
異色の対談と思われた方もきっと少なくないのではないか。2013年、奇しくも同日にファースト・アルバムをリリースすることになったcamelliaのtakashiishiwataと“それでも世界が続くなら”の篠塚将行。胸を軋ませるようにして直情的な歌をうたう篠塚と、どことなくスピリチュアルな雰囲気を纏いながら異形の音像を生み出していく石渡。単純に彼らのつくる音楽を並べてみてもなかなか共通点は見えないかもしれないが、じつはこのふたり、同い年のバンドマンとして10代の頃から地元・千葉で切磋琢磨してきた関係なのだという。そこで今回はこの両者をお招きし、彼らの言葉をもとにcamelliaと“それでも世界が続くなら”がどのような変遷で現在に至ったのかを紐解いてみることにした。彼らのフランクな対話を楽しんでいただければ幸いだ。
進行 & 文 : 渡辺裕也
camellia / “42'23” (左:MP3 右:HQD)
【配信価格】
アルバム配信価格
mp3 まとめ購入のみ 1,200円
HQD(24bit/48kHzのwav) まとめ購入のみ 1,500円
【Track List】
01. “13'27” part1 / 02. “7'56” / 03. “10'10” / 04. “5'40” / 05. “13'27” part2 / 06. “5'10”
camellia『42'23』リリース時の特集ページはこちら

同い年でこういうやつがいると、本当にヘコみますね(篠塚)
ーー作品を聴き比べた印象だとあまり接点が見えてこないおふたりなんですが、交流そのものはかなり長いそうですね。もう15年くらいの付き合いだとか。
石渡 : 別々の高校に通っていてそれまでは全く面識がなかったんですが、お互いにバンドをはじめて、その頃からライヴ・ハウスで会う機会があったんだよね。
篠塚 : そうそう。こうして付き合いが長くなった分、お互いに思うことはあるはずですよ。少なくとも、俺にとってはこんなに対談したくない相手なんていませんから。
石渡 : あはははは(笑)。そう?
篠塚 : だって、自分の同級生にcamelliaがいたと想像してくださいよ。ふつうに音楽辞めたくなりますから。それに隆史は人柄も頭もいいからさ。もし先輩か後輩だったらいいけど、同い年でこういうやつがいると、本当にヘコみますね。ただ、その高校の頃の隆史って、ちょっと尋常じゃないようなディストーションを鳴らしながら「うおー!」とか叫んでて。で、最近はちょっとその頃に戻ってきている感じがするんだけど。
石渡 : うん、たしかに戻ってきてるね(笑)。
篠塚 : やっぱりそうだよな! 最近のやつを聴いたら「おお! なんか隆史が高校生の頃に戻ってきてる!」と思ってさ。
石渡 : ひと回りしたというか、見栄がなくなっていくうちに自然とそうなってしまった(笑)。俺はやっぱり同じことをずっとやるのが苦手で。それで自分ができないことを探してやろうとしていくうちに、いつの間にかまたガキっぽいところに戻ってきてしまった(笑)。
篠塚 : でもさ、単純に俺たちは同じころに音楽を始めたのもあって、最初のころはやっている音楽もちょっと近い感じがあったんですよ。でも、ある時にふらっと隆史のライヴを観たら、それがちょうどいまのcamelliaみたいな音楽になりつつある時期で。あのときは「おおっ」と思ったな。
石渡 : ああ、たまたま通りがかりで観に来てくれたことがあったね。たしかにあの頃は過渡期だったと思う。

篠塚 : ちょっと音楽の様子がおかしくなり始めてたというか。僕にはなにかを振り切ろうとしているように見えたんだよね。しかも、当時の彼はそれとは別のバンドでベースも弾いていたので。
ーーtrico(トリコ)ですね。
篠塚 : そうそう。そのtricoのベーシストとしても第一線でやりながら、camelliaでもこいつはまたなにかやろうとしてたんです。
