2012/12/22 00:00

キュウソネコカミ / 大事なお知らせ

1stアルバム『10代で出したかった』のリリースから9ヶ月、早くも第2作となるセカンド・フル・アルバム『大事なお知らせ』をリリース! 前作発表後、様々なイベントに出演し、多くのバンドとの共演を重ねて勢いを増し続けてきた彼らが、鬱憤や皮肉をビートにのせて放った全11曲。

1. JP / 2. サブカル女子 / 3. 友達仮 / 4. ウツロウココロ / 5. 死なんかなー / 6. 音楽やめたい / 7. オリジナリティ / 8. ファッションミュージック / 9. たば狂 / 10. シャチクズ / 11. TSUTSUNUKE BOYS

”ゆとり”と呼ばれた窮鼠の反撃

感情的になる前に、先にちゃんと紹介しておこう。キュウソネコカミは、2009年に大学の軽音楽サークルで結成された自称エモ・ブルース・バンドである。”エモ・ブルース”と言いつつも、音楽性は、近い世代で言うとオワリカラ、ザ・ミイラズやザ・テレフォンズなどを思わせるダンス・ロック。言いたい放題の歌詞と、ポップなメロディーが予想外の化学反応を起こしている。彼らのホームはライヴ・ハウス。勢いまかせのMCと、エネルギーを解き放つようなパフォーマンスで、若い世代の心を掴んでいる。関西を中心に活動している彼らだが、今年3月に1stアルバム『10代で出したかった』をリリースした後、全国ツアーを展開。COMIN'KOBE、BAYCAMPなどの大型イベントや、対バン形式のライヴから刺激を受けて、早くも2枚目のアルバムを発売した。リリースのテンポも早く、関西から全国へ飛び出そうという勢いがある。そして、アルバムを『大事なお知らせ』と名付け、重大発表を匂わせておきながら、レコ発ツアーのタイトルは”僕たち解散しませんツアー”。まさに茶番。気になるアルバムの内容も、前作以上にジャンルやモラルはお構いなし。やりたい放題である。

皮肉たっぷりな表現を使いつつ、でも好きさと歌う「サブカル女子」、タバコ依存を歌う「たば狂」、社会の歯車となる辛さと切なさを歌う「シャチクズ」など、掲載を憚られるようなテーマを歌う彼ら。確かにそう思うけど、それ言っちゃダメでしょ! と突っ込みたくなるような内容が満載である。しかしその一方で、<歌詞もメロディも秀逸なあの売れてるバンドを目指したら 結局新しさなんて消えて 有象無象の輪廻に>と切なげに歌ったり、<音楽やっても得はないから 出来るなら音楽をやめたい>とこぼしたりもする。強気なことを歌うなら、もう何もかも吹っ切って言いたいことを言って、やりたい放題やってくれればいいのに。実態が掴めず、こっちがもやもやしてしまう。でもその等身大な感じが、ポジティブなキラーチューンを連発してパーティー・ピーポーの一体感を煽るような、ダンス・ロック定番のノリとは違っていて、聴けば聴くほど気になる存在になってくる。

同じ時代を生きてきて、同じ音楽を聴いてきた世代が、次々と世に出て行くタイミング、というものがある。それまではずっと、憧れの対象は年上で、自分より経験があり、手の届かない世界にいるものだと思っていた。しかし、20代に突入すると同時に、同世代が「若手」とか「ニューカマー」と呼ばれて、「新世代」という看板を背負って、華やかに表舞台へ飛び出していく。そんな風に飛び出していった同世代を、素直に応援するもよし、俯瞰するもよしなのだが、キュウソネコカミの音楽を聴いた時、同世代の筆者は単純に、やられた! と思った。自分が聴いてきた音楽のおいしいところを詰め込んだ音楽が、そこにあったのだ。悔しい。歌詞に気を取られてしまいがちだが、コール・アンド・レスポンスを交えたライヴ映え必須の曲展開。勢いまかせに見せかけつつ、狙い澄ましたフレーズの応酬。嫌いになれる訳無いじゃないか。

同世代にはもちろん、他の世代にも聴いてほしい彼らの音。どんな反応が返ってくるのか楽しみだ。現在20歳前後のキュウソネコカミの世代は、バブル崩壊と共に生まれて不景気続き、”ゆとり”と呼ばれ、大学を卒業しようと思ったら就職難。でも言われっぱなしでは終われない。たまにはこっちの話も聞いてくれ!!(text by 櫻井希)

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いったんぶ / はり手

No wave/Post Punkを土台にしながら、ヴォーカル・コテのハイトーン・ヴォイスと、eToとべべべによる奇妙かつサイケなギター・サウンドが絡み合い、チハルとポルンガの鉄っぽいビートと共に奏でられるその音はアヴァンギャルドで痛快。アグレッシヴなライヴ・アクトと相俟って、観た者に強烈なインパクトを残す。喧しくて踊れて暴れられて脳に直接叩きつけられる電気信号としてのサウンドに酩酊必至!

空きっ腹に酒 / 僕の血

大阪より、空きっ腹に酒のファースト・フル・アルバム。2007年結成、2011年のFUJI ROCK"ROOKIE A GO GO"に出演、その過激なパフォーマンスとエッジの利いた演奏で大きな話題を呼び、ライヴ・ハウス・シーンでもその名を広めている彼ら。サウンドは、パンクを基調としながらも、ロック・ヒップホップ・ファンクのエッセンスを取り入れ、かつポップへ落とし込んだ、まさしく新世代到来を感じさせるもの。

PROFILE

Vo/Gt ヤマサキ セイヤ(ex セルフボラギノール)
     Gt オカザワ カズマ(ex セルフボラギノール)
Ba カワクボ タクロウ
Key/Vo ヨコタ シンノスケ(ex BLANK MAP)
Dr ソゴウ タイスケ(ex バカ力)

2009年12月関学にて結成!!! 2010年より関西を中心に活動中!!! 2011年11月25日 Baはがね丸脱退。テクノブレイカーの道へ。同時にカワクボタクロウ加入。

FFーX-2より
「キューソネコカミ」
何のへんてつもない珠だが ピンチの時その力は解放される……
ピンチ(死にかけ)になると攻撃・回復共に9999になる

この記事の筆者

[レヴュー] キュウソネコカミ

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