
2011年のデビュー・アルバム『さっちゃん』、翌年にミニ・アルバム『23歳』を発表した平賀さち枝が1年半ぶりとなる両A面シングル『ギフト/いつもふたりで』をリリースする。 バンド編成で録音された、彼女の新境地を感じさせる軽快で疾走感あふれる、爽やかなポップ・ナンバー「ギフト」。『さっちゃん』から続く、彼女の歌心のひとつの到達点とも言える切なく甘いミディアム・チューンの「いつもふたりで」を含む全4曲を収録。 平賀さち枝自信のプロデュースにより制作された『ギフト/いつもふたりで』は、oono yuuki、シャンソンシゲル、池上加奈恵(はこモーフ、王舟、真黒毛ぼっくす)、中川理沙(ザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり)、林宏敏(踊ってばかりの国)らなど制作陣も豪華である。新しいステージへ一歩踏み出した平賀さち枝の聴き逃せない作品である。
平賀さち枝 / ギフト/いつもふたりで
【配信価格】
WAV、mp3 ともに 単曲 250円 / まとめ購入 1,800円
【Track List】
01.ギフト / 02. いつもふたりで / 03. ハイウェイ / 04. 四季の唄
INTERVIEW : 平賀さち枝

インタヴュー&文 : 飯田仁一郎(Limited Express (has gone?))
もっと自分の歌じゃなくてみんなの歌にしようって気持ちがあって
ーー まず最初に訊きたいんですけど、みんな気になってるであろうこのイメチェンの理由は?
平賀 : イメチェン… は特に意識してないんですよ。寺沢美遊ちゃんっていうカメラマンの女の子が撮ってくれて、色合いとか見てくれるから。「じゃあこっちの帽子じゃなくてこっちの帽子の色がいんじゃない? 」とか言って、一緒にやりながら。
ーー へえー。美遊ちゃんに写真を撮ってもらおうとお願いしようと思ったのはなんでですか?
平賀 : 女の子にとってほしかったっていうのと、あと美遊ちゃんのwebサイトに載ってる写真が好きだったので。今年、やけさん(やけのはら)の『SUNNY NEW LIFE』っていうアルバムにコーラスで参加してるんですけど、やけさんと美遊ちゃんが仲良くて、そのつながりで友達になれたので。
ーーやけくんと平賀さんも結構仲良かったんですね。
平賀 : もともとお互いにライヴ行き来してました。ここ1年の話だけど。

ーー最初は、ライブハウス好きのいちリスナーだったんですよね? そこから、歌をはじめたのはなんで?
平賀 : なんでだろうなぁ。まったくそのときのことは覚えてなくて。見せ物小屋みたいなところで、自分で書いた日記とかポエムみたいなものを人前で発表したり。でもそれだけじゃつまんないから鼻歌で文章にメロディをつけるとか。そうしてるうちにギターを弾くようになって、だんだん人前で歌って、ギターを持つようになって。
ーー 日記とか文章を発表したいと思ったのはなんででしょう?
平賀 : なにも考えてなくて、でも初期衝動みたいなものがあって。いまはもうないけど。当時は、人目とか気にするたちじゃなかったんで、下手でも人前でライヴできたし、それが続いていまに至る感じです。
ーー 初期衝動がなくなったのは前作『23歳』くらいから?
平賀 : そうですね。1stの 『さっちゃん』は初期衝動。パッとでてきた歌をそのまま録音して、音楽のことはなにも考えてなかったですね。誰かに歌を届けたいとかそういう思いもなかった。で、その初期衝動がなくなったのは次の『23歳』から。
ーー それはなぜでしょう?
平賀 : 『さっちゃん』を発売してから、いろんな人が反応してくれるようになって。自分も音楽に興味が出てきて、同世代の子とかに届きやすいような音楽をしてみようって思ったら、自然と初期衝動みたいなものはなくなったんです。「音楽」を作ろうと意識するようになった。
ーー 届きやすいような音楽というと?
平賀 : もっと自分の歌じゃなくてみんなの歌にしようって気持ちがあって。ようするに… そうだなぁ。わたし、弾き語りの音源とかアーティストとかあんまり聴かないんです。弾き語りよりバンドの音楽をよく聴いていました。女の子にも聴いてほしかったし、若い子にも聴いてほしくて。だからそのためにちょっと聴きやすくしようと思ったんです。それで『23歳』のときからバンドでやってみたいと思うようになりました。
ーー じゃあ平賀さんが1番やりたいのはバンドなのかな?
平賀 : バンドというか、楽しい音のなかで自分が歌いたいって気持ちが強いです。
こんな大変なできごとのなかでも私、歌書けてるなぁと思って
ーー 『23歳』から今回の『ギフト』っていうのは客観的にみるとビジュアルがパッと変わった感じするし、そういう変化もあって平賀さんは全然違うモードに突入したと、僕は勝手に思ってるんです。平賀さんは自分自身ではどうですか?