ーーたしかにtricoとcamelliaを同時期にやるって、改めて考えるとすごいですよね。
篠塚 : そこをわかってもらえるなら話は早いです。でも、僕はその音楽性以前の話になっちゃうところがあって。僕、音楽のプレイってハートの強さがでかいと思ってるんです。つまり、その人が早熟か晩成かは関係なく、音楽からは努力の片鱗が見えるわけですよ。で、隆史ってマジで努力したやつなんですよね。俺はそのハートの強さにやられちゃって。それと同時に「ああ、俺はいままでなにをやってたんだろう」と思わされるというか。
ーー努力か。隆史さんを「天才」と呼ぶ人も多いじゃないですか。
篠塚 : いやいや、こいつは努力の人ですよ。隆史がやってきたことって… うまく言えないけど、とにかく俺はみんなに隆史の音楽を好きになってほしいんですよね。だって、こいつホントがんばってるから。
石渡 : やめろ(笑)。
篠塚 : ずっとライヴ・ハウスでやってきた俺らとしては、こういうやつが認められないのはいやだよ。音楽って努力の分だけ評価されるとか、そういうもんじゃないんだろうけどさ。こいつからはいつも「ちょっと俺らもマジでがんばらないとやばいな」って気持ちにさせられてますからね。僕にとっての隆史はそういう存在なので。
石渡 : まあ、シノは俺らが徐々に変化していく過程も見てくれてるからね。
篠塚 : 途中経過をよく知ってるからな。そう考えると、たしかにいまのcamelliaといきなり出会ったら、そりゃ「ちょっとこいつすごすぎるだろ」となるか。でも、僕から言わせれば、隆史はとにかくハートが強い人っていうイメージなので。
もう辞めるタイミングを何度も逃しちゃってるからね。(石渡)
ーーでも、たしかにおふたりくらいの年齢になると、同世代で音楽活動に一区切りを入れる人もけっこう多くなっていきますよね。
石渡 : ああ、でもそれってもう僕らよりちょっと下の世代なんだと思います。僕らくらいになっちゃうと、もう辞めるタイミングを何度も逃しちゃってるから。辞める奴はとっくに辞めてて、癖のある奴らしか残ってないんですよ。
篠塚 : もう腹を括ったあとだよね(笑)。人から評価されることがいちばんのプライオリティではなくなってる。実際、そうじゃないと音楽なんて続けられないと思いますし。
ーーじゃあ、篠塚さんにも腹を括るタイミングがあったんですか。
篠塚 : もちろんありましたよ。隆史はよく知っていると思うけど。千葉ってシーンみたいなものがしっかりとあって、ライヴ・ハウスでの筋の通し方というか、年功序列もはっきりしているんですよね。で、僕ってそこでものすごい劣等生だったんですよ。ライヴ・ハウスの店長からも「千葉でいちばん暗くてダメなバンド」みたいな言われ方してましたから。
石渡 : たしかに言われてたなあ(笑)。
篠塚 : いちばんってなかなか言われないよな。その頃はけっこう土俵際でしたね。打ち上げとかでも、先輩が俺の曲を歌いながら、腕に注射器を刺す素振りをするんですよ。つまり「お前、ラリッてんだろ?」と。僕はそういう扱いだったんです。「ちょっとこいつあぶねえよ」っていう。なんか狭い世界の話ですけど、音楽をやってると、昔いじめられてた頃を思い出して懐かしい感覚になるというか。
ーーなるほど。でも、その千葉のシーンのつながりも興味深いですね。
石渡 : 単純に年功序列的なものはあります。でも、ジャンル関係なく付き合いがあって、単純に良い音楽という括りで皆お互いを認め合っているんですよね。だからこそ俺もシノと仲良くなったってところがあると思うし。
ーーご本人いわく劣等生だったとのことですが、隆史さんから見て、篠塚さんはどういう変遷をたどっている方なんですか。
