまいこと歌って、でも演奏もおもしろいものができたらいいなと思って。そういうことを理想として書いた覚えがあります。
石井 : 僕の視点から話すと、元々やっていたバンドはまだ継続していたんですよ。ドラムが抜けるってことになって、その時のベーシストと一緒に募集をしていて。それでたまたま見つけて、(山野井と)1回か2回かスタジオに入ったんですけど、ベーシストとツヨシがお互いちょっと違うんじゃないかってなってしまって。ベースは、ミクスチャーとかメタル・バンドとかを元々やっていた人だったから(笑)。で、だんだんグダグダになってきて、そのバンドはなくなって。
ーーで、2人でもう一回やることになった、と。
石井 : そうですね。ただ、ベースを募集し始めたのはだいぶ後で。とりあえず半年くらい2人でセッション的な感じで曲を作っていたんです。その間、mixiでバンドの募集を出してたら、知り合いがベーシストを紹介してくれて。知り合いといってもmixi上だけの繋がりだったんですけど、実際に会ってみたら紹介されたベーシストはイタリア人だったんです(笑)。
ーー(笑)。なかなかベースが定まらなかったようですけど、それはなぜなんですか。
明石 : ベースの演奏がロング・トーンばかりだから、弾いていて楽しいって思えない人も多いというか。弾きたがりの人は、おもしろくないんじゃないですかね。
ーー見せ所を作りにくいわけですね。
明石裕一郎(以下、明石) : 基本的に「どーんどーん」って単音で伸ばして、いかに音を減らしていくかを考えないと合わないってのもあるのから。
山野井 : 逆に、センスがよくないと曲やフレーズが台無しになってしまうんですよ。別に音数を詰め込んでもいいんですけど、明らかに違和感が出てくる可能性が高いので、そこは難しかったですね。
石井 : 地味に職人っぽいベーシストのほうが合うのかもしれないですね。
ーーそれじゃあ、最初にミクスチャー好きなベースの方とやろうとした時点で大間違いじゃないですか(笑)。
石井 : (笑)。ただ、最初期はほんとギター・ロックのような感じというか。今よりガシガシとしたビートでジャカジャカとギターを掻き鳴らして歌うって感じでした。
風景が思い浮かぶバンドがいいなと思っていて
ーー先行でフリー配信させてもらった「hope」「∞ universe」「鶫」は、そのころの曲なんですか?
石井 : いや、2009、2010年くらいの曲ですね。
山野井 : 時期的には中期頃の作品なんですけど、どんな印象を受けましたか?
ーーぼくにはギター・サウンドの歌ものって印象がしましたけど、SUGRANの考えるギター・ロックとは違うんですね。
石井 : :俺はギター・ロックとかジャンルにこだわって作るわけではないので…。
山野井 : 音楽のジャンルって人によって捉え方が色々あると思うので、ジャンルは特には意識してはいないですね。
ーーなるほど。一貫しているのは、風景が見えて、インストとうたものが混じっている。なおかつ音数は多くない、引きの美学みたいなところもあるってところなのかな。そういえば、明石さんはいつ加入されたんですか。
明石 : 2013年の2月ですね。web上にあがっているメンバー募集をみて応募したんです。
ーー外側から観た、SUGRANの印象って、どうでした?
明石 : 僕は、元々サポートとかでずっとやっていて、バンドやりたいなと思って、どういうバンドをやりたいんだろうと考えていたときに、風景が思い浮かぶバンドがいいなって思っていて。音源を聞いていいなと思って。
石井 : ちょっと寄せてきた(笑)!
ーーあははは。去年の2月にこの3ピースがそろったにもかかわらず、今回フリーで配信する「題名のない夜に」が、現メンバーでの初楽曲になるわけですよね。その間、どういう活動をしていたんですか。
山野井 : アルバムのレコーディングがまだ終わっていなかったんですよ。その時期はキーボードのメンバーもいて(現在はサポートメンバーになっている)、メインはアルバムを完成させることに力を入れていて。まずはそっちをやってからと思って動いていたから。
石井 : 曲も増えるわけでもなかったしね。
山野井 : だから、明石君にはSUGRANの曲を覚えてもらう期間っていうか。
石井 : アレンジし直すじゃないですけど、ベーシストが変わると結構変わるので。
心が動いた景色だったり風景だったりからはじまっています

ーーそんな中完成させた1stアルバム『KOKYU』ですが、ミックスも自分たちでやったんですか。
石井 : やれるだけ自分達でやって最終的なところは外部のエンジニアの方に任せました。録りは全部自分達でやりました。録ったのは、リハーサル・スタジオなんですよ。2カ所くらいの。
ーーいい感じの宅録感が出てますよね。
山野井 : 実際あまりいじってないですしね。音圧をギチギチにあげるのは最初からやめようっていうのは決めていたので、ナチュラルにナチュラルに、っていうのを狙っていました。

ーーさっきから出ている風景って部分で、ぼくが感じたのはミニマルなシティ・ポップさなんですよ。都会っぽいけど人がいないみたいな。みなさんが描く風景っていうのはどういうものなんでしょう。
石井 : 僕は、ですけど、人は確かにいないですね。都会だったりもするんですけど、9曲ある中の7、8曲は、川だったりしますね。「新世界」って曲があって、それは都会なイメージで、自然とは違う感じで作りましたけど。
山野井 : 自分の場合は、ある印象的な一場面があって、その風景を思い浮かべて曲とか響きとかを寄せていくんですよ。自分の作った曲は風景からはじまってますね。明確なイメージがありますね。
ーーそれは実際に目にした景色なんですか。
山野井 : そうです。一曲だけ夢で見たものがありますけど、実際に自分が体験して心が動いた景色だったり風景だったりシチュエーションからはじまっています。 例えば「KOKYU」って曲は夜明けの浜辺を散歩していて曲想が浮かびました。 段々と雲を晴らして昇る太陽が印象的でしたね。
ーー感銘を受けたら曲にしたくなるんですか。
石井 : (山野井に向かって)彼は、アーティストなんで(笑)。
山野井 : でたよ(苦笑)。アルバムを作っているときは、アルバム用にゼロから曲を作っていたので、いろんな所に行って自分の心動くものを探してました。
ーー曲を作ろうという気持ちがでてくるのはなんでなんでしょう。
山野井 : なんか、定期的に作っていかないと、強迫観念じゃないですけど、無意識にストレスがたまっていくんですよ。
石井 : バンドをやっていて明石君が入ったときじゃないですけど、しばらく新しい曲を作らない期間があると単純につまらないですよね。定期的にまた作りたくなりますけど。
ーー作ることで自分たちにいい影響が起こるわけですね。
山野井 : 個人的にはすっきりしますね。一週間くらいその気持ちが続くんですけど、ちょっと時間が経つと徐々にフラストレーションが溜まって、次の曲を作りたくなります。
石井 : 2人で作っているので、刺激を与え合うというか、お互いちょっと違うものを作ってくるんで、もう1人いてよかったっていうのは思いますね。
ライヴハウスじゃない場所でやりたいんですよ
ーー今回フリー配信する新曲「題名のない夜に」はいつ頃にできた曲なんでしょう。
山野井 : 去年だよね。明石君はもういたので。
石井 : だから、夏前だよね。
山野井 : 矛盾するようですがこの曲に関して最初は明確な風景はなかったですね。とりあえず夏っぽいちょっと軽快なものをやりたいっていうので、ギターを弾いて作りました。
石井 : リズムが違うパターンがもう一個あって。2人で聞かされてシンプルな方を選んだ気がしますね。
ーー音はどうやって膨らませていったんですか。1年近くあったわけじゃないですか。
石井 : まず、ライヴでやっていきながら録ったものを聞いたりして、こうしていこうかなって。最初は自分のパートを詰めていって好きなようにやるんですよ。そこから、すり寄っていく感じというか。ツヨシが曲を作る場合は、ワンコーラスの進行とリズム、コードがあって、何度も聞いてイメージをふくらませながらメロディを載せていくんです。大体即興メロディって感じなんですけど。9割型できて、そっからだよね。

ーー明石さんにとって最初の音源になりますが、思い入れはあるんじゃないですか。
明石 : 思い入れ… 特別にない。
ーーあはははは。
明石 : すいません…。
ーーいや、そこは結構このバンドの肝だなと思って。メンバー間で、これちゃうやろみたいな感じではないじゃないですか。まあ、影で殴り合ってるのかもしれないけど。
一同 : (笑)。
ーーある程度の距離感でバンドをやっているなっていうのは曲にも出ていると思うんですよ。別にそれが悪いってわけじゃなくて。
石井 : 見抜かれましたね。距離感あるもんね。
ーーそれが、さっき言った人気のない都市世界っぽいなと思っていて。
山野井 : あぁ。プライベートではあんまり接点はないんですけど、曲を作ったりアレンジしているときは直接言いますね。内容とか。すげえ違和感あるってフレーズも自分で判っててやる場合もあります。ここで何か言ってくるだろうなって判ってても、やるときはあります(笑)。
石井 : 一応、なんでもやってみるってのはありますね。スタジオで作っていく中で、思い浮かんだことをとりあえず一通りやって、言ったり言わなかったり。そういった意味ではこの曲はすんなり出来ましたけど、録音に至るまでには結構時間がかかりましたね。
ーーなんで時間がかかったんですか。3人での第一歩じゃないですか。
山野井 : 外圧じゃないですけど、今回OTOTOYでフリー・ダウンロードっていう働きかけがなければ、このタイミングで録音はしていなかったですね。なんでかっていうと、アルバムがまだ広く知られていないのに、新曲を被せてどうするんだっていうのがあったので。
ーーなるほど。無理を言ってお願いしてしまったので、すいません。
石井 : いや、むしろ、ありがとうございます。
ーーこれを機にアルバムを広めるってことに力を入れていこうと?
山野井 : それもそうですけど、ライヴに来て欲しいですね。
石井 : 3人それぞれ仕事があってっていう状況なので、しょっちゅうツアー組んでどっか行くぞとかはできないんですけど、ライヴは定期的にやりたいなっていうのと、自分達のアイディアで、自分達発信のライヴができたらなと思っています。
山野井 : 所謂ライヴハウスって場所もいいですが、もう少し気軽な感じに軽くご飯とか食べれて、座って見れたりする所で音を出せたらいいなぁと。SUGRANの音楽的にも最後までオールスタンディングで観るって感じでもない気がするので。個人的には、収益をあげるとかっていうよりも、色々な所でやりたいんですよ。教会だったりプラネタリウムだったり。今回は色々な人に聴いてもらえる機会なので、誘ってもらえたら遠方でも旅費はギリギリでもライヴしに行きます!
ーーそんなこと書いちゃっていいんですか(笑)?
山野井 : 本当に色々な所でやりたいんですよ。バンドでライヴができる所って往々にしてステージが高くなってたりして客席と分離されているじゃないですか。それはそれでいいんですけど、自分的には客席と同じ高さのところで演奏した方がおもしろいなと。
石井 : 観にいってみるぞっていうより、遊びに行って音楽やっているくらいのほうがお客さんとしても楽かなって。
山野井 : もうちょっとライヴが身近にあって欲しいって気持ちがあるんです。
石井 : 語弊があるかもしれないですけど、自分たちの知っている顔が半分以上来ていて、知らないバンドが出たら外に出て他のバンドを見ないってこともあると思うんです。だから、そうじゃなくて、ゆっくりご飯食べながら新しい発見もして欲しいなって。
山野井 : あと話し飛びますけど、メンバー募集しています。増員したいなと思っていて。
石井 : 募集中なのはキーボード、弦楽器とかチェロとか。アコースティックな楽器も入れてやりたいなっていう気持ちもあるので。色々なことをやっていきたいですね。
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LIVE INFORMATION
2014年6月27日(金)@渋谷 wasted time
時間 : open / start 19:30 / 20:00
出演 : Shun Sakaguchi / SUGRAN / 福冨英明
料金 : 2,500円 当日 3,000円(2D込)
ぼんじり×町田SDR pre.「クシモリフェス 2014 2日目」~SDR9周年スペシャル~
2014年7月19日(土)@町田SDR
時間 : open / start 15:00 / 15:30
料金 : adv / day 1800円 / 2100円+1drink
出演 : ぼんじり / canna / 日本 / SUGRAN / niente. / わがままカレッジ / Kikey / 39degrees / wonderwander / +1band…
PROFILE
SUGRAN

2006年夏、石井と山野井が出会い曲作りなどをしながらゆっくりと活動を開始。 何度かのメンバー・チェンジを経て、2013年1月より新体制となり活動再開。
水色の粒がゆっくりと肩に滲んでいく。
あなたは晴れた空を探し歩き出した。
落ちてくる水色のリズムに耳を澄ませて、
その意味を一つまた一つと受け止めていく。
嘆いているわけではない。
希望に満ち溢れているわけでもない。
それでも、あなたを包んだ水色は
やがて世界になるのだから。