平賀 : 自分自身では、さっきも言ったけど、もっと自分の歌がみんなの歌になればいいなっていう思いがすごく強まったかな。例えば、1st『さっちゃん』のとき、半径3メートル以内のできごとを歌う。それは自己満足で、具体的な歌詞だったんです。でも「ギフト」では聴いてる人がいろんなふうに捉えてほしいなっていう思いがあって、広い層の人たちに届くように、わりと抽象的に言葉を選んでます。自分のなかの切なさとか暗さをどっかに交えながらも、夢とか希望とかが好きだから、やっぱりパッと明るいほうがいいかなと。そういう音楽がしたくなってきたんです。この「ギフト」は6月くらいに書いたんですけど、この曲ができあがったら、自分のなかですごく自然にしっくりきて。
ーーなるほど。そもそも、この「ギフト」って曲どうやってできたんですか?
平賀 : 先日、お酒を飲みすぎて、ライヴハウスでいろんな人に迷惑をかけてしまって、それで私めっちゃ自己嫌悪になっちゃって。「今後、活動できるのかな」って。ほんとにみっともなかったんです。お酒事件のそんななかでも、シングルのために曲作んなきゃいけなかったから、曲作ってたんですよ。それが「ギフト」だったんですね。〈暗がって明けていく日々も 遠くで思うとき やさしくなれたらなぁ〉って歌詞ができて、いろんな人に迷惑かけて、本当に自分にとっては悲しいできごとだったけど、こんな大変なできごとのなかでも私、歌書けてるなぁと思って。「これは神様からのギフトだ。ありがとう」って意味でタイトルをギフトにしたんです。
ーーめっちゃいい話じゃないですか!
平賀 : だからあれ、お酒の歌なんです。
――すごいきっかけの曲なんですね。
平賀 : はい。わりといままでのインタヴューで「これ恋の歌ですね」とか言ってくれる人もいるんです。
ーー僕もそう思いました。
平賀 : そうそう。私はお酒事件で書いたんだけど、みんなは「恋の歌」って言ってくれるから、それがすごくおもしろくて。私がいろんなふうにみんなが捉えれるように、言葉を選んで書けたんだなと思いました。『さっちゃん』のときはただの自己満足でそんなこと1ミクロも思ってなかったけど、いまは、いろんな人がいろんな思いで、いろんなふうに想像してくれたらいいなと思ってます。
ーー それでこの曲できて、バンッと気持ちが開けた感じ?
平賀 : 「もっとこういうことしたい! 」って思った。
ーーなるほど。
平賀 : 私、ライヴで弾き語りするとき、ずっと椅子に座ってやってきたんですよ。だけどギフトができあがってから、立ってやってるようになったんです。
ーーへぇ。立ち上がったのには理由が?
平賀 : 例えば、自分が将来大きいフェスに出るようになったり、テレビに出るようになったときに、立って歌ったほうが見栄えがいいかなと思って(笑)。その練習です。
ーーじゃあ完全に大きいシーンを目指している、というか想定してますね。この「いつもふたりで」はどういう思いで作ったんですか?
平賀 : 逆に、1stの『さっちゃん』みたいな感じで、なんにも考えずに作った、普通のラブゾングですね。別にだれに届くことも考えずに自分の気持ちを歌ってます。
ーー 両A面にしたのには理由があるんですか?
平賀 : どっちもいい曲だったからです。
自分も、なんでもやりたいと思うようになりました、柔軟に
ーー なるほど(笑)。今回バンド・メンバーも大きく変わってるじゃないですか。『23歳』のときはショピンの田中馨くんと内田武瑠くんと、野村卓史くん(グッドラックヘイワ、NATSUMEN、WUJA BIN BIN)だったよね? それが今回はoono yuukiくんとか中川理沙(ザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり)さんとかになって。今回のメンバーは誰が決めていったんですか?
平賀 : これは私自身が普通に飲み友だちみたいな感じの人たちを集めました。『23歳』のときは、もう大先輩のお兄さんたちが引っ張ってくれたから、今回は友達感覚でやってみようかなと。私は「平賀さち枝」で、バンドじゃなくひとりなんですよね。ならその時々の縁で、作品を作っていきたいと、ずっと思ってたんです。23歳の縁はあの縁だったし。この縁はこの縁。
ーー バンドってやっぱり違いますか?
平賀 : いま練習中なんだけど、バンドってむずかしいですね。
ーーそれは平賀さんが指揮をとってバンドを作ろうとしている?
平賀 : 作ろうとしたんだけど、私はそれ好き、それ嫌いとか感覚的なことしか言えなくて。コードわかんないし、楽譜も読めないし。「誰かに編集してほしい」と強く思います。私は自分でギターを持って歌をうたうってことに執着がなくて、フリーハンドで歌ってもいいし、とにかく私の作った楽曲をもっとみんなに届けるようにしてくれる人がいてほしい。

ーーなるほどね。平賀さんの歌だったらいい巡り合わせがあると思いますよ。いま平賀さんはどんな歌うたいになりたいですか? というか平賀さんの場合、歌うたいって限定してちゃっていいのかな?
平賀 : 私は柔軟になりたい。頑なにはなりたくない、って最近はすごく思ってます。
ーー じゃあ平賀さち枝っていうと肩書きは何になるんでしょう? 例えばシンガー・ソングライターとか。
平賀 : 「歌手」でいいんじゃないですか?
ーー歌手! あぁやっぱ歌なんですね。じゃあどんな歌手になりたい? 例えば二階堂和美さんだったり、もっともっとメジャーな浜崎あゆみさんとか宇多田ヒカルさんとか。代々木とか原宿とかで末永く歌ってる人もいるし。平賀さんはどのあたりのことを想像してる?
平賀 : 最近で言うと、星野源さんの活動に注目しています。「夢の外へ」って曲を聴いて、「源さんなんて突き抜けたんだろう」って思って。その様子を見てて、私も元気をもらっちゃって。源さんは俳優もするし、文も書くし、そのあいだで曲作ってレコーディングして、いろんなことしてて。だから自分も、なんでもやりたいと思うようになりました、柔軟に。そして音楽的にはもっと突き抜けたい。
ーー 源さんっていうのはすごいわかる例えですね。
平賀 : もっと突き抜けたいって思いはあります。でその第一歩の片足を踏み入れた感じが、「ギフト」にあって。だから片足踏み入れたから、もっと自分に浸かっていって、もっともっとポップな曲が自分に作れたらいいなって思って。そんな存在になれたらいいなっていう願望がいまあります。
ーー すごい! やっぱ「ギフト」出来てからかなり心境変わったんですね。これからもどんどん突き抜けていってください。
RECOMMEND
湯川潮音 / 濡れない音符
湯川潮音、3年ぶりとなる待望のニュー・アルバム! アコースティック楽器を主体とした温もりあふれるアンサンブルに映える、えもいわれぬカタルシスに満ちた歌声のなんという美しさよ。喜び、哀しみ、癒し、ときめき、叙情…… 人が音楽に求めるおよそすべての要素が詰まった至福の50分間。なにもかもがすばらしい最高傑作!
ju seiのボーカル sei の初のソロアルバム。豪華11名の作曲者がseiに1曲ずつ提供し完成した。個展の開催、ウグイス嬢の「声」担当など、様々な活動をし ているsei だが、純粋に『歌』に焦点を当て、素晴らしい歌唱力を全⾯面に出したアルバムを作ることを目的に、core of bellsの會田洋平がプロデュース。作曲者以外にも、楽器の演奏、歌詞、ジャケット制作、録音・マスタリングなど、総勢31名の豪華アーティスト参加により、人類の叡智の結集とも言えるであろう、奇跡のアルバムが、今ここに完成!
2月に活動を再開して注目を集めるya-to-i(ヤートーイ)の、12年ぶりとなるフル・アルバム。ROVOやPARAの山本精一、ムーンライダーズの岡田徹、元マンスフィールドの伊藤俊治からなるポップ・ユニット。
平賀さち枝の過去作はこちら
LIVE INFORMATION
2013年11月16日(土)@神戸北野美術館
『ギフト/いつもふたりで』レコ発ワンマンライヴ
2013年12月7日(土)@梅田 ムジカジャポニカ
2013年12月29日(日)@新代田 FEVER
インストアライヴ
2013年11月23日(土)@タワーレコード渋谷店
2013年12月1日(日)@タワーレコード新宿店
2013年12月6日(金)@タワーレコード名古屋パルコ店
2013年12月7日(土)@タワーレコード梅田NU茶屋町店
2013年12月14日(土)@代官山蔦谷書店
PROFILE
平賀さち枝
1987年生まれ。岩手県出身。2009年に作詞、作曲、ギターをはじめる。ギターが弾けずアカペラなどでライヴ活動を開始。数ヵ月後にはギターを弾きなから歌うようになる。 都内各所で活動。ファースト・アルバム『さっちゃん』を2011年4月にkitiよりリリース。 アルバム『さっちゃん』は各所で2011年のベスト・アルバムに選ばれるなど、現在もロングセラーを続けている。 2012年4月、ファースト・ミニアルバム『23歳』をリリース。