2013/02/03 00:00

2009年から活動し、サイケデリックなサウンドが特徴的なFold Music。彼らのデビュー作を全国流通盤に先駆けHQDで配信スタート。ゲストに、Shizuku Echo(Vocal)、壊れかけのテープレコーダーズの遊佐春菜(Organ)、エンジニアに君島結(ツバメスタジオ)を迎え、マスタリングをUSインディーの鬼才クレーマー(Second Shimmy)が担当。名刺代わりにして決定盤と言える本作から、1曲フリー・ダウンロードでお届けする。そのサイケデリアに耳を傾けてほしい。

>>「ソーニャに告ぐ [Song For Sonia] 」のフリー・ダウンロードはこちら

Fold Music / 山々よ容喙するな

1. 山々よ容喙するな [The Mountains Must Not Interfere]
2. ソーニャに告ぐ [Song For Sonia]
3. オルカと篤志家 [Orca And Philanthropist]
4. 乾いた油 [Dry Oil]
5. 梯子 [The Ladder]

販売形式 : mp3 / wav
販売価格 : 単曲 200円 / まとめ購入 800円

※まとめ購入の方には、Webブックレットをプレゼント

これは架空でも怪奇でもない、現実の音だ

このバンドのことを知ったのは、筆者がこの1月までパーソナリティを努めていたラジオ番組『radio kitten』を通じてのことだった。この番組では後半にデモ・コーナーを設けていて、自薦・他薦問わず送っていただいた自作の未発表音源、デモ音源の中から選りすぐりの曲を毎回ご紹介していたのだが、今年最初の放送でおかけした曲の一つがFOLD MUSICの「山々よ容喙するな」という曲だった。

送られてきた音源を聴いた瞬間、興奮したのを今でも覚えている。異端性と土着感とが折り重なってまどろんでいるようなこの奇跡は何だろうか、と。例えば羅針盤、渚にて、マヘル・シャラル・ハシュ・バズといった日本の真摯なバンドのサイケデリアや、グリズリー・ベア、フリート・フォクシーズなど新世代のバンドのゴシックな匂い。ヴォーカルとギターを担当するリーダーの小田切冴樹が描く歌詞、旋律には、間違いなくそうした先達、同志たちに通じる特有のオブスキュアな感触があった。それはドロリとした血なまぐささも孕んだ、稲垣足穂や内田百閒のような幻想文学のようでもある。繰り返し聴く中で、そんなことも想像してみたりした。

面白いのは、FOLD MUSICはそうした幻想文学然とした音世界を、あくまで都会の風景の中で鳴らそうとしているということだ。一歩路地裏に入れば華やかさの影でひっそりと息づくダークな都会の染みのようなものが顔を出す大都会、東京。このバンドは一見目を背けたくなるようなそうした翳りある風景に、ある種のファンタジーを与えようとしているのかもしれない。そこは本当にただの都会なのか。もしかすると桃源郷への入り口なのではないか、否、はたまた死に導く樹海への扉なのではないか、などと…。

その「山々よ容喙するな」を含む5曲入りのミニ・アルバムを聴いて、今、改めてそんなことを考えてみている。壊れかけのテープレコーダーズの女性鍵盤奏者、遊佐春菜がゲスト参加し、録音エンジニアには君島結(ツバメスタジオ)を、マスタリングには何とシミーディスクのクレイマーを迎えたという今作は、そうしたこのバンドの死臭漂うゴシックな音風景を見事に表出した力作だ。生と死が背中合わせであること、歓びと絶望が同じく紙一重であることをこのバンドは伝えようとしているのかもしれない。

しかし、これは架空でも怪奇でもない、現実の音だ。音の底辺に漲る生命力を感じ取ってほしいと思う。(text by 岡村詩野)

LIVE SCHEDULE

2013年2月11日(月・祝)@渋谷7th FLOOR
OPEN 18:00 / START 18:30
前売 2,000円 / 当日 2,300円(ドリンク代別)
出演 : Fold Music / デマゴーグ / メケメケ / NAISHO / ENMANOVA

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maher shalal hash baz / C'est La Derni_re Chanson

工藤冬里を中心とする不定形ユニット、マヘル・シャラル・ハシュ・バズの、ロング・セールスを続ける『他の岬』に続くKからの第2弾リリース。2005〜7年にかけて工藤により作曲された膨大な楽曲を、「初見プロジェクト」スタイルによりフランスはシェルブールにて録音。「ミュージアムに行って一枚一枚の素描を見ていくのと同質の体験を」というコンセプトにより、均等に曲間を10秒ずつ取って、極端なショートピース中心の作品群を配置。あまりに挑戦的/野心的な構成ながらもアルバム全体としてはポップと呼べる印象すら受ける驚異的な仕上がり。

>>maher shalal hash bazインタビュ―

壊れかけのテープレコーダーズ / ハレルヤ

エンジニア近藤祥昭(GOK SOUND)のもと、バンドの名に帰すようにオープンリールのテープレコーダーによってオール・アナログレコーディングが行われ、唯一無二の音が聴こえ、その場に引きずり込まれる独特独自のサウンド・ピクチャーとなる3rdアルバム『ハレルヤ』が完成。結成5年の集大成。

>>壊れかけのテープレコーダーズ 特集ページ

割礼 / 星を見る

2003年リリースの「セカイノマヒル」以来7年ぶりの6thアルバムがついに登場!ファンの間で正式なレコーディング・テイクを待ち望む声が多かったあの「リボンの騎士(B song judge)」をとうとう収録。この15 分間におよぶ怒涛のダーク・サイケ・ナンバーで幕を開ける本作は現在の4 人編成になって初めてのアルバム。

>>割礼 インタビュ―

PROFILE

Fold Music

2009年秋、東京のとある一角でFold Music(フォルド・ミュージック)は活動を始める。バンドの発起人が早々に脱退してからは、中心人物である小田切冴樹(Guitar & Vocal)が全曲の作詞・作曲を担当し、都内でライヴ活動をスタート。編成メンバーはライヴ毎でフレキシブルに変化し、小田切がソリストとして弾き語りをする場合もFold Musicである。また、最近のライヴ活動では四人編成がもっともスタンダードな形であり、結成当初から在籍する住村洋祐(Bass Guitar)を筆頭に、Kami(Lead Guitar)、モンジ(Drums)で"Bob Dylan and The Band"の"The Band"のような役割を担っている。主に都内近郊で、渋谷7th FLOOR、下北沢mona records、秋葉原CLUB GOODMAN、東高円寺二万電圧などをメインにライヴ活動を行っている。

>>Fold Music myspace

この記事の筆者
岡村 詩野

音楽評論家/ 音楽メディア『TURN』(turntokyo.com)エグゼクティヴ・プロデューサー/ 京都精華大学非常勤講師/ オトトイの学校 内 音楽ライター講座(https://ototoy.jp/school/ )講師/ α-STATION(FM京都)『Imaginary Line』(日曜21時〜)パーソナリティ/ 『Helga Press』主宰/ Twitterアカウント ▶︎ @shino_okamura / Instagram ▶︎ shino_okamura

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[レヴュー] Fold Music

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