石渡 : まあ、そこは本人的にはいろいろあるんだろうけど、個人的にはシノからそこまでネガティヴな印象を受けたことはないですね。その都度リリースされた音源を聴いてきて、もちろん変化もありますけど、芯の部分はその当時とあまり変わってない印象ですね。こいつはそのときに思ったことを音楽に切り取っていくタイプなので、昔といまでは考えることが変わってきた、というのは楽曲に表れてるし、そういう意味では変化を感じます。けど根っこは同じ、という部分では純粋さを感じます。
ーー篠塚さんっていわゆるシンガー・ソングライター的な資質の方ですよね。
篠塚 : そうですね。僕にとっては自分が思ったことをそのままの状態で書けるかどうかが大事なんだけど、やっぱり100パーセントは書けないんですよ。僕の表現力がないからか、思ったよりも伝わってない感じがあって。で、それをどれだけ100パーセントに近づけることができるかは、やっぱり努力だと思うんですよね。そういう意味でも、俺は心のなかで常に2パーセントくらいは隆史のことを意識しているんです。
ーー具体的にどう意識されてるんですか。
篠塚 : えっと、これは知人から教えてもらったあるプロレスラーの話(※恐らく三澤威のこと)なんですけど、その人はもう20年以上も試合に出ずにずっと整骨院で働いているんだけど、それでも自分はプロレスラーだと言い続けてきたらしくて。それがつい最近、その人が22年ぶりに試合をやったんですって。で、その後のブログで彼は「試合をすればプロレスラーなんじゃない。俺はプロレスラーとしての生き方を選んだからプロレスラーなんだ」みたいなことを書いてて。それで「俺達も一緒だな」と。俺達もバンドマンという生き方を選んだんですよ。そういう意味で、隆史ってもちろん音楽的にも最高なんだけど、それ以前にこいつの歩んできた道のりがかっこいいんですよね。あ、そういえばこれを言ってなかった。俺達、職場が一緒だったことがあるんですよ。
石渡 : ああ、これ言っちゃいけないやつかと思って伏せてたわ(笑)。
篠塚 : 同じライヴ・ハウスで一緒に働いていた時期があるんです。それである時に隆史がボソッと言ったことで、すごくよく覚えているのがあってさ。「努力を一気にするのが好きじゃない」って。それはメンバーにも伝えたな。
石渡 : ああ(笑)。それ、一気に頑張るのは大変だって話でしょ。いまもそうだわ。
篠塚 : そうそう。掃除と同じで、やらないで放置しておくと、あとからしんどいっていうね。で、あるときにその職場の店長と俺達でけっこう真面目な話をしていたときがあったんですけど、隆史はちゃんと話しながら、常に指はものすごい速さでベースを弾いてるんですよ。で、俺はそれを見ながら「あ、こうしている時間にも俺と隆史は差がついているんだ」と思ってさ。
やっぱり隆史には追いつけないなっていうのがまずあるから(篠塚)
ーー(笑)。でも、篠塚さんにも隆史さんとは違ったかたちで積み重ねているものがあるんじゃないですか。
篠塚 : まあ、俺と隆史にはスタイルの違いもありますしね。というか、隆史がいたから、自分はそれとは別のところに行こうと思ったところはあって。たとえば、ちょっとした偶然でポリリズムっぽいフレージングができて「おお、なんかいますごくかっこいいことやれてるぞ。俺にもこういうのできるんだ」みたいな気になったことがあるんですけど、そのあとで隆史の曲を聴いて、やっぱりそういうのは止めようと思いましたね。こんなに近くでここまですごいものを作っているやつがいるんだから、俺がそれをやろうとする必要はないなって。
ーー逆の見方もあるんじゃないですか? つまり、隆史さんには追求しきれないところを篠塚さんがやってるところもあるんじゃないかなって。
石渡 : うん。それはもちろんありますよ。お互いに持っている武器がまったく違うので。
篠塚 : あ、それは興味深い。でも、怖いから聞きたくない。俺、今日ここにくるまでは話すことなんてないと思ってたけど、この機会だからちょっと教えてよ。なんで隆史は途中からあんまり歌わなくなったの?

石渡 : それは、tricoはもちろんそうなんだけど、とにかく手伝い含めて一緒にやっていたバンドのヴォーカルがみんなすげえ歌うまくて。俺は自分の声とか技術に対するコンプレックスがハンパないんだよね。自分で歌うのが好きじゃないんだわ。
ーーそれはいまも変わらないんですか。
石渡 : はい。でも、だからって我慢しているのもつまらないし、自分が満足できるようになるまでやればいいだけだから、最近ちょっとやってるんですよ。試しているというか。でも、いざやってみると「やっぱり(歌は)外した方がよかったかな、歌うの嫌だな。」と思っちゃったり(笑)。自分的には指を早く動かしている方がずっと楽ですね。
篠塚 : そこは俺と逆なんだよね。ただ、やっぱりバンドって団体行動でしょ? そこでメンバーにバシッと言えるかどうかも俺達は違うよね。お互いに指摘し合いながらやっていけるのかっていうさ。それが俺は無理だったから。
ーー自分でバンド内のイニシアチヴを握るのが苦手ってこと?
篠塚 : 僕はそもそもバンド内で自分がイニシアチヴをとるのがあまり好きじゃないんです。その前にまず「僕の曲なんかを演奏してくれてありがとう」っていう気持ちがありますから。
ーー(笑)。
篠塚 : 「こういうふうにやれ」みたいな気持ちにはなれないんですよ。でも、隆史はそこを本気でやってるから。そもそも僕は自分の音楽が人から評価してもらえるなんてまったく思わずにずっとやってきたし、バンドって「やりたいようにやればいいじゃん」では済まないことがけっこうあるんです。メンバーそれぞれの生活がありますからね。それを踏まえると、「とにかく自分の音楽を突き詰めていこう」みたいなのって、僕はあまり得意じゃない。ホントはやりたいんですけどね。でも、やっぱり隆史には追いつけないなっていうのがまずあるから。
ーー隆史さんに先を行かれてる感じがずっとあるってこと?
篠塚 : 「感じ」じゃなくて、事実としてそうですから。だって、彼はずっと3ピースのヴォーカル / ギターとしてやりながら、tricoのベーシストとしてもトップ・プレイヤーになっちゃってるわけですから。少なくとも自分が見てきたなかで、こいつには誰よりもイケてる瞬間があるわけですよ。同い年でうだつの上がらない僕からしたら、そりゃコンプレックスにもなりますよ。
石渡 : 別にウダツが上がってないわけじゃないでしょ? その頃のシノ、めちゃくちゃ活動的だったじゃん。年に何度もワンマンをやったりさ、しっかり認知されてたし、こいつやってんなって思ってたよ。
篠塚 : ああ、あれは俺もよく意味がわかってないまま、ライヴ・ハウスに「自分達で企画をやりたいんですけど、出てくれる友だちがいない場合はワンマンってことですか?」と訊いたら、そうだと言われたからで。それでワンマンをやったら、すごい悔しい感じになっちゃって、それで「もう一回やらせてもらえませんか」と。で、その2回目が終わったあたりで、どうやら企画とワンマンは違うらしいなと。あの頃ってホントそんな感じだったんだよ。
ーーでも、その悔しさを次につなげていったのはミュージシャンとして大きかったような気がしますよ。あと、さっきのプロレスラーの話で気になったのが、「バンドマン」としての生き方を選んだというところで。つまり、「ミュージシャン」では意味が違うのかなって。
石渡 : ミュージシャンというと、もう少し個人寄りになっちゃうんだと思いますね。それよりかは複数人編成が前提で音楽をやる人間っていう意味合いが強いんだと思う。
ーー隆史さんはひとりで音楽をやろうとは思わないんですか。
石渡 : ああ… いまはありますよ。その強さをもって同じ気持ちでいる人間達と一緒にやったらもっと良くなると思うようになってきてます。
篠塚 : え、そうなの? それはちょっと意外だわ。それくらいに隆史は「バンドマン」っていうイメージだからさ。
石渡 : もちろん根っこはそうだよ。だからどんなバンドに参加しても対応できる個人でありながらっていう話。一か所だけじゃなく、いろんなところに転々としていけるようなバンドマンでありたいというか。
篠塚 : なるほどね。僕の場合はどうだろう。曲だけを見れば、ひとりでやることはできるんだろうけど、極力それをやらないようにしているところもあるからな。

ーーなぜ?
篠塚 : だって、そりゃバンドが好きだからですよ。ぶっちゃけ音楽はどうでもいいんです。
ーーお! それはけっこう思い切った言い方ですね。
篠塚 : camelliaも含めていろんなバンドから、僕はずいぶん前に音楽的な欲求を殺されちゃったと思ってるんです。それくらいに隆史たちがつくっている音楽はかっこいいですからね。だからこそ、そういう欲求を取り戻そうとも別に思ってなくて。自分がちょっとすごいものを作れたと思っても、それのレベルを余裕で越えてくるものをつくるやつがいる。じゃあ俺はやめたと。考える気もなくなったし、「音楽なんてよくわかんねえわ」って思っちゃって。でも、やっぱりバンドが好きなんですよね。
やっぱ「こいつ変わってねえな」って(笑)。(石渡)
ーーでも、隆史さんにだって同じような意味で折れそうになったことはきっとあると思うけど。
石渡 : もちろん。シノにだってそうですよ。まあこいつの場合は、新譜も聴かせてもらって「いい感じで録れてるし、なんか大人になったかな」なんて思ってたら、一曲目の中盤でギャーギャー言い出して、やっぱ「こいつ変わってねえな」って(笑)。でも、全編ギターの感じとか、すごくいいよね。
篠塚 : え、ホント?
石渡 : シノって、たまたまつくったような曲がものすごく高いクオリティだったりするんですよ(笑)。どっか似通っちゃいそうなところをいつもギリギリでかわしていくというか。ちゃんとそれぞれの曲でフックが違うんですよね。本人はそこまで意識していないんだろうけどさ。
篠塚 : たしかに意識はしてない。むしろ俺は「どの曲も同じじゃん」と言われてもいいってくらいの気持ちだから。そういう誤解だったらまったく気にしない。ただ、いろんなことをやろうとした果てに「とっ散らかってる」と言われるのはつらいんですよね。というのも、自分がやりたい音楽をやるってことは、着たい服を着ようとするようなもんだと僕は思ってるから。
ーーなりたいものになろうとするってこと?
篠塚 : そういうことですね。でも、着たい服がイコールで似合うかというと、必ずしもそうじゃない。そこで俺達は自分に似合うものを探してるんですよね。ジャズもパンクもかっこいい。フュージョンのよさもなんとなくわかってきた。だから、自分としてはそれをぜんぶやってみたくなるんだけど、バンドってそうはいかないから。だから、いまは自分に合ってる服を選ぶようになったんだと思います。
ーー隆史さんはそういうものが見つかった手ごたえってありますか。
石渡 : 僕は今回でひと段落ついたような感じがします。既存の曲を録音していく、という活動に一区切りがついたというか。だから、今度はもうちょっと目的に基づいた作曲をしてみようかなとは思っていて。
篠塚 : へえ! それは楽しみだなあ。
ーー今回のアルバムでcamelliaの第一期が終わると。篠塚さんはどうですか。
篠塚 : 僕ですか? 僕は死ぬまでこんな感じなんじゃないですか。ああ、それやっぱりいやだな。でも、さっき隆史から「ちょっと大人になった」と言われたのは嬉しかった。やっぱりどこかで僕も変わりたいんでしょうね。というか、他の人も変わりたいから音楽をやってるのかな。でも、そうじゃなさそうな人もけっこういるか。現状を維持しようとする人ってけっこう多いしね。
石渡 : うまくいってるなら、変わらなくてもいいのかもしれないけどね(笑)。
ーー実際に活動が長くなってくると、新しいことに挑むのが難しくなってきたりもしますよね。
篠塚 : でも、それも結局ハートの問題だよな。
石渡 : そういうことだよ。だって、人ってやれることがそこそこ増えてきちゃうと、できないことをやろうとしなくなりがちだからさ。
篠塚 : でも俺、隆史から感銘を受けたことがひとつあったよ。こいつ、好きな曲からだめなところを探して、逆に嫌いな曲からいいところを探すんですって。俺、それはビックリした。それって音楽だけの話じゃないからさ。自分の好きなことだけをやって、嫌いなことはやらなくなる。「大人になる」って、実はそういうことだったりするでしょ? つまり「最近のアイドルは名前が覚えられない」とか言ってる大人に、いま自分達はなりつつあるっていう。いまあるものだけでOKってことにしている。俺達が嫌いだった大人って、そういう人だったはずなんですよ。で、隆史がやってることって、結果的にはそういうことにもつながるなって。興味がもてるものを引っ張り出しつつ、好きなものを妄信はしない。それってすごくクリエイティヴだし、ものすごく疲れると思う。でも、そこは僕も隆史と同じような気持ちでやりたいんです。やっぱり自分に胸が張りたいからさ。
石渡 : ホントそうありたいね。
篠塚 : なんか、しゃべることないとか言いながら、俺ばっかりしゃべってましたね。でも、それくらいに俺は隆史を意識してるんです。同世代で心から尊敬しているのって、ホントこいつくらいだから。だから、このインタヴューを読んで、隆史があんまりしゃべってないなと思った人は、ぜひcamelliaを聴いてほしいですね。こいつはしゃべらなくても行動で見せるやつなんで。
石渡 : お前と一緒にいる時にしゃべれるなんて思ってないよ(笑)。

RECOMMEND
Glaschelim / Perfect Cradle
これまでkilkのレーベル・サンプラーなどに楽曲が収録され、各方面から絶賛されていたロック・バンドGlaschelimが待望の1stアルバムをリリース。美しいアンビエントなギターと重厚なディストーション・サウンドにブレイクビーツが加わり、Isis、Alcest、Hammockのような深淵な音像に仕上がっている。さらにインダストリアルやノイズ系のサウンドをミックスさせることによって、数々のシューゲイザー・バンド、ポスト・ロック・バンドが到達することの出来なかった最強のサウンドを作り出した。また、ゲスト・ボーカルにukaを迎え入れたM9では、バンドの持つポップな一面を披露している。まるで深い精神世界を描いた映画のような本作は、未だかつて味わったことのない新たな刺激と感動を与えてくれる。
フジロッ久(仮) / ニューユタカ
東京を中心に活動するパンク・バンド。結成当初からライヴ・ハウス、バンド・マンからの評価は高く、銀杏BOYZのオープニング・アクトに抜擢されるなどして大きな話題を集める。2011年、初の作品「コワレル」を発表。改めてそのメッセージ性の高さ、ソング・ライティングに対しての評価が高まる。その後震災を経て紡ぎ出た言葉、溢れ出したメロディーを繋ぎ合わせる制作活動に没頭。そしてついに今年「ニューアナーキー、ニューユタカ」という屋号をしょってフジロッ久(仮)が大騒ぎ! 即ソールド・アウトし大成功を収めた5月下北沢Shelterでのワンマン公演を皮切りに動き始めたフジロッ久(仮)が2年半振りに放つニュー・アルバム。これは本当に名盤です! 皆さんのその耳で確かめてください。
nhhmbase / 3 1/2
問題作『波紋クロス』から約5年。拍点をずらし予想の斜め上を行く独特の数学的リズム解釈から生み出される唯一無二の絶妙の間と、転調を繰り返しながらもかろうじて調性を成す機能和声はさらに洗練され、nhhmbaseの構築の美学は新たな境地に達する。脱ポスト・ロック・シーンに布石を打つセカンド・フル・アルバム。
PROFILE

camellia
2005年に楽器隊3人で結成され、2010年よりPAを加えた4人編成で活動。ライヴ以外での露出はほとんどないものの、会場での演奏が噂を呼び各地で話題になっている。特に楽曲の難易度を理解できる著名人、音楽関係者からの支持は絶大である。比較的音楽性の近いbattels、tortoise、KING CRIMSON、STEEVE REICH等を引き合いに出されることもしばしばあり、その音楽性高さ故に、現在海外での公演は行っていないにも関わらず、当たり前のように世界規模で認知されている。

それでも世界が続くなら
2011年1月、現メンバーで「それでも世界が続くなら」としての活動を開始。写真左から、琢磨章悟(Ba)、篠塚将行(Vo&Gt) 、栗原則雄(Dr)、菅澤 智史(Gt